창작과 비평

進歩陣営は北朝鮮の人権問題をどのように取り扱うのか

特集_朴槿恵政府の1年、今、われわれが語るべきこと
 
 
 
徐輔赫(ソ・ボヒョク) ソウル大学校・統一平和研究院・HK研究教授。著書としては『北朝鮮の人権』、『脱冷戦期における北米関係史』、『北朝鮮のアイデンティティにおける二つの顔』、『平和人文学とは何か』(共著)などが、編著としては『UNの平和政策と安全保障理事会』、『人間安保と南北間の協力』などがある。suhbh21@gmail.com
 
 
 
韓国社会はもちろん、国際社会において北朝鮮の人権問題が公論化されてから十数年余り経っているが、これに対する韓国の進歩陣営の認識と対応は、初歩者レベルから脱することができないでいる。政府・与党は、朴槿惠大統領の公約である「北朝鮮人権法」制定に強い意志を見せている。それに、昨年末の北朝鮮の張成澤(ジャン・ソンテク)粛清をきっかけに、第一野党である民主党のキム・ハンギル代表も、北朝鮮の人権問題に関する法制化の必要性について言及した。にもかかわらず進歩陣営は、北朝鮮の人権問題に対して未だに消極的である。人権が、進歩の議題である点を考える時、政治圏と市民社会を問わず、韓国の進歩陣営が北朝鮮の人権問題に沈黙したり、消極的な態度を見せたりすることは理解しがたい。ここでは、今までの事情を検討した上で、進歩陣営が選択できる代案的な立場を提案しておきたい。もちろん、その前に、北朝鮮の人権に対する韓国社会における「議論地形」と、この間、進歩陣営が見せた問題点について、先に省察する必要がある。

 

