経済危機を乗り越え、民生危機解決へ

特集 |3大危機を乗り越え、3大危機論を乗り越えて

 

 

田炳裕(ジョン・ビョンユ) bycheon@hs.ac.kr

ハンシン大学校平和公共性センター副所長。著書としては『統合的社会政策の代案研究』(共著)、『韓国資本主義発展モデルの歴史と危機』(共著)などがある。

 

 

1.  経済危機の現住所

 

口腹之累、求之不得。生活がたいへんで、いくら求めても得られない。これは、ある就職ポータルで、会社員と就職者らが選んだ2009年を表す四字熟語である。「国民の生活と生計」を意味する民生が、これほどたいへんであるということである。一方、去年、サムスン電子は、史上最大の利益と史上最高の株価を更新した。自動車の場合、韓国の車のアメリカ市場占有率が7%まで上がった年であったが、  ヨーロッパの自動車全体のアメリカ占有率は、8%台に留まっている。 中小協力企業らは、営業利益率が20%も下落する事態を見せた。

2008年、世界金融危機のため、ほぼ破産状態までに行きそうだった世界経済と韓国経済が、回復に向けているという。2009年は、第2次世界大戦以後、世界経済が初めてマイナス成長を記録した年であった。しかし、政府と研究機関は、今年の世界経済成長率が3%台であり、韓国経済も4~5%の成長率を見せると展望している。出口戦略をどの時点で、どの方式でとる争点になる。OECDやIMFは、韓国経済が大胆な流動性供給と財政投入で、経済を泥沼から救ったと評価する。G20首脳会議の主要議題に「韓国の経済開発及び危機克服モデル」を入れる方案も推進するという。

世界金融危機に対して、李明博政府は、大規模の流動性供給と財政投入という危機対応戦略を展開する一方、減税と規制緩和、民営化、法秩序の確立を主要内容とする「MBnomics」から「親庶民」中道実用路線へ転換した。前者は、ある程度成功したようにみえる。2009年韓国の財政投入は、GDP対比3.7%で、OECD平均2%に比べ、もっとも大きい幅で行われた。2%台の低い金利は、韓国経済が今まで経験したことのないレベルであった。財政のほぼ3分の2を上半期に執行し、これを一日単位で点検したという。ある官僚の表現によると、公務員生活20年で、こんなにお金を使ったことがないほどである。その間の内需欠如経済に、一時的に大規模の財政投入が大きい効果を見せたことである。

一方、親庶民中道実用路線は、実体がない政治的修辞で、言葉と政策が異なる嘘の路線という評価を受けている。金持ち減税と大型土木工事、福祉の制度化の拒否、首都圏中心主義などは、親庶民中道路線とは距離があるからである。にもかかわらず、部分的な転換はあった。臨時的ではあるが、大規模の財政投入の中、一定の部分は、庶民のポケットに入った。多くの問題があり、また、かたちだけという言い方もあるが、ともかく、塾の時間規制と就職後の授業料返済制など、韓国社会のホットイシューである教育問題を政策議題として設定した対応している。

しかし、「民生」は、相変わらずたいへんである。韓国経済は、新しい政権になるたびに、危機を経験している。その負担は、そのまま「庶民」側に残った。危機を経験し、その格差は、もっと差を見せ、庶民の生活は、よりたいへんになった。今回の危機も同じである。民生の危機は、民主政府10年間直面してきた危機が悪化される形態である。李明博政府は、両極化による剥奪感の噴出を、いく文にもならない金額で防ごうとする形成である。韓国社会は、経済危機から脱し、民生危機を解決することはできるだろうか。

 

2. 景気回復の限界と問題

 

世界経済危機が終わり、韓国経済がバブルを防ぐためには、出口戦略を使う時であるという声が出ている。金利を上げ、財政投入も元の位置にさせるべきであるという。しかし、韓国経済の危機脱出過程は順調ではないと考えられる。


