창작과 비평

[特集] 「敵」をつくる政府と市民社会連帯の再建 / 李泰鎬

 

創作と批評 199号(2023年 春)目次

 

特集/危機の韓国、何をするべきか 

 

「敵」をつくる政府と市民社会連帯の再建

 

 

李泰鎬

参与連帯運営委員長

 

 

1. はじめに

 

尹錫悦政権が発足してから9ヶ月目に入った。尹錫悦政権は「公正と常識」を話し、それよりさらに頻繁に「自由」について語っている。しかし、現政府がこれまで見せたのは、常識よりは非常識に近く、これまで築き上げてきた公正というよりはむしろ排除と嫌悪であった。彼が16分間の就任演説で35回も言及した自由は、人と自然を生かし調和しながら多様に共存できるようにするのではなく、放置したり孤立させたり死んでいく人をほうっておく自由であった。彼は、政治やガバナンスの代わりに国内外から「敵」を見つけ出し敵意や嫌悪を煽ることだけに没頭している。ここ8ヶ月間尹錫悦大統領と彼の数少ない側近たちは権力の剣を握っている者が彼ら自身だということだけは見事に示した。そして、彼らが伝家の宝刀のように使う法と原則が、彼らが言う自由民主主義と正義、そして平和をどれくらい迅速かつ広範囲に形骸化し、脅かすことができるのかも十分に見せている。韓国の民主主義指数が8ランクも下落したことも、それをよく表している[1]。いまや一段と減った支持者でさえ、現政権に公正や常識などを期待しているようには見えない。尹大統領と彼の側近の非常識がこれから生み出す「リスク」を心配し、政権奪還のために辛うじて形成した保守勢力の連合がこれ以上侵食されないことだけを焦りながら心配している。彼らが行っている嫌悪や差別によって、そしてさらに危うくて不安定な生活を送っていくことになる市民の不安と怒りによって社会的葛藤が持続し、政権と政治の危機が慢性化する可能性が高い。しかし、この慢性的危機が自ずとより良い社会への転換のための機会を提供するわけではない。

 

2.尹錫悦政権以後の韓国社会

 

守旧保守連合と嫌悪の政治

 

保守陣営は政権交代のための連合を構築するために、それなりの骨身を削る再編作業を強行した。それは、朴槿恵大統領の弾劾過程において形成されたキャンドル−弾劾連合によって存亡の岐路に立たされた旧与党陣営の生存のための苦肉の策であり、キャンドル政権2期目が発足してから改革を加速化する状況に耐えられなかった守旧勢力の既得権守護意志の表出でもあった。

第21代総選挙で「共に民主党」が議席を独占したのは、萎縮した当時野党だった「国民の力」と守旧勢力に危機とともに機会を提供した。国民の力は国会議員歴のない30代を党首に立てる一方、朴槿恵大統領を捜査し、党を存廃の危機に追い込んだ当時の担当検事を大統領候補として迎え入れた。大統領選挙の終盤には、安哲秀をはじめ中道系改革保守を標榜した政治勢力と連合した。その結果、伝統的保守勢力及び守旧既得権階級と主観的政治性向が不確実で流動的な「二代男(20代男性)」、そして中道系保守をつなげる3軸体系が構築された。一部では「一つの屋根の3家族」と低評価したが、市民には刷新の陣痛または政治的力動として解釈されることもあった。

彼らは少なくとも大統領選挙までは葛藤の中の統合を維持した。当時、尹錫悦選挙キャンプが保守層結集の接着剤として用いたのが「公正」を掲げた嫌悪とレッテル貼りであった。「女性家族部の廃止」「市民団体の不当利益の還収」等を主要公約として掲げ、女性と市民団体を公共の敵のように描写したのが代表的である[2]。また「執権したら文在寅政権の積弊清算を捜査する」のような言及でそれとなく文在寅政権を朴槿恵政権と同一の特権集団として等置させたり、「対北朝鮮先制攻撃」発言、突然の「ミョルゴン」(滅共)[3]キャンペーンへの参加等で陣営論理を煽った。

しかし、この全過程を退行とだけ捉えると、状況の一面だけを見ることになる。大統領選の過程において20代の女性と男性が自主的に組織して重要な行為者として登場し、議題を形成してそれぞれの選挙運動本部を動かした。彼らが既得権政治の脇役だったのか、それとも新しい政治的リーダーシップ形成の予兆なのかは、その後の韓国政治が答えるだろう。一方、「政権交代」世論が高い状況において、李在明候補と「共に民主党」が大統領選の終盤に「政治交代」という議題を提示して選挙制度の改革と改憲等の一連の政治改革を約束したことも意味が大きい。政治改革論議は、尹錫悦政権の発足直後、しばらく水面下に沈でいるようだったが、少しずつ懸案として再登場指定る。

 

支持率の下落と保守連合の弛緩

 

