창작과 비평

〔対話〕 2012年をいかに準備するべきか

 

沈相奵 - 李南周 - 李仁栄 - 白承憲 (左側から)

 

沈相奵(シム・サンジョン)「進歩新党」前共同代表。第17代国会議員歴任。2010年京畿道知事選出馬。
李南周(イ・ナムジュ)聖公会大教授(政治学)。細橋(セギョ)研究所所長。季刊『創作と批評』編集委員。
李仁栄(イ・イニョン)民主党最高委員。第17代国会議員、2010年ソウル市党地方選挙企画団長歴任。
白承憲(ペク・スンホン)「希望と代案」共同運営委員長、弁護士。「民主社会のための弁護士の集い」会長、総選挙市民連帯スポークスマン歴任。

 

李南周(司会) 6・2地方選挙をおえ、各政党の体制整備が整い、これから本格的に2012年に向けてスタートするものと思われます。進歩改革勢力は李明博(イ・ミョンバク)政権以後、金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の10年とは全く異なった政治環境に直面し、これにどう対応すべきかをめぐって少なからぬ混乱がありました。ですが、地方選挙を経て、その対応において連合政治に対する議論が広がり、一定の成果を上げました。今でも連合政治は、2012年という権力交代期をどう準備すべきかについての議論において、重要な話題となっています。今回の座談会は、連合政治を主題として、現政局の性格、2012年の進歩改革勢力の課題、連合政治の実現、連合政治と進歩政治の関係などについて、率直な議論を交わしてみたいと思います。
参加されたお三方は前回の地方選挙をそれぞれ異なる立場で戦われました。沈相奵前代表は前回の第17代国会議員を経て「進歩新党」代表を歴任され、京畿道(キョンギド)知事候補として出馬されました。その後、長い模索の時期に入られたようですが、現時点でのお考えもお聞きしたいと思います。白承憲弁護士は「希望と代案」で活動しながら連合政治の交渉を進められ、李仁栄前議員は先日、民主党の最高委員になられました。挨拶の言葉を兼ねて、前回の地方選挙を体験して、どのような考えを持つに至られたかお聞きできればと思います。李仁栄さんからお聞きしましょう。

 

 

6月地方選挙が韓国政治にとって意味するもの

 

李仁栄 6・2地方選挙で勝利した要因を私は3つに整理しました。まず進歩改革勢力の要求が大衆の要求と合致しました。親環境・無償給食や雇用・教育・福祉を中心に、人間中心の社会をかかげたのが功を奏したと思います。もう1つは、民主党と進歩政党、市民団体の連帯が力を得て、大衆に対して勝利に対する確信を与えたのが政治戦術としても正しかったと思います。最後に各候補がよかったと思います。地方議員の半分近くが40代ですが、世代交代の側面としても分析できますが、教育や福祉、雇用、人間中心の社会に対する彼らの考えが、前の世代と大きく異なります。民主党だけでなく、進歩政党はさらに顕著でしたが、この3つが大衆の利害と要求に符合したのでしょう。私は、これをさらに強化すれば、2012年にも勝利できると確信しました。ですが、民主党では、7・28補欠選挙でその反対を行くような傾向がありました。とにかく、地方選挙の結果が示した可能性をさらに発展させるべきだという共感帯ができたようです。

ですが、民主党の中でも、私たちが成功したというよりは、現政権があまりにも拙劣だったと考える人たちが多いと思います。ですが、私は、民主党が進歩改革勢力の要求に方向舵を合わせ、単独でなく連帯や団結に進もうとする試みがなかったならば、民主労働党も区庁長や広域議員選挙で候補単一化に同意しなかったでしょうし、進歩改革的な要求を掲げることがなかったとすれば、進歩政党や市民団体の候補に票がさらに流れただろうと思います。ですから、単に現政権に対する拒否という側面だけでなく、新たな社会に対する大衆の要求という面も考えねばならず、民主党が自らそのような方向で変わっていったという側面も積極的に認めるべきだと思います。李明博政権に対する審判の情緒は大きいですが、他方では福祉関連のイシューが登場して社会的に公認されたのであり、大きくは2012年以降を展望する政治的転換と再編が始まる過程でしょう。ですから、これまでは連帯や候補単一化のような連合政治のレベルにとどまっていたとすれば、これからはそれを越えて、巨大な再編にまで推し進められるかが、きわめて重要なイッシューとして提示されるといえるでしょう。

李南周 民主党が反射利益を享受するだけでなく、より大きな役割を果たすこともあるということですが、ご本人の最高委員就任がそのような可能性をさらに高めるとお考えですか?

李仁栄
 党員や代議員に会ってみると、実際に変化に対する要求がかなり大きかったんです。「ビッグ3」という秩序、彼らの影響力の下にある地域委員長、そこに一定して関連する党員や代議員のために、すぐにはわかりませんが、選挙を何度もやって、変化に対する要求が大きいということを体感しました。民主党が確実に進歩の道へと進まなければならない、進歩政党や市民団体と疎通し、その過程で信頼が回復すれば、団結と統合を経て2012年へと勝利の道を開くべきだということに、一定の同意があると思われます。分裂した状態で勝利することはできず、単独でやってはいけないということはわかったようです。そして特定地域に基盤をおいた政治家より、全国的な可能性を持った政治家を好む傾向も生じました。戦略的投票が必要だということでしょう。もちろん若い人が出てくればいいのですが、適当な人がいないから中間くらいの私を選択したということではないでしょうか(笑)。このように勝利するべきだという考えが投票心理にまでつながるのだとすれば、なぜ勝利したいと考えるのだろうか考えてみました。一言でいって疲れているんです。現政権と一緒にいることに疲れ、自分の人生に疲れたので、変えなければならないということです。そのような政権交代への想いがとりあえずは600万票を獲得したのであり、大統領選候補者のイメージを戦略的に強調した孫鶴圭(ソン・ハクキュ)代表に集まったのでしょう。やや進歩的で若い世代は、それに対する補完として私を選択したのではないかと思います。

李南周
 沈相奵先生はこれまで試練も多く、その過程で新たな苦悩もかなりされたと思いますが、いかがでしょうか?

