창작과 비평

地方ガバナンスの活性化のために: 仁川(インチョン)の事例を中心に

特集 | 李明博時代の折り返し地点、ガバナンスの危機

 



朴仁圭(パク・インギュ) icpik@hanmail.net
韓国・仁川(インチョン)地域の市民共同体「希望を作る村の人々」の運営委員。「
2010仁川地方選連帯」の政策委員長歴任。な論文として

「都市整備事業の問題解決のための公共部門の役割」などがある。

 

 

1.6・2地方選挙を振り替えて

 

6・2地方選挙は、全国的なレベルで言うと野党の勝利で終わった。市民は、民主主義を後退させ、庶民の生活を苦しめ、独断と傲慢で一貫している李明博政権を厳重に審判した。すべての開発と「展示性行政」、腐敗と無能で税金を浪費し、地域住民の声に耳を傾かないまま、草の根の地方自治を窒息状態にさせた団体長らも、この審判を避けることができなかった。最大の勝負所であった首都圏の中でも、仁川(インチョン)、世宗(セジョン)市の修正案をめぐった議論の中心にあった忠清(チュンチョン)、ハンナラ党の牙城である慶南において、野党が勝利した。その他の多くの地域においても、広域議会から基礎議会まで、進歩改革勢力の候補者が大勢当選することで、地方権力の構造と運営に変化が起き、地方自治が新たな発展の道へ進む契機が整えられたと言える。

7月1日には、全国246箇所の地方自治団体長の就任式が開かれ、市民の希望と期待の中で、民選5期が本格的にスタートした。しかし、一か月ほどの引受委員会の期間を経て、意欲に満ちた団体長らは、今は、大きなプレッシャーを感じている。なぜならば、これまで牽制がなかった現在までの地方政権が、莫大な負債を残したためであった。仁川の場合、その規模は、仁川都市開発公社の負債を含めて、2010年末を基準に総額9兆ウォンにも上る。京畿道(ギョンギド)で、財政自立度がもっとも高く、全国で9番目に財政の良い都市である城南(ソンナム)も、豪華庁舎建立などで、5200億ウォンに上る債務の支払い猶予と宣言した。「民生福祉」と環境分野に対する投資と支援は、相対的に弱まった反面、様々な開発事業と行事など、しまりのない財政運営のせいで、これからも財政の危機に陥る地方自治団体は、増えていくのであろう。

こうした状況をもたらした主な理由の一つは、特定の政党一色で、奇形的に形成・運営された民選4期の体制にある。この時は、湖南(ホナム)地域を除いた全国を大半の所では、ハンナラ党が、団体長と地方委員の絶対多数を占めた。仁川の場合、市長と基礎団体長の10名中の9名、広域市委員33名中の民主党比例代表委員の1名を除いた32名がハンナラ党出身であった。こうした状況は、他に地域においても、大きく変わらなかった。このような環境において団体長の専横は、必然的である。それに、「民意」を受け入れ、行政を牽制すべき議会もその本質的機能を喪失したまま、「挙手機」に転落して、政党内の派閥対立と利権争いに染められ、不正と腐敗の問題が絶えなかったと言える。生活政治の現場から、住民自治の声と力量は、少しずつ苗を育てられていたが、その中に密かに内在している保守既得権勢力に比べてまだ微弱であった。市民社会団体の要求と主張は、権力の前では「中身のないこだま」に過ぎない場合が多かった。

国民の政府と参加政府という時代において、拡大してきた民官協治のガバナンスが、李明博政府の出帆以後、中央と地方の両方で徐々に後退している。未だに成熟されていないガバナンスが漂流する中、社会的葛藤は深刻となり、その中で我々の地方自治も息詰まっていくのであろう。

 

2.危機に陥ったガバナンス

 

長かった権威主義という統治時代が終わり、金大中政府の出帆とともに、このガバナンス   ガバナンスは、「統治・支配の形態全般」を意味するが、この論文では、最近の学界における動向のように「民官協治」という特定化した意味として使用した。 が国政管理の重要な要件として登場した。民主化が進むことにより伝統的な官僚制が弱化し、政府に対する不信が高まって政府革新の必要性が提議された。また、市民社会が成長することによって、市民社会団体の活動が活発され市民参加の要求も大きくなった。こうした状況は、政府中心の伝統的な統治から、政府と市民社会及び企業などがパートナーシップを形成し協力する新しい統治への変化をもたらした。