ネガティブ戦略で政権を握った尹錫悦政権は、急激な支持率の下落に直面している。これは、政治的反対よりも大統領個人の失策や政権勢力内部の亀裂によるものである。まず内閣と大統領室に対する初人事から公正性、透明性、適切性が批判の的となった。明確な理由や必要性が説明されていない無理な大統領執務室の龍山への移転も、非難とともに連鎖的な副作用を引き起こした。その中には10・29梨泰院惨事も含まれる。大統領の頻繁な失言、非常識な発言、不適切な言動は国内だけではなく、国際外交の舞台でも大小の問題を引き起こし、その過程で以前から提起されてきたファーストレディーの金建希リスクもさらに浮き彫りになった。尹錫悦政権が文在寅政権を「ネロナムブル(내로남불)」[4]と非難してきたため、新政権に対する失望と冷笑が拡散される速度と幅は速くて深い。

各種の嫌悪を動員して辛うじて形成した保守連合は、大統領選勝利以後、亀裂を見せている。「国民の力」党内では李俊錫党代表の性接待疑惑と党代表職の剥奪論難をはじめとし、最近羅卿瑗前議員の党代表出馬に対する大統領室からの公開反対論議まで破裂音が続いている。最も劇的なのは、選挙期間中に尹錫悦候補を支持した20代男性の変化である。任期初期の2022年6月に大統領の職務遂行に対する20代男性の肯定的評価率は60%に達したが、12月には28%に急落した。「国民の力」の支持率も48%から33%に下がった。このような20代男性の支持率の下落曲線は、全体平均よりさらに険しく、結果値もさらに低い[5]。一方、「尹核関」(「尹錫悦の核心関係者」の略称)を中心に政府及び政党のリーダーシップを変えようとする試みは、以前の躍動性を低下させ、選挙用連合を弱体化させる方向に作用している。外部から「スカウトして来た」候補だった尹錫悦大統領の与党統制の試みが強化されるほど、連合の亀裂が加速化するジレンマは今後も続くものとみられる。

 

複合危機の本格化

 

韓国社会が直面している複合的な危機に対する尹錫悦政権の対応は憂慮される。高物価・高金利・高為替レートが持続する世界的水準の経済危機に対する処方として、尹錫悦政権は「規制緩和」と「民間・企業・市場主導の経済活性化」を掲げる。資産家・企業対象の減税と財政緊縮、金融及び不動産に関する規制緩和、民営化、労働時間の柔軟化と賃金引き上げの統制などの経済政策は、資本主義−反労働、裕福層支持(pro-rich)-反庶民の傾向を明確に表している。しかし、季節外れの新自由主義の流行歌のようなこの政策方向が「経済活性化」や「投資意欲」につながっているという信号はどこにも現れていない。むしろ最近の暖房費支援論難にみられるように、「財政緊縮」基調は市民の不満に直面する可能性が高い。

尹錫悦政権が強調する経済体質改善の根幹である「規制革新」は、実はその経済的効果を追求するというより、経済危機の恐怖を活用してすでに不均衡な企業と労働間の関係をより一層悪化させようとする「災難資本主義」[6]のビッグピクチャーを表わす。規制革新で除去すべき「利権カルテル」と「地代追求」の中心に大企業や不動産業等ではなく、労働運動や市民社会運動を置いているためである。このビッグピクチャーの予定される結果は、独占と不公正、公共福祉の縮小、民生危機と社会二極化の深刻化である。

ウクライナ戦争等によってエネルギー危機が悪化しているが、炭素中立対策は「起−承−転−原発」というほど原子力発電に依存している。再生可能エネルギーへの転換は猶予され、後退している。老朽化した原子力発電所の安全問題、福島の放射性物質を含んだ汚染水の放流問題もまともに議題化されていない状況で、グリーンニューディールのようなより全面的な対策が議論のテーブルから早く排除されたことは言うまでもない。これは、世界の流れにも逆行するものであり、EUは昨年論難の末に原発をグリーン・タクソノミーに含ませることに合意したが、同時に炭素国境調整措置(CBAM)など新しい貿易規制にも合意した。それによって、韓国が注力する輸出品にも炭素排出量による国境税が課せられる見通しである。「鉄鋼、アルミニウム、精油、紙、自動車、半導体の輸出が崩れる状況で、果たして原発、防衛産業によって輸出突破ができるだろうか」[7]という問いが有意義な理由なのである。さらに、「正義の転換」に対する考慮が事実上皆無だという点も問題である。脱炭素転換に伴う雇用の再編等の費用が概ね労働者に転嫁されることを予告する。

「力に基づいた平和」を掲げた韓半島及び対外政策は、すでにその副作用が言うまでもなく深刻である。尹錫悦政権は、前政権が推進した韓半島平和プロセスと南北間合意をほとんど否定し、さらには捜査の対象として北朝鮮と相互武力示威を展開してきた。またアメリカのインド・太平洋戦略に無批判に便乗して「韓・米・日軍事協力」を拡大してきた。ところが、「力に基づいた平和」基調とは違って、韓半島の平和も、非核化も現実的な目標から遠ざかっている状況である。南北間の譲歩のない武力示威によって武装衝突の危険が急激に高まり、政策推進はスタートから現実的難関に直面した。例えば、今は米中関係の悪化及びウクライナ戦争によって国連安全保障理事会常任理事国間の協力を引き出すことも難しい条件であり、北朝鮮に対する新たな制裁決議はおろか、既存の制裁もまともに作動していない。