1. 北朝鮮の人権問題の浮上に関する背景



北朝鮮の人権が、国際社会の注目を受けるようになったのは、冷戦が解体された後、北朝鮮の食糧難で脱北者が大量に発生した1990年代後半からである。当時の国際社会は、北朝鮮に対する人道的な支援、脱北者の保護、そして北朝鮮政府に向けた人権侵害批判及び改善要求に乗り出した。2000年代に入り、一部国内外における市民団体のロビーの力を得て、UN人権機構において、北朝鮮の人権問題が取り上げられるようになった。2003年からはUN人権委員会で(2006年からは人権理事会で)、2005年からはUN総会において北朝鮮の人権決議が採択されはじめ、今日に至る。また、2004年、第60次UN人権員会で採択された北朝鮮の人権決議において、北朝鮮の人権に関する特別報告官制度が導入され、今までの人権状況をモニタリングし、UNに報告している。そして、2013年3月21日、第22次UN人権委員会で採択された北朝鮮人権決議(A/HRC/RES/22/13)では、北朝鮮の人権侵害に対する実態調査はもちろん、責任素材の把握を任務とする調査員会が構成され、1年間活動している2014年現在、UN人権理事会は、シリアと北朝鮮の人権問題に関する二つの調査委員会を運営している。北朝鮮の人権調査委員会は、3名の委員と20名余りの調査官として構成され、食糧権、拷問及び非人道的待遇、表現の自由、生命権など、9つの領域にわたった人権侵害、とりわけ、反人道的犯罪関連状況及び責任問題を調査し、2014年3月、第25次人権理事会に報告書を提出することを任務としている。委員会の活動延長のこともこの時に決定される。。こうした一連の北朝鮮の人権決議は、EUが主導しており、アメリカと日本もここに積極的に参加している。アメリカと日本は、2004年と2006年に、北朝鮮の人権法を制定した。韓国は、政権における「対北政策」の方向により、UNにおける北朝鮮の人権決議に対する投票と北朝鮮の人権法の制定に関する異なる立場を取ってきた。李明博政府の登場以後、韓国政府は、UNにおける北朝鮮の人権決議に対し一貫して賛成の表を入れているが、国内において、北朝鮮の人権法の制定は、国会及び世論の意見対立が伯仲しており、2014年2月初め、現在ではまだ成立されていない状態である。冷戦時代における韓国と北朝鮮は、熱い体制競争の延長線上において、互いの人権問題を誹謗のネタとしていた。しかし、冷戦体制が解体されはじめた1988年から1992年の間、南北対話及び交流が活発となり、人権問題を利用した互いの非難は、大きく減っていった。韓国・北朝鮮は、UNに同時に加入する一方、南北基本合意書を採択し、内政不干渉に合意した。もちろん、冷戦が解体されてから、国際社会では民主主義・人権・核の非拡散のような超国家的な規範が、国家主権よりその影響力が高くなったように見えた。1980年代、韓国で展開された民主化運動が国際的な関心事であったとしたら、1990年代に入ってからは、北朝鮮の核開発が国際社会の注目を浴びるようになったといえる。そして、一連の危機状況を経た後、1994年のジェネバ基本合意として、北朝鮮の核の凍結が行われた後、直ちに人権問題が国際的な関心事として浮上した。深刻な食糧難と大規模の脱北者発生がきっかけとなった。当時、北朝鮮の人権は、生存権を中心に理解されたが、国際人権機構の関心を受けながら、政治犯の収容所、公開処刑、宗教の自由など、その範囲が市民的・政治的権利(略称、自由権)として拡大していった。拙稿「南北韓人権からコリア人権へ」『歴史批評』2009年秋号、163~64頁。 1990年代末から、韓国においては、対北抱擁政策が展開され、交流協力と人道的支援を中心に、北朝鮮における住民の生存権の改善を掲げるアプローチが展開された。ところが、こうした流れは、北朝鮮の政権に対する圧迫、ひいては政権交代を通した北朝鮮人権改善を追求する保守陣営と「南南葛藤」を呼び起こした。韓国政府の対北抱擁政策時期における進歩的市民社会陣営は、政府政策を支持し、それが作り出した、開かれた空間において、交流協力に出る一方、人道的支援に偏った。北朝鮮の人権問題に対し、相違なる立場とアプローチを見せたが、それが韓国の人権と関連付けて考えたり、分断体制の文脈で把握できなかったりしたことは、興味深い共通点である。上記のように、1990年代に入り、北朝鮮の人権問題に対する公論化、批判的にいえば、北朝鮮の人権問題に対する標的アプローチには、国際政治体制と南北関係が変数として作用した。冷戦時代の勢力バランスが崩れてから、残った現実社会主義の国家における人権問題が浮上されたことが、一次的な要因であろう。中国・キューバとともに、北朝鮮の人権問題がUNの論議テーブルにおいて注目された。しかし、韓国社会において、北朝鮮の人権の問題が葛藤を作ったのは、冷戦解体だけでは説明しにくい。北朝鮮の人権問題をめぐる葛藤は、南北関係、韓国内の政府と市民社会の関係が、他の要因として働いた。南北関係が友好的であるとき、北朝鮮の人権問題は、水面下へ下っていたが、韓国社会の中では、先鋭なる政治的争点として浮上したといえる。

北朝鮮の人権問題の急浮上もしくは標的アプローチには、1987年以後、市民社会の地形変化、とりわけ、進歩陣営の分岐も「一口」であったことは否定できない。「民主化になったから、これからは、北朝鮮を普遍的な視点からみるべきである」、もしくは、「民主化運動を通した人権伸長を成し遂げた経験を、北朝鮮にも適用できる」という考えが起きた。韓国の進歩勢力の中で、民主化運動と統一運動の優先順位をめぐる論争は、1970年代からスタートしたがパク・ギョンソ、イ・ナミ『WCC窓からみる70年代における韓国民主化認識』知識産業者、2010年、283~97頁。、民主化以後、統一運動が大きく活性化された。大学においては、反共教育を批判し、「北朝鮮を正しく知る運動」のような統一教育が起きたし、統一運動の地域化・大衆化の試みもあらわれた。これは、保守勢力に、国家のアイデンティティを揺さぶる親北路線として映された。

