창작과 비평

[現場] 皆のための緑に向かう道 / 李承哲

 

創作と批評 194号(2021年 冬)目次

 

現場

 

皆のための緑に向かう

労働運動の視点からみた正義の転換

 

 

李承哲

全国民主労働組合総聯盟 公共運輸労働組合 政策企画部室長.

108mph@gmail.com

 

 

「気候」と「転換」について語らない政治勢力はない。気候関連のニュースも毎日のように流れる。気候問題が「メガトレンド」であることを実証的に見せてくれた最近の事例は、今年5月に開かれた「P4Gソウル首脳会議」だった。この行事には、文在寅大統領をはじめとする47名の世界各国の首脳級―高位級人士らと国連、国際通貨基金(IMF)等の国際機構の首長21名が参加した。トヨタとシティグループ、GM、Dell、ネスレ、コカ・コーラ、SKなど屈指の多国籍企業も参加した。韓国政府は、事前に大々的な広報とともに、ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領の参加を打診するなど、声望の高い最高位級人士らの参加を組織することに渾身の力を込めた。さらに、現代自動車副社長とPOSCO会長、SK発電代表理事は、「炭素中立委員会」の委員となった。ESG経営[1. ESGは、環境(environment)、社会(social)、ガバナンス(governance)の略字であり、韓国語にすれば、社会責任投資または持続可能投資と通称する。ESG経営は、企業の利潤と価値を高める際、気候変化に対する対応及び社会貢献、健全な支配構造など非財務的要素の重要性に注目し始めながら提起された。]やRE100%という、いわゆる環境に優しい経営戦略が流行を超え、企業経営の必須要素になりつつある[2. RE100(renewable energy 100%)は、100%再生エネルギー電力使用を約束した大規模の企業が企業の再生エネルギーの需要と供給の拡大のために協力するグローバルイニシアティブを意味する。]。

労働組合も気候正義の実現と「正義の転換」に大きく注目している。全国民主労働組合総聯盟(以下、民主労総)は、「気候危機対応特別委員会」を構成し、金属・公共運輸・建設・事務金融など関連の産業別労組と一緒に、気候正義団体協約案の準備、全組合員に対する気候関連教育、政府・国会の論議など、本格的な気候事業を展開し始めた。民主労総が準備している大統領選挙に向けての要求案にも正義の転換が主要項目として格上げされ、位置付けられている。

政府も、使用者も、労働組合も脱炭素政策に賛同しており、積極的に参加しているから良かったといえるだろうか。皆が正義の転換について話しているから、これから葛藤や反目は無くなり、和合と協力が訪れるのだろうか。不幸にもそうではない。互いの目指す「緑」(グリーン)が異なるからである。政府と使用者の足早は、労働者の主張する「脱炭素」「正義の転換」の方向とは大きく違う。まさに緑は同色でない時代を迎えている。

 

方向が違えば、速度は無用である:市場依存型転換の陥穽

 

正義の転換の第一段階は、脱石炭と再生エネルギー体系への移行である。韓国における2018年の温室ガス総排出量727.6百万トンCO2eq[3. 主な温室ガスの直接排出量に地球温暖化係数を乗じ、代表的温室ガスであるCO2に換算した単位。]において、エネルギー部門の排出量は632.4百万トンCO2eqであり、87%を占める。政府の対策の中で最初に火力発電所の閉鎖が言及される理由もここにある。このような状況下で正義の転換の実験台としてエネルギー産業が言及されるのは、ある意味当然である。転換の方向をめぐる初めての戦場なのである。

表面的には石炭火力発電を中断すべきだということに異見がない。政府も、発電労働者らも同意見である。問題は、これをどのように実現するのかという経路と方法だが、労働組合が公共中心型転換を主張するのに対し、政府と企業は市場依存型転換に傾く模様である。