韓半島の危機に対するいかなる対策も、責任感も見せない政府は、南韓(韓国)の核保有あるいはアメリカとの核共有のような刺激的で非現実的な処方だけにこだわっている。こうした主張は、韓半島非核化の放棄を意味するだけではなく、核兵器禁止条約等の国際的な流れにも反する。北朝鮮の核保有の口実をむしろ強化させ、韓米関係まで亀裂させる自害的主張である。対外政策はどうなのか。アメリカの対中国政策に対する排他的便乗は、合理的選択のための「戦略的曖昧性」の空間を無くし、「関与と放棄の危険」[8]だけ加重させる。外交舞台での相次ぐ失態や同意基盤のない即興的な政策決定が不必要な葛藤や危機を招いているのは言うまでもない。問題はこうした葛藤と危機とがあいまって複合的に深刻化するということであり、現政権が強調する「輸出の増大を通じた経済活性化」にも結局致命的な結果をもたらすだろう。

 

「敵」づくりで延命する政権

 

執権以後急速に下落した支持率がなかなか反騰しない状況[9]、そして複合危機に対する処方があまりなく、とはいえ、積極的な転換を図る意思も、能力もない状況で尹錫悦政権が選んだ出口は、急増する不満の標的になる内外の「敵」を探すことであった。

実現可能性もない女性家族部の廃止は、当選直後にうやむやになるようだったが、昨年10月に政府組織改編案として再び浮上した。もう一つのターゲットは労働組合である。大宇造船海洋下請け非正規職のストライキと貨物連帯ストライキを契機に、尹錫悦政権は労働組合の「既得権」に対する「改革」に着手した。尹錫悦政権が掲げたのは「労使法治主義」だった。彼らのいう「法」と「原則」は造船産業が最高の好況を呈していた中にも耐えてきた最低賃金水準の労働条件を改善しようとする下請け労組のストライキ現場に公権力を派遣すること、そして元請け企業が労組幹部5人に470億ウォン(約50億円)という巨額の損害賠償を請求するよう促すことだった。それが国際労働機構批准協約の違反だという事実は、全く考慮されなかった。

貨物連帯ストライキに対しても尹大統領は直接前に出て「北朝鮮威嚇と同じ」と攻撃した。すでに約束した「安全運賃制」の保障を求める貨物連帯に政府が適用させた法律は、驚くべきことに「公正取引法」だった。政府は貨物労働者の特殊な雇用形態を口実にストライキ現場に強制業務開始命令を発動しただけではなく、貨物連帯のストライキが「事業者団体」には禁止された「不当な共同行為」に該当するとし、公正取引委員会を前面に出して現場調査を試み、ついには調査拒否を理由に専属告発権を行使した。公正取引委員会の強力な調査権及び専属告発権は財閥・大企業の独占や談合を制裁するためのものだが、これを劣悪な労働条件の中にいる貨物運転手に対する政府の報復手段として使ったのである。政府与党は特殊雇用労働者の団結権を保障し、会社側の損害賠償の乱用[10]を禁ずるための労組法の改正も拒否している。

年末を経て、尹錫悦式労使法治主義は労働組合の会計に向かった。尹錫悦大統領は「労組腐敗」を公職腐敗と企業腐敗に準ずる3大腐敗の一つと規定し、その撲滅のための厳格な法の執行を注文し、それによっていくつかの労組が捜査対象に上がった。しかし、労組の自主性は憲法が、労組会計の監査と公開に対する事項はすでに労組法が規定している。労働者の組合費は資本の運営や税金の使用とは厳然と区分されるにもかかわらず、あたかも同級としてごまかし、労組を腐敗既得権集団と罵倒しようとする意図である。

市民社会団体を対象とした「不当利得の還収」は、大統領選の時から予告されたことであった。昨年末、尹錫悦大統領は「国民の血税が彼らだけの利権カルテルに使われるなら、国民の皆さんがそれを知って容認しないだろう」[11]と言いながら、政府各省庁に市民団体への国庫補助金に対する全数調査と全面的な体系再整備を指示した。大統領室はまもなく記者会見を開き、過去7年間(2016−22)非営利民間団体に支給された政府補助金が計31兆4千億ウォン規模だと明らかにし、市民団体に莫大な資金が流入したと描写したが、この金額は各種協会や財団、連盟、福祉施設等に支援された財源をすべて合わせたものであった。いくつかの革新系市民団体の目的外使用事例だけを列挙しながら、大統領室が明らかにした全数調査の理由は「これまで摘発件数が微々たるものだった」ということであった。

