〔対話〕 権力交代を越え、韓国社会の再編へ―2013年体制の展望と課題 ②
東アジア構想における南北経済協力
李南周 このような国際的環境を、韓国の改革とうまくつなぐための装置を模索する必要があると思います。特に東北アジア―北朝鮮―韓国が新たなレベルの協力構図を作っていく必要があり、羅津(ナジン)港の開発や新義州(シンウィジュ)・丹東の開発では具体的な進展もあります。このような諸条件と既存の南北経済協力事業を結びつければ、韓国社会をアップグレードできる新たな動力が形成されうるのではないでしょうか?
朴昌起 北朝鮮問題がきわめて困難かつ複雑でしょう。軍事的・理念的問題に国際関係や国内政治までが絡んでいますが、私は「経済集中戦略」でいこうと提案したいと思います。核や軍事、人権、世襲問題もひとまず先送りにして、もっぱら経済だけでやろうということです。開城(ケソン)工業団地には現在約5万人の北朝鮮の人が仕事をしていますが、家族を含めれば20万人が開城公団に依存しています。この事業を5年間やった経験を土台に、事業の規模を今の10倍に増やします。そうすれば、労働者50万人、家族200万人に、関連の経済人口まで合わせて600万人程度、つまり北朝鮮の人口の約25パーセントが開城工業団地のおかげで暮らせるようになります。もしこうなれば北朝鮮は絶対に無理に行動できません。アメリカや中国に移っている対北朝鮮政策の主導権も、私たちが取り戻せると思います。そうすれば、自然と核脅威や戦争の可能性も低くなり、人権や世襲問題も解決できます。
開城工業団地と類似したものを、金剛山(クムガンサン)周辺や鉄原(チョルウォン)などにも作れば、朝鮮半島の戦争の可能性はほとんどなくなると思います。それらの地域は核心軍事地域ですから。開城工業団地の入居企業は今、収益は出していますが、問題は不安だということです。安定さえすればさらに投資したいと考えています。このことを通じて北朝鮮経済が発展し、大規模需要も発生するでしょう。発電所や上水道のような社会間接資本を建設し、住宅も400万世帯以上を作らなければなりません。セメント、鉄鋼、電気もかなり必要です。北側の鉱山には豊富な資源があり、投資収益性が非常に高いです。人件費に比べて労働力の質もかなりいいです。複雑な政治や外交問題と区分して経済協力を進め、北朝鮮で大規模需要が発生すれば、最も利益を得るのは北朝鮮住民で、その次は韓国企業でしょう。
李南周 それには2つの問題があります。1つは北朝鮮の経済成長と韓国の経済システムの変化をどのようにつなげられるかというものであり、もう1つは経済協力に集中するといった時も、政治的な要因のためにそれが一瞬にして水の泡になることもあるので、これに備えて最低限の政治的環境をいかに構築するかという問題です。
金基元 李明博政権になって、南北関係が風雨政策で台無しになったせいで、北朝鮮と中国がとても密接になり、これに対して韓国の保守派も進歩派もともに憂慮しています。たとえていえば、離婚した配偶者が他の人とつきあうのが気に入らないという状況ではないでしょうか(笑)。朝中関係を通じて北朝鮮人民が基本的な生活を維持するのはいいと思いますが、問題は、北朝鮮は主に鉱山物や水産物を提供し、中国から米や軽工業の生活必需品を買うというような分業構造です。このような関係では、北朝鮮がきちんとした産業発展を達成するのは困難ですが、その役割は韓国が引き受けるべきもので、朴社長のおっしゃるように、開城工業団地のようなものをいくつか作るのも方法でしょう。
今、開城工業団地には、中小企業だけがかなり入っているので、大企業も進出するべきです。過去に大宇(テウ)が南浦(ナムポ)公団で委託加工をやり、現代グループが観光事業をしただけで、製造業が本格的に進出したわけではありません。たとえば「10・4宣言」〔2007年10月4日に韓国の盧武鉉大統領と北朝鮮の金正日国防委員長との間で交わされた南北首脳宣言。2000年に金大中大統領と金正日国防委員長との間で締結された「6・15南北共同宣言」と合わせて、民主政権10年間の太陽政策の成果とされる〕で言及された安辺(アンビョン)造船協力団地のようなのが実現されれば、話がずいぶんと変わりますし、大企業の社会的影響力を勘案すれば、南北関係において一段階さらに基礎を築くことになります。開城工業団地のようなものを量的に拡大していくと同時に、質的に大企業の製造業が進出すれば、南北関係が後戻りすることなく進展すると思います。もう1つは産業インフラを整備するものです。韓・中・日の共同支援を通じて、電力、鉄道、道路のような基盤施設を支援し、大企業の製造業が進出すれば、南北の経済協力が一段階飛躍できます。人権、世襲といって北朝鮮の政治に干渉すれば、得より損失の方が多いでしょう。そのような問題は韓国の人権団体で発言するべきであって、政府が率先することではありません。ですが、政治的な開城工業団地は必要だと思います。南北連絡事務所のような政治レベルの開城工業団地を作り、朴社長のおっしゃったように、経済協力に集中はするものの、これを政治的に補強することによって、南北連合など、進展した南北政治関係に進むことが必要だと思います。