統一運動は、民主化以後、方向を失った保守勢力に脅威として近寄った。彼らは、独裁と人権蹂躙の汚名を防ぐ手段が必要だったかもしれない。1994年、金日成(キム・イルソン)主席の死亡直後に続いた北朝鮮における食糧難と脱北の行列は、体制の無能力はもちろんのこと、崩壊の可能性までも呼び起こした。韓国の市民は、脱北者を手助けし、北朝鮮に対し人道的な支援をしながらも、脱北者の大量発生や彼らが証言する北朝鮮の人権状況にショックを隠せなかった。その時、危機に陥った保守勢力は、大きい支援者に出会った、変革運動陣営の中、民族解放(NL)グループの一部が、北朝鮮の民主化運動として変貌したことである。一部の対北支援団体の指導者たちも、北朝鮮政権の批判に対抗し始めた。その中心に、北朝鮮の人権問題があった。もちろん、当時の主流であったNLグループは、毎年の夏、北朝鮮と「凡民族大会」を開催するのに力を注いだが、北朝鮮のアキレス腱を触ろうとしなかった。民衆民主(PD)グループもしくは北朝鮮の人権問題を取り上げられる準備ができていなかったBo-hyuk Suh, “South Korea’s Progressives and North Korean Human Rights,” Journal of Peace and Unification 2:2 (Fall 2012), 30~31頁。。一部の運動勢力の保守陣営の投降(だとするとしたら)が可能だったことは、冷戦解体を自由民主主義の勝利として見なした主流の言説と北朝鮮の体制が、普遍規範を逆行する時代錯誤的な存在という認識が結合されたからである。保守勢力は、新しい形態の体制優越意識として、民主化過程とその後に持たれたコンプレックスを綺麗に洗い流し、北朝鮮の人権問題を利用して、進歩陣営を制圧できる斬新な談論を作り出せるという期待を持っていただろう。韓国の保守勢力の救援投手は北朝鮮?、これも同じく分断体制の傷を背負っていくべき韓国の進歩、いや韓国の現代史における宿命の一瑞である。

 

2. 各自躍進における脆弱性とその原因

 

韓国において進歩と保守の立場の差は、様々な分野にわたって明確にあらわれている。その中でも、両極化と分断という状況において、政治的にもっとも先鋭な対立を見せている分野が労働問題と北朝鮮の統一問題であろう。北朝鮮をあるがままに尊重しながら、互いの信頼を築き、共同の利益を求め、漸進的かつ平和的に統一を推進していこうというのが進歩側の基本的な立場である。一方、韓国体制への吸収統一、それではなかったら、南北間の対立状態を持続しながら、分断既得権を再生産しようとすることが保守側の立場である。北朝鮮の人権関連の思案についても、両側の立場の差は明らかである。図式化の危険を背負いながらも、理解を助けるために、次のように語ることができると考えられる。北朝鮮の人権の条件が、非常に深刻であるという立場が保守陣営の判断で(一部、それに同意しながらも)、それが誇張されているという立場が進歩陣営の判断である北朝鮮の人権問題に関する政治的な視覚が、科学的実体分析を難しくするという指摘については、ヘイゼル・スミス(Hazel Smith) 「北朝鮮は反人道的な犯罪国家なのか」『創作と批評』2013年秋号参照。。脱北者に関して保守側は、難民もしくは亡命者として、進歩側は主に経済移住者として、それぞれ規定している。北朝鮮の人権状況が、劣悪的になった原因に対して進歩勢力は、アメリカと西方における広範囲な対北制裁、停戦及び分断体制、自然災害など、外部的・偶然的な要因を強調する反面、保守勢力は、北朝鮮体制の構造的な問題点を指摘する。北朝鮮の人権の改善方向に関して、進歩勢力は、国際社会と韓国の役割分担下において、南北関係の改善を通じた交流協力、人道的支援、人権対話を強調するが、保守勢力は国際社会と韓国が一致した声で暴露、圧迫することを要求し、ひいては政権交代の必要性までも言及している。具体的に見てみると、対北の人道的支援に対しては、保守が相互主義と透明性の保障下における条件付きの支援を、進歩が生存権の改善のための無条件支援をそれぞれ主張する。UNで行われている北朝鮮の人権決議については、保守が賛成を、進歩が懐疑もしくは反対を表明してきた。そして、アメリカにおける北朝鮮の人権法と韓国における北朝鮮の人権法の制定に関する動きについても、保守が賛成、進歩が反対をしてきたユン・ドクミン、キム・グンシク「北朝鮮の人権改善のための合理的接近:社会統合的視覚」社会統合員会、2011;Bo-hyuk Suh, “Controversies over North Korean Human Rights in South Korean Society,” Asian Perspective 31:2 (2007).。

上記のように、北朝鮮の人権問題に対しての保守勢力と大別される進歩勢力の基本的な立場を検討してみたが、現実においては、単一ではなく、その強調点によって再び詳細に分けられる。進歩勢力の立場は、大きく三つに分類できるが、それぞれの動きを関連政党及び市民団体の活動を取り上げると、次の通りである 以下は、Bo-hyuk Suh, “South Korea’s Progressives and North Korean Human Rights,” 34~40頁を修正・縮約したものである。。