ガバナンスには、様々な概念が存在するが、これは地方ガバナンスの場合も同様である。ここでは、地方ガバナンスを「地方政府が、市民社会団体と民間企業、利益団体、専門家集団、一般の市民代表などとパートナー関係を結び、共同利益を追求する地域社会の統治形態である」 李鍾元(イ・ジョンウォン)「地方政府のガバナンス:地方ガバナンス形成論と現実の方法論」、韓国ガバナンス学会創立記念学術大会(2003)資料集。利益団体の場合、ガバナンス機構の形態により、直接的な参加には制限しないが、政策決定過程において、彼らの様々な意見を聴くことが望ましい。 と規定する。ただ、地方ガバナンスが、単純にガバナンス理論の局地的な適用という意味を超え、直接民主主義体制への転換のための実践的な練習という点により注目する。 姜仁晧(ガン・インホ)「ローカルガバナンスと地方政府の責任性」韓国ガバナンス学会2005夏季企画セミナー資料集。

韓国の地方ガバナンスが、危機に陥った原因は、以下の二つからである。一つ目は、中央集権的な政治と行政構造である。1991年に、地方自治が復活してから20年が過ぎた今も、そうした構造はそのまま継承され、中央政府が地方政府に対して支配的な地位を確保し、中央と地方に関係なく政府が市民社会に対して優越な地位を維持する根拠になっている。このために、意思決定は、合理性と効率性を求める官僚により成り立ち、基本的に市民参加は制約されざるを得ない。

地方自治が定着し市民自治が根をおろすことになるためには、地方分権が実行されるべきである。その点において、参加政府が「政府革新地方分権委員会」を設置し、地方分権を推進したことは、もっとも重要な意義を持つ。中央政府と地方政府が垂直的な統制と受容の関係から、水平的な協力と「相生」(ともに生きる)の関係へと変化を試みてきたが、こうした努力が、地方のレベルにおいては、市民と市民社会を統制と動員の対象から、参加と協力のパートナーとして見る観点の転換をもたらした。そして、このような観点は、地方ガバナンスの導入と構築に繋がった。代表的なガバナンス機構として、様々な委員会が設置された。政策決定過程においても、専門家と市民社会団体の参加を誘導し、その幅を徐々に拡大しながら、「民主性」を確保しようとした。また、政策執行の面においては、民官のパートナーシップを構築し、これを市民中心のサービスの伝達体制として改革しながら、官僚組織に比べ、民間が持っている長所を活用しようとした。市民自治力量の強化と地域共同体の形成を目標とし、1999年に運営されてから、全国的に拡大試行された住民自治センターは、下からの住民参加を基礎とした地方ガバナンスの機構であり、活動の場でもある。そして、自立的な地域発展のため、産業界、学界、研究機関及び市民社会団体が、地域革新体系を構築しようとする努力も、地方ガバナンスの一環として進行された。

しかし、地方分権において、それほど進展しなかったために、地方ガバナンスの発展は、根本的な現下に直面した。市民社会の力量が集約した場合、中央政府が予算と物理力を盾に、地方政府と地域社会を圧迫し、ガバナンスを無力にさせた。特に、李明博政府は、「国政哲学」において、「民主性」より効率性を強調し、傲慢的で独断的な政策を推進し、市民社会との関係を悪化させたことで、地方ガバナンスの基盤を弱くさせた。結局、6・2地方選挙において、両側は、無償給食、4大河川事業、世宗市修正案のような試案について、全面的に対決した。これは、中央政府はもちろん、地方政府のレベルにおいても、この10年間、少しずつ築いてきた行政組織と市民社会の相互信頼を崩し、結果的にはガバナンスの弱化や崩壊にも繋がったと言える。