鄭泰仁 南北関係については、ひとまず李明博政権の政策ではだめだということは確かに証明されました(笑)。李明博政権の「目には目を、歯には歯を」政策は、一見合理的のように見えますが、ゲームでいえば「反復囚人のジレンマ」(各自利益だけ追求すると互いに損害をこうむることになる状況を示すゲーム理論―編集者)です。北朝鮮がそれをチキンレース〔どちらか一方が引き下がるまで苦痛を強いられるゲーム〕に変えてしまって、結局、損をする方があきらめる局面に変わったんです。だから仕返しはできず、やられつづけなければならない状況になっているのです。反面、太陽政策は「鹿狩りゲーム」(相互協力を通じて互いの利益が大きくなるというゲーム理論―編集者)でした。核問題に関しては、太陽政策プラス6者協議が、平和協定を結び平和共同体に進む道だと思います。私の経験上、もっとも重要なことは相互信頼だと思いますが、ささいな問題が1つひっかかってもうまくいかないのが南北事業です。南北鉄道連結事業を例にあげるなら、ここには金日成(キム・イルソン)の遺訓があります。南北間鉄道を復元するならば、東海(トンヘ)線(釜山(プサン)―羅津(ナジン))や京義(キョンウィ)線(ソウル―平壌(ピョンヤン)―新義州(シンウィジュ))をつなげろというものです。ですが、最も合理的なのは京元(キョンウォン)線(ソウル―元山(ウォンサン))です。東海線の場合、釜山に入ってきた物量のうち首都圏に来るのは65パーセントですが、これがまた釜山に降りてきてハバロプスクまで行かなければなりません。しかも南側の東海線の一部区間は現在途切れています。ですが、京元線は首都圏から元山を経てハバロフスクまでまっすぐ行くことができます。ですが、これは遺言にはありません。だから、私たちが提案したのは、ひとまず京義線と、北朝鮮の青年伊川(チョンニョンイチョン)線(黄海道(ファンヘド)・平山(ピョンサン)―江原道(カンウォンド)・洗浦(セッポ))を通って、北朝鮮の東海側に出るというものですが、これは北朝鮮の中央を貫通する道です。東北アジア委員会の構想は、これに合わせて嶺東(ヨンドン)線を開設しようというものでした。東海線の北の方はつながっているので、首都圏の物量が嶺東線を通って行けば北側の意向とも合致するんです。
もう1つの制約条件は財政経済省でした。北朝鮮の鉄道を改善しなければなりませんが、情報がないので、どう予算を立てるのかということでした。この面では状況がかなり急進展していて、希望が持てるのがロシアのガス管事業です。この事業が達成されるためには、ガス管とともに鉄道や通信網のようなインフラまで改善しなければなりませんが、そうすれば北朝鮮の内部がすべて公開されるので、相当な信頼が必要です。この事業を通じて信頼を積めば、これが対北朝鮮事業の起爆剤になりえます。問題はいつもかなり長い時間がかかるということです。とにかくこの部分に合意して、ロシアとともに北朝鮮の内部インフラを建設しようといえば、韓国の立場でもエネルギー問題を解決することですから反対はできません。また、国際的な共同事業ですから、北朝鮮が拒否することも困難です。北朝鮮への一方的な支援に対する韓国内の批判も避けることができます。ここには、金先生もおっしゃいましたが、大企業の進出が重要です。北朝鮮の最も大きな不満は、なぜ現代(ヒョンデ)や三星(サムスン)は来ないのかということです。彼らが入ってくれば信じるということでしょう。韓国内の大企業が北朝鮮に入るならば、韓進(ハンジン)重工業のように、フィリピンのスービックに造船所を作る理由などまったくありません。このようなことがうまくいけば、南北経済協力は急進展すると思います。
財閥改革の原則と方向
李南周 前に指摘しましたように、87年体制の最も重要な限界の1つは社会格差の深化ですが、これを経済システムとして見るならば、財閥主導と輸出依存型成長メカニズムによって作られた問題だと思います。80年代までは大衆的に財閥に対する強い反感がありましたが、90年代以降、財閥がグローバルプレーヤーとして飛躍し、国家発展の象徴のようにイメージ化されたと思います。そうするうちにここ何年かの間に状況がまた変わり、さらに『朝鮮日報』でも財閥問題を提起しています。財閥がふたたび深刻な経済的・社会的弊害として台頭していますが、これを87年体制の限界克服と関連づけて考える必要があります。
金基元 財閥改革は、よく誤解されるように、財閥を抹殺したり罰を与えたりすることではなく、財閥を再生させることでしょう。これと合わせて財閥と他の経済部門の間に均衡を見出すことを原則とするならば、大きく3つのレベルで考えられます。最初に、財閥グループ内部の面では、トップダウン経営の持続と最高経営者の腐敗および無能の問題です。これを解決するためには、経営の透明性・責任性・専門性を確保するべきですが、なかでも透明性が核心です。それを確保するためには検察と裁判所がともに自らの仕事をすればいいのです。ですが、実際にそれは簡単ではありません。既得権層が互いにつながっているからですが、検察や判事は財閥からお金をもらわなくても生きていけるので、職業的なプライドを回復すれば不可能ではありません。