まず、世界経済の回復に、未だに不確実性が多い。政府は、早い景気回復を前提で、2010年の成長率5%に、働き場の20万個増加、民間消費と設備投資、各々4.2%、11.0%増加を目標とした。しかし、周囲の環境は、そんな甘いものではない。アメリカの場合、未だに家計の借り入れが減り、貯蓄が増加している。「負債に基づいた消費」が容易く甦ることは難しい。中国の場合、2009年の内需拡大政策を取りやめ、すでに緊縮政策へ方向転換中である。ウォンは、平価切上げされ、大企業の輸出プレミアムは、大きく減っていく。金利が上げられないために、家計負債の圧迫で消費が伸びることも容易くない。去年、相対的に国内の物価安定に寄与した低油価傾向もいつ変わるかわからない。2009年は、幸い、速い景気回復は可能であったが、2010年の世界経済には予想できない変数が出てくるかもしれない。

次に、この間、政府の財政投資で可能であった景気回復が、持続可能であるかという問題もある。財政投入に頼った景気回復政策が、犠牲なしに行われることはない。何よりも財政悪化の可能性がある。国内の財政収支赤字は、管理対象収支基準(国民年金や雇用保険のような基金を除いた財政収支)として、2009年に51兆ウォン、国内総生産(GDP)対比5.0%で、歴代最大値を記録する展望である。これは、GDP対比比率で、外国為替危機直後とほぼ同じレベルである。今年も財政赤字から脱することは難しく、それによって、赤字性財務は、2007年127兆ウォンから2010年168兆ウォン、2011年228兆ウォン、2010年には247兆ウォンに急速に増加する展望である。法人税と所得税引き下げ効果が本格的にあらわれ、4大河川事業のような非合理的財政支出が拡大されると当然のごとく出てくる結果である。

財政赤字で増えていく国家財務が、まだ、OECD国家のGDP対比国家財務比率に脱しないレベルであるが、最近、増加速度がもっとも速く公企業の負債まで含むと、規模がもっと大きくなる。むろん、財政の規模や赤字自体が問題ではない。政府財政を長期的な観点から合理的かつ効率的に執行、管理すれば、そんなに心配することではないかもしれない。しかし、南北関係の変化及び統一の展望が不確実で、高齢社会への突入が明らかである状況において、税入と税出に対する中長期的ビジョンなしに、救急処方式で、財政を運営する場合、日本のように国家財務の罠に陥る危険性も高い。

しかし、何より重要な問題は、景気回復が庶民の実感とは大きく差があるということである。今は、「雇用のない成長」と「所得のない景気回復」を知らない人はいない。大半の人がこれを体感しているからである。景気が回復する過程で、経済両極化現象がもっと明らかになっている。

今回の危機においても、大企業と中小企業の格差は、継続して生じてきた。大企業の生産増加率は、前年同期対比として1分期の-16.7%から3分期には4%に回復したが、中小企業は、未だに生産減少から脱することができないでいる。去年、貿易依存度は、92.3%に上昇し、史上初の90%を超えた。内需を活性化させ、安定成長の基盤を整えるという政策方向とは正反対であった。輸出と内需の不均衡成長が持続されるのであれば、その結果は、雇用のない成長、所得のない景気回復になる。2009年雇用は、前年対比7万2千名減少した。政府財政を通じた仕事場事業の効果が30万名に近くなることを考慮すれば、実際の雇用現象は40万名に近づいている。雇用は、景気に後戻りする特性を持っているが、減少の幅が過度し、増加が明確ではない。したがって、景気回復にもかかわらず、家計体感景気は、もっとも不振である。2人以上の都市勤労者世帯の所得が、2009年1分期-0.7%、2分期-2.1%、3分期-2.9%などで、所得減少の幅が徐々に大きくなっている。その結果、3・4分期の家計所得の減少幅は、史上最大である。

不十分な雇用創出だけでなく、家計負債の増加も家計の所得を圧迫している。巨視経済指標の上場にも、国内家計負債の規模は、3分期に712兆8千億ウォンを記録した。去年の住宅担保貸し出しは、43兆4千億ウォンが増えた残額が351億2千億ウォンを記録した。2008年の増加額の36兆ウォンを超える史上最大の規模である。