政府は、石炭火力発電所の民営化への推進に失敗した直後から、いわゆる「競争体制の導入」という名分で民間発電所の比重を高め始め[4. 民間発電の設備の比重は、李明博政権時代に発表された第4次電力需給基本計画(2008)の実行以後、2009年から爆増し始めた。これは、政府の発電産業の市場開放政策、つまり新規設備を中心とした民間業者の参入と、これを通じた競争体制の導入政策によるものである。LNG複合火力建設が民間企業によって進められ始めたことに続き、2011年循環停電事態が発生すると、LNGだけではなく、石炭火力にも財閥大企業の参入を許した。]、徐々に大きくなった民間発電の比率は、2020年に入ってから30%を超えた。これに加えて、電力産業の民営化の一環である電力販売市場の開放の動きも絶えず登場しており、再生エネルギー発電社と企業購買者間の直接電力購買契約を可能にさせ、発電部門の競争を煽るPPA[5. PPA制度が導入されれば、再生エネルギーを財閥大企業が事実上独占し、結果的に大企業には安い電気料金を、一般市民には高い電気料金を付加するようになる。より大きな問題は、このような措置が電力産業を利潤のメカニズムに従属させ、それによって最終的には電力産業の完全民営化へとつながり得るという点である。アメリカのバージニア州の規制委員会が企業PPAを許可しなかったことも、「一般顧客が料金の引き上げ費用を負担することは、公平性を毀損する」という理由であった。PPAの許容は、電力販売市場の開放の予兆として解釈され得る。国際的に進められているRE100キャンペーンと、最近国会を通過したPPA法案は、企業の利潤論理と市場主義環境団体の利害とが劇的に合致した結果物である。実際に韓国においてRE100キャンペーンを積極的に主導したグリーンピースの場合、企業のRE100のために、電力市場の民営化を招くPPA制度の導入を促してきたのである。]法案も「グリーンエネルギー」を名分にこっそりと入り込んできた。発電大企業の利潤の保障手段になった天然ガスの直輸入比率も毎年高まり、去年は22%を記録した。韓国電力と発電公企業、ガス公社等のエネルギー公企業は、このような民間企業との持続的な競争圧力と収益性の追求の圧迫の中で運営されている。このように民間企業の直接購買量が増えれば、国家全体的には需給が不安定になり、一般消費者料金の引き上げをもたらす可能性も高まる。

このように公共エネルギーが持続的に脅かされる中、再生エネルギーへの民間の参入と拡大は速いスピードで進んでいる。政府が発表したエネルギー転換政策もR&D支援、資金融資の規制緩和、M&A支援、企業支援法及び事業転換法の改正など、その大半が「企業支援」として提示されている[6. 「韓国版ニューディール2.0推進計画」政府関係部局合同、2021.]。これは、これまで公共部門を中心に進められた石炭発電が退出された後のところを、民間の財閥大企業が占める「発電産業の迂回的民営化」の新たな形態として解釈され得る。

ところが、市場と企業に任せておくエネルギー転換が成功できないという兆候は、すでに世界中のいたるところで見られている。2007年、ドイツ政府は2020年までに1990年に対比して温室ガス排出を40%減らすことを骨子とする「2020気候変化行動プログラム」を発足した。市場基盤の政策を主に活用する包括的な国家計画だったが、2017年のドイツにおける温室ガスの減縮は30%を下回り、結局ドイツ政府は減縮目標を引き下げた[7. William Wilkes, Hayley Warren and Brian Parkin, “Germany’s Failed Climate Goals,” Bloomberg 2018.8.15.]。

ヨーロッパで最近再生エネルギーに対する新規投資が減っているのも同じ脈絡である。過度な費用の発生問題によってFIT制度(発電差額支援制度)[8. 民間の生産した電気の取引価額が、エネルギー資源別に標準費用を反映した「基準価額」より低い場合、その差額を政府が支援する制度。これは、再生エネルギーの発電源に転換する過程において、主に民間発電事業者の収益を保障するために使われた。]が縮小されると、多く投資していた民間資本が撤収し始めた。太陽光への投資ブームは、諸国で5年程度持続されたが、FITが縮小され、急激に減る動きを見せる。すなわち、市場に任せておいたエネルギーの転換は、速度と規模の面において気候危機の緊急さに応えていないのである。