2つ目に、財閥グループ外部の面では、中小企業に対する財閥の収奪と力の不均衡の問題です。力の不均衡を根本的に緩和するには2つの方策があります。1つは中小企業の競争力を高めることです。政府が保護して力を持たせるのではなく、自活力ができれば、いわゆる甲と乙の関係〔金銭授受のある関係。仕事を指示し、それを遂行する関係〕が緩和されます。中小企業の労働者が長く勤務して熟練度を高め、生産性を上げればいいのです。日本やドイツで中小企業が世界的に成長し、大企業との競争や交渉でさほど抑圧されていない理由は、まさにそのシステムのおかげです。そのためには大企業と中小企業の間の実質的な賃金格差を縮小しなければなりません。公共部門は民主的な牽制によって賃金を低くし、大企業部門はそれが困難なので、社会全体的な福祉を強化して(中小企業の労働者に)間接賃金を与えるんです。実質的な賃金格差を縮小し、中小企業労働者の生産性を向上させ、競争力を育てるのが基本でしょう。もう1つは一時的なものですが、競争力が上がるまで交渉力を提供する方法です。たとえば相対的な弱者である労働者が労組を設立し、資本と交渉できるように、中小企業の連合体に強力な団体交渉権を付与する方法です。
3つ目に、財閥グループと韓国社会全体の問題ですが、財閥グループが国を支配しているという点です。相互に牽制するべき産業と金融を、財閥がともに掌握しているために、政界、官界、法曹界、マスコミ、学界などもそれに包摂され、汚染されてしまいます。これを解決するためには、金融・産業分離の原則を強化して、他方では検察が金のかからない選挙のために法を改正するべきです。すでにSNSのおかげであまり金のかからない選挙が可能になっていますが、一段階進展させて、たとえばドイツのように比例代表制を大幅に強化する形でやれば、お金がかかることはさほどありません。また学界が率先して、財閥から金を受け取ることをやめたらいいと思います。韓国社会の指導層の自浄機能が必要です。
朴昌起 財閥問題で戦略的に重要な方法は、企業と支配株主をきちんと分けて語ることです。三星電子や現代自動車のような企業は、韓国民の貴重な資産であり、人材の大切な職場ですから、今後もきちんと育てなければなりません。この会社を支配する一部オーナーが脱法的に企業の利益を盗み食いし、私腹を肥やしてきたことが問題です。特に過去4、5年の間にかなりひどくなりました。違法なことをせずに堂々と経営するということです。まず循環出資構造を全面的に禁止し、金融・産業分離を厳格に守るべきです。今は銀行と産業を分離している程度です。証券会社を作ってグループの影響力を利用して株価を上げています。深刻なのは、個人が持分を持っている会社とグループの系列会社を取り引きさせることです。影響力を利用して会社に損害を負わせ、自らの利益を取れば、違法と見ても仕方ないでしょう。秘密資金の調達、背任、横領、不法ロビーのようなことは、法律で処罰できます。でも、不法行為を犯しつづけるならば、国民年金が議決権を行使してオーナーを変えればいいんです。国民の支持と共感さえ形成されれば、さほど難しいことではないと思います。
鄭泰仁 2つだけ補足したいと思います。最初は、財閥企業中心のマクロ政策が大きな問題を起こしうるということです。財閥や大企業の輸出のために為替レートを人為的に維持することになれば、それが物価上昇や所得分配の悪化をもたらします。政策の偏向性も正すべきです。そうしなければ、企画財政省が財閥の利益のために様々なマクロ政策を作ることになり、きわめて危険です。2つ目は減税です。企業に対する税金を割り引けば福祉財源が足りなくなります。もう1つ、これまでに話題に出てこなかった重要な点は、財閥の進出先で残っているところがどこかといえば、公共サービスの領域です。三星が最も狙っているのは健康保険市場でしょう。もし、国民健康保険の保障性が悪化すれば、その隙間に民間保険で入ってきて、アメリカの医療保険のようなものを売るつもりのようですが、これは国民の生活と直結した問題です。韓米FTAで最も危険なのが、政府の政策によって公共性が弱まり、そこに財閥が入ってくると、後戻りできなくなるということでしょう。財閥が韓米FTAに同調する理由もここにあると思います。今後、財閥が公共サービス関連の領域に進出するのは、積極的に規制しなければなりません。
大企業に依存しない成長、いかに可能か
李南周 財閥をある程度規制するべきだという社会的な合意は作り出せると思いますが、これは、財閥でない他の成長動力をどこに見出すべきかという問題を投じると思います。
鄭泰仁 中小企業の生産性を高める方法以外にはありません。中小企業の生産性が高くならない理由の少なくとも半分は、下請の問題と関係していますが、これは公正取引の観点から規制するべきでしょう。もう1つ、不動産価格も中小企業の生産性向上の邪魔になります。安山(アンサン)公団にある中小企業の半数は不動産賃貸業をしています。工場運営より工場敷地を賃貸する方がはるかに簡単に儲かるからでしょう。経済自由区域や産業団地のようなものを作って外国企業に提供してきましたが、それを中小企業に与える政策をとるべきです。中小企業の生産性を高めるには、クラスター形成がほとんど唯一残っている産業政策ですが、これは韓国でもできると思います。クラスターというと、たいていはシリコンバレー型、つまり大企業が先端事業をすることを想起しますが、事実、中小企業で高い生産性を示すところが多くあります。ドイツや日本でなくとも、イタリアのエミリアロマーニャ(Emilia Romagna)のようなところは、中小企業だけで世界最高の生産性を発揮するネットワークを作り、自治体が支援する形になっています。農村地帯でしたから農産物産業が当然あり、牛乳があれば牛乳包装産業があり、その包装材を作る機械産業があるというような具合です。フェラーリのような有名自動車産業もあって、扱っていないものがないようなところです。ですから、かなり多くの雇用需要があり、付加価値もとても高いんです。中小企業だけでも1人あたりのGDPが4万ドルです。私たちも中小企業の生産性を高めて、経済の半分以上を担わせれば、中小企業と財閥の関係改善も、内需と輸出の均衡も可能になります。