沈相奵 私が所属した進歩新党は、前回の地方選挙が、党の現実から見ても進歩政治の未来から見ても、きわめて重要な契機となりました。党の潜在力として見る時、もう少し善戦できたと思いますが、選挙戦略の失敗で残念な結果に終わりました。私もとても残念で国民に申し訳ないと思っています。未来の展望を先取りできない進歩は、単純な抵抗勢力として消滅したとう歴史の教訓を、痛切に振り返りながら反省しています。

政治において時代精神というものは選挙の民心として出てきます。前回の地方選挙で私が最も注目するのは民心の進歩化です。多くの方々が前回の地方選挙を李明博政権に対する審判、また野党連帯の勝利であるといいますが、私はそれ以上の時代精神の変化として読むべきだと思います。前回の選挙で国民は数十年の間、韓国社会を主導してきた成長開発言説ではなく、福祉・進歩を要求しました。特に5人の進歩派の教育長が誕生しましたが、これは福祉と進歩で大韓民国の新たな土台を築けという要求だと思います。さきほど李仁栄さんが政権交代のお話しをされましたが、私はすでに、国民が単純な政権交代を越え、時代の交代の意志を強力に要求しているのだと思います。

李南周 お二人のお話しには共通の部分もありますが、統合を強調することと、政権を担える進歩政党の必要性、あるいは時代精神の転換を強調するところで違いが見られます。

李仁栄
 私も民心が進歩したということ、大衆の要求が進歩したという点に同意します。ですから、私はことあるたびに、民主党は進歩側に進むべきだといっているんです。単に私の考えが正しいから党が急進的に変わるべきだと主張しているわけではありません。

沈相奵 地方選挙を経て、政治連合や進歩改革勢力の再編課題が大きく浮上していますが、このようなことが党略的な政治工学を越えて重要な意味を持たざるを得ないのは、民心によって強力に後押しされているからでしょう。ですが、国民の意思をもう少し考えてみれば、新たな時代精神を受けとめることのできる、責任ある進歩政治を期待しているのだと思います。国民の生活に対してきちんと責任を負える、代案政治勢力を再編していく過程で、野党の間で積極的に協力して競争しろというのが、現在の連合政治の意味ではないかと思います。

李南周 白承憲さん、いわゆる上層連合を進めてきてお感じのことがおありですか?(笑)

白承憲 私が今日ここに呼ばれたのは、6・2地方選挙で市民社会のさまざまな努力の一助となった面があるからかもしれませんが、それよりも有権者の1人として語るべきことがあると思って招待に応じました。

前回の地方選挙が市民社会の立場でも初めての実験だったのは、反対・批判中心の有権者運動から脱皮し、政界の流れに関与したということですが、これは政界の要求によるものではなく、大衆の要求によって始まったものです。その内容は、短期的には現政権の一方的な独走、または民主主義の後退に対する反対として集約される「反・李明博」を、選挙においてどのように表出するかであり、中・長期的には韓国社会において、いい政治をいかにして作っていくかであったと思います。批判や反対ばかりして改善されるのではなく、大衆の要求を実現する通路を作り出すという面で、いい政治の可能性が模索されるべきだというものです。ですから、前回の地方選挙において、野党と市民社会の対話が、政治工学的であるとか、単に選挙勝利だけを目標にした、内容のない「反・李明博」に終わったという一部の批判には同意できません。残念ながら包括的な連合には至りませんでしたが、相当部分、有権者の意思が反映されましたし、包括的な交渉には失敗しましたが、結果において大衆の欲求が反映されたという点では成功だったと思います。

ですが、6月選挙の評価を越え、現状において、いい政治の要求は、2012年とその後を見通した企画として出てくるべきでしょう。ですが、それが安定的に進められる基盤が準備できたかについては疑問です。単に連合可能性が高くなるにとどまらず、大衆の要求を受け入れる政治言説やそれを実行する政界のレベルがすべてにおいて上がるべきですが、進歩改革勢力はまだそうした点できわめて力量不足です。端的にいって、6・2地方選挙以降、7・28補欠選の失敗は、規模は小さいものの影響は残ると思います。もう1つ申し上げたいのは、連合政治の実現という要求と進歩政治の強化という要求が、矛盾してはいけないと思います。いい政治を実現しようとするならば、社会大衆の要求と実際の政治的な力の編成が一致しなくてはなりません。連合政治を通じて進歩性が強化され、進歩性を標榜する勢力が最低限、自らの支持度に見合った代表性を確保することが、連合政治の要件であり目標です。

 

 

目標と価値の共感が連帯の前提

 

李南周 政治に不信感を表現することを越えて、いい政治を作らなければならない、その過程で進歩政治も強化され、それが現実化するように、連合政治も積極的にならなければならないという点に、おおむね意見が集まっているようです。今日、座談会に参加したお三方は、周辺からそのような役割をするだろうという期待をかなり集めていらっしゃいます。最近この種のテーマで何度か議論があったかと思います。連合政治に対する意見が7、8ほど提出されている状態ですが、議論の過程ではそのようなことが可能であるとしても、このようにそれぞれ方法論だけを主張するならば、限りなく意見が分岐する可能性もあり、その計算がきわめて複雑にならざるをえないでしょう。ですからもう少し原則的な問題を語ってはどうかと思います。なぜ連合政治が必要なのか、連合政治の目標とは何かについて、共感を広げてこそ、前向きの議論ができるのではないかと思います。『創作と批評』では、昨年からこのことについてかなり取り上げてきました。連合政治というものは、韓国社会において戦略的な課題にならざるをえないと思います。特に南北分断体制が長く続き、保守の理念が過剰に代表される状況が構造化され、そのことが克服されない限り、いい政治や政策レベルの議論が困難だったのでしょう。李明博政権の登場とその後が、そのような構造的問題をよく示していると考えるのですが、連合政治の目標という問題について、白さん、いかがでしょうか。


白承憲
 前回の地方選挙で、市民社会勢力が政治連合の原則で3つのことを提示しました。「包括的な連合」「価値と政策にもとづく連合」「有権者が参加する連合」です。包括的連合は、韓国社会の政治構図が民主主義の理想とかなりかけ離れており、1987年に形式的な民主化を成し遂げたとはいうものの、その後の逆行を阻むことができなかったという反省から出発します。現在の政治的な代表構造は、守旧と保守の一方通行になってしまった反面、進歩改革勢力は分裂やこれまでの10年間の疲労感のために萎縮しているという点です。これを克服するためには、進歩と改革をかかげる政治勢力が、包括的連合を通じて、権力獲得という政党としての目標だけでなく、進歩的な価値や政策を安定的に実現していく土台を準備するべきです。第2に、価値と政策にもとづく連合が成立して、はじめて連合を通じて私たちが何を実現するべきかを国民に提示できるということです。連合の技術的な性格、すなわち選挙工学的な側面は否めませんが、そのことが全面に出てきてしまえば、決して支持を集めることはできないでしょう。
最後に、政治嫌いが蔓延した現実を克服するためには、有権者自らが問題を解決するという、つまり政治における自己決定力に対する確信が、選挙や日常的な政治活動で確認されなければなりません。最近、投票率が向上しているといいますが、これまで市民社会や選管委で行った投票参加運動は一種の当為論でした。あなたの権利だから行使しなければならないとか、腐敗し無能な政治家をやめさせようというレベルでした。今回は一歩進んで、あなたの運命を決めるためには、あなたの信じる価値が現実に反映されるためには、選挙に参加しなければならないという意識が幅広く形成されたと思います。このような点が、連合を成就させる過程や地方政治を運営する過程に見られて、はじめて連合政治の原則と内容が確保できると思います。