一つ目、民族主義の視点である。この視点において北朝鮮の人権をめぐる問題は、人権の普遍性を実現するものであるよりは、統一を達成しなければならない民族問題の下位領域である。その点において、北朝鮮の人権問題を通して、北朝鮮を批判し、しかも政権交代を主張することは、反民族的で半統一的な形態となる。それとともに、この視点における北朝鮮の人権問題は、北朝鮮を攻撃するための政治的手段として考えられるため、積極的に取り上げ難い「ホットイッシュー」である。

政党の中で、北朝鮮・統一問題を民族主義の視点から考えている代表的な政党が、統一進歩党である。もちろん、立党当時、3つの進歩政党(民主労働党・国民参与党・新進歩統合連帯)が参加したため、統進党全体の路線が民族主義の視点とは言えない。しかし、多数派は、北朝鮮の人権問題が、北朝鮮に対する圧迫用として扱われているとし、事実上、北朝鮮の人権侵害に無関心のように見える。結局、北朝鮮問題に対する認識の差異は、統進党が分裂する原因となった。程度の差異はあるが、民主党の一部においては、北朝鮮の人権問題を民族主義視点からアプローチしている。市民社会においては、韓国進歩連帯が代表的である。彼らは、朝鮮半島における平和定着と南北関係の発展を優先しながら、北朝鮮の人権問題はほとんど取り上げていない。その結果、民族主義の視点に立っている進歩陣営は、北朝鮮の人権問題に対し沈黙しているという指摘を受けている。

二つ目は、普遍主義的な視点である。他国における人権問題と同様、北朝鮮の人権問題も、同じ基準で判断し、改善のために関与すべきという立場である。もちろん、このような視覚に立つ進歩勢力は、北朝鮮の人権問題を取り上げる過程において、分断と軍事的な対置など、朝鮮半島における特殊的な状況を考慮すべきという点を知っている「極端的普遍主義」と「穏健な普遍主義」をわける。一部の保守勢力が主張する北朝鮮政権交代を通した人権改善は、極端的普遍主義の例としてあげられる。。現在はない、進歩新党が主にそうしった立場に見せていた。進歩新党は、北朝鮮の人権問題を取り上げながら、「人権を国際政治的な圧力手段として利用する代わりに、南北の人権問題を共同に論議できる人権対話のチャンネルを構成する」と明らかにした。こうした立場は、現在の正義党と労働党に入り込んでいるとみられるが、少なくとも正義党は北朝鮮の人権問題に対する公式的な立場を準備していることを把握している。アン・チョルス(安哲秀)委員も、2012年の大統領選挙の候補当時、北朝鮮の人権状況が全般的に劣悪的であったことに共感が形成されるとし、人道的な問題解決と脱北者の人権保護はもちろん、総合的な北朝鮮人権の改善計画を樹立すると公約したことがある。進歩的な市民社会の陣営の中においても、普遍主義的な視点において、北朝鮮にアプローチしようとする動きがあった。2003~2004年、アメリカにおける北朝鮮の人権法の制定の動きに対応しながら結成された朝鮮半島人権準備会(人権運動アラン部屋、カトリック教人権委員会、多産人権センターなどが参加)は、UNに「北朝鮮人権の代案報告書」を提出し、不定期的に『韓半島人権ニュースレター』を発行したりしたこともある。これを通じて、この会は北朝鮮の人権状況と北朝鮮の軍事主義を批判したこともある。しかし、進歩陣営における普遍主義の視点は、民族主義的な視点や実用主義的な立場よりは、その動きが明確ではない。民主化のための弁護士の会、人権運動サラン部屋、参与連帯など、一部の人権・社会団体が、この視点において、きっかけがある時、北朝鮮の人権問題を取り上げてきたが、持続的な活動を見せていない。普遍主義の視点は、民族主義の視点とは異なり、北朝鮮の人権状況における深刻性と韓国の役割に共感する。ただし、改善方法において明快な代案を提示できないでいる。