李南周 韓国ではまだ中小企業が活路を見出せずにおり、そのような発展の可能性に対して懐疑的な人もいると思いますが、その点はどう思われますか。
朴昌起 2つ申し上げると、1つは中小企業対策だけに集中せずに、大企業も育てようということです。韓国で上位30位圏の大企業のうち、1970年代以降に誕生したグループは1つもありません。アメリカは2年前の調査を見ると40の大企業のうち16社が1975年以降に設立されていました。韓国では、新しく健全な企業が誕生するシステムが完全に崩壊しているということです。60年代以降、大企業ができにくかったという証拠です。アメリカではビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブスが1976年に創業した後にずいぶん設立されました。韓国で70年代以降に大きく成長した代表的な企業は熊津(ウンジン)グループです。私は熊津のような企業がもっとできるような企業生態系を作るべきだと思います。そのためにも財閥中心の構造を打破するべきです。財閥を分割すれば、多くの大企業ができます。なぜ大企業が重要かというと、大企業は職場環境がいいんです。ですが、大企業をさらに育てる政策はあまり語られません。
他の1つは、私は輸出指向的な中小企業が重要だと思います。最もいい事例がドイツの「ヒドゥンチャンピオン」(Hidden Champions)というモデルです。よく知られていない素材部品企業ですが、世界市場では2、3位に入ります。このような企業が多いので、ドイツ経済が堅実で数年前まで中国より輸出量が多かったんです。韓国でもこのように自らの分野で世界の上位に入る企業を育てることが重要だと思います。そのような点で、一角で語られているような、輸出比重が大きすぎて対外依存度が高いので、内需中心で行こうという意見には同意できません。ヒドゥンチャンピオンは輸出がおよそ90パーセント以上です。ちなみに、日本にはいい素材部品企業が多いですが、彼らはかなり高齢化しています。私たちがそれを持ってくれば、機械分野における世界的な競争力を一層向上させることができます。国家的に強く支援する必要があります。
福祉拡大と増税の方程式
李南周 社会格差と関連して福祉の問題が話題になっていて、少し前に金先生は中小企業発展の土台として福祉政策の必要性も指摘されました。福祉を強化しようという点には異論はさほどありませんが、どのような手続きと方法で進めるかはまだ明確でないと思います。
金基元 韓国社会が、2013年体制であれ何であれ、望ましい体制に進むための課題の1つは進歩であり、もう1つは改革だと思います。この2つはあまり明確に区分されません。市場と国家の量的側面において、市場の役割をさらに拡大しようというのが保守であり、国家の役割をさらに拡大しようというのが進歩だと考えられます。保守は個人的責任を強調し、進歩は社会的連帯を強調します。進歩の反対が保守ならば、改革の反対は保守です。改革は市場と国家の質を改善すること、つまり市場での公正な競争、国家の効率性と民主性を強化することを強調しますが、保守はこれに反対します。中小企業と大企業を見ると、資本内における分断、つまり中小企業が大企業に発展しにくい条件が存在します。労働者の間にも分断があります。この克服が改革であるとすれば、進歩の課題である福祉の強化は、資本と労働それぞれの分断解消に貢献する点でもわかるように、進歩と改革は相互に作用します。また、福祉において北ヨーロッパ水準に「一気に跳躍」することは不可能で、高地を1つずつ確保していく陣地戦にならざるを得ません。87年体制が機動戦ならば、2013年体制は陣地戦でしょう。
福祉支出の方向は2つに焦点を合わせるべきです。1つは緊急を要する福祉があります。一例が老人福祉部門でしょう。老人の自殺率がこの20年の間に5倍に増加し、75歳以上の場合はOECD平均の5倍にもなります。もう1つは福祉を進めるにしても成長親和的な福祉をするべきです。「成長」という言葉にアレルギーを起こす進歩派もいますが、成長親和的な福祉こそ持続可能です。ここで重要なのが、家族、教育、雇用の分野でしょう。また、普遍的福祉か、残余的福祉かについての論議が多いですが、まず私たちは普遍的福祉の分野であまりにも問題が多いので、それを基本とするものの、懸案によっては残余的福祉も受け入れうるという開かれた姿勢が必要です。その次に、4大保険〔国民年金、雇用保険、国民健康保険、産業災害保険〕の死角地帯を解消することが、普遍的福祉か、残余的福祉かという問題を越えて、重要な問題だと思います。
