창작과 비평

[卷頭言] 大勢に相応しい新しいストーリを期待しながら

2012年 秋号(通卷157号)

 



黄静雅

パイを大きくすれば結局各自のパイも大きくなるようになっているという、また水が上部に満たされれば結局下部へと流れ落ちるようになっているという仮説が、説得力を持った時代があった。それ故に、より大きくし、より満たすことに没頭し、それによってより豊かになる未来のために、今日を留保し、無視しなさいというのが究極の教訓であった。そのような「黙って成長」ストーリには、パイが大きくなるということは誰かが正当な分け前をもらわない時にこそ可能であり、下で享有できる何かは当然上から落ちるものであるという暗示が、ある種の裏面契約として含まれていた。

このストーリが掲げるように、パイが大きくなってその分け前も大きくなリ、上部が満ち溢れて下部も良くなったと、概ねは言える時代であった。しかし、ここにおける最も大きな逆説は、このストーリに断固として反対していた人々のお陰で、それがある程度の正当性を持つようになったという点である。パイの拡大に寄与した多くの人々の労苦は言うまでもないが、パイが大きくなり、分け前も大きくなったのは、分け前が小さくなれば、パイが大きくなるという誤った因果関係に不断に抵抗し続けてきた人々のお陰なのである。

ところが、いまやそのような我田引水型の成長ストーリが根本的に不可能な時代が始まったのである。これまで行ってきたやり方の成長が限度を超え、破局の可能性が高まった世界は、自然と成長やよりよい生活の関係を再検討させる。個人のレベルでも同様である。必死に「スペック」を積み上げ、いくら頑張っても成功するという保障はなく、未来は曖昧な不安からなかなか抜け出せない。多くの人々が、今日思い存分幸せになれば、明日も幸せになることができ、今日正せば明日も正しくできるはずだということを悟っている最中である。つまり、これから私たちには他のストーリが必要なのである。裏面にいかなる留保条項も隠さず、堂々として大胆に人々を魅了させる新しいストーリが求められるのである。

今年年末の大統領選挙を控えて形成された争点構図をみれば、このような時代的変化を改めて実感することができる。7%成長なのか5%成長なのかではなく、経済民主化と福祉と正義のようなイシュがメインになった状況である。成長ストーリの光に支えられて登場した朴槿恵候補さえも、このような問題について語らざるを得なくなったのである。逆らうことのできない大勢という表現は、正にこのような変化に名付ける相応しい表現である。

実際、一国をリードしていく人にとって変化に逆らう時代錯誤は犯罪と変わらないことであるということを、私たちは去る5年間痛感した。お金になるものはすべて売却したり、台無しにしてしまうという李明博(MB)政権のマクチャンドラマ(=非現実的で無理やり作った感じのするドラマ)は、結末に至ると、ついに人を殴ることもお金になると気付いたようである。用役業者のコンタクタスがSJM組合員に振る舞った暴力は、龍山惨事を一気に連想させ、私たちがこの時代錯誤に決して慣れることができず、また慣れてもいけないという事実を改めて鳥肌が立つくらい立証してくれる。