各国の公共部門の労働組合が「公共エネルギー」について詳しく調べ、関連の要求を打ち出すのも、こうした理由からなのである。フランスエネルギー労働組合(FNME-CGT)は、2020年の下半期に公共エネルギーシステムを守るためのストライキに突入し、「(このストライキは)エネルギー供給の公共性のためだけでなく、社会的弱者の排除や地球温暖化に立ち向かった闘争」だと規定した。イギリス労総(TUC)は、2019年に電力部門の完全再公営化を要求し、同じくイギリスのユナイト・ユニオン(Unite the Union)も「労働者転換(Workers Transition)」概念を通じて、「積極的な公共所有と公共投資が正義の転換における成敗の核心的な要素」であるという立場を提示した。スコットランド労総(STUC)は、イギリス政府が全エネルギー部門を公共所有化する必要があると主張する。メキシコの電力労組(SME/UNTyPP)は、前政府で行われた民営化措置を撤回しようとする現政府との協力事業を進めている。彼らは、このことが、(南米で2番目に大きい産業である)エネルギー産業政策に重大な転換点になっており、世界的にもエネルギー産業に対する「公共的アプローチ」の事例として意味があると評価する。

民間企業の目的は、当然「利潤」にならざるを得ない。収益が保障されなければ参入せず、参入してからも収益中心に運営され、収益が減ったり、無くなれば、撤収する。これがまさに市場論理なのである。ところが、エネルギーは国民の基本権であり、かつ公共財である。地域や階層に関係なく、誰もが普遍的に享有できるように供給されなければならない。安定性も重要な課題である。市場の状況や費用論理を超え、恒常的で安定的に供給されるべき必須財貨だからである。このような側面からすれば、「エネルギー」と「民間」とは、そもそも合わない組み合わせである。炭素発電の中断と再生エネルギーへの転換は当たり前であり、必ず実現されなければならない目標である。しかし、その場を代替する再生エネルギー発電は、「民間の稼ぎ手段」ではない、「平等な公共財貨」でなければならない。つまり、「公共中心型転換」なのである。

 

国民のエネルギー基本権と公共中心型転換

 

脱石炭・再生エネルギー中心のエネルギー体系への移行は、エネルギー産業構造と政策の大々的な転換がなければ不可能であり、その方向は「エネルギー基本権が保障される公共中心の転換」である。より具体的には発電6社の水平的統合と民営発電所の公営化である。現在の5+1(火力5社及び原子力1社)発電公企業体系は、互いの収益競争を煽る過程において、私企業形態の経営へ旋回せざるを得ない状況をつくった。私企業形態の経営の弊害は多くのところで見られたが、その大半は利潤拡大の目的と関連のある内容である。発電社間の費用の節減競争は、小売料金の安定化を阻害し、人件費の節減のための非正規職及び外注下請けの拡大をもたらした。泰安(テアン)火力発電所の金鎔均労働者の死亡事故は、このような危険の外注化が生んだ悲劇であった。それ故、現在の発電公企業の体系を一元化する「統合発電公企業の設立」が必要であり、この過程で民営化された発電所の公営化が併行されなければならない。とくに、政府が強制し難い民間発電所が多くなればなるほど、その稼働期間によって温室ガスの排出期間がいっそう増える「カーボンロックイン(Carbon Lock-in)」効果が高まるという点を重要に考慮しなければならない。さらに、再生エネルギーをベース電源にする過程において必要な転換交角及びバックアップ電源の役割を担うLNG発電所の公営化も必要である。

もちろん発電会社の統合が最終的な目標にはなれない。統合発電公企業の設立を通じて、現在のような競争体制から発生する費用を減らし、それを石炭火力発電の早い中断と公共再生エネルギーに対する全面的な投資に変えなければならない。発電公企業は、現在も再生エネルギーの義務割当比率を合わせるために、再生エネルギー事業を展開しているが、制限された立地要件及び事業環境、発電所間の競争による不要な費用等の問題が生じている。統合された発電公企業は再生エネルギー事業戦略を有機的に再設定し、地域別事業団による地域社会との協力体制の下で、より責任のある再生エネルギー事業に着手することができる。統合発電公企業の再生エネルギーの拡大に対するこのような画期的寄与は、「統合発電公企業のグリーン化」といえよう。