市民社会団体全体を不道徳な集団として追い込んでいくような罪探しは、2021年の補欠選挙で呉世勲ソウル市長が当選されてからすでに始まっている。呉世勲市長は「ソウル市立て直し」という名称で社会的価値の実現に関連した12分野の民間補助・委託事業を代表的な浪費事業と規定し、予算案を大幅削減編成するとともに、関連団体に対する全面的な監査を実施した。

ところが、呉世勲から尹錫悦に続く市民団体の不当利益還収騒動は、この種の牽制に耐えてきた伝統的な代弁型団体より、主に地方自治と関連した草の根組織に打撃を与える可能性が高い。これら住民参加組織、社会的経済組織に対する政府及び地方自治団体の支援体系は、当初地域の市民社会を活性化し、住民自治やガナバンスを拡大しようという趣旨で導入されたものであり、進歩と保守を問わぬものでもあった[12]。国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)はもちろん、大多数の国際機構がこれらの草の根市民社会団体の役割向上と支援体系の改善を注文し、とりわけパンデミックを契機にその公的機能がさらに強調される中、政府与党は正反対の道を歩んでいる。

尹錫悦政権の敵づくりは、国家情報院を前面に押し出した「大規模のスパイ団」事件にまで進むようである。ありきたりの展開だが、分断体制において最も手軽で効果が大きいのは「利敵行為者」「非国民」という烙印である。この安っぽいお守りが草の根活動家から野党政治家にまであちこちに張り出される勢いである。昨年末には李明博・朴槿恵政権当時、国家情報院の民間人査察、コメント操作などに関与し収監中だった彼らが一斉に大統領特別赦免を受けた。2024年に警察に移管される予定の対共捜査権に対しても、政府与党は「見直し」の声を高めている。

現政権の与党は女性家族部廃止を推し進めながら「構造的性差別はない」と強弁し、資本と公権力の前で労働者が処した構造的脆弱性を考慮しないまま、労組を既得権集団として攻撃する。零細な草の根市民団体の会計処理未熟や稀に発生する会計不正を領収書なしに支出され、内訳も公開されない検察の特殊活動費[13]よりさらに深刻な積弊として扱う。そして今は公安政局まで再造成されていく雰囲気である。公共の敵を作るこの一連の政治的操作を通じて、一時的には政略的利益を得ることができるかもしれない[14]。しかし、尹錫悦政権が仕掛けた罠は結局、自らの足を引っ張って総体的な失敗を促すだろう。例えば、尹政権が新年に入って明らかにした3大改革は、すでにその失敗が予定されている。労働改革・教育改革・年金改革のうち、ガバナンスと社会的合意なしに成し遂げられることは一つもないためである。女性運動と労働運動、草の根住民運動の協力なしに社会的合意がなされるはずがない。

 

災難の日常化と災難資本主義

 

政府が敵を捜し出し、彼らの弱点を探るために行政力を総動員する間、国民を保護し守る義務は放棄され、国家システムは急激に後退する。10・29梨泰院惨事が代表的である[15]。防げた事故を政府が放置し、適時に適切な方法で救助できなかった結果、159人もの命が犠牲になった。惨事直後から続いた一連の過程は、もう一つの惨事だった。犠牲者の遺体は首都圏の病院に分散され、家族にきちんと連絡が取れなかった。多くの遺族は、捜査当局から麻薬投薬の有無に対する解剖を提案された。国務総理は「主催側がない状況」を云々し、大統領の側近でもある行政安全部長官は「警察や消防人材をあらかじめ配置することで解決できた問題ではなかった」と責任を回避した。龍山区庁長はハロウィンデーが「現象」と言い張った。惨事後、警察は現場のCCTVを回収し、公然と容疑者の捜索に乗り出した。このような過程で犠牲者と生存者に対する魔女狩りと嫌悪が沸き上がり、慰労と治癒が急がれる彼らは2次、3次被害を体験しなければならなかった。尹錫悦政権は遺影も位牌もない焼香所を急いで設置し、国家哀悼期間を設定したが、家族にきちんと連絡することも、説明する場もなかった。驚くべきことに、これまで政府は遺族をはじめ被害者家族のために一度も公式的な報告会を開いたことがない。遺族が集まって一緒に追悼し慰める空間を用意してほしいという要求もいまだに実現されていない。

10・29梨泰院惨事はセウォル号惨事とあまりにも酷似した展開過程を見せ、私たちの社会災難惨事の絶望的な特徴をそのまま表わしている。第一に、予防-備え-対応-構造-収拾における国家機能の総体的な不在である。朴槿恵政権はセウォル号惨事を「交通事故」と定義しようとし、尹錫悦政権は梨泰院惨事を主催者のいない行事で起きた「事故」と規定しようとしたが、これは結局国家の不在を証明するだけである。第二に、政権の責任回避のための国家公権力の体系的発動と工作的介入である。災害惨事の備え-対応-救助-収拾では決して発揮されなかった公権力が真実を隠し、政権の安否を守ることには体系的に働く。公的責任は主に国家機構の末端現場に転嫁され、実質的責任のある高位公職者に対する不処罰をめぐる議論が繰り返される。第三に、被害者の権利に対する全般的侵害と2次、3次加害である。生存者や地域住民は放置されたり、さらには一部は加害者として名指しされる。災難を「政治化」する勢力と結託した私益追求者と罵倒されるのである。