しかし、露骨な後進も時代錯誤であるが、やり切れる真心も能力もないのに、新しいストーリの主役を名乗ることも時代錯誤といわざるを得ない。朴槿恵候補はMB政権との違いを掲げながらも、与党の有力な大統領選挙候補として持つ権力をMB政権の凶悪な民衆弾圧や言論弾圧を防ぐところに一度も使ったことがない。怨嗟の声の高い玄炳哲国家人権委員長や金在哲MBC社長に対する辞退要求に、朴候補が見せた沈黙が端的な例である。そのような「批判的支持」の対価として、MB政権は自身の暗闇で相手の暗闇を隠してあげる「黒魔法」を施したが、これが決定的助けになった理由は「お姫様」と称される政治家の朴槿恵の権威というのは、本質的に神秘主義によって維持されるものだからである。ところが、朴候補による5・16クーデター擁護発言の波紋が例示するように、大統領選挙が近づいて来れば来るほど、朴候補は前面に出て来ざるを得なくなり、またそのようになればなるほど、その真面目は露出されるようになるのである。朴候補が掲げた政治改革の実状が不通と不正の独善であるならば、既得権を温存させる経済民主化というのは「チュルプセ(税金の規模を「減らし」、不要な規制を「緩和し」、法秩序を「立てよう」という朴槿恵候補のスローガンの略語―訳者注)」のアクセサリにすぎないことが漸次明らかになっている。今日暴露された朴槿恵候補の総選挙における不正な議員公認問題が、明日に予定されているMBの乱暴によって隠蔽されるような「メンブン(「メンタル崩壊」という新造語の略語。「メンタル崩壊」とは、ある状況を受け入れられず、メンタル(精神)状態が不安定になってしまったという意味の言葉として、最近韓国でよく使われている―訳者注)」誘発戦術がいつまでも通じるわけがない。朴槿恵大勢論は、そのように自らを蚕食しているのである。

新しいストーリが堂々として大胆な夢を描いていくプロットであるはずなので、それに相応しい堂々として大胆な大統領を選ぶことが、誰がより悪くないかを選ぶ選択になってはいけないと思われる。そのような観点から見れば、朴槿恵候補は当然論外だと思うが、進歩改革勢力も信頼を回復するには依然として先が遠いようにみられる。このような争点構図になっているにもかかわらず、この程度の成就度に止まるとしたら、その名前に相応しい役割を果たしていたいという非難は避けがたいであろう。一定の紆余曲折や変数を抱え込まざるを得ない事情ではあるが、そのような混乱さえも生産的に転換する姿を促す。安哲秀教授の全面的な登場はその論難にもかかわらず、この構図を維持しながら、深みのある政策競争へと進んでいく契機となると信じる。「2013年体制」という表現が要約したように、「体制的変化」に値する新しい希望のストーリがこれから本格的に繰り広げられることを期待する。

今号の「特輯」では、「2012年の大統領選挙と民主改革の課題」というタイトルを掲げて、大統領選挙とその後、そして韓国社会の質的変化の実現に必要な民主改革の課題及び方案について検討する。白楽晴は、総選挙後の状況に対する省察を基にして、「変革的中道主義」を中心に2013年体制論を整備する。変革的中道主義とは、「私たちの中の怪物」ともいえる資本主義的心性を克服する遂行原理であると同時に、改革政策の具体的な検証規準として提示される。最近関心の的になっている安哲秀の著書についての簡略な評価も加わる。李哲熙と鄭大永の論文は、政治と経済部門の革新と改革にそれぞれ焦点を当てる。まず、李哲熙は連合政治と市民政治の相互協力関係が依然として切実であることを強調し、革新の内容を備えた連合とアジェンダリーダーシップを忘れない市民政治を注文する。鄭大永は、韓国経済をとらえる様々な観点を点検しながら、経済改革の革新課題を診断した上で、成長や輸出中心から雇用創出や格差解消に重点を置く政策基調の転換と構造改善方案を詳細に明示する。そして徐載晶と南兌鉉は、87年体制を通じて成し遂げた民主主義の成長と限界を見せる試金石であると同時に、分断状況が民主主義の発展に及ぼす影響力を実証する事例として哨戒艦(天安艦)沈没事件を分析する。

「対話」欄では、上半期の大規模の言論ストライキに参加した若い言論人を招聘し、ストライキの動機や進行過程を生々しい肉声で語ってもらい、大統領選挙に対する公正な報道について議論する。難しい戦いを終えた後、むしろより大きなエネルギーで充電された彼らの発言から、ポッドキャスト(podcast)等のニューメディアの躍進の中でも依然として重要な「オールドメディア」従事者としての使命感、そして新しい言論地形を作り出そうとする覇気を感じることができる。