ガバナンスが危機に瀕するようになったもう一つの原因は、団体長を中心とした地方政府の意思と関係がある。ガバナンスを強化するために、中央政府の意思と役割が重要であるが、たとえ、大統領と団体長の所属政党が異なり、中央政府と地方政府が政策理念と路線において差があるとしても、団体長の確固たる意思と公務員組織の支援があるとしたら、地方ガバナンスは、そこまで難しくなく構築される。しかし、現実において、市民社会の参加をおいて、葛藤する事例が発生している。

関連法令と条例に基づいて設置された各委員会の専門家と市民社会団体の参加を、政策案を通過させるための行為として認識するのであれば、むしろ、公務員集団と政策推進の意図に対して、不信だけが大きくなるのであろう。また、特定の当事者が参加し、公務員の支援の下、自身に有利な決定を下す状況になると、客観性と公正性の是非議論があり、小数意見を持つ委員が脱退することもあり得る。

ここで、仁川市民の大半が反対するゲヤン山(桂陽山)のゴルフ場の建設をめぐる論争について取り上げる。建設を推進するロッテグループと、これに反対する市民社会団体の争いが、数年に渡り継続されている状況の中で、市長が立案・決定しようとする都市計画に関する事項を、都市計画委員会が審議し、市長は、その結果を議決に準じて受容する形式であった。しかし、都市計画委員会は、大半が、仁川の各開発関連の政策に協力的な人事で構成されており、市長と関係部署の公務員が要求する政策に反対意思を表明することは容易くない状況であった。そのため、ゴルフ場の建設許可の妥当性に深刻な問題が提議され、また、票決をしながらも、その推進に協力的な議決をしてきた。すると、市民社会団体において推進した委員らが、反対と抗議という意味で、都市計画委員を辞退することもあった。その後、6・2地方選挙において、ゴルフ場の建設に反対する市長が当選することによって、建設推進にブレーキがかかり、事態は新しい局面を迎えている。これは、ガバナンス機構が、きちんと運営されなかったため、その参加者の間で、不信と葛藤が生じて、市民参加と民官協力が求められる政策と事業全般に、市民社会の冷ややかな視点が拡大された代表的な事例である。

また、住民自治センターの運営においても、ガバナンスに対する団体長と公務員の意思や、その理解の不十分からも表れている。この点は、市民社会団体の人事を住民自治委員として積極的に受け入れた所と、そうではなかった所において、徐々に差が見え始めた。市民社会団体と住民組織の中において、民主的活動と組織運営をしてきた住民自治委員は、保守的傾向を持つ委員と協力し、洞長の協力と行政支援をもたらした。その上、住民参加を拡大させながら、住民自治センターを活性化していく。しかし、市民社会団体の人事を委員会から排除したり、取り入れることに消極的であったりした住民自治センターは、特徴のないプログラムを慣性的に運営しながら、住民らを文化センターの会員程度に縛っておいて、以後、何年が経っても停滞した状態から脱することができなかった。

しかも、活発的である住民自治センターであっても、洞長に住民自治委員を委嘱する権限があるなど、行政組織の力が未だに強いために、行政組織との関係が住民自治センターの発展に決定的な影響を及ぼす。例えば、仁川の佳佐(ガザァ)2洞と延寿(ヨンス)2洞の場合、全国の住民自治センター博覧会で、優秀センターと最優秀センターとして選ばれるほど、模範的な活動をしてきたが、行政組織の非協力的・消極的な態度のせいで、苦労したという。例えば、洞長が、市民社会団体出身の住民自治委員の活動を牽制したり、新規委員を委嘱する際に、関係団体の人事や地域関係者を意図的に増やしたりもした。こうした中で、ある所では、住民自治センターの活動に積極的な洞長が赴任することで、再び活気を取り戻したが、他の所は、数年に渡って洞長らの牽制と非協力のせいで、進歩改革傾向の住民自治委員と活動家が脱退し、徐々にその力を失っていった。

こうした状況は、現在、全国的に展開されている。したがって、危機に瀕したガバナンスを再スタートさせることこそが、地方自治を生かせる道である。また、民選5期の地方自治団体、言いかえれば、行政と議政に対する批判と牽制から求めることでもあり、ひいては、責任主体としての進歩改革勢力に要求されることである。

 