「統合発電公企業の民主化」も必ず必要である。公企業が陥りかねない官僚主義と非効率性を克服するために、現在のような政府部局の官僚統制から脱し、地域社会と市民、労働者が直接運営に参加できるようにする措置が必要である。現在の公企業体制ではない、「グリーン化・民主化された統合公企業体制」へと移行しなければならない。

 

国家責任の雇用が必要である

 

」問題である。発電労働者が経験する不安は、その中でも最も大きい。第9次電力需給基本計画によれば、政府は2034年までに石炭火力発電所30基を閉鎖するという計画だが、これは、言い換えれば、2021年現在、石炭火力発電所で働いている約2万5千名規模の雇用が風前の灯であるという意味である。現在石炭火力発電所全体の労働者のうち、正規職は1万4千余名であり、非正規職労働者(清掃・警備・施設の子会社、定期点検、燃料・環境設備及び運転等)は、1万1千余名と集計される。政府が発表した通り、LNG発電所の転換配置等が行われるとしても、非正規労働者の業務特性上、彼らすべてを包括することは難しいかもしれない。このまま石炭火力発電が閉鎖される場合、最小8千余名の非正規労働者が職場を失うことになるとみられる。

雇用規模が約36万名の自動車及び部品産業の場合も、内燃機関から電気自動車への転換によって雇用脅威が深刻化している。国内の自動車産業の直・間接雇用人員が190万名に上るという点を考えれば、これは単に少数の業種の懸案レベルを超え、労働者全般の問題になる。

しかし、政府が打ち出した労働及び雇用対策は依然として「職業訓練と就労斡旋」程度にとどまっており、これさえも実効性のない発表にとどまっている。政府支援策の大半はむしろ企業に偏っているように見える[9. 政府の関係部局合同で発表した「産業構造の変化に対応した公正な労働転換支援方案」(2021.7.22)は、次の通りである。 使用者支援:R&D・資金融資・規制緩和及びインセンティブの付与、M&A活性化のための金融・税制・規制緩和・企業の特性に合う支援制度コンサルティングなど 労働者支援:在職者の長期有給休暇支援(使用者への人件費支援)、訓練費の免除及び職業訓練機関の訓練単価の引き上げ支援(訓練機関使用者への支援)、再就職準備のための勤労時間短縮の人件費支援(使用者への人件費支援)、再就職のための転職訓練支援及び雇用促進奨励金支援(再就職教育者を採用する使用者への支援)、中壮年技術創業センターの設置拡大を通じた創業支援(技術創業センター設置支援)。] 。

気候危機は、いくつかの産業の雇用を脅かしたりもするが、逆に大規模の気候雇用の需要をつくったりもする。例えば、化石エネルギーを代替する再生エネルギー発電装置の製造・設置・維持管理職、自動車中心の私的交通体系を代替する公共交通の拡充に伴う職、エネルギーの効率と断熱補強に必要な建物のリフォーム、生態的農・畜産・漁業等が代表的である。