ならば、どのように財源を調達するか、ここで政治的な戦略と戦術が必要です。無条件の増税で押し通すのではなく、多数の共感を得て抵抗を最小化する、洗練された、あるいは細心の配慮が必要です。浪費的な支出を減らし、富裕層・財閥に対する減税を撤回させ、必要ならば国民の合意を土台に増税をするんです。そして、増税をするにしても、投機所得と不労所得から最初にやります。たとえば、資本利得税を新設するにしても、それに対する反発を最小化するために、証券取引税は少し低くするとか、一定の差額以上についてのみに限定するとかという技術的な考慮が必要です。また、国民に普遍的福祉を主張するためには、普遍的納税の必要性も説得するべきです。
朴昌起 今年8月に発表した民主党の福祉計画を見ると、税金新設や税率増加を特別にやることなく、20~30兆ウォンの税金をさらに徴収できるとしています。説得力がややないという気がしました。その1つが健康保険料を大幅に引き上げるという計画です。一部では韓国の付加価値税が他の国に比べてかなり低いから引き上げようといいますが、私はあまりいい方法ではないと思います。そこで私が提案するのが、資本利得税と炭素税を積極的に活用しようというものです。資本利得税はOECDの大部分の国で20パーセント程度出していますが、韓国にはありません。利子所得税よりもこちらの方が悪くない税金だと思います。資本利得税があると外国投資家が入ってこないといいますが、外国投資家に金を貸して、急にそれを持ち出して株式市場に性急に出入りするのは、韓国経済にとってむしろ害になります。工場を建てたり研究所を作ったりする実質的な投資には例外規定を置けばいいと思います。資本利得税は付加価値税を引き上げることによって国民的な共感が得られるでしょう。
もう1つが炭素税〔carbon tax。環境税の一種で、化石燃料を使用し、二酸化炭素のような温室ガスの放出時に課され、原子力、水力、風力などには適用されない。李明博政権は2011年に施行する温室ガス排出権取引制と同時に、この税の施行も検討している〕ですが、電気料金に50パーセントの税金を課するというものです。これで20兆ウォン程度の税金を徴収できます。これを生産的福祉にたとえていうならば、生産的税金だと言えます。韓国は電気がかなり安いので、相当の浪費があります。電気が過度に安く、ガソリンは過度に高いので、そこに歪曲が生じます。エネルギーが経済に占める比重が大きいですが、そのために市場秩序が動揺するんです。ですから、ガソリン税を下げて電気代を大幅に引き上げるべきだと思います。そうすると、現在の韓国の一家庭が1年に平均50万ウォン程度電気料金を出していますが、家庭あたり20万ウォン程度をさらに出すことになります。代わりにガソリンに含まれた教育税などを除けば、かなり相殺されるでしょう。そして低所得層家庭を特別に配慮すれば、庶民の負担を減らすことができます。実質的にその負担を負うのは、電気を多く使う金属関連企業です。こうすれば電気浪費が減り、原子力発電所の追加建設の必要性も減り、炭素排出の縮小という国際的義務にも符合します。
韓国が1年に150兆ウォン程度のエネルギーを輸入していますが、電気料金が50パーセント上がれば、10兆ウォン程度、エネルギー輸入が減少することになり、この経済的効果が30兆ウォン程度になると思います。より一層重要なのは、エネルギー節約産業がかなり発達するということです。LED照明、風力発電、太陽エネルギー発電、電気自動車など、世界的にかなり急成長している産業で、韓国企業の技術は世界最高水準ですが、国内の電気価格があまりにも安く、需要が少ないんです。電気価格が上がれば国内需要が大きくなって、この産業分野が成長することになります。そうすれば、世界的な韓国企業の成長にかなり貢献します。ですから、電気に課す税金は生産的税金だと考えるんです。税金を100パーセントまで引き上げることも可能だと思います。韓国の電気料金は日本の3分の1、ドイツの4分の1、イタリアの5分の1に過ぎませんから。
鄭泰仁 普遍的福祉においては、明らかに無賃乗車問題が発生します。福祉に対する批判者は、福祉の恩恵が多くなれば人々が仕事をしないといいます。無賃乗車問題は2つの点で起きると思いますが、1つは、税金をなぜ自分だけが出すのかという考えです。租税正義の観点から、特に脱税は大きな犯罪であるという認識が確立されて、はじめて税金を出すことが損だと考えなります。2つ目は、主に保守陣営で主張していますが、福祉の恩恵を受けすぎると、仕事をしなくなるというものです。ですが、調査結果を見ると、大多数が、当事者の努力と関係なく不幸に遭った場合、恩恵を与えることには反対していません。反面、自らの努力なしで受ける福祉には反対です。結局、福祉を受ける人が努力しているということを示せばいいんです。たとえば、低所得層の資産形成プログラムのようなものはいい政策でしょう。また、失業手当を受ける人が、離職や就職のために教育を受けることを努力と見なすこと、福祉受恵者が仕事せずに恩恵を受けているというイメージをなくすことがきわめて重要です。