社会のすべてがねじれて壊れても既得権が挑戦される状況を防ぐためには何でもする。これこそが災難資本主義の典型的な特徴なのである。

 

3.より良い世界への意志と連帯の再建[16]

 

社会的連帯の復元

 

しかし、厳しい事情の刃を振り回す尹錫悦政権は、すでに自ら崩壊しつつある。敵意で武装した空っぽの国家の実体は、裸の王様のように現れている。ところが、守旧勢力は自身の既得権を支える力が「何をしても変わることはないのではないか」という懐疑、すなわち社会構成員間の信頼低下から来るということを誰よりもよく把握している。尹錫悦政権の慢性的危機が自ずとより良い社会への転換に機会を提供するのではない理由、同時にこの政府が無数の「敵」づくりに没頭する理由である。したがって、本当に心配しなければならないことは日常が災難になった社会に放置される数多くの不安で危険な「生存者たち」、私たち市民の絶望なのである。この絶望は政権に対する懐疑を越え、国家の公的機能と責務履行に対する懐疑、社会的連帯を通じた権利実現の可能性に対する懐疑にまでつながりかねない。

実際、社会がより良くなるだろうという期待は著しく落ちている。ある信頼度調査結果報告書[17]によれば、韓国社会の主要機関に対する信頼度は2019年から2022年まで持続的に下落した。政府及びメディアに対する信頼の下落が最も激しく、企業も同じである。相対的に高い信頼度を示すNGOも緩やかな方だが、下落傾向を見せている。特記すべきことは、政府に対する信頼の墜落である。文在寅政権の最終年である2021年と尹錫悦政権の初年度である2022年に各々8%ずつなんと16%も下落した。2022年の調査によると、韓国人は「今後5年間、私と私の家族の暮らしが良くなるのか」に対しても28%だけがそうだと答えた。これは調査対象27ヵ国の中で最も低い数値であり、高所得層より低所得層の懐疑がさらに深刻だった。

キャンドル大抗争直後は、より良い社会への希望が相対的に高かった。韓国社会と世界が直面した共通の危機と危険、例えば社会的二極化と不平等、代議民主主義の誤作動のような本質的な問題はそのままの状態だったが、市民の連帯と民主的ガバナンスで改善が可能だという信頼があったためである。特にセウォル号惨事以後、市民たちは「じっとしてはならない」という約束の下、より安寧な社会を作るための連帯行動に乗り出し、結局平和的な方法で朴槿恵政権を弾劾することで退行の危機を転換の契機に変えた。「国らしい国」を共に作ることができるという社会的自信と信頼基盤が用意された。しかし、残念ながらキャンドル政府を自任した文在寅政権で試みられた改革と構造転換は既得権の抵抗に直面し、この過程で改革主体としての限界と問題点も明らかになった。パンデミックと経済危機に直面すると、市民の信頼と連帯意志は急激に弱まった。勝者独占の政治構造改革が遅れ、政権与党が総選挙で一方的な勝利を収めたことも、キャンドル政治連合の解体を加速化させた面がある。出口を見つけられなかった不安感は脆弱な市民間の葛藤、例えば20代女性と男性の対立として現れた。「公正」は高度成長を夢見るのが難しい世代、中でも特に男性青年たちの相対的剥奪感を投射する言語となり「怒り」は民主化運動とフェミニズムに対するバックラッシュをもたらす要因となった。これが韓国社会の信頼度が2019年から持続的に下落してきた理由だろう。しかし、「公正」と「常識」を前面に掲げた−−実際には差別、排除、嫌悪を動員した−−尹錫悦政権への政権交代後、社会構成員の絶望と冷笑はさらに深まっている。

それゆえ、尹錫悦政権を糾弾するだけでは足りない。社会的・政治的連帯を通じて今より良い社会づくりができるという信頼、希望、意志を再建しなければならない。皆が排除されず尊重されるという信頼、お互いの面倒を見ながら一緒に安寧な社会を作ることができるという希望、今までとは違う暮らしができる社会を作っていくという集合的意志、このような心を作り直し、集めなければならない。

 

 新しい対抗連合と「変革的中道」

 

尹錫悦政権の「公正」と「自由」の失敗及び退行に代わる新しい連帯、新しい対抗連合の内容と主体はまだ十分に姿を現していない。それなら、より良い社会のための市民の意志と連帯を再建するために、市民社会運動が乗り出さなければならない役割は何だろうか。