3.共同地方政府とガバナンス

 

危機に陥った地方ガバナンスを復活させる任務を任された民選5期の地方政府は、過去とは異なる条件の中でスタートした。6・2地方選挙で、全国各地の進歩改革勢力は野党連帯を推進し対応した。また、単一化した候補が勝利した場合、当選者とその所属政党が連帯に参加した他の政党及び市民社会と共同地方政府を構成・運営するのに合意した。1月に、民主党の丁世均(ジョン・セギュン)代表が、地方選挙の勝利戦略の一つとして提起した共同地方政府が、今は現実課題として登場することになった。広域自治団体の中では、道知事の職務が停止された江原道(ガンウォンド)を除いて、仁川・慶南・忠南などで、共同地方政府の構成を準備しており、基礎自治団体の中では、ソウル8か所と京畿道の10か所などで推進中である。

共同地方政府の構成と運営は、韓国の地方政治史において最初であるから、その概念・性格・役割・参加の範囲とレベルをめぐって様々な意見が提議されている。日本及び西欧社会においては一般化されている政治連合及び連立政府は、我々にも慣れている概念であり、これは、共同地方政府を理解するためにも役に立つ。政治連合は、内閣制と連邦制のような権力構図と文献制度を持つ国家において、共同の政治議題及び選挙においての政治的理解のために、政党らが共助することを意味する。また、選挙連合に参加した政党の議席の数を増加させ、連合政府を形成し、共同で政府を運営することもある。

最近の日本だと、民主党を中心に社民党と国民新党の3党が連合した鳩山前内閣がそうであったように、全世界的に中央政府レベルでの政治連合はよく見られる現象である。こうした連合政府の出発は、連合に参加する政党の共同政策に対する合意であり、その上に、政党らは、相互信頼と尊重の中で、閣僚を配分し連合政府を運営する。

こうした政治連合は、中央政治のみならず、地方政治においても存在する。ドイツのブランデンブルク州は、地方レベルにおいて連政を構成し運営した。2009年、社会民主党と左派党(Die Linke)が、共同政府を構成した。法に基づいてはいないが、政治的合意として、行政のすべての分野において、共同政策を提示、州議会を構成、州政府の構成と閣僚の配分及び連政協議会の構成を明示する連政契約を締結した。連政協議会は、州知事、副知事、州党委員長、州議会の議会内代表、州党事務総長など、総8人として構成し、運営している。 李海栄(イ・ヘヨン)「外国の地方共同政府の事例と韓国においての適用可能性」2010連帯他主催・第4次2010地方選挙連合政治実現共同政策討論会(2010)資料集。

他方、韓国の場合、「強首長・弱議会」という機関対立型の権力形態で、地方分権がきちんとできていなかった。しかも、地方行政の体系が本部・室・局として編制されており、伝統的な政治連合を形成した国家や地方自治団体とは異なり、内閣を構成できなかったため、連合政府に参加する政党間の人事配分がもっとも難しい。したがって、一般的な政治連合とは異なる韓国的状況に相応しい創造的な形態と運営が必要である。こうした点から、中央政府の形態は内閣制であるが、地方政府の方は、権力の形態及び行政体系の面において、韓国と似ている日本の経験は、示唆する意味が大きい。1967年以後、東京都知事選挙において、社会党をはじめとする野党は、選挙連合で、美濃部候補を3回連続で当選させ連合政府を成功させた。中央党は地方政府の自立性を尊重し、政党は人事の配分による理解関係よりは政策連合を通じた政策の開発と実現に、また、相互協調することに重点をおいた。また、地方議会の委員らは、地方政府と責任を共有しながら、与党の役割を充実に遂行した。 キム・ヨンピル「日本の連合政治と共同地方政府の経験の含意」6・2地方選挙・民主改革大連合と共同地方政府構成の条件と展望」韓国未来発展研究院21次定例セミナー(2010)。