三つ目は、実用主義的な立場である。この立場は、民族主義と普遍主義の視覚の中間に立ちながら、戦略的な接近態度を見せている。対北朝鮮に対する抱擁政策の立場から見れば、北朝鮮の人権は、朝鮮半島の平和及び南北関係発展と連携しアプローチする問題として、南北間の信頼レベルを反映し、実践可能なことから漸進的に取り扱う必要があると判断している。キム・デジュン、ノ・ムヒョン政府は、▲北朝鮮の食糧難に対して人道的支援を通した北朝鮮住民の生存権の改善、▲脱北者の韓国入国の積極的な受容と定着支援、▲離散家族の再会と拉北者の送還などを通した南北住民の間における「幸福追求権」の保護のような政策を展開した。2012年、ムン・ゼイン(文在寅)民主統合党の大統領選挙候補も、当時の北朝鮮人権問題に関心を表明し、北朝鮮も人権改善に取り組むべきと言及したことがある。しかし、現実では、このような実用主義的な立場は、北朝鮮における核問題の平和的解決に基づいた朝鮮半島の平和定着という課題に押されて、北朝鮮の人権に対する政策比重は低かった。

北朝鮮の人権問題に関する戦略的アプローチは、現在の民主党の政策として継承されている。民主党は、「太陽政策の大原則は、未だに有効である」民主党ホームページ(www.minjoo.kr)の初期画面。2014年1月16日検索。 と主張しながら、人道的支援を通じた生存権の中心における北朝鮮の人権改善を基調にしている。市民社会における対北の抱擁政策の継承を闡明し創立した韓半島平和フォーラムが、実用主義的な視覚に立った代表的な団体である。このフォーラムは、2012年の大統領選挙を前にして、統一外交安保の分野におけるビジョンと10代課題を提示したことがある。それに、北朝鮮の人権状況に関して、北朝鮮の反発と南北関係の安定的管理を考慮し、慎重に問題を提起し、南北間の信頼構築を深化させ、南北対話を通した北朝鮮における人権問題の改善余地を確保していくという立場を入れさせた韓半平和フォーラム『失った5年、再び抱擁政策だ』サムイン、2012年93~98頁。。戦略的な接近は、北朝鮮の人権問題の普遍性を否認していないし、イデオロギーにとらわれ、実質的な効果が制約を受ける問題を克服できる可能性をおいている。しかし、他の政策目標と連携する過程における文脈を過度に意識し、一貫性を失う恐れがある。

上記で検討したように、進歩陣営の北朝鮮における人権問題に対する具体的な立場は、単一ではない。抱擁政策を通した制限的で戦略的なアプローチの経験を除いては、明確ではない。進歩陣営は、どのような省察が可能であるか。

まず、客観的な事実として、北朝鮮で人権侵害の問題があり、人権の実状が平均以下という深刻的なレベルであると判断するのにケチる必要なない。民族主義的な観点は、この客観的な側面を対北観・統一観のような主観的側面に従属させるという批判に直面している。もちろん、北朝鮮の人権状況を直接把握できず、誇張もしくは悪用の素地があるかもしれないが、大量の脱北自体と交差分析された脱北者たちの証言を通して、北朝鮮における人権状況は、全般的に非常に劣悪していることと評価される。方法上としても、一旦、事実の領域において取り上げる必要があるが、行き過ぎた政治的考慮が、進歩の肩を自ら重くさせてきたことが事実である。

二つ目、北朝鮮における人権に関する論議の枠を、進歩の観点において提示できず既成の議論を追っていったり、これを否定したりするという消極的な態度を克服すべきである。保守陣営が主導してきた既成の北朝鮮における人権に関する議論は、「北朝鮮政権に責任があるように見なされる北朝鮮地域内における人権侵害問題」として描かれる。この場合、北朝鮮人権に含まれる、他の範疇としての脱北者の人権、離散家族などをめぐる人道的な問題は周辺化され、発展権と平和権は排除されてしまう。ここで、北朝鮮の人権は(南北人権もそうであるが)、分断体制と遭遇する。既成の北朝鮮における人権をめぐる議論は、その対象を北朝鮮地域と気朝鮮の政権に縮小し、その範囲と関連行為者が、朝鮮半島の次元ではないと注入してきた。北朝鮮が、分断の片方ではなく、一般的な一つの国家として見なしていることである。北朝鮮の人権を北朝鮮内の現実だけとして限定してみると、その実態と改善方向を総合的に把握することは難しい。その間、進歩陣営が北朝鮮人権の議論に消極的にみえたことは、保守が作っておいた制限的な北朝鮮人権をめぐる議論に参加することを拒否していたからである。問題は、代案的な議論の枠を正立できなかった点である。北朝鮮人権問題に対し、進歩が沈黙に近い消極的な態度を見せてきた事情は、そこからスタートしていたと考えられる。