李南周 私は「価値連合」という言葉に少し違和感があります。なぜなら価値まで全く同じならば、連合ではなく最初から「一緒に」やればいいということじゃないですか(笑)。また特定の価値を強要するような感じもあります。もちろん守旧勢力が過剰に代表される構図がかなり続いたので、それに対する反対を越え、ポジティブな内容で共同の社会ビジョンや政策を提示するレベルならば価値連合に同意できますが、これを「価値連合」と言わなければならないのか、よくわかりません。

白承憲 価値の違いは大きくないのに、どうしてこのようにさまざまな形に分かれているのかという方たちもいますが、逆に価値が異なるから政党も別々に作ったのに、どうして連合しなければならないのかという指摘もあります。絶対的に融合できないほどの違いならば連合の対象にならないでしょうし、別途、区別されない程度の違いならば、あえて別にする理由はないでしょう。ですが、今日、私たちの政治において、野党が分立しているとすれば、賛否を越えて、それ相応の歴史的・現実的な理由が存在するのであり、それを無視することはできないと思います。

今、連合政治の意義は、互いに大義に対しては幅広く同意するけれども、短期間に解決できない異なる意見がある時、これをどのように克服するかと関連すると思います。市民社会がその違いを認めさせながらも共通点を引き出す作業をしています。6・2地方選挙でも進歩政党が主軸になって政策連合が成立しましたが、たとえば韓米FTA(自由貿易協定)の場合がそうです。このような政策面における接近がなければ、連合は選挙工学に終わるだけだという指摘が、交渉主導者の間で相当な共感を形成しました。
包括的な連合ができなかったので発表されませんでしたが、政策次元ではほとんど合意されたものと記憶しています。政策連合はたやすいということではなく、このように政策をめぐって議論する時、互いをはるかによく理解し、違いも克服可能になるだろうと感じました。私個人では、今回の政策連合の議論が、進歩政党の政治綱領政策が、モットーのレベルで実際的な政策として作られる最初のケースになりうるという希望も抱きました。そのような意味で政策・価値連合を過度に粉飾的なものとして見る見解についても反対します。

李南周 この点については、沈さんにもいろいろとうかがいましょう。

 

 

政治連合を見通した進歩政党の苦悩

 

沈相奵 政治連合は、政党が政治的目的を達成するための日常的な方便でもありますが、私たちの政治の現実において政治連合を議論する時に、留意するべきいくつかの特殊性があります。まず今、私たちは時代の交代期を迎えていると思います。半世紀以上、韓国社会を主導してきた競争と効率、成長言説、それを後押ししてきた制度やシステムでは、これ以上持続不可能な段階にきていると思います。多くの国民が不幸であると感じていて、若者たちは成功ではなく、ただ敗北者にならないためにもがいています。希望をひらく新たな価値やビジョン、政治の革新が必要です。この点に対する認識がとても重要だと考えます。そのように見ると、今、多様な政党の分化は、分裂というよりは新たな時代精神に照応する過渡的な状況であるといえるでしょう。連合政治の必要性を「反・李明博」連帯に収斂させてしまうことがなぜいけないのかが、共有されるだろうと思います。

その次に、今、政治連合の空間は、ここに李仁栄さんもおられますが、第一野党の民主党の主導力低下が重要な背景になっているということでしょう。民主党の覇権主義が警戒され批判されなければなりません。連合政治において、野党間に、協力の側面だけでなく未来に向けた競争の可能性も開いていて、はじめて成功できるということを意味します。もちろんこの問題は、連合政治を阻む権力構造の問題とも直結しています。内閣制や決選投票制を実施する国々は、選挙の結果をもって連合政治をおこなう反面、私たちは勝者が独占する構造であるために、事前の連合が強制される傾向があります。したがって権力の分掌と連合政治に効果的な制度改善のために、共同の努力を傾けるべきだと思います。

進歩新党の場合、選挙戦略の核心的な問題は、政治連合に守勢的で防御的に対応したことだと思います。参与政権(盧武鉉政権)の時期には、政権与党と野党の関係だったために、政権勢力に対する批判を通じて自らの存在感を強調しましたが、同じ野党になってしまった条件においては、協力的な競争関係における戦略変化が必要です。もう1つは、連合政治が巨大政党に有利であるとばかり考え、少数党は間違えると食われるのではないかという憂慮の中で、民心が進歩に向かっているということ、また民主党の弱体化に始まった連合政治の空間を積極的に解釈できなかったということです。情勢の変化に鈍感で過去の認識に安住したという点は、深く省察しなければなりません。

ですが、ともに悩んでみたいということを2つ申し上げたいと思います。1つは、連合政治の必要性が新たな代案勢力の形成という国民的要求によって後押しされていますが、未来をひらく政党間の健康な競争すら抑圧したまま、李明博政権を審判するという当為を強要することに流れてしまってはいけないのではないかという点です。第2に、勝者独占構造のために事前の政治連合が強調されますが、野党内の政治連合においてもやはり勝者独占が貫徹されるならば、成功は困難であろうと思います。その点で政党間の権力分掌に対する合理的なルールが作られるべきだと思います。

価値連合と関連して、私たちが権力をともに作る時、その権力の行使の方向に対する大きな枠組における合意は前提とされるべきでしょうが、私は、まさにこれが「価値連合」であると考えます。政治連合には「選挙連合」「政策連合」「勢力連合」がありますが、価値連合はより大きな勢力連合に向かう実践であり、必要だと思います。ですが、私はこれまでの価値連合や政策連合がかなり惰性化し、国民の立場でこれを実感できなかったという問題意識を持っています。さきほど韓米FTAのお話しも出てきましたが、大きな懸案や争点について国民が体験できる具体的な共同実践が裏付けとなることが重要だと思います。

李南周 政治連合はおそらく現実的なメカニズムですが、価値連合といいながら抽象的で高尚な名分になってしまうと、実際に検討するべき問題は抜きで進められる側面があるのではないでしょうか?