もう1つは、国家だけが福祉を行うという考えを捨てるべきです。国家と市場と社会的経済が結びつく福祉が最もいいモデルです。韓国ではまだ活性化していませんが、そのうち一番わかりやすいのが協同組合でしょう。一例でいえば、医療生協はサービス伝達の面でも実際に非常に効率的で、主治医制度の役割をしているので、患者が大型病院に集まることも抑えることができ、不必要な検診や誤診も減ります。このように共同体レベル、末端レベルで社会的経済と福祉をつなぐことも真剣に考えるべきです。
李南周 87年体制は主として政治的側面における発展でした。新たなシステムを作るためには、市民社会が主唱型(advocacy)運動で生協など新たな経済システムのような土台を作る方向に進むべきでしょう。これが、2008年のアメリカ産牛肉に対するろうそくデモ以降、最も重要な含意の1つだったと思います。
鄭泰仁 社会的経済、草の根経済がより一層重要になると思います。ハンナラ党が選挙で常に得をする理由が、不動産屋や飲食業の固定票のせいでしょう。事実、それがみな草の根経済、地域の経済圏を掌握しているということですが、消費者生活協同組合法を改正すれば、生協がさらに活発に活動でき、社会的企業の生態系も形成できると思います。生活領域において住民参加の経済圏を拡げるほど、経済を効率化するだけでなく、進歩改革勢力の政治にも貢献すると思います。
連合政治の発展と多層的なガバナンス改編
李南周 ガバナンスの話に移りたいと思います。おっしゃいましたように、進歩改革勢力が政治権力を掌握した時に、いい政策があっても、現実において執行力が落ち、既得権の抵抗を克服できないこともあります。盧武鉉政権にもそのような限界を示しました。2013年体制の希望的ビジョンの実現をどのように保障するかという問題もきわめて重要だと思います。
朴昌起 まず、このような点について考えてみたらどうかと思います。2013年体制は、今後30年ないし50年の国家ビジョンを議論するという点で、長期的なパラダイムの変化です。87年体制と「資本主義3.0」〔世界経済に大きな危機があるたびに資本主義は構造的問題を克服して進化してきたと主張する、イギリスのエコノミスト・アナトール・カレツキー(Anatole Kaletsky)の著書『資本主義4.0―新しい経済の生誕(Capitalism 4.0: The Birth of a New Economy)』(2010)で提出された分類。アメリカの大恐慌で幕を下ろした伝統的な自由放任の資本主義を「資本主義1.0」、ルーズベルトのニューディール政策に代表される政府主導の修正資本主義を「資本主義2.0」、レーガンやサッチャーの自由市場革命で誕生したのが「資本主義3.0」、また2008年のリーマン危機以降、変化する資本主義システムを「資本主義4.0」と名付ける。カレツキーの本書は、2011年8月に韓国でも翻訳・刊行され好評を博した〕の時代が、市場万能主義経済学が支配した時代であるとすれば、現在は新たなパラダイムと時代精神が必要であり、それを整理することがきわめて重要だと思います。私は2人の理論に注目しています。企業と社会価値の関係を理論化したマイケル・ポーター(Michael Porter)と、社会集団理論を確立したマンカー・オルソン(Mancur Olson)ですが、マイケル・ポーターがこのような話をしています。資本主義をもう一度発明しなければならない、今後、企業は株主と従業員のためにはもちろん、地域社会や国民、人類に貢献できる価値の生産が義務であると。このような理論を土台に私たちも財閥を改革できると思います。マンカー・オルソンは、利権集団が累積すれば経済が後退し、社会が硬直して、結局は国家が滅びる、特殊利益集団ばかりの社会は、あたかもガラス器の店でレスリング選手が戦うようなものだといいます。持っていくものより壊れるものの方が多いということでしょう。この理論は市場を重視しますが、かなり多くの部分を利権集団が持っていくなら市場が崩壊するといいます。新自由主義時代には、利権集団の利益追求も自由経済秩序に符合するので、そのまま放置すればいいということでしたが、それに正面から反論します。87年体制が、全斗煥(チョン・ドゥファン)と一心会(ハナフェ)という私組織が公益を搾取する構造を国民がひっくり返した出来事であるとすれば、2013年体制は、財閥や多くの利権集団が増加し、維持が困難なほどになった状況をひっくり返すということだといえるでしょう。
金基元 望ましい体制の基本原理がどのようなものかについて明らかにすることは、さほど難しいことではないと思います。1つは効率性であり、もう1つは民主性でしょう。この時、民主性は手続的な民主性だけでなく、社会経済的な民主性までをも含みます。ですが、理念と政策を立て直すのも重要ですが、それをどのように実行するのかというガバナンスの問題が存在します。ここでは進歩と改革の障害物をどのように突破するかが鍵です。まず進歩改革勢力が連帯するべきだというのは当然です。金や組織において圧倒的に優勢な保守勢力と対決する状況で、進歩改革勢力が分裂するならば、何の成果も生みません。選挙だけでなく選挙に勝利した後の統治においても連帯は必須ですが、これがうまくいっていないということが、民主政権の10年を迷走させた重要な要因です。ヨーロッパのような内閣制がただちに不可能な現実では、野党大統合が最も望ましい連帯の形態ではないかと思います。もし大統合が不可能ならば共同政府が次善の策ですが、すでに慶尚南道では実施していて、江原道では実現したもののすぐに終わってしまいました。このような経験を総合して、連帯の形を検討しなければなりません。