また、巨視変数としての物価上昇率は、2%台で比較的に安定的であるが、消費者物価上昇率は、OECDの平均である0.1%に比べて高く、庶民家計に影響を及ぼす食品物価上昇率は、OECD会員国の中で2位である。家計消費支出で示す食料費比重であるエンゲル係数が2009年1~9月中13.0%を示し、8年ぶりに最高を記録した。エンゲル係数の増加は、すなわち家計の貧困化を意味する。

アメリカ、中国、そしてヨーロッパの経済回復が大規模の財政投入で可能であったために、これが景気の持続的回復に邪魔になる可能性もある。大恐慌以後のdouble deepは、歴史的に多くみられる現象である。未だに世界経済には、不確実性が残っている状態である。このような環境で、大企業輸出と財政投入に頼る景気回復が持続可能であるかの問題が存在しており、他方、経済が回復されても、民生の危機は、続くという構造的な問題が残っている。

 

3.問題を累積させる李明博政府

 

世界経済の不確実性と庶民の民生危機に対応せざるを得ない政府が減税政策や4大河川事業のようなものだけに神経を使っている。仕事場の創出を最優先にするといっても雇用対策には特に言及がない。未だに、李明博政府を象徴する政策は、減税と4大河川事業であろう。前者がいわゆる新自由主義の理念を表すのであれば、後者は開発連帯のパラダイムを代表する。しかし、「残念ながら」この二つの事業は、時代に合わない。清渓川(チョンゲチョン)復元やソウル市交通体系改変は、推進方式からの問題はあったものの、それなりに時代の要求に沿った政策であった。しかし、減税と4大河川事業は、世界金融危機と経済社会構図の両極化に直面した韓国経済の建て直しにはまったく合わない。

減税が成長と雇用を促進するという主張は、韓国経済の現実に対する悩みから出てきたというより、新自由主義という、今の時代には合わない古いイデオロギーから由来したもので、前の政府の政策をただちに批判しながら思いついた論理に過ぎない。現在、韓国経済で、全体法人の0.1%である200箇所の大企業が、全体の法人税の60%以上を出している。大企業が莫大な現金を内部に積んでおくという状況の中で、法人税を値下げすることは雇用創出にはつながらない。低賃金労働者の場合、低い賃金と各種の所得免除で所得税を出していない状況で、所得税免除は、当然のことながら、お金持ちの減税で、これが受容を創出する効果も大きくない。しかも、減税による地方政府の税収不足が30兆ウォンを超えると推定されている。地方自治団体は、財政が減っても、人件費のような経常費は減らないために、地方税収の減少は、大半福祉と住民サービス支出の減少としてあらわれる。このように、減税が成長と内需を促進する根拠は、もっとも弱く、民生の危機を悪化させる可能性はもっとも高い。

李明博政府も、こうした危険性を認知しているようには見える。2010年の財政を2009年の本予算の水準で凍結し、法人税と所得税免除を保留した。また、実現可能の可否はさておいても、2013年に財政均衡の達成を目標として財政を運営することにした。事実上の減税政策の廃棄が行われており、その流れがつながるということで予測される。にもかかわらず、財政危機の可能性は排除できない。今のような主要事業に対する妥当性の検討を除いたり、政府事業の予算を公企業に任せたり、国家財政を無計画で非合理的に運営することからは、単純に減税保留や財政均衡目標設定だけでは財政危機を逃れることはできない。

中小企業と地方が生きれば内需も生き、両極化も緩和する。しかし、李明博政府は、これを4大河川事業で解決しようとする。減税は、あきらめるとしても、4大河川事業は、断念しないという。4大河川事業は、国の財政と国土に害を与える可能性が高い韓半島大運河のスタートであると同時に、地域建設族に「与える」を通じて、内需を拡大するという意図もみられる事業である。過去には、道路や交通など、社会間接資本の外部効果と雇用創出効果が大きかった。しかし、現在の韓国は、開発途上国が経験する社会間接資本の不足や先進国が直面した社会間接資本の老後化をみることは難しい。青年失業者たちは、建設業の仕事場を得るより、無職でいながら、他の職場を探すという就職活動生になろうとすると考えられる。この経済の効率性とその効果は、どうしても探すことができない。