白承憲 政治連合というのは一言でいって総合的かつ重層的な過程です。共同の政策を進める側面、具体的に候補者を調整する側面、選挙運動の過程の協力をどうするかについての側面、選挙以降、共助を模索する側面など、多様な側面が同時に議論されるんです。連合が包括的であるほど、このような側面が1か所で同時に解決される過程になるでしょう。そのような意味で沈さんのおっしゃった連合政治自体の価値、それを何をもって構成するのかという問題も当然検討しなければなりません。ですが、政策を語る時、候補者の調整という現実を無視したり、候補者の調整を協議する時、政策の議論をするのは、互いに位相が異なります。名分と現実を同時に進めること、その部分が連合の価値であると思うんです。もう1つ付け加えるなら、力を合わせる部分と各政党独自の発展戦略が矛盾してはいけません。

李南周 連合政治が創造的な発展過程であるべきだというお話しはとても重要な指摘です。私の専攻は中国政治で、中国も無数の分裂と統合の歴史がありますが、政権は普通、統一の歴史を強調します。ですが、分裂期は政争と戦争で困難な時期でもありますが、他方で新たな価値や革新的思想が出てきて、それが次の統一王朝の重要な土台になる場合が多いと思います。連合政治にも政派的な離合集散という否定的な意味がありますが、同時にそれを発展的に進めていく過程になるべきです。ですが、問題は、連合に参加するべき一部の主導者が排除され、抑圧すらされるということでしょう。特に今の韓国政治が、社会的に存在するさまざまな価値を代表できずにいる現実において、政治が連合を実現しながらも、そのように多様なスペクトラムを代表する共存の秩序も作るべきであるという、2つの課題の間にジレンマがあるようです。李仁栄さんは統合を強力に主張しておられますが、お話しをお聞きしましょう。

 

 

野党内の正当な競争ための民主党の役割

 

李仁栄 私は、価値論争において大きな段階は終わったと思います。民主党の場合、福祉党の方向に行こうという話は以前ならば通じませんでしたが、現在は通じています。大枠において価値の方向は異ならないようです。相対的な比重が異なり、重要な争点の違いが残っていますが、この問題はそれほど決定的であるとは思いません。ならば残るものは、価値を共有しているのに政治的に分裂している勢力と、どのように同盟を形成するかという問題です。私はこの点で民主党は譲歩できると思います。前回は取り下げなかった部分が数多くあります。より多くのものを取ろうとしたのでしょう。ですが、共同の勝利の方に行ったところ、むしろ民主党の立場でもさらに多く、より大きな勝利を収めました。一人だけ勝とうとすれば疲れますが、ともに勝利しようとするならば、結果的にさらに多く、より大きな勝利を収めます。

李南周 そのことで民主党だけに利益になるという不満が出てくることはないでしょうか?(笑)

李仁栄 ですが、周囲を見ると、ともに参加した民主労働党も、たとえば仁川(インチョン)などでかなり勝利を収めたのです。共同の勝利であると同時に、各自がより大きく勝利するという結果になりました。それで私は民主党の中から出さないとする人々に、出せばさらに多くの勝利を収めるだろうと言いました。連合の公認をしようとするなら、おおよそ30%は出すべきだと思います。前回の地方選挙当時、4+4交渉ではソウルの25の区庁長のうち6つを譲歩しろということでした。実際にほとんどそれに合意していました。連合公認をするということは、それだけはやるつもりがあるということです。私はもう一歩出て、そのような考えがあるならば統合してもいいのではないかと言いました。30%近く出すといえば、主に首都圏と湖南(全羅道)地域でしょう。他のところで出してみても別に信じないですからね。ですから、そのくらいならば統合もできるということです。1991年に金大中と李基澤(イ・ギテク)、つまり新民党―民主党の統合は50対50でやりました。そして前回の地方選挙当時、ソウル地域の交渉をする時は、私の地方区で内部的な犠牲を甘受しながら交渉を妥結させて行きました。もちろんそのような形が必ずいい結果を出すわけではありませんが、そのようにして始める意向があるということです。

李南周 ですが、今回は区庁長もいて市会議員もいれば、そのような譲歩が可能だと思いましたが、はたして次の総選挙でも可能か、そのことが、多くの方たちが民主党に対して持つ最も大きな疑問ではないでしょうか?

李仁栄
 私も、だから連合公認の方が難しく、そこから出す持分くらいなら、党を統合する方がむしろ簡単だと思うんです。
沈相奵 李仁栄さんは、価値の問題はみな解決したから、ポストの問題さえ解決すればいいと言いました。そうですね。李仁栄さんのアイデンティティは認めますが、国民の目には、民主党と進歩政党がすぐに統合してもかまわないほど、民主党の方に変化があるとは映らないと思います。進歩政党の人々は原理主義者ではありませんが、今後、連合して得た権力がどのような方向で行使されるのかをとても重要と考えています。改革と進歩の距離を広げた政策に対する省察と共同の代案準備のために、国民が共感し信頼するだけの契機が必要です。

ポストの配分についても、合理的なルールが研究される必要があります。連合政治というのは徹底的に党益を媒介として形成されるものです。互いに利益が正当に調整されるべきですが、正当な調整の原則とはどのようなものかについて合意が必要だと思います。たとえば選挙時の単一化などを議論する時によく出てくるのが「単純支持率が優先なので、大きな党を中心に単一化するべきだ」という論理です。これは事実さまざまな面で制限の多い弱小政党に「一方的な譲歩と屈服」を強要する一種の覇権的な論理でしょう。たとえ支持率が優先であるとしても、単一化に失敗する場合には勝利できないのですから、戦略的な党益を考えて単一化するんです。小さな政党の存在価値と、戦略的利益に対する積極的評価や位置づけが前提とされて、はじめて政治連合も可能であると思います。

まず、連立政権の構成が可能な権力構造や、比例代表制の拡大、決選投票制など、選挙制度の改善に実践するという大前提がなければなりません。当面の協議の過程では共存の価値を基準としたルールをはっきりさせるべきでしょう。民主党の場合には力があるので、連合ではない他の方法を探せれば、それはやらないじゃないですか。民主党が自力で勝てるならば単一化には関心を示さないでしょう。私が落選した時のようにです(笑)。ですが、どうして他の進歩政党は、それに応じなければ、その責任を負わなければならないのか、そのような点で選挙連合のルールについて合理的な認識と合意が必要でしょう。

 

 

巨大な転換期をいかに迎えるべきか

 

李仁栄 連合公認の話が出ると、持分の問題を話さざるを得ませんが、私はそれ以外のことでいろいろと考えます。1人ではうまくいかないから連合しようということなのでしょうが、今、私たちは2012年を目の前にして、巨大な転換期に入っていると思います。権力再編とともに土台の再編もあり得ると思います。

李南周 土台というのは、政治地形の再編のことですか?