まず、尹錫悦政権の暴走と退行を防ぐための力を結集しなければならない。尹錫悦式「法治」は全世界が羨ましがっていた韓国社会の躍動的民主主義[18]を狙っている。このダイナミックな民主主義は、法と制度によって保障されたものではなく、むしろ市民を保護することができない法と制度、作動しない代議政治を越えようとする市民の意志と実践が発展させてきたものである。しかし、尹錫悦政権が法と原則を叫ぶほど、市民の自由と権利は統制され、公論の場は萎縮している。そして民主的空間の縮小は市民の生計と安全を脅かし、ジェンダー不平等の深化、気候危機対応の弱化、戦争危険を伴っている。市民社会が力を合わせて対応しなければならない理由である。梨泰院惨事の被害者をはじめ、国家が責務を果たせず犠牲になり権利を侵害されたすべての人々と精一杯連帯して市民の権利を守り、国家に責任を問わなければならない。労働者と市民の正当な権利主張が孤立したり各個撃破されないように助け支援しなければならない。政権危機管理のハンターとして動員されている検察、警察、監査院、そして秘密情報警察に復帰しようとする国情院などの逸脱を正し、これらの民主的統制のための制度改革が本来の道に進むように力を合わせなければならない。権力が乱用され、権利が侵害される現場の中へ、現実と仮想現実のすべての公論場と広場へ熱心に「戦いに」行かなければならない。

第二に、嫌悪と差別に断固として共に立ち向かわなければならない。公然または表れない暴力に関して、社会運動及び市民社会全般が自ら感受性を高めなければならない。尹錫悦政権が法と原則を掲げて既得権集団と罵倒し、査定の刃を向けているターゲットは、韓国社会で構造的に差別を受けてきたか、相対的に脆弱な集団、あるいはそのような人々の侵害された権利を擁護してきた団体である。被害者を加害者に、社会的弱者を既得権層に変身させ、権利を侵害された人々を非倫理的で破廉恥な私益追求者と烙印を押す守旧保守勢力の手法はますます巧妙になり高度化している。従北探し騒動まで激しくなる勢いである。女性、性的マイノリティ、移住者、障害者、ムスリム、「従北主義者」などに対するレッテル貼りと攻撃に共に抵抗し、彼らと連帯しなければならない。差別禁止法など制度的対策の策定をさらに積極的に促すべきである。嫌悪を助長する政治を審判しなければならない。

第三に、人と地球を共にケアする連帯を実現しなければならない。経済危機の解決を口実に社会的格差と不平等、生態系危機と気候危機をさらに悪化させることを許してはならない。社会的不平等と特権の構造を示し、その根本原因に抜本的に対応する実践を一層強化しなければならない。社会的不平等の解消と気候危機の克服は対立するものではなく、成長至上主義から脱した新しい経済モデルを形成していくことと民生福祉とは調和することができる。戦争を準備するのではなく、武力以外の方法で平和を実現することは可能である。正義の転換、グリーン・ニューディール、ケア・ニューディール、韓半島平和体制を留保できない当面の課題として提示し、政府と政界にその実現を促すべきである。 

第四に、根本的な改革と転換の目標と観点を失わず、同時に幅広い共感と絆を形成しなければならない。排他的に考え、一方的に実践しては変化を成し遂げることはできない。この点で「変革的中道」[19]は新しい対抗連合構成の話題といえる。平和的方法で起こしたキャンドル革命とその過程で形成されたキャンドル連合は、合理的保守を省察的進歩が牽引した具体的な事例である。たとえ底力を発揮できず、中途半端な守旧保守に席を譲ったが、前述の3つの当面課題を連結するためには、この時代に必要な「変革的中道」の道、合理的保守までをまとめる省察的進歩の道を探さなければならない。

第五に、多様な立場と互いに異なる考えが交差できる公論の場を用意し拡張しなければならない。闘争と抵抗だけでは限界がある。根本的な転換のためには対話と合意も欠かせない。相手の完全な克服、相手に対する完全な勝利という陣営の公式から抜け出さなければならない。同じ立場同士だけが集まって散らばる排他的な政治的部族主義を乗り越えなければならない。今すぐ合意を求めなくても、違いは認め、共通点を見出す求同存異(agree to disagree)の規範と知恵を発展させていくことが必要である。

 

政治改革と連合政治の実現

 

まともに作動しない代議制を見直すことはますます重要で切迫した課題になっている。偏狭で画一化された派閥づくりの中で、多様な民意と根本的な問題提起を加えて裁断する寡頭政治の副作用があまりにも大きい。民意によって政治的代表性を獲得し、多様性とアイデンティティを放棄せずに、より大きな目的のために連合できる政治構造を創出しなければならない。

前回の大統領選挙期間中、李在明候補と「共に民主党」(野党)が話した選挙制度の改革と改憲など一連の「政治改革」約束は必ず守られなければならない。共に民主党は現在、検察の偏向的捜査の集中ターゲットになっている。野党指導部と前政権高位官僚に対する全方位的な捜査は公平性論難を起こし、「検察独裁」に関する憂慮と反発を誘発する状況である。しかし、そうなればなるほど自らを保護することに埋没せず、主権者の信実な道具になることを自任し、過度に享受してきた政治的既得権を分けることに先頭に立たなければならない。