にもかかわらず、韓国社会では、未だに政策アジェンダは、政府が主導する。その結果、他の議題は、消えていくか、前面に提示されず無視される傾向がある。李明博政府下において、中小企業政策は減って、雇用政策は不在し、福祉政策は放置されている。既存に制度化された福祉政策までは、まだ手をつけられないでいるが、そのような制度の隙間にある多くの政策が、痕跡もなく消えていく場合も多い。2010年から基礎障害年金を導入することになったが、実際には、「障害」という危険を社会的に分かち合うシステムというより、低所得障害者に小額の手取りを与える障害手取りにすぎない「模様だけ年金」になってしまった。限定的生計給与や各種の事業は、経済危機が公式的に終わってないにもかかわらず、来年の予算からすべて除外されている状態である。地域と現場の自発性が核心である社会的企業政策や小額融資事業は、官辺行政やニューライトのために転落することもあり得る。現政府下で、公共政策の詳細な設計と企画はないと言っても良い。世界経済の不確実性とダブルディップの可能性を排除できない状況で、確実な政策企画が不在している李明博政府の経済政策は、民生危機をもっと悪化させる可能性が大きい。

 

4.民生危機の構造

 

民生危機は、事実上、外国為替危機以前から始まったと言える。統計的にみると、貧困、不平等、両極化と関連された指標が、1990年代初めから転換されはじめる。大企業と中小企業の賃金格差もこの時期から速く拡大され、減少した臨時日雇い職の比重が大きくなり、持続的に下落した大学教育に対する投資収益率が増加する。その結果、Gini係数や相対貧困率なども上昇しはじめる。


これは、生産物市場で、輸出大企業と内需中小企業の格差が大きくなり、労働市場が両極化され、良質の仕事場は、1990年代初の全体雇用市場の20%近くなったが、これも10%にも達していない。中小企業と大企業の賃金格差は、1980年代には、100:110程度で、1990年代に100:130まで高くなって、2008年以後現在は、100:170まで拡大された。特に、外国為替危機を経て、雇用不安がもたらす貧困の問題が出始めた。正規職に比べ差別をうける非正規職のみならず、いわゆる、仕事をしても食べていくのに苦労する「勤労貧困」(working poor, in-work poverty)が現れている。勤労貧困は、雇用形態の面において、柔軟化―不安定化という新しい社会的危険にその一つの原因があり、もう一つの原因は、近代的雇用条件を保証してもらえない零細事業場の脆弱労働者の雇用条件の下落にあるといえる。ノ・ムヒョン政府の福祉予算を毎年20%程度ずつ拡大したにもかかわらず、庶民がその効果を体験できないことは、この構造化される貧困メカニズムに正確に対応できなかったからである。

「庶民」は、学者や専門家には、もっとも定義しにくい用語である。にもかかわらず、政治的には、もっとも強力なパワーを持っている。大統領が、ことばだけでも庶民のことを掲げると、支持率が上がる。国語辞典によると、庶民とは、「一つ目、官職や身分的特権を持っていない一般人、二つ目、経済的に中流以下の豊かではない生活を送る人」である。一部の学者は、学者や財産を基準で、中産層または中間層以下の階層として定義する場合もある。   「下位21%から50%までの所得階層を庶民としてみることが妥当である」(リュウジョンスン、韓国貧困問題研究所長)、「経済活動人口が、2380万名だとすれば、中産層以上と貧民層を除いた約1000万名が庶民にあたる」(ウィピョンリャン、経実連事務局長)、「社会階層を上流―中産―貧民層として区分し、中産層と中下層と分類すると、庶民は、中下層に入る。所得分布をみると11%から40%に入る層が庶民である」(ユギョンジュンKDI研究委員)、「中産層以上を上位30%で、貧民層を下位20%とみると、その他、50%を庶民として分類できる」(ユビョンギュ、現代経済研究院常務)、「上位5%と下位5%を除いた90%が庶民である。上位10%に入る人々も勤労所得がなければ、生活が混乱になるためである」(キムジャンヒ、国民銀行研究所長)。 中流庶民に入らない階層は、非正規職の中下層、中小零細企業の脆弱労働者、零細自営業者、そして、絶対貧困層である。こうした階層は、韓国経済の発展過程において、各々歴史性と具体性を持つ現実的範疇であると言える。