李仁栄
 ええ、それとともに全般的な政治地形や有権者、あるいは社会経済的な状況まで見るならば、巨大な勢力再編も起こり得ると思います。そうなると、これまで民主党―進歩政党―市民団体、または、進歩―中道―改革のような構図が、大きくひとかたまりで共通の要求や指向、時代精神でくくられて再編される可能性もあります。例をあげるならば、小さな進歩と大きな進歩が1つになって汎進歩になったり、これまで民主や中道、あるいは改革のように、曖昧だった勢力も汎進歩になる可能性があります。このように、汎進歩という領域で行動をともにする可能性がとても高いと思います。つまり、巨大な再編の問題として統合を語るのです。それは新たな秩序や価値が創造されることでもあります。

事実、ハンナラ党はきわめて広範な保守大連合再編の一次的な結果です。1997年に政権を逃し、2002年にはマスコミを味方にした程度でしたが、2007年までの過程で知識人グループや宗教勢力まで結合して大幅に拡大再編されました。もちろん自由先進党のような分派も残っていて、質的な面でどうしようもない保守が入り乱れている状態です。それに比べて私たちはずっと分裂してきたのではないでしょうか。もし巨大な転換の中で、私たちが「汎進歩」という、あるいは新たな価値や時代精神で再編されうるならば、今回がその契機でもあるということです。私はこれを「汎進歩における再構成」と言っていますが、進歩と保守の大きなかたまりで分立する段階になればいいと思います。その過程で誰が主導するのかという問題が出てくるでしょうが、誰々だけが本物で、誰々だけがそれに適任だという議論は望ましくありません。静態的で過去回顧的な分裂を容認することから脱却して、動態的で未来指向的な秩序の創造に向かうべきです。

私は最近、2012年が今後、少なくとも30年くらいの未来の韓国社会を決定する分岐点であるから、勝利のために全力を尽くすべきであり、分裂を放置しては勝算がないので団結して統合しようと言っていますが、事実、私の心の奥底では、巨大な時代の変化に見合った私たちの再編戦略が欲望のようにうごめいています。そのように見るならば、持分や譲歩の問題はちょっと違うのではないかと思われます。そのひとかたまりの中に入ってみれば、民主党の中でも旧来の政治を担保してきた人物よりは、新鮮な人物を支持して自らの候補で立てる指向がよりいっそう顕著になってきているということです。総量で見るならば、民主党、進歩政党、市民団体がそれぞれ入ってきて候補競争をしているように見えても、1つになったら進歩的な価値をきちんと守ってきた人を代表として選ぶ可能性も結構あります。これは持分の問題と全く異なるものであり、合理的な手続きや過程を通じて解決することができます。
李南周 2012年を大きな枠組における再編期にしようというご意志がうかがえるお話しです。

沈相奵 私もやはり、2012年を前後する時期が、大きな政治変動性を持つ時期になるだろうと思います。「進歩・福祉を中心とした大韓民国の再編」に向かう政治的なターニングポイントになるだろうと展望しています。そのような点で、李仁栄さんが民主党内で巨大な転換のために先導的な役割をすることを期待します。また、既存の価値とシステムではこれ以上持続不可能な段階に来ているという国民の自覚や変化の欲求が、大きく後押ししていると思います。国民の望むことなので、どのような形にでも再編されるでしょうし、私たちは国民の希望を実現する方向で努力するべきでしょう。進歩―改革―保守の鼎立か、民主党との統合のためのビッグテント論〔2010年11月頃から「参与連帯」(参与民主社会と人権のための市民連帯、1994年9月創立)が中心となって提起している進歩派の連合政党論。2012年の総選挙や大統領選挙を見据えたもので、改革的自由主義勢力(最大野党の民主党が中心)には社会民主主義的価値と政策の受け入れを、進歩勢力(民主労働党など他の進歩派諸政党)には自由主義に対する理念・情緒的拒否感を捨て、民主主義の領域で政治的な価値同盟を作り出すことを、それぞれ要求し、連合政党を組むことを主張する。――翻訳者注〕か、民主労働党や進歩新党を中心とした進歩政党の小統合かという問題は、実は経路に関することでしょう。私も進歩改革勢力が大きく1つの枠組でまとまることができるならば一番いいと思います。ですが、その経路の現実性の可否は民主党にかかっています。なぜなら、国民が要求する再編の方向は明らかに進歩・福祉ですから、民主党内で進歩を主導できるかが重要ではないでしょうか? これまでの経験から見て、民主党ではこれまで、市民社会からもかなり輸血されましたが、みな溶解してしまい、現在の李仁栄さんを中心に革新の流れが形成されてはいますが、主流になることはなかったんです。そのような点でビッグテント論は現在としては懐疑的です。李仁栄さんが党代表になれば現実性も高まるでしょう(笑)。

そのために私は、今は各自の位置で国民が要求する方向で互いに努力すればいいと思います。国民は、民主党にはもう少し果敢な革新を注文しており、進歩政党には、方向性はいいけれど実現する力がないのではないか、統合しろといいます。ですから、李仁栄さんは民主党を変えて、本人の考えが主流になるように総力を傾け、私は進歩政党の統合再編と問題解決能力を育てるために努力します。そして互いの距離は、政策連合、選挙連合の形で縮めましょう。そのようにやっていけば、遠くに海が見えるのではないでしょうか?

白承憲 韓国民がながらく進歩改革勢力に要求したのは、革新と統合だと思います。ともに見逃してはならないでしょう。統合に対する要求が各政党の革新努力を妨害するのではなく、政党内部の、そして政治勢力全般の革新の可能性を広げる過程へとつながるべきです。連合の形についての話ですが、連合を、統合の反対であるとか他の概念であるというよりは、もう少し広い概念として理解するべきだと思います。6・2地方選挙で私が属した「希望と代案」は、連合の必要性を語りました。連合とは、統合や終盤の候補単一化とは異なるもので、各政党が力を合わせていく過程を示すことによって、国民に信頼を得て、窮極的に目標を達成する道だということです。ですが、2012年にも同じことを繰り返してはなりません。一層多彩な形が模索されなければなりません。そのような意味で、今、「ビッグテント論」や「100万民乱」のような多様な構想が議論されるのは重要です。ですが、ある1つの経路だけが正しいとか、そのような道しかない、あるいは1つのことを試みて、それがだめならばやめるというのでなく、可能性をすべて開いて選択するということでなければなりません。さほど遠くない2012年までに、ルールや形について充分な議論が必要です。

李仁栄さんの話に付け加えたいのですが、統合が連合政治の過程の消耗性を未然に防止するための有力な代案の1つであるという点には同意できますが、共同の政策準備や候補確定のための苦労を単に省略できるから、統合した方が、政党構造をそのままにして連合するよりましだという主張には同意できません。見解が異なる政治勢力が1つの党に集まって議論するのは、各政党の固有性を前提にして議論するよりはるかに困難で複雑になります。そのような困難な過程を互いに耐えられると検証されて、はじめて統合の議論が可能だと思います。

ですが、前回の地方選挙で大きな困難を感じた点はまさにこの点です。民主党は互恵的な譲歩を語りますが、総論ではそうだったとしても、各論ではそれぞれ譲歩できないマジノ線がとても多いのです。選挙候補を2倍にしてもだめなんです。もう1つは、協議の過程で党の外部から加えられる圧力があります。市民社会がそのような役割を果たしました。おまえたちが考えたのが10の譲歩ならば、5をさらに譲歩せよというものですが、各政党がそのような圧力を党の内部の党利党略や利己性を緩和する方法で活用したのでなく、むしろ反対側に流れたために、最終交渉でかなり接近していながら、結局、妥結することができなかったのです。そのような意味で、6・2地方選挙以降、2012年の総選挙および大統領選挙まで、連合の議論は今よりはるかにいろいろとなされるべきだと思います。