市民社会も「共に民主党」の反省と政治交代の約束が既得権論理によって座礁しないように力を合わせなければならない。また、嫌悪の政治を動員し、政権直後から内紛と危機を経験している「国民の力」(与党)の内部でも、政治改革と政治交代に真剣な関心を持った主体が勢力化できるよう圧迫と協力を並行しなければならない。選挙法改正など政治改革の過程は、政党だけの合意では実現できない。民意によって公平に議席を分ける案を作るためには、進歩と保守を網羅し、多様な市民社会のグループが参加する合意構造を作らなければならない。

大統領選挙前後に与野党の巨大政党に急激に増加した権利党員·責任党員は政治交代を早める大切な動力である。しかし、彼らは、巨大政党が市民政治参加のプラットフォームとして開放的で民主的に運営される時にのみ改革の動力になりうる。開放的な態度は、新たに流入される党員だけでなく、市民社会の協力パートナーとの関係でも重要である。苦言を排斥するために熱烈な支持者を防御装置として動員することは短期的には甘いが、大きな毒になりかねないことを肝に銘じなければならない。

正義党、進歩党などの進歩系政党も連合政治が可能な構造と慣行の改革のために今よりさらに積極的・戦略的に臨まなければならない。民主党と進歩系政党の支持率の同調化現象はすでに長い間続いてきた。反面、現政治制度の下で独自の勢力化が制限され、支持率の固着と死票の量産が繰り返されれば、進歩政治成長の希望も共に侵食されかねない。進歩系政党と韓国社会の転換のためには、進歩的アイデンティティと独自性を失わずに連合政治を可能にする構造、制度、政治協約の創出に全力を尽くす戦略的決断と集中が必要である。

私たちが直面した複合的な危機は決して簡単ではなく、「敵」づくりに没頭する尹錫悦政権の横暴な振る舞いも尋常ではない。しかし、災難と危機はしばしば新しい想像力が発揮される反転の機会を設けることもあるので、あまり意気消沈する必要はない。新たな連帯は、これまで危機の中で道を開いてきた市民社会の躍動性を信じることから始まるだろう。より良い社会に向けた意志と連帯の再建が必要である。

 

訳:李正連(イ・ジョンヨン)

 

 

 

[1] イギリス「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」(EIU)の民主主義指数報告によると、韓国の順位は昨年の16位から今年24位に下落した。「韓国民主主義の順位『16位→24位』、1年ぶりに8階段下落」MBC、2023.2.3。

[2] これについては、チョン・ヒジンの次のような論評が注目に値する。「今回の選挙で性差別をジェンダー葛藤に変質させることができた理由は、『ジェンダーを知らない力』のためである。社会構造としてジェンダーに対する認識が皆無であるため、女性間の違い、男性間の違いを男女間の違いに還元することができた。つまり、「極めて一部の中上位層の20代女性の過剰再現」と「現役徴兵対象である土の匙(低所得層)の男性」を男女一般に対立させ、錯視現象をつくったのである。階級問題を性別葛藤に操作したのである。既得権の両党に問う。なぜ50代の貧しい女性と50代の中産層男性は比較しないのか。障がいのある女性と健常者の男性はなぜ比較しないのか。「ソウル男性」と「地方女性」の地位はなぜ比較しないのか。(•••)彼らのための政策はどこにあるのか。」チョン・ヒジン「女性を侮辱しない社会に投票しよう」『ハンギョレ』2022.3.8。

[3] 【訳者注】2022年大統領選挙期間中、尹錫悦候補(当時の最大野党「国民の力」)が、「共産主義を滅亡させる」という意味の「滅共(ミョルゴン)」を思わせるような買い物をした写真で論難を呼んだ。「ミョルチ」(煮干し)と「ヤクコン」(タンキリマメ)を買ったが、韓国語の「ミョルチ」の「ミョル」と「ヤクコン」の「コン」を合わせて発音すると、「ミョルゴン(滅共)」になることから、「反共」を支持する保守層有権者にアピールするための写真ではないのかという批判があった。

[4] 【訳者注】「私がすればロマンス、他人がするのは不倫(내가 하면 로맨스, 남이 하면 불륜)」という意味の文で、その縮約語である「내로남불(ネロナムブル)」という新造語。

[5] 同期間の全体平均を見ると、大統領の職務遂行に対する支持率は49%→33%、与党「国民の力」への支持率は43%→36%に下がった。20代女性の場合にはそれぞれ34%→16%、18%→16%に変化した。「韓国ギャラップデイリーオピニオン:第478〜524号、2022年月別・年間統合集計表」2022.12.23を参照。

[6] カナダのジャーナリストであるナオミ・クライン(Naomi Klein)が『ショック・ドクトリン』で使った概念として、ショック・ドクトリンは衝撃的な事件が起こった時、市民の恐怖を利用し支配勢力のための体制を強化させる「災難資本主義」の手法である。ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』金ソヒ訳、サルリムBiz、2008を参照。

[7] オ・ギチュル「製造業、韓国を去るようにするつもりなのか」『ソーシャル・コリア』2023.1.10.