三つ目、非難を浴びることを覚悟して言うが、大半の進歩陣営は、国際人権の議論及びメカニズムの動向に対して無知であったか、それを知ろうとしなかったか、であった。そこには、帝国主義、植民主義、オリエンタリズムなどで国際政治を把握してきた進歩陣営の慣性が働いている。国際政治現実に対する批判的視点は、未だに有効である。歴史の進歩は、仮に遅くて満足できないこともあるが、国際的な次元においても成し遂げられる。とりわけ、人権問題では、力と規範、国家利益と普遍価値の競争は力動的である。そんな中、人権範疇の拡張、人権改善方法の発展、国際連帯の進展のような人権の発達過程は、韓国社会の人権はもちろん、北朝鮮の人権においても応用できるかもしれない。したがって、進歩陣営は、国際人権における議論及びメカニズムの動向を上手に把握し、活用できる知恵を揃えておくべきである。その間、それができなかったため、現実における適切な政策を選択しておいても、対外内に十分に理解を求められない場合が少なくなかった。国内外を問わず、聴衆を説得する共通言語(国際人権談論)とそれに基づいたアプローチを試みるなら、少なくても普遍主義、実用主義の視点における進歩陣営は、北朝鮮の人権の改善のための現実的な代案を提示できると考えられる。

 

3.変革的な中道主義とコリア人権

 

北朝鮮の人権問題は、我々と特殊関係にある北朝鮮を相手に普遍価値を実現しなければならない難解な課題である。冷戦解体を普遍価値の拡大過程において、一代の伝記として把握するという学説が存在すると同時に、冷戦解体の安保脅威が高まった北朝鮮が、国際社会の人権改善の要求を政治攻勢としてみなしている点も考慮するバランスを取った認識が必要である。北朝鮮の人権問題は、普遍―特殊課題としての特徴を同時に持っていることなので、それほど片方が傾ける危険も存在する。その間、保守勢力は、普遍主義論(実際にはかなりの部分に該当する根本主義、絶対主義という視点)に立脚し、北朝鮮の人権問題を通じて、北朝鮮に対する圧力、統一議論の主導及び政治的な優位先占などの効果を獲得できた場合が少なくない。進歩陣営は、明確な立場を持っておらず、とりわけ、具体的な政策代案を出せないでいながら、保守陣営における言説と競争に出ることもできなかった。これからは、進歩陣営が北朝鮮の人権問題に対して明確な立場を持って、持効性のある政策代案を提示すべき時であるといえる。北朝鮮の人権をめぐる議論は、統一論を再構成する必要性も呼び起こしている。既存の統一論が政治理念及び結果中心の論議として流されてきた点は、多く指摘されてきた。このような様子に対しては、保守勢力が主導してきた北朝鮮人権における議論の場合と同様、批判が可能である。しかし、示唆しているところも少なくない。代案的な統一論は、▲統一を過程として認識し、漸進的な統合として接近し、▲そこに朝鮮半島のすべての構成員、とりわけ、統一論議から疎外されていた民間の参加を保障し、▲人類普遍の価値を具現するという原則下において新しく構成できる。この中で、三つ目が既存の過程統一論において追加された部分である。

「過程としての統一」の核心は、単一国民国家の樹立というそれ自体ではなく、朝鮮半島に住んでいるすべての人々が、分断体制という束縛を乗り越え、人間らしい人生を作っていくという努力にある。統一を普遍価値として接近することは、▲南北協力の内容を豊富にし、▲韓国社会の統一力量を結集し、▲国際的支持と協力を拡大し、▲朝鮮半島の統一が人類文明の発展に寄与するなどの複合的な意義を持っているからである拙稿「韓半島統一と普遍的人権の実現」地球村平和研究所編『統一韓半島に向けた夢 コリアンドリーム』テボン、2012年、234~35頁。。普遍価値を装着した過程としての統一論は、ペク・ナクチョン(白楽晴)が主張した「変革的中道主義」これについては、ペク・ナクチョン「2013年体制と変革的中道主義」『創作と批評』2012年秋号参照。とは相応する。なぜならば、人権を含めた統一論は、一方で対決的理念に基づいた分断体制を撃破できる一つの方法とみなすことができるし、他方、北朝鮮・統一問題をめぐる韓国社会内におけるイデオロギー葛藤を超え、幅広く共感帯を作り出すことができるためである。問題は、保守陣営が主導した既成の北朝鮮の人権をめぐる言説が、人権「性」はもっとも弱い代わりに政略的な性格が強いという点である。