 

 

2012年の政治的議題と進歩の再構成

 


李南周 連合と政治革新、または連合と進歩的価値の実現は、同時に実現されるべき課題です。連合を阻む制度的要因として選挙制度が指摘され、韓国社会に存在する多様な価値の代表性が発現できない理由として、民主党の独占が指摘されています。民主党が連合や統合を語る時、この覇権主義をどれほど克服できるかが重要だと思います。また連合の課題が浮上したのは、何か一緒に集まってやれという要求が明らかに存在するためですが、進歩政党の場合、これについてどのような戦略的な決定があるのか、疑問を感じます。

李仁栄 かなり現実的に話してみます。仕切りをとってみな合わせてしまえば、今はおそらく進歩改革勢力が多数になるでしょう。今は仕切りがあちこちあるので、私も「進歩」と思われるよりは、単に「民主党の人」でしょう。仕切りをとって1つにすれば安心できる構造を作り出せる可能性がかなり高いと思います。今後、民主党の運命も、単に民主化や政権交代、政治改革のようなものだけで保障されることはないでしょう。私が民主党を愛する気持ちから考えれば(笑)、それではこれ以上訴える力がありません。民主党の運命は進歩に進まざるをえず、それを拒否すればそのまま枯渇してしまいます。こう考えるならば、党内部でもかなり積極的に考えると思います。もちろん外部では、民主党がこれまでそうでなかったという疑問があるでしょう。企業と労働者の間で、富裕層と庶民の間で、進歩と保守の間で一進一退したからです。結局、信頼が問題なのですが、まず地方自治体の何か所かででもやってみればいいんです。いくつかでも実践して立証しながら、私たちがこのように変わったと示すことができれば、状況は変わりうると思います。

李南周 統合する前に他の方で統合できると考えるほど、民主党が改革の姿を示すべきですが、ただ座って統合を待っているような状態ならば、誰がそれに応じるかという問題があります。

李仁栄 そうですね。民主党が進歩的な路線を設定したとするだけで信じてくれるでしょうか? 実践されてはじめて信じてくれると思いますが、その空間として、今は地方自治体があります。また国会でもずっと激しく戦いながら、そのような方向で実践する姿を示せば可能だろうと思うんです。民主党の中では概して、統合は可能だろうか、連帯や連合の方が現実的ではないだろうか、と考えていると思います。

李南周 沈相奵先生はこの点についてどうお考えでしょうか?

沈相奵  とにかく進歩の価値を中心に政権能力を備えろというのが国民の注文ですが、それは民主党だけでなく進歩勢力の課題です。どのような道が直線道路なのか確かめるべきです。民主党と一緒になる問題については、さきほども申し上げましたが、これまでの民主党は右派が主導していると思います。李仁栄さんを含めて進歩的価値を尊重する方々がおられますが、政党の既得権を解体するのももう1つの政治過程ですから、いまだ進歩勢力ではその点について懐疑的な雰囲気だということです。

また、統合は、政党の中では内部決議が必要であり、外では国民の同意の過程が伴わなければなりません。ですから、1つの経路にこだわらずに進歩の再構成という戦略的課題に対して確固たる天命意識を持ち、各自の位置で最善の実践をしながら、道を模索していかざるを得ないでしょう。そうした点で進歩政治勢力の小統合の努力もその一環だと思うんです。大きな流れから見れば、いわゆる民主改革勢力と進歩勢力という2通りがあります。私はこの両勢力がどのように融合するかという問題が、韓国政治の未来においてとても重要だと思います。これはこれまでの10年の間、民主改革勢力の政権期に示した成果と限界、そしてこれまでの12年の間、進歩勢力の実践を総合する土台の上に、未来のビジョンも責任もって設計されるだろうと思います。組織再編のさまざまな見取図や経路だけで語れるものではなく、いわばこれまでの経験を総括する省察と模索の政治広場が開かれるべきで、このことは連合政治に必要な、さまざまな議論と並行して進められる必要があると思います。

李南周 連合政治や進歩政治について語るとき、2012年にいかなる課題やビジョンを持つべきかは核心的なテーマです。それが議論されてはじめて、連合であれ何であれ可能でしょう。最近強調されるのは進歩と福祉です。福祉が重要なイシューであることは事実ですが、それだけで進歩政治を再構成できるかは疑問です。さまざまな面で実現能力を確かめなければならず、財政問題にも触れざるを得ません。また民主主義とも関連があります。事実、朴槿恵(パク・クネ)議員や保守陣営でも福祉のことを語っていますが、福祉というのは政治状況によって変化しうる恩恵授与的なレベルでは続かず、民主的な参加が保障されてこそ、きちんと実現されるものだからです。また社会的に予算増に対する抵抗があります。効率的な監督が保障されなければ国家予算を増やすことに拒否感もあります。これもまた相当部分、民主主義と関連した問題だと思います。そして南北分断の状況における予算の制約や、現在の南北関係の下でどのように福祉政策を実現するのかというような課題をめぐって、進歩勢力がもう少し総合的に見解を整えるべきだと思います。ですから、『創作と批評』では分断体制克服という目標を指向しながら、1980年代の変革運動の民族自主・民衆主体の社会、また民主主義発展に対する問題意識が一緒になった、変革的中道の道を行くべきだという主張をしてきました。

沈さんはこれまで、進歩陣営の代案勢力化や進歩政治の転換を主張してきました。進歩勢力が何かいいことをしようとしているのはみな知っていますが、代案モデルが不明確な点においても、その実現計画が効果的に伝えられていないという点が不満でもあります。全般的に2012年を前にして、いかなる政治的課題があり、どのようなことが政策ビジョンの核心になるべきかお聞きしたいです。つづけて他の方々にもお答え頂ければと思います。

沈相奵 それと関連して、まず民主党の進歩性の問題から考えてみましょう。一部では最近の民主党の進歩化についてその真偽を疑って批判していますが、私はこのような変化が望ましいと思います。第17代国会の時も、福祉には常に「病」の字がつきました。与野党を問わず「福祉病」を云々しました。ですが今は朴槿恵議員まで福祉の話をしています。7年前、京仁(キョンイン)運河の変わらぬ擁護者だった宋永吉(ソン・ヨンギル)仁川市長が、京仁運河に反対するといったのはきわめて重要な変化です。そして鄭東泳(チョン・ドンヨン)議員の場合は「大胆な進歩」を語りながら、韓米FTAの矛盾する条項をすべて再検討するべきだといいました。韓米FTAに最も積極的だった孫鶴圭代表も、特別委を構成して再検討するといいました。それが単にレトリックや選挙工学にとどまらないのは、そのような変化が国民の意思であり、国民が見守っているからでしょう。韓米FTAは非正規職問題とともに改革勢力と進歩勢力の間の距離を広げた核心的な問題であるという点で、この問題に対する立場が1つの試金石になります。前政権で進められる時とは情勢と条件が変わっているので、孫鶴圭代表が先行策と区別して責任をもって判断されるだろうと期待します。