[8] 非対称的な軍事同盟に便乗する際に経験する弱小刻のジレンマの一つが関与(entrapment)と放棄(abandonment)の危険である。関与の危険とは同盟国の側に立つ中で望まない敵対関係や紛争に巻き込まれる危険を、放棄の危険とは同盟関係にもかかわらず有事の際に約束された支援を受けられず、無視される危険をいう。

[9] 韓国ギャラップの最近(2023年2月2週目)の調査結果によると、大統領の職務遂行に対する肯定評価率は32%で、一時最低24%にまで下がったことに比べれば反騰したものの、なかなか遅々として進まない様子である。米世論調査機関モーニング・コンサルタントの最近調査(2023.2.9発表)では、尹錫悦大統領の支持率が22%を記録し、これは調査対象22か国の指導者の中で最も低い数値である。

[10] 憲法はストライキ等の争議行為を権利の行使として認める。労働法研究所「へミル」の金ジヒョン所長は、その権利行使が不法行為であるか否かを法的に判断するには、「権利濫用」が認められるか、「犯罪」が構成される必要があるが、権利濫用の認定要件が厳しいため、「業務妨害」という犯罪でストライキ行為を制約している現実を指摘する。「業務妨害という犯罪行為を構成する瞬間、営業権を侵害したことになるので、営業損失が損害賠償の範囲になる構造」という。一方、他国では「ストライキを業務妨害として処罰した例がない」。「ストライキに業務妨害罪の適用、メスを入れた医師を傷害罪として処罰する格好」『ハンギョレ』2022.12.17を参照。

[11] 「尹、市民団体の補助金不正受給を叱咤『彼らだけの利権カルテル』」『ソウル新聞』2022.12.27.

[12] 盧武鉉政権で「社会的企業育成法」が、李明博政権で「協同組合基本法」が制定され、いわゆる社会的経済組織の設立が増え、地方自治体と政府の支援体系も共に構築された。朴槿恵政権では「都市再生法」制定を通じてまちづくり住民組織及び社会的企業が活性化し始めた。これとともに青年支援プログラムも先を争って作られた。これらの新生組織と活動家のためのNPOセンターなどの中間支援組織の設立も、ソウル市を皮切りに全国の地方自治体につながった。

[13] 検察特殊活動費の規模は最高検察庁だけでも2017年160億ウォン、2018年127億ウォンに達する。透明な社会のための情報公開センター・税金泥棒を捕まえろ・良い予算センター共同声明「検察特活費公開判決、控訴放棄して資料公開すべき」2022.1.18を参照。

[14] これと関連して韓国保守政治が「時代の危機に応戦するビジョンも、広い同意基盤を創出する構想も持っていない」という指摘も参考になる。「尹錫悦政権は『労組』、『市民団体』、『民主化勢力』に犯罪、偽善、利敵集団のイメージをかぶせたり、『先制打撃』、『拡戦覚悟』のような言葉で北朝鮮に脅しをかけるやり方で保守有権者を結集して利益を得ようとするかもしれない。そのような便法は政略的に有用かもしれないが、まともな問題解決とはかけ離れた無責任な対応だ」シン・ジヌク「2023年のグローバル複合危機と韓国政治」『ハンギョレ』2023.1.3を参照。

[15] 拙稿「10・29梨泰院惨事と災難資本主義」創批週間論評、2022.12.20を参照。

[16] この章は、拙稿「キャンドル連合はなぜ持続できなかったのか:尹錫悦政府時期の市民社会運動と政治改革の方向と課題」『キリスト教思想』2022年10月号の内容を全面再構成して記述した。

[17] 「エデルマン信頼度指標グローバル報告書」(Edelman Trust Barometer Global Report), 2020, 2021, 2022, 2023を参照。

[18] スウェーデンの民主主義多様性研究所が発行した「民主主義報告書2022」によると、韓国は2011〜21年の10年間、民主化が明確な国家の一つである。報告書は、韓国を「(この10年間)独裁化の時期を止めて反転させた珍しい国」と特記した。ただし、報告書は韓国が平等指数では世界179ヶ国中29位、参加指数では43位に留まっていると分析した。V-Dem Institute, “DEMOCRACY REPORT 2022”を参照。

[19] 白楽晴は分断体制の変革のための実践路線として「変革的中道主義」を提案する。「既存の各種排除の論理に反対するものの、各立場の合理的核心を生かすことで改革勢力を束ねる」統合の論理、すなわち合理的保守と省察的進歩が出会い、競争し連帯させる実践努力が必要である。白楽晴「大きな積功、大きな転換のために」、「近代の二重課題と韓半島式国づくり」創批2021を参照。