今号の「論壇と現場」欄の論文は、多様なテーマを扱いながら、韓国社会のみならず、東アジアの変化を省察する機会を提供する。李承煥は、現政権の対決的対北朝鮮政策の逆説的結果として最近出された数々の対北朝鮮政策に関する言説を検討しながら、包容政策のアップグレードと南北連合論の再構成を論議する。金明煥と尹志寛は、改革課題の中でも難題に当たる教育問題を取り扱う。金明煥は、李基政の中等教育改革案(本誌2012年春号)を基に大学改革を構想しながら、真正なる多様化としての選考制度の単純化と、ソウル大学を含む国立大学の連合体制案を提示する。尹志寛は、退行様相がとくに目立つ私立大学問題の現状とその原因を点検し、教育の公共性をその中心に据える私学改革方案を模索する。尹胄晟は、光州・全南地域を対象とし、地域言論が批判機能を喪失し、その役割を果たせない要因として地方政府の権力独占と言論統制の様相を暴露する。なお、あらゆる種類の「プア(poor)」シリーズとして要約される韓国社会の辛くて不安な生活を、多様な側面から事細かく考察した第2回社会人文学評論賞受賞者のチョン・ジウンの論文も興味深い。

一方、国外を扱った2本の論文も重要な問題意識を盛り込んでいる。韓中国交正常化20周年に際する李南周の論文は、中国の変化に対して不確実な断定に没頭する代わりに、オルタナティブな思惟体系の模索の一環としての批判的中国研究の伝統を継承し、革新する必要性を強調する。去る6月末に開かれた本誌主催の国際シンポジウム「東アジアの批判的雑誌会議」において発表された岡本厚の論文は、日本に限らない東アジア的事件としての3・11大震災が東アジア人の思惟と実践に提起する共通の課題を指摘する。

今号の「小説」欄は2本の長編連載で豊富である。2回を迎える鄭梨賢の作品は、前号のさわやかなスタートに引き続き、ますます興味を増していく。なお、新しく連載を始める黄貞殷の作品も評壇の注目を多く受ける作家らしく一気に人目を惹きつける。金炯洙と趙海珍の短編も品格と個性を多く発散する。「詩」欄では12名の多彩な詩の世界にも出会うことができる。

「作家スポットライト」では、新作長編『泰然たる人生』を出版した殷熙耕作家を招待し、知的な感覚と鋭い文体で多くの読者を魅了させているこの作品について語り合う。評論家の鄭弘樹の深層的な分析と質問を通して、登場人物の孤独や喪失をめぐる作家の思惟がすべて明らかになる。「文学評論」欄に掲載された2本の評論は、各々異なるやり方で文学と現実の関係を論じる。まず、黄鉉産は、新しい言語とは複数の層や接点にまたがる現実との出会いを根強く探求することによって構成されるという観点から、若い詩人の河在妍と金重一の作品に表れた言語の前衛的冒険を読解する。イ・キョンゼは、先号の特輯「再び長編小説を語る」の論議を検討しながら、キム・サグァの小説を中心にして時代的現実との関連性の回復という長編小説の課題を考える。その他一々紹介はできなかったが、深みのある視線で多様な内容を扱ってくださった「文学フォーカス」、「寸評」、「文化評」の筆者の方々にもお礼を申し上げる。

今年の萬海文学賞の栄光は、李時英詩人に与えられた。先鋭な時代的現実と密度の高い叙情が多様な形式の中に調和される作品世界を披露した李時英詩人にお祝い申し上げる。なお、申東曄文学賞には、金重一詩人と黄貞殷小説家が選ばれた。30回を迎えて「創作賞」から「文学賞」に変化を図っただけに、より意味のある激励になることをお祈りする。
長い猛暑でとても辛い夏を過ごされた読者の皆様とともに、結実の季節を迎える。この季節、新しい希望のストーリを作り上げる道に同行されるより多くの読者をお待ちしている。

 

翻訳:李正連(イ・ジョンヨン)

季刊 創作と批評 2012年 秋号(通卷157号)
2012年 9月1日 発行

発行 株式会社 創批
ⓒ 創批 2012
Changbi Publishers, Inc.
513-11, Pajubookcity, Munbal-ri, Gyoha-eup, Paju-si, Gyeonggi-do
413-756, Korea