その次に少し具体的な話ですが、2013年体制を準備するためには、事実、韓国のような大統領題では選挙準備のために本来の統治準備がおろそかにならざるを得ません。当選自体が重要ですから、エネルギーをすべてそこに注ぎます。それで考えたことの1つが、国務総理をはじめとして主要な影の内閣(シャドーキャビネット)をあらかじめ発表して統治準備をしようというものです。ブラジルのルーラがこのようなことをしましたが、文民政府の10年を見ると、あまりにも準備のない状態で政権がスタートしました。また、2013年体制を進める時は、選択と集中が必要なように思います。一歩ずつ進みながら集中しようということです。そして、大統領と国務総理の役割を分担し、大統領は政治的な課題を担当し、国務総理は行政的な課題を担当する形で行こうというものです。もちろん盧武鉉政権の時期にも権限をかなり国務総理室に委譲しましたが、限界がありました。政治は自らの勢力を団結させ、反対勢力をかき乱し、中間勢力を自分たちの方に引き寄せることじゃないですか。そのような政治的な課題に、大統領と青瓦台が集中できるように、統治を作り上げていったらどうだろうかと思います。
李南周 鄭先生は盧武鉉政権の時に国政に参加され、当時、外部からずいぶん批判もされましたが(笑)、その経験を土台に、ご意見いかがでしょうか。
鄭泰仁 さきほど新たな社会経済的な価値の話が出ましたが、マイケル・ポーターの理論は利害当事者資本主義にもっとも近いようです。企業が株主のことではなく企業と関連する労働者、経営者、地域住民にいたるまで、利害当事者がすべて関与して参加するべきだというものです。主流の経済学には本来、効率性の概念しかありません。公正性と正義の概念がないことが経済学の特徴であり、そのような点がいいのだと考えるのも経済学者の特徴です(笑)。状態の良好な市場における効率性を語るのは問題がありませんでしたが、市場の外の社会に必要な様々なことに対しても経済学を援用し組織してきたものが崩壊してしまいました。今は効率性とともに正義や公正性を議論するべきです。公共性の概念において市場と国家の境界は、すべての人が参加して確定するべきです。このような議論が最近、「熟議民主主義」という指向に集まっているようです。経済学の様々な資源、民主主義論、正義論を集めて、今後のビジョンを構成できるでしょう。
さきほど、影の内閣の話をされましたが、いいアイデアだと思います。政治連合というのは本来、選挙後の連合でしょう。内閣制で選挙を行った後に組閣をしますが、選挙前の連合は影の内閣を発表できるという点でさらに効果的です。選挙後の連合は、自分が投票した人々が実際に政権に参加できるか予測できない反面、選挙前の連合はどのような人が政権を担当するのかわかります。私は選挙前の連合をすることになれば、影の内閣を発表して、内閣全体に対して投票することが必要だと思います。そうしてこそ、私たちのように政党政治がうまくいかない国で、大統領の恣意性もある程度、牽制できると思います。
朴昌起 それは法制化できますか。
鄭泰仁 それよりは選挙戦略としてもいいしょう。一方で内閣を発表すれば、他方でもやらざるを得ないので、そうすれば、実際に未来の内閣を事前に庇護する投票になるでしょう。私は長期的には内閣制が必要だと思います。今は与野党の交代によって政策基調が急激に変わり、長期的な政策が不可能です。任期の5年以内に効果が見られるような政策に集中し、手段も短期的なものだけを使用します。だから、盧武鉉政権の時、大統領委員会が試みられたのですが、それよりは国会に未来委員会のようなものを作って、与野党の合意で長期的な方向を設定すること、内閣制がだめならば、そのようなことでもやるべきです。たとえば、フィンランドでは教育改革を40年かけてやりましたが、議会の未来委員会で方向を定めて着実に進めてきたのです。私たちの場合、過度に多い国策研究員の半分ほどを国会に移動させ、研究者が自分の信念によって自分と合った党の政策を作り討論するならば、政治の質もはるかに向上するだろうと思います。
東アジアレベルのガバナンスについて言うならば、ナンシー・フレイザー(Nancy Fraser)の正義論は参考するだけのことはあります。経済レベルの再分配、文化レベルの認定、そして今後、重要なのが代表性の問題です。国際領域でケインズ主義―ウェストファリア体制の枠組が廃棄されて久しいですが、それを代表するシステムがなく、正義が成立しないというのが核心でしょう。韓国の現実では、韓米FTAの投資家国家訴訟制(ISD)のようなものです。このように公共領域を私的な仲裁部に一任してしまうのは、国際公共行政の領域が存在しないからです。今、EUがそのような装置を作っているところですが、企業の利益だけが代弁される国際領域において民主主義が進展するためには、東アジアでも各国市民の共同の利害を反映する政治システムを作り出すべきです。東アジア共同体の前に東アジア議会のようなものを実験して、重要な懸案を議論することが必要です。