前回の地方選挙における民心は、一言でいって「国民の生活の質に政治が集中せよ」です。福祉はやはり重要だと思います。ですが、私たちの現実では福祉だけではだめで、「労働と福祉」と言うべきだと思います。韓国には冷戦と権威主義が労働を完全に蚊帳の外にしてきた歴史があります。その後に民主化されても、労働組合を認めるレベルで提起されただけで、労働が人間的な生活を実現する社会経済的な基本権であるという側面で接近することはできませんでした。ですから民主化以降の労働は残忍な市場に放置され、その結果が今、非正規職と青年失業の時代を惹起しています。労働と福祉は互いに関連しますので、労働の革新なくして、福祉が生活の質の変化に大きな役割を果たすのは困難です。非正規職問題の解決なき福祉国家は空念仏になるでしょう。福祉も基本権であるという点を明らかにして、保育・教育・医療を中心に作っていくべきです。

また、労働の革新と普遍的な福祉は、それを可能にする社会経済体制と関連しています。これと関連して、私は過去の大統領選挙の選挙戦の過程で「三拍子経済」を提示したことがあります。社会経済と公共経済、そして公正な市場経済を調和させ、韓国の庶民経済と朝鮮半島の平和経済、東アジアの互恵経済が有機的につながるようにするビジョンです。

李南周 李仁栄さんは進歩政治をだいぶ強調されましたが、いっそのこと進歩政党に行けとは言われないですか?(笑)

李仁栄 それがハンナラ党と民主党の違いです。ハンナラ党は進歩政党に行けといいますが、民主党ではそのようなことを言う人はいません(笑)。福祉だけで進歩を語るのは、半分は正解ですが半分は間違っていると思います。ですが、今はそれが進歩であると受けとめます。福祉規模が小さな国なので、経済が動揺すれば福祉もつられて動揺します。そうであるほど一層、福祉と経済が一体にならなければならないと思います。福祉自体で生活の進歩を語ることもできますが、もう少し深く議論すれば、現在の市場経済を修正しようというところまで続きます。市場万能主義、勝者独占の市場経済を、共生と共存の市場経済に変えようということですが、新自由主義の市場秩序を社会統合的な経済、たとえばドイツ式の社会市場経済レベルにでも変えなければ、福祉の土台が脆弱ですから実現は困難です。中・長期的には税制をきちんと整理して、戦略的・歴史的な呼吸で進めていければいいと思います。
当座は国家財政の配分戦略を変えるべきでしょう。産業政策や社会基盤施設などにおいて、福祉政策部門により多く配分し、税の定義の次元で透明性と公正性を強化し、財源をさらに引き出すべきです。このような問題を提起すると同時に、地方自治において実践することがきわめて重要です。そのようなことが積み重なっていけば、後で政権が代わったときに力になります。結局、未来のビジョンを現実化することですから。地方自治において少しでもましな雇用を創出し、保育や教育、医療において福祉サービスを拡大するべきです。事実、民主党がソウル市長選で勝利できていたら、SH公社(ソウル特別市の宅地開発および住宅建設を効果的に施行するために1989年設立された地方公企業)を活用して、住居福祉を実践しようと思っていました。このようなことを、地方自治を通じて今すぐにでも実践していかなければなりません。今回、親環境・無償給食が実現できなければ、おそらく今後も機会はないでしょう。

 

 

南北朝鮮問題の戦略は進歩陣営の「弱点」なのか

 

李南周 労働や福祉に対する権利意識が、韓国の経済発展や政治レベルに比べるとだいぶ後れているという点も問題のようです。ですが、分断体制論では、このような落伍性を分断構造の中で出てきた問題であると考えます。進歩新党の場合には、民主労働党に比べて北朝鮮の体制に対する批判的見解を持っているせいか、南北問題に対する設計やプログラムが綿密でないと思います。韓国の政治勢力としてかなり重要なイシューだろうと思いますガ、ご自身の立場を国民に説得するという側面では説明が足りないのではないでしょうか?

沈相奵 一理あるご指摘です。進歩政治勢力の統合議論における核心イシューは北朝鮮の問題ですが、最近、あるインタビューで、白楽晴(ペク・ナクチョン)先生がおっしゃっていました。互いに疑惑を抱いている「従・北朝鮮」と「反・北朝鮮」の認識を越えた代案が確立されるべきだということでしょう。進歩新党の一部が反北朝鮮一国主義に傾斜していると批判されるのは、進歩新党に分断克服のための戦略や政策がいまだ具体化されていないためです。労働と福祉、民主主義、また外交および安保戦略は、分断克服の課題と密接に関連しています。それに対する戦略とプログラムがなければ、政権能力を備えているとは考えられないでしょう。最近、北朝鮮の問題で多くの論議がありましたが、今後、進歩政党の統合・再編が進めば、その過程でこの問題に対して極論が克服され、責任ある政権勢力としての戦略を具体化するべきだと思います。

李仁栄 私は、韓国社会が、準備された統一を迎えられない可能性も大きいと思います。特に北朝鮮情勢の大変化が朝鮮半島に及ぼす影響は莫大であり、統一か別々かの選択肢を前にする可能性も次第に大きくなっていると思います。ですから2012年の政権交代がきわめて重要になります。平和政権が樹立されれば、準備が多少足りなくても、いずれにせよ平和を通じて統一の道に向かうでしょうが、李明博政権のような政権になれば、互いに背を向けた別々の関係になる可能性が大きく、その過程で深刻な危機が出てくるでしょう。これもまた進歩の尺度かもしれません。従・北朝鮮/反・北朝鮮を越えた新たな代案を示せればいいのですが、今としては準備がたいしてされていない状態で、突然、朝鮮半島情勢の変化がやってきた時、どうするのかが重大な課題です。

沈相奵 最近、北朝鮮の3世代世襲について論争するのを見ながらいろいろと考えました。私は認識論次元の論争はもうひかえてはどうかと思います。要は進歩政党がどのような戦略を持つかでしょう。私がいいたいことは1つです。進歩政党の対北朝鮮戦略は国民の信頼を深く考慮するべきであるということ。これまでの韓国社会において、進歩は当然、親・北朝鮮として罵倒されてきました。進歩政治勢力が南北問題解決の主体として確固たる信頼を受けて、はじめて平和の道、統一の道へと進むことができます。また目的主義としての統一ではなく、分断体制の克服から接近して、特定の体制と方向を固定させずに、南北が互いに歩み寄る変化の過程を充分に経過することが重要だと思います。まずは平和体制の確立が何よりも重要で、北朝鮮の状況も流動的ですから、2012年の政権交代以前に野党が力を結集して、できることをしなければなりません。