韓国の市民社会では、6・2地方選挙の過程において、共同地方政府と関連し、団体長中心の一人統治から離れた広範囲である住民参加とネットワーク、そして協力的な地方ガバナンスとして地方自治を核心する「地方ガバナンス型市民連合政府」という概念を作りだした。 キム・ダルス、2010連帯他主催・第4次2010地方選挙連合政治実現共同政策討論会(2010)討論文。 こうした概念は、政治連合の主体としての政党のみならず、市民社会が含まれ、地方政府の構成と運営においても、市民社会の参加と役割を強調する点において、韓国的特殊性を良く反映していると言える。この概念は、地方政府が追求する方向へ、下からの市民参加とともに、公正なるガバナンスの具現を設定しているのである。

他方、共同地方政府をめぐり市民社会内においての議論も提起されている。市民社会と政党らが、共同地方政府の構成及び運営に合意したとしても、市民社会が共同地方政府の1つの主体になれるかに関する原論的な問題が残る。野圏連帯を通じて、地方政府を変えた市民社会は、この政府の成功にも、責任があるため、共同地方政府の1つの主体として積極的に参加すべきであると考えている。反面、市民社会団体は、権力に対する批判と牽制を自身の主要任務とするほど、権力に参加することは、自己アイデンティティを傷つけ、もしも共同地方政府が上手く運営できなかった場合、その責任から、自由になれないという意見も持っている。しかし、後者の立場においても、日常的な民官協力の必要性と共同政策公約の実現のための地方政府との協力は認めている。

このように、共同地方政府の概念と性格は、政党側においては、容易く受け入れることができるが、市民社会の側においては、議論が提起される場合もある。にもかかわらず、市民社会がこれを受け入れることになったら、韓国の共同地方政府は、連合で参加したすべての政党と市民社会団体が、共同価値と政策の実現のため公式的な機構を構成・運営し、市民社会を画期的に増大させる「地方ガバナンス型地方政府」であると定義できる。

今回、地方選挙を圧勝した仁川は、共同地方政府と関連して全国的に注目を浴びている。それは、選挙過程で作られてきた連合政治の条件が、他の地域より相対的によく整えているためである。仁川では、市民社会団体と地域人事が参加して、「2010仁川地方選挙連帯を結成し、進歩改革的な野党と共同価値と政策に基づいた政策連合を基礎として、候補単一化を成す選挙連合を追求した。このために、「2010仁川地方選挙勝利のために、市民社会・野4党連席会議」 市民社会は、その代表として2010・仁川地方選挙連帯が参加し、野4党からは、民主党仁川市党、民主労働仁川市党、進歩新党仁川市党、そして国民参加党仁川市党が参加した。しかし、進歩新党仁川市党や中央党の意見が一致したことで、連席会議から撤収し、途中から創造韓国党仁川市党が参加するようになったが、候補単一化の交渉過程において無理のある主張を展開し、それが貫徹されないことで離脱した。その後、野3党だけで、最終の合意案を作りだした。 を構成し、自治行政、地域経済・勤め口、都市開発・計画・再生、教育、環境、福祉、女性、保健医療及び文化などの9分野において、3回の公開討論会を開催することで共同政策公約を作りだした。また、市長に当選すれば、共同引受委員会を運営し、就任した後は、共同地方政府を構成し市政改革委員会などを設置すると合意した。そして、広域団体長と広域議会委員会及び基礎団体長に対する単一化合意に基づいて凡ての野党圏の単一候補という共同名称を使用しながら選挙に臨んだ。その結果、最終的に、市長当選、基礎団体長において民主党6名と民主労働党2名が当選、そして広域議員としては、民主党23名(市民社会団体推薦候補1名と比例台城2名含む)、民主労働党1名、国民参加党1名の当選という成果を出した。

このように、共同地方政府の構想を含む共同政策公約は、全ての野党圏の単一市長候補の公約に反映され、市民社会と野党を固く繋げる媒体となり、驚くほどの選挙結果を出した強力な土台となった。

 

4.ガバナンスの活性化のために

 