金基元 2013年体制の推進動力は、もちろん大統領と政党が中心ですが、市民の広範な圧力あるいは支援が必要です。現在の韓国の状況では、労組が私益集団化された側面が結構あり、これが中心動力になるのは難しいと思います。北ヨーロッパの労組は労働者の多数を含む公益集団である反面、韓国の労組は少数集団ですから、ここから福祉の追求力のような中心動力は出てこないと思います。だとすれば、残ったのは市民社会ですが、組織化されていません。ろうそくデモや「希望バス」〔韓国最大の造船会社・韓進重工業による整理解雇(2011年1月)に対する撤回闘争を支援する市民の運動。解雇撤回を求めてクレーン上で籠城を続けたキム・ジンスク氏を支援するために、SNSなどでそれを知った市民らが自発的にバスに乗って、釜山の韓進重工業・影島(ヨンド)造船所などに計5回駆けつけた。その後労使は整理解雇紛争について妥結し、キム氏は309日ぶりに籠城を終え、「希望バス」を企画した詩人のソン・ギョンドン氏は逮捕された〕のような現象は、市民が社会問題に流動的に結合する様相だと思います。2つの運動において、主要市民団体も労組も、どちらも中心的な役割はできませんでした。市民と社会問題、あるいは市民と政党の新たな結合方式が萌芽的な形で現出していると考えて、これを、たとえばSNSのような情報通信技術の発展とどのように有機的に結合するかについて、真剣に考えるべきだと思います。
李南周 ガバナンスの問題に関して、市民社会レベル、一国家レベル、東アジアレベルのすべてについて、簡単ではありますが検討しました。私は、この議論が、過去よりはかなり進展していると思います。盧武鉉政権がスタートする時は、新たなガバナンスのための社会的合意やネットワークを形成する時間的な余裕がありませんでした。反面、先日の地方自治体選挙を見ると、選挙連合からガバナンスに接近できる基礎が形成され、共同政府も構成され運営した経験もあるので、これを基礎に国家レベルでも選挙の勝利のための連帯を越えて、いい統治のための連帯、ガバナンス構造についての議論を発展させることができます。もちろん、これと関連する構想が、もう少し具体化される必要はあるでしょう。このことが、連合政治の発展と2013年体制論の核心的な内容になるべきだと思います。
2013年、希望のビジョンを作ろう
鄭泰仁 2013年体制の主役は、実は20、30代の人たちですが、今日は主人公ぬきで議論しました。彼らの考えを聞く機会もあったらいいと思います。若年層が何を考えていて、どのような代案を持っているのか……私はすべて持っているだろうと思います。最近は彼らの声がかなり埋もれています。20、30代が人口構成と同様に政治に参加するようになり、『創作と批評』のような雑誌に彼らの声がさらに多く反映され、さらに多く議論されることが、2013年体制が成功する1つの条件だと思います。
金基元 反ハンナラ党勢力が来年の総選挙と大統領選挙で勝利すれば、2013年体制の形成がもう少し容易になるでしょうが、もしそうならずにハンナラ党が政権を継続するにしても、民心の変化を完全に無視することはできないと思います。不幸なことに反ハンナラ党勢力が政権を握ることができなくても、望ましい体制のために努力しつづける姿勢は必要です。1つ付け加えれば、進歩改革陣営が権力をどのように行使するかも重要です。民主政権10年を反省する様々な書籍を見ても、たとえば検察、国家情報院、国税庁のような権力をそのまま放置、または諦めるのが正しい道だなどと言っています。権力を悪用することは当然いけませんが、放置したり諦めたりするならば、では権力を何のために掌握するのかという疑問を感じます。2013年体制の達成のためには、権力をどのように行使するかについても真剣に考えるべきです。そのくらいのことができずに、財閥や官僚をどう相手することができるでしょうか。たとえば、進歩改革勢力のいる教育庁や地方自治体のようなところでも、その地域の官僚、マスコミとの関係がとても複雑で、これをきちんと統制できなければ、仕事がはかどりません。
李南周 盧武鉉政権の時期には、権力運営の合理性や分権を強調した反面、どう統治するかについて真剣に検討することは相対的にあまりありませんでした。それも2013年体制が解決すべき重要な課題の1つです。連合政治の議論が来年の総選挙まで続くだろうと思われますが、このことが、政治的な資源をどう分けるかという計算ではなく、2013年体制の目標はどのようなもので、どのようなガバナンスで目標を達成するのかというレベルに進展するべきでしょう。そうやってはじめて、議論の過程で発生する複雑な問題を克服し、2012年の勝利を保障することができると思います。今日の座談会は、そのような点に対して、多くの論点を提供したと思います。みなさん、お疲れさまでした。(2011年10月28日/於・カトリック青年会館「タリ」)
翻訳: 渡辺直紀
季刊 創作と批評 2011年 冬号(通卷154号)
2011年 11月1日 発行
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