これらの庶民に、部門間の格差の拡大で現れた構造化された貧困と民生危機に対して、単なる成長より分配が重要であり、国家福祉拡張のために、政府予算の投入を増加すべきであるという主張は、生活で実感しにくいこともある。彼らは、まだ経済成長が仕事場創出と所得増大を通して、生活上の要求を実現するのに必須的であるとみなし、その間の経験で再分配と福祉拡大が自身の生活上の要求を解決できないと信じている。

こうした認識に客観的な根拠がないわけでもない。韓国の場合、市場においての労働に対する直接的代価ではない社会保険や公的給与、サービスの形態で得られる社会的賃金が全体所得において示す比率は、10%程度に過ぎない。主要先進国は、この比率が最大50%で、平均30~40%になる。この統計だけでみると、先進国水準で、この比率を高めることが当然な政策課題となる。教育に対する公的負担拡大と公共医療システム構築、公共住居拡充が必要である。しかし、現在、韓国の場合、教育と住宅、そして医療すべて、民間が支配する市場で供給されている。医療も財源だけが国家が管理し、サービスは民間で担当している。いわゆる、公共医療の比率は10%未満である。保育や職業訓練のような社会サービス市場で、庶民は、国家福祉より、「自家福祉」システムに慣れている。老後生活を保証されるために、国民年金に頼るより、年金保険や年金ファンドに加入するという傾向が強い。韓国の国民は、民間の生命保険者に所得税の2倍に達する保険料を支払っている。公共賃貸住宅よりは、小さくても「我が家を立て」なければ、老後が保証されないと考える。庶民が莫大な私教育費と住宅関連費用負担に追われる現実において、税金は現金で国家福祉は手形である。

このように民生の危機は、単なる成長や再分配だけで解決されるには難しい構造である。まず、市場の分配構造を改善し、これを再分配や効果的に結合させる政策が要求される。すなわち、市場においての不平等で不均等な所得発生機制を緩和し、市場で福祉領域に脱落しないように防止することが要である。このためには、生計のための所得を保証できるきちんとした仕事場が重要である。   韓国銀行のチャンドング博士は、韓国が成長が雇用を創出する効果より、雇用が成長を促進する効果がもっと大きくなっており、動労時間を増加させることより就業者の数を増やすことが成長を促進するという分析結果を提出した。また、動労の分配が大きくなり成長が促進されるという実証研究も提示された。朝鮮大のホンテヒ教授は、1970~2008年間の分析結果、労働所得分配率が1%減少すればするほど、成長は0.33%、投資は0.003%減少すると分析した。

 

5.経済危機と民生危機、どのように乗り越えるか

 

李明博政府は、いつ来るか知らない経済危機とダブルディップ、そして構造的な民生危機に対する正確な政策的企画には関心がなさそうである。これに対する対応とは関係のないようなお金持ち減税と4大河川事業、そして、これにともなう財政危機が、李明博政府のアキレス筋になる可能性が高い。したがって、お金持ち減税と4大河川事業を中断し、政府予算を福祉と教育を中心に再編成すべきという主張と代案が出てくるのは、当然である。むろん、世界金融危機が100年に一度来る資本主義の根本的・週期的危機であり、これは、金融資本主義のシステム自体を変えないかぎり、解決されない問題という意見もある。しかし、現在の民主改革陣営の対応は、この時点に留まっている。お金持ち減税と4大河川事業を中断し、国家税制を拡大し、福祉予算を画期的に増やし、金融資本主義システムを転覆すれば、本当に民生危機が解決されると国民は考えるだろうか。