新しく出帆する地方政府は、市民と対話ができなければ、厳重な審判が下されるという教訓を得て、野圏連帯の精神を活かせ「地方ガバナンス型地方共同政府」のアイデンティティを実現するために努力すべきである。まず、市民社会をはじめ、連合の主体は、地方権力が市・道知事(区庁長と郡首)を排出した政党の専有物ではなく、共に責任を持って運営すべき共同の権力であることを明確に認識すべきである。地方議会も、執行部に対する牽制機能とともに共同価値と政策の実現を後押しする議会権力としての位置付けが要求される。仁川において、野党の単一候補が団体長として当選した所では、広域と基礎を問わずすべて進歩改革勢力の委員が過半数を示すことで、安定した市政及び区政の運営が可能な条件を確保した。

地方ガバナンスは、現実において、具体的には組織形成、創造改編、政策革新などで表れているところ、 前掲、李鍾元。 こうした側面では、地方ガバナンスの活性化方案を検討しようとする。まず、合意された共同政策公約を実践しながら、様々な改革措置を立案し、推進すべき革新機構を構成すべきである。ここでは、地方ガバナンスを具現させる適合的な人事が参加すべきであり、また、組織体系を綿密に整えていくべきである。共同引取委員会を通じてスタートしたが、これからは、制度化された形態としての機構設立とその活動を合法的・安定的に保障すべきである。

慶南では、引受委員会が選挙期間中、進歩改革勢力の間で合意された「民主道政協議会」を作るための推進団を構成することを新任道知事に提案した。仁川においても、引取委員会を条例を制定し、「市政改革委員会」 現在、床永吉(ソン・ヨンギル)仁川広域市長が、市民との対話を強調しながら「市民疎通委員会」として条例制定を立法予告している。 を設置することを提案し、これを具体化している。こうしたガバナンス機構において、もっとも重要なことは、政策決定システムを新しく構築することである。地方自治団体の政策は、執行部は、一方的に決定した時代を経て、民官がともにするガバナンスの時代へ突入したが、ある程度の行政の主導性を認めるとしても、構成員の幅広い合意ではなく、行政組織の意図のように、政策決定が行われる場合が大半である。

こうしたネガティブ的な姿は、上記の委員会の活動にみられるように、多様な分野の参加が、ただの要式行為にすぎない場合に、より良く表れる。また、様々な意見が提議され、十分な論議が行われたとしても、担当部署の公務員が、最終の政策決定者(地方自治団体長)に論議結果を報告する過程において、自分の意見と異なる内容を故意に抜いたり歪曲したりする場合も発生する。同じ状況が繰り返されれば、行政に対する不信が生まれ、民意を反映した政策が出てこなくなる。こうした問題を認識した団体長ができる選択には二つがある。

一つは、公式的な意思決定システムを通じて、政策を決定するというより、側近を通じて情報を入手し、解決策を考えたり政策制案者や民願(国民の請願)を出した国民に直接会ったりして、独断的に関連政策を決定し公務員に執行を指示する場合である。こうした方式が、場合によっては、効率的であることもあるが、公式的なシステムを無視し公務員をこの過程で排除すれば、官僚組織の反発を買い安定的な組織運営が難しくなる。また、関連専門家や市民社会団体の参加を防ぎ、ガバナンス具現に障害を作り、行政独走に対して批判を受けるようになる。

また、もう一つの場合、公務員の政策能力を認め、意思決定に参加させながら、関連専門家と市民社会団体はもちろん、連合する政党の人事と関連常任委員会所属の市委員までを含め、共に政策を論議し点検する方式である。 委員を含む場合、議会の機能が縮小されるという恐れもあるが、政策関連者が論議する場に議員が参加し、関連議題に対する理解を深化させることで、むしろ議会においての論議をもっと円滑にできる。  この場合、政策決定の過程において、公務員による介入があるかもしれないネガティブ的な影響を遮断できるだけでなく議会の立法活動にも役立つ。

政策決定のためのガバナンス機構は、後者の方向で運営されるべきであり、単なる諮問機構に留まってはいけない。傘下に分科委員会をおいて、政策関係者がともに参加する総合的な政策単位になるべきである。このためには、条例を制定し、可能な限り、審議・議決機能を付与し、団体長は、その論議結果を受容し執行すべきである。