北朝鮮の人権問題は、韓国社会における新しい類型の葛藤の素材となり、北朝鮮を他者化する言説として長く活用されてきた。この時、北朝鮮の人権は、韓国との体制の差異として注目される人権(自由権)侵害の問題に集中され、そのため、人権改善を名目として、北朝鮮の体制に関する法力的な接近も許されるという主張が聞こえてくる。人権は、その社会の発展レベルを反映しているが、時間と場所を問わず、尊重する基本権(生命権と生存権など)があり、その社会の要求により、そのまわりが絶えず拡張される性質がある。保守勢力は、今日、両国化が深刻している国際紛争が持続されている現実、とりわけ朝鮮半島における開発権と平和権 パク・フンスン「UNにおける開発権の論議動向と北朝鮮の人権での時事点」及び拙稿「国際平和権と北朝鮮人権」北朝鮮人権研究センター編『北朝鮮の人権理解の新しい地平』統一研究院、2012年。 が緊要であるという点を認めていない。この時、人権における各項目の間には、総合依存的で不可分の関係が形成されるウィーン世界人権大会宣言文(1993年6月25日)第5項。。そうでない場合にあらわれる選択主義は、選択された人権の完全な実現も成し遂げることができない。この点において、進歩と保守の両方ともに、北朝鮮の社会権と自由権を相対的に強調してきたという点において批判から逃されない。人権内における相互依存性とともに重要な点が、人権と異なる普遍価値の間における相互依存性である国際人権協約は、UN憲章を害するものとして解釈できない(国際自由権規約第46条)。これは、UNが追求する様々な目的(人権、平和と安保、開発、人道主義)の間の調和と友愛、協力の尊重を意味する。。北朝鮮の人権は、北朝鮮における体制の問題だけでなく、分断として住民の平和な生活と社会の持続可能な発展が構造的に制約を受けている朝鮮半島の現実と深い関係がある。この点は、程度や形態の差があっても、韓国も同様である。北朝鮮の人権を、北朝鮮内の人権問題に限ってアプローチする際の限界がここにある。人権増進という名目で、人道主義を無視し、平和を害する時、人権根本主義における危険が発生する。韓国社会の極端的保守勢力が、こうした過ちに陥っており、その反面、進歩はこの点に注目したが、普遍価値を互いに調和させる方法を提示できなかった。

この他にも、道具主義、相対主義、差別主義も人権問題を取り扱う際に陥りやすい罠である。進歩陣営内における民族主義視点は、相対主義、道具主義の疑いを受けられるし、保守勢力は、差別主義的な態度として批判されることもある。光っているものが、すべて金ではない。人権増進のためには、その過程と手段も「人権らしい」であるべきで、何よりも人権増進に出ている主体が人権感受性を十分に持っているべきである。しかも、人権改善の主体と対象が、敵対関係であるなら、もっとそうであるべきだ。冷戦時代のヨーロッパにおいて、東西の両陣営が、対話の枠を作り、相互を尊重し、信頼助成に力を入れ、絶えず人権増進をめぐる議論を繋いでいった事例は、良いモデルとしてすべきであるArie Bloed (ed.), The Conference on Security and Co-operation in Europe: Analysis and Basic Documents 1972~1993, Kluwer Academic Publishers 1993; ソ・ボヒョク編著『ヨーロッパの平和とヘルシンキプロセス』アカネット、2012年。。

北朝鮮内における人権状況が、もっとも劣悪で、そこに北朝鮮体制の責任がある点を認めることは、進歩陣営のアイデンティティとは関係のないことである。北朝鮮の人権状況がそのようになったことは、北朝鮮政府が一時的な責任を持つべきである。ただし、北朝鮮の人権を北朝鮮内における人権侵害問題として制限し、その原因を北朝鮮の体制にするなど、対北圧力の手段や国内政治的な目的として利用することは警戒すべきである。人権を名目に、人権に反する形態は、明確に批判されるべきである。しかし、進歩陣営がそうした保守陣営からの批判に留まり、代案を提示できないのであれば、保守勢力における人権政治の形態を正すことも難しいだけでなく、北朝鮮の人権問題に沈黙しているという汚名から脱することもできない。