韓国経済の危機とこれにともなう民生の危機に対する政策代案は、生活現場に接近する法敷くとして進展されていない。民生危機をもたらした経済構造の改革と政策パラダイムの変化をもっと具体的に整えて、これを庶民が実感できる方式で提示すべきである。民生危機に対処するためには、少なくとも次の三つの領域においてのメッセージが明確である代案が準備されるべきだ。まず、優先順位として並べると、一つ目は、経済の不安全性と両極化をもたらす金融システムと生産物市場の構造を変えること、二つ目は、市場で稼ぐ所得だけでも庶民の生計と生活ができるようにすること、三つめは、再分配政策と福祉政策を正確に設計し執行することである。

市場で、適切な所得が保証される仕事場を作るためには、両極化された産業・貿易構造が再編されるべきである。韓国の貿易依存度は、外国為替危機直前50%であったことが、去年は、90%までに上昇した。20%台である日本やアメリカに比べて、もっとも高いレベルであり、中国の70%よりも高くて、ほぼシンガポールや香港のような都市国家のレベルに達する。その結果、産業・貿易構造において、都市国家的な特性が強化されていることである。「グローバル―大企業―首都圏」という範疇に含まれない部門と空間は、立ち遅れる領域として取り残される。今のような輸出大企業―内需中小企業の両極化の構造と過度な貿易依存度を低めなくては、民生危機が解決されることは難しい。

しかも、代表的な保守言論すらも、大企業中心政策の問題点を次のように指摘する。造船・海運業として高速成長したSTXグループの職員は、約4万7千名である。その中、中国人が、2万7千名、ヨーロッパ人が1万6千名である。その他、4千名余りが韓国人である。仕事場の10の中の1が韓国人の割り当てである。政府が、半導体会社の研究開発の面倒をみてあげる、その「代価として金品」は、インドバンガロルの現地研究所のインド人博士に回っていくという。したがって、軍事政権時代の親企業的発明品を再検討すべきであると主張している。    朝鮮日報ソン・ヒヨン論説委員コラム「企業の利益、国家の利益」2009.10.24. 本当に一理ある話である。

にもかかわらず、李明博政府は、一部大企業だけが恩恵をうける法人税値下げを推進し中小企業特別委員会を無くし、地方中小企業庁の廃止も推進している。中小企業に対する今年の予算は、むしろ30%も減った。4大河川事業などに投資したせいで、支援額が大幅削減されたことである。中小企業は、李明博政府という経済バックでは、大きい役割を果すことができない。

民主改革陣営は、中小企業、革新、クラスター概念に基づき、革新型成長に基礎した雇用創出モデルと、教育・医療・住居など社会サービス領域において、中産層と庶民の負担を減らす同時に、雇用も創出されるようなモデルを開発すべきである。

韓国の中小企業の労働者の場合、雇用が不安定で企業間のネットワークもきちんと形成されていない。革新と競争力の源泉である人とネットワークが弱いのである。革新は、人々の間の知識以前によって可能であるからである。所得保証が可能な仕事場を拡大させるためには、革新型の中小企業の経済領域を拡大させるべきである。このためには、中小企業の労働市場の安全性と勤労条件を向上させる政策と、中小企業を業種や地域単位でネットワークと協力のクラスターで合わせてあげる戦略が基本である。ここに、大企業と中小企業の間の公正な引取が行われるような市場整備が必要である。金産分離と資本市場統合法通過も重要であるが、不公正下請引取を改善することももっとも重要な社会的議題として提議されるべきである。