仁川では、引取委員会の傘下に8個の分科委員会をおいて活動を展開し、大半の分科委員会からは、活動の結果として、該当分野の課題を持続的に担当する機構の必要性が提起された。これによって、市政改革委員会とともに、その傘下の分科委員会の設置が提案された。また、こうした市政改革委員会が一時的な機構ではなく、常設的な機構になるべきで、その活動が持続的で安定的に行われるためには、傘下に一定の常勤人材を確保し、事務局や政策チームを運営することも提案した。 常勤の人材は、可能であれば、総定員制を活用し民間において専門家を採用することもできるが、これは、市政改革委員会の目的実現のためには長所であるが、設置根拠に対する論難を招くという短所もある。 これとともに、市政改革委員会は、各局・室の傘下に設置された委員会たちと議題が重複しないように、お互いに補完し両立できる方向に運営しながら、有名無実である委員会は整備し、関連委員会は統・配合するなど、局・室傘下の既存の委員会体系を改善するように提案した。特に、利害関係者の委員参加を徹底的に排除し、委員の一部を公募し、会議録を公開するなど、完全な情報公開を通じて、運営の透明を高めることが、主要な改善事項として挙げられた。

そして、前任市長が、地域の「元老」との対話が不足だったという指摘があり、「元老諮問会議」を条例として制定することも提案している。元老の中では、保守傾向の人事も多く含まれているが、彼らの意見を定期的に幅広く取りいれることも、ガバナンスの対象の拡大という面において、意味のある試みである。

人事問題においても、ガバナンスの精神を活かすべきである。団体長に付与される数多くない政務職の人選において、市民社会と連合で参加した他の政党の意見を取り入れる必要がある。今回の選挙で当選した無所属出身の慶南道知事が、民主労働党出身の政務部知事を任命することは、共同地方政府の構成において、もっとも象徴的な意味を持つ。他方、仁川と忠南において、民主党出身の市長と道知事が、同じ党出身の人事を政務部市長と政務部知事として任命したことは、多少、不十分さを感じる。開放型任用制を活用して、民官専門家の採用も拡大する必要がある。ただ、この制度の試行は、公務員らの昇進滞積を起こす原因となり、公務員社会の反発を呼び起こす可能性もある。そのため、公務員らと充分に論議し、彼らの同意を得て試行していくことが望ましい。

そして、新しい地方政府は、主に専門家で行われる政策ネットワークのレベルのガバナンスのみならず、市民の参加を画期的に拡大する基礎の上で、ガバナンスを具現すべきである。そのためには、何よりも、住民自治センターの運営を改善したり、住民参加予算制を実施したりして、多様な参加構造を整えるべきである。まず、住民自治センター運営において、進歩改革的な傾向の人事と住民が、自治委員として、多く参加できるようにする行政協調が必要であり、住民自治委員会を実施し、自治力量の強化と地域共同体形成という住民自治センターの設立目的を達成できるようにしなければならない。

全国の246個の地方自治団体の中99箇所において、条例を制定し試行中である住民参加予算制の場合、条例が制定されたとしても、形式に留まるだけで、実際には実行されない所もあり、運営改善が必要である。広域自治団体と基礎自治団体の全ての住民参加予算条例が制定されていない所は、ソウルと仁川の2箇所だけである。仁川では、全国初の市民社会団体が、予算編成に参加し意見を提示する予算編成の討論会を何年前から実施してきた。これからは、住民参加予算制を実施し、地域住民らが、直接参加する方向へ発展すべきであると意見が集まっている。特に、民主労働党出身の区庁長が就任した南東区と東区においては、区庁長の試行意思が強く制度導入を準備している。また、「参加なくては、予算はない」という原則の下に、市長の裁量で、洞ごとに1億ウォン程度を配当し、住民らが直接論議・決定した。また、地域で必要な事業に使えるようにする方案も、特に準備しなくても、来年の予算編成から可能であるという判断の下において提案された。

一方、進歩改革傾向がある新しい地方知事団体の中で、特に基礎自治団体は、全体の予算の中で使える財源が微弱である状態であり、住民の期待が高い福祉予算の拡充には困難があると予想される。これを解決しようとすれば、相対的に比重が大きい土木建設分野の予算を減らすべきである。しかし、これは、公務員組織の反発や建設会社のロビーなどにより、団体長の自ら決定することは容易ではない。住民参加予算制を実施すれば、こうした問題も解決できる。