以上の論議を反映し、進歩陣営における北朝鮮の人権政策に関する基本的な立場は、次のような五つのテーゼとしてまとめられる。

① 北朝鮮の人権は、人類普遍価値を朝鮮半島に具現する努力の一環として、北朝鮮の人々の人権状況とその改善方案、そして関連動向を含んだ問題である。
② 北朝鮮の人権は、北朝鮮内における人権、脱北者の人権、南北間における人道的問題として構成されており、朝鮮半島のすべての住民の平和的な生存と幸福な人生(生活)を追求する権利と直結されている。
③ 北朝鮮の人権問題の原因と解決策には、北朝鮮体制はもちろん、分断体制及び国際政治秩序が関連されている。
④ 北朝鮮の人権改善のため、各自がおかれた立場と能力を尊重しながら協力し、実質的な改善に貢献すべきである。
⑤ 韓国は北朝鮮の人権の改善努力の実効性を高めるために、南北間の協力を増進し、分断体制を克服するために力を注ぐべきである。

人権問題において国家は、ヤヌースと同様である。人権侵害者でありながら、人権改善の責任も負うためであるスタンリー・コーエン『残忍な国家、無視する大衆』ジョ・ヒョゼ訳、チャンビ、2009年。サンドラ・フレッドマン『人権の大転換:人権共和国のための法と国家の役割』ジョ・ヒョゼ訳、ギョヤンイン、2009年参照。。北朝鮮の人権問題に対して、韓国の保守は、前者を強調しながら、後者を無視し、進歩は前者に沈黙し、後者に関する代案を提示できなかった。進歩陣営が、保守勢力が主導した北朝鮮の人権言説と国際人権機構の恐れに対して負担を持っていることは、それが、北朝鮮の人権の実効的な改善に貢献するものでなく、朝鮮半島の平和と南北和解に逆行する危険が大きいとみているためである。上記で提示した進歩陣営が採択できる五つのデーゼは、その間進歩陣営が北朝鮮の人権の議論に消極的であった姿勢を克服し、実効的な改善に出る根拠を提示してくれる 時間、行為者、文脈などを考慮した具体的な北朝鮮の人権の改善方案については、拙著『北朝鮮人権:理論・実際・政策』ハングル、2007年、413~21頁。イ・デフン「非葛藤的な北朝鮮の人権介入」韓国人権財団主催、2008済州人権会議発表文(2008年6月28日)参照。。

筆者は、既成の狭い、北朝鮮の人権言説の問題点を指摘し、「南北間が国際人権原理と相互尊重の精神下において、人権改善のために協力していく過程」として「コリア人権」を提示したことがある拙著『コリアン人権:北朝鮮の人権と韓半島平和』チェクセサン、2011年。。コリア人権は、北朝鮮の人権が、普遍―特殊問題という認識下において、朝鮮半島の次元でアプローチする方法においては明確な限界がある。南北間における相互異質的な体制と敵対関係の中において、信頼助成と協力関係の形成は、北朝鮮の人権の実質的な改善のための前提条件である。そうした点において、コリア人権は変革的中道主義を北朝鮮の人権問題に適用した論理として、進歩的代案として取り上げる価値がある。

これから進歩陣営は、明確に主張すべきである。保守勢力の主張のように狭い視点、一方的かつ攻撃的なアプローチ、変種優越意識に満たされた北朝鮮の人権改善論は、人権らしくないし、その実効性が疑わしい。実質的な改善は、北朝鮮の人権が分断体制の解体作業とともに歩むべきコリア人権の一部である認識を持って、北朝鮮を批判とともに協力的な姿勢で対応する時に成し遂げられる。この際、南北関係は、北朝鮮の人権と後先の関係ではなく、北朝鮮の人権問題に関与できる韓国の固有のチャンネルであり、北朝鮮の人権をコリア人権のレベルからアプローチする機会の窓である。しかし、以上の内容は、進歩陣営が北朝鮮の人権問題において選択できる代案の模索であり、その内容が特別に進歩的なものではない。ただ、拡張された人権の普遍「性」を具体的な現実に合理的に適用する努力の一部として意味があるといえる。

翻訳=朴貞蘭(パク・ジョンラン)

 

李政勳 / 東アジア言説、行く路来る路――白永瑞『核心現場から東アジアを問い直す』の内外を考察する

2014年 3月1日 発行

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