一方、南北経協とケソン公団プロジェクトが、李明博政府によりほぼ無力化され、中小企業の活路と新しい成長動力としての役割を果たしていない。孤立された「島経済」を超えて、「南北合作経済」へ拡張することは、韓国経済のボトルネック現象を解消すると同時に、「両極化経済」を超える地平を創出することができる。ただ大規模の研究開発の投資だけで、革新が可能であるわけではない。南北合作経済が単純に原始的蓄積モデルではなく、世界経済と先端の技術革新から疎外された部門に新しい実験と想像力の「空間」を提供するモデルとして設計する政策企画が可能で、また必要である。

民生危機に対処するためには、「与える経済」から「社会サービス経済」に転換することがもっとも重要である。社会サービスは雇用を創出し、市場所得を高める効果を出し、また庶民の市場所得に対する依存度を低める政策領域であるためだ。李明博政府すら、看病サービスを公式の医療サービスとして制度化し、保健福祉分野で、15万の仕事場を作るという。しかし、社会サービス領域に、政府予算を多く投入するとしても、庶民の支出負担が減って、良質の雇用が創出されるとはいえない。民間支配の社会サービス市場が、きちんとした市場として機能される制度の樹立が必要である。政府予算を投入する前に、私学財団、私設塾、非営利病院財団、各種の福祉法人などが掌握している社会サービス市場の法と制度を再整備すべきである。きちんとした看病サービス供給を拡大するとしても、既存の利害関係を保証する各種制度と法に縛られ、やりやすい状況ではない。このために、未だに社会サービス供給は、政府が予算を民間に分けてあげる方式だけで拡大されている。民主改革陣営は、教育・医療・住居・福祉などの社会サービス部門で、政府予算を投入して、公共部門を拡大するというプランから、ひいては、どのように民間が支配する社会サービス市場を改革して、庶民の負担を減らし、良質の仕事場を創出するかを提示しなければならない。これは、もっとも難しいことである。ノ・ムヒョン政府が、このような問題を、韓米FTAを通して、ビックバン式で解決しようとしたが、可能なことではなかった。民主改革陣営は、社会サービス部門の正確な改革プレンを整えるべきである。

むろん、雇用を通じた市場所得のみで、民生危機が解決されることではない。市場と競争は、基本的に不平等をもたらし、市場で脱落する貧困層が発生しやすくなる。したがって、再分配政策は、資本主義経済の基本構成要素と同様である。社会保険が拡充され高齢社会になるほど、再分配と福祉関連予算及び政策の比重は、継続して増えると思われる。再分配と福祉支出は、大半が法廷支出で、自然的に増加する傾向があり、一度拡大された事業は、縮小や廃止が難しい。また、福祉政策の場合、政策の間の整合性がよく計算されるべきで、社会的資本の役割も重要である。したがって、再分配と福祉政策が長期的に持続可能になるためには、制度のインセンティブ構造と関連された主体の行為様式に対しても十分に考慮すべきであり、正確な社会工学的な政策能力も必要である。韓国は、外国為替危機を経験し、部分的・段階的に社会政策能力を拡充してきた。しかし、正確な政策設計を無視する李明博政府がこうした公共部門の社会政策能力の発展を大きく邪魔していることが、現在の状況である。民主改革陣営は、こうした正確な社会政策の設計能力を「実力」でみせ、再分配と福祉政策において成功的な事例を創出すべきである。だからこそ、庶民が民間福祉から国家福祉や公共福祉の領域に戻ることができる。

利害関係者間の妥協と調整の民主的過程を無視し、正確な公共政策に無関心で、財政破綻と民生危機を招く李明博政府を審判することは、そのため重要である。去年、追加更正予算を除外する方式で福祉予算を膨らまし、4大河川予算を水資源公社予算の中に隠しておいて、「庶民」と「中産層」の定義を課税標準8800万ウォン以下として計算する 李明博政府の欺瞞的な修辞と計算方は、当然のことながら批判されるべきである。しかし、批判は容易く、代案は難しい。民主改革陣営は、庶民に民生の代案を提示することに、もっと時間と資源を使うべきである。

 

 

訳=朴貞蘭
季刊 創作と批評 2010年 春号(通卷147号)

2010年3月1日 発行

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