その他、住民監事請求制の補完のために、請求の手続きの簡素化、情報接近の容易、住民請求(訴訟)引取の緩和、提訴機関の保障及び監事機構の独立なども、実質的な住民参加を高めるための方案として考えられる。また、住民投票・住民発議・住民召喚制を活性化するための手続きと要件を簡素化することも必要である。 草の根自治研究所の「イウム」(이음)は、こうした課題とともに、オンブズマン制度の活性化、住民参加基本条例、村作り支援条例制定、中期地方財政計画・女性政策基本計画など、様々な計画樹立過程においての住民参加の拡大や、新生非営利団体、市民団体・サークルが活動できる公共空間の拡大、そして、各種の委員会に女性・青年・障害者・外国人などの参加保障、青少年議会などを通じた青少年の地域社会の参加保障および青少年人権・参加条例制定などを提案している。

 

5.成功につながる改革のために 

 

今回の地方選挙は、市民に君臨しながら失政に対して反省しないまま、むしろ市民を訓戒・懲罰しようとする傲慢的な権力に対する市民の反撃であり自己主権の宣言である。こうした勝利に、野党圏の連帯が、もっとも重要な役割をしたことは明らかである。しかし、野党圏の連帯は、ただ、勝利のための必要条件であっただけで、十分条件ではなかった。厳密に評価すれば、選挙結果に表れた有権者の意図は、進歩改革勢力に対する代案的な勢力としての支持というより、ハンナラ党に対する怒りと失望の表現であると言える。進歩改革勢力に対して市民は、全的な支持を留保しており、今後、政局においての対応力と野党圏の連帯の持続性の可否、そして地方政府の運営により、李明博政府とハンナラ党に下された「審判の刃」を、進歩改革勢力にも付きつけることもあり得る。したがって、今回の地方選挙の成果を繋げていくためには、共同地方政府の成功的な運営が鍵であると言える。そのためには、いくつかの重要な事項が検定され推進されるべきである。まず、内部の自己点検システムを整えるべきである。常設的なガバナンス機構(市政改革委員会など)傘下に評価団を組織し、共同政策公約をはじめ、公約の実践程度を定期的に点検すべきである。

また、地方議会の役割ももっとも重要である。市民社会が、進歩改革傾向の委員らとネットワークを形成し、政策原案に対し意見を交換したり、委員に対する学習を支援したりするなど、対話と協力をしていくことが必要である。同時に、地方議会がこれまでの無能と腐敗を繰り返さないように、市民社会団体が連帯し、議定監事活動を強化することも欠かせないことである。

しかし、共同地方政府の存立根拠である改革事業の推進には、少なくない反発が予想される。特に、公務員社会の抵抗は、事業推進に決定的である困難をもたらすため、政策決定において、一方では公務員の専横を防ぎ、他方では彼らが疎外されないように配慮しなければならない。また、生活現場をはじめ、下からの改革においては、長い期間、根強く形成された地域社会の既得権勢力の抵抗も手強い相手である。進歩改革勢力が、彼らを無条件に敵対視するよりも、住民が参加する活動と公論の場において協力し競争しながら、住民から評価されるようにすることが重要である。改革進歩勢力が地域社会に根を下ろすためには、生活現場に密着した市民社会団体の活動と下からのネットワークの形成が要求され、こうした活動が地域住民と良く結合できるように、行政の積極的な支援と協力が必要である。

最後に、地方自治団体長のリーダシップが必要である。改革のための要件が、多少不十分であるとしても、団体長の確固たる意思と推進力があれば成功できるが、意思がなければいくら良い環境であるとしても、失敗する可能性が高い。そして、そうした意思と推進力を維持・強化することは、共同地方政府誕生の主体が、市民参加に基づいて批判と協力の中で共に責任を持つ姿勢を通じて可能となる。結局、問題の核心は、公正なるガバナンスの具現にあると言える。

 
 
〔翻訳〕=朴貞蘭(パク・ジョンラン)

 

季刊 創作と批評 2010年 秋号(通卷149号)
2010年 9月1日 発行

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