白承憲 2012年の課題について、大きな枠組では別段異論はないと思います。形式的な民主主義の達成以降も、これまで10年の間、実質的な民主主義に対する苦悩が足りず、ましてやその現実化の戦略はなおさらなかったという点で、福祉言説や政策が進歩改革勢力において本格化するのは望ましいと思います。今後、社会の共同体性を強める方向で、福祉および経済政策が進められるべきでしょう。

もちろん改革進歩勢力の言説が、福祉だけに収斂されるべきだということではありません。さまざまな矛盾を同時に解決する戦略が必要です。たとえば平和体制が基本的に韓国社会の保守言説と衝突せざるを得ないという点、また韓国中心でなく、朝鮮半島全体を含めた思考が必要だという点も、進歩の重要な言説になるべきです。また現政権の一方的な独走による民主主義の後退に強力に反対し、抵抗する市民を守る政治勢力として信頼を得るべきだと思います。その他に環境問題などにおいても、共同体性の強化ということを豊かにしていく必要があると思います。

沈相奵 福祉が重要だということを否定する人は誰もいませんが、過去の経験を見れば、格差を深める経済政策を変えずに、福祉政策で埋め合わせすることはできません。福祉に対する意志の有無、労働および経済政策の歩調を合わせるべきであるという点で、いまだ民主党と多くのことについて話し合っていません。財閥や金融についても同じです。福祉を実践しようとしてもお金がかかります。対GDP比・公共福祉支出がOECD平均を目標にしても10.6%ほど小さいので、金額に換算すれば100兆ウォンほどが必要ですが、これについて具体的な対策を示さなければなりません。安保費用の縮小や倹約予算のようなことをすべて行なっても、結局、増税は避けられないと思います。私もやはり、まず福祉体験のような国民の税に対する抵抗を考慮した戦略が必要だと思いますが、とにかく基本方向は増税だということでしょう。この点について明確な合意がなければなりません。私が第17代国会で増税案を出した時、与野党を問わず私にこのように忠告しました。大韓民国で増税を語る政党は政権をあきらめる政党だ、増税を主張する議員は議員バッチを一度しかつけられないと。それで私は一度しかつけていません(笑)。このように見る時、福祉がそのように簡単に語れる問題なのか、また福祉をかかげているから私たちは1つであると断定できるのか指摘したいと思います。

今、出ている話題は、一方では社会民主主義を土台にした福祉国家、他方では進歩的自由主義にもとづく調整市場経済の話ですが、実践の側面から見れば、福祉国家論は左派の原理主義に対する省察とつながり、進歩的自由主義は自由主義勢力の市場至上主義に対する省察とつながると思います。この両者を総合しようとする努力も言説レベルではきわめて重要だと思います。

李南周 重要な話題がつづいていますが、時間がさほど残っていません。整理を兼ねて最後に政治連合をどのように進められるか、一言ずつお話し下さい。

 

 

疎通と協力の経験で信頼を重ね

 

李仁栄 先日、非正規職問題でキリュン電子に行ってきました。それぞれの職場や現場で対処するのも重要ですが、この問題をめぐって野党4党でも5党でも常時的な議論体系や対策機構を作り、共同で対応すればいいという話が出ました。4大河川問題(李明博政権が進める運河建設などを含めた整備事業)についても同様の要求があります。懸案別に始めて、さらに発展できれば、懸案別の常設団体や包括的な協議体にすることもできます。そのように実践しながら信頼の根拠を積み上げていけたらと思います。以前に比べて連帯し協力する体系がかなり弱まっているように感じますが、それをまず復元させることを願っています。第2に、今、「二重秩序」を認めたらいいと思います。各政党や市民団体の一次的な秩序があり、その他にも未来指向的な議論や共同の模索ができる秩序を作って、二重の体系を運営する過程で代案を探してみてはどうかと思います。

李南周 沈さんにそのような提案が来たら、どうされますか?

沈相奵 李仁栄さんは非正規特別委の委員長もされましたが、私は、他のことも重要ですが、「非正規職問題の解決のための野党5党連席会議」の常設化を至急進めてはどうかと思います。非正規職問題を共同の主要議題として合意し実践することこそ、改革と進歩の間に広がった距離を小さくし、連合政治の成功に最も効果的な方案になるだろうと思います。また李明博政権の庶民に歩み寄っていることの虚構性を暴露し、富裕層政治を審判する契機になるだろうと思います。

私は、組織再編が前向きに成立するためには、進歩勢力の間の疎通がきわめて重要だと思います。進歩陣営の内部でも、頻繁に会ったり互いに深く討論することなく、予断して規定することで、疎通不在が作り出した違いも大きいと思います。そのような点で、党大党の公式の立場に制約された議論を越えて、果敢な変化と革新を主導する流れを形成する必要があります。おそらく李仁栄さんのおっしゃった二重体系の意味も、同様の問題認識であろうと思います。組織再編は党の公式体系を中心に進められるべきでしょう。しかし進歩の再構成のための省察と模索は、党の公式性を越えて多様な方法で活性化するべきです。進歩間の疎通のために私が果たせる役割について積極的に悩んでいるところです。

白承憲 私は日常的な時期の連合に対する悩みや実践がかなり足りないのではないかと思います。選挙時期には議論が活発ですが、その後は話が別々に流れたり、議席数の差によって実質的な討論や政策反映がされないことが繰り返される時、はたしてこれで政党間の信頼や国民の信頼が生じるだろうか疑問です。李仁栄さんが地方政府の運営で成果を示すべきだといいました。事実、多くの地域が連合によって勝利しましたが、実際にその政党の間に疎通が円滑か、いまだ検証されていませんし、官民協力については、市民社会が介入して連合を成功させた地域でも、きわめて生ぬるいと評価しています。共同の価値というものが掛け声に終わらないようにするには、どのようなことが可能か示すべきですが、今のように日常の政治の中で力を合わせる姿が見られなければ、1年後くらいに、それがブーメランで戻ってくる可能性もあり、違いが広がってしまう局面だけがあるのではないか、という苦言も差し上げたいと思います。

李南周 お三方には、今後も政治の新たな流れの創出に率先して頂ければと思います。長時間、貴重な討論をありがとうございます。これで座談を終えたいと思います。(2010年10月21日)

 

〔翻訳=渡辺直紀〕

季刊 創作と批評 2010年 冬号(通卷150号)
2010年 12月1日 発行
発行 株式会社 創批

 

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