これに加えて、地域社会を対象とする雇用と保健医療・子育て・介護などのケア労働にも注目しなければならない。特に、ケア労働は、個々の家族に任されていた子育てやケアを社会共同の仕事に変化させることができる。ケア労働は、COVID-19以後、その重要性が可視化された代表的な必須労働領域であり、高齢化と少子化等の家族構造の変化によって需要が持続的に増えている。また、労働集約的で自動化が難しいという特性があり、多くの雇用を創り出すことができる[10. ク・ジュンモ「変革的正義の転換のための国民気候雇用の提案」『気候危機時代における公共部門労働運動の戦略』討論会、2021.5.28。]。さらに、現在韓国のケアサービスは、99%が民間によって供給されており、脆弱階層へのアプローチが制限されたり、恒常的な供給不足に置かれていたりもする。特に、ケア産業の私有化(民間中心の供給)とケア労働者の労働条件の悪化とは密接な関係にあるが、例えば、私設保育園の保育教師一人当たりの賃金は、2018年平均月給190万ウォン(約19万円―訳者)水準であり、公共保育園教師の賃金より50万ウォン(約5万円―訳者)程度低い水準である。また、私立保育園の時間外労働比率は61.2%で非常に高い[11. 「2018年全国保育実態調査」保健福祉部、2019.7.1。]。バイデン米大統領が、就任直後の3月に発表した2兆ドル規模の雇用計画において、「ケア経済(Care Economy)」に6,500億ドルを投資することを提示した理由もここにある。需要者(国民)にとっては公共部門が供給する時により効果的であり、供給者(労働者)にとっても良い雇用先として位置付けられるからである。

まさにこの過程で「国家責任の気候雇用」が登場することができる。そのためには、脱炭素転換過程において失業したり、失業する危機に置かれているすべての労働者に仕事が提供され、その仕事は国家または公共部門の責任下で「公共性(国民の生活に対する国家責任)の拡張戦略」の一環としてつくられなければならず、適切な賃金と良質の労働条件の保障される3大原則が徹底に守られなければならない。

特に、COVID-19時代を迎え、各国政府の公的資金の投入と市場介入が全面化されている状況は、もはや雇用の側面においても民間と同じく政府が決定権を持つ段階に来ていることを意味する。民間部門の雇用誘発係数がCOVID-19以前から持続的に下落を見せてきたという点から、これ以上民間企業の競争力の強化だけでは、現在の雇用水準も維持し難いレベルである。

このような状況において、「国家責任の雇用保障」要求は、国家が「雇用の最終の需要者」または「最終の雇用主」として機能するということを意味する。言い換えれば、国家が直接雇用を創出し、構成員が望む時に、いつでも国家が提供する良質の仕事に就職することができるということである。

なお、公共部門の雇用は、公共サービスの質を向上させることのできる手段という投資的な側面と、政府が雇用の最後の堡塁という失業対策的な側面、そして今後の労働条件及び賃金水準等において民間雇用市場への波及効果を誘発することができるという役割準拠側面においても注目されている[12.「OECD国家と比較した公共部門雇用拡充方案」ソウル大学産学協力団、2017]。

つまり、一部の政界において言及されている「拡張された公共勤労」レベルの雇用保障ではない、公共部門の拡大と公共中心の雇用構造の改革等のような「公共性の拡張戦略」が結合された意味として提起されなければならない。

 

気候危機によって変わる生活と労働

 

気候危機と産業転換の過程において現れる労働の変化は、大量解雇だけではない。安全を脅かす脅威、労働強度の悪化など多様に現れる。例えば、航空機の操縦及び乗務労働者は、気候危機によって生じた乱気流や強風による飛行安全問題に直面することがますます多くなっている。大気中の炭素の増加が概ね飛行高度から生じており、これが危険な突風を引き起こしてジェット気流に甚大な影響を及ぼすからである。

医療労働者らも同じく気候危機の直接的影響圏にいる。気候危機は感染病の増加と緊密につながっており、これは、医療労働者の負担がいっそう過重されることを意味する。実際に、看護師らは病院現場で異常酷暑と大型台風、山火事、感染病、環境性疾患等で苦しむ患者をケアしながら、気候危機の惨状を直接目の当たりにしている。これは、気候危機が医療労働者らの労働条件に及ぼす直接的な影響が、さらに大きくなることを意味することでもある。

気候危機が都市化をいっそう刺激し、再生エネルギーのオルタナティブシステムが地域分権化を必要とするという点など、地方自治につながる課題も少なくない。さらに、学校給食、建設、宅配、配達などに従事する労働者は、健康権問題に直面している。2020年、温熱疾患で病院の救急外来を利用した1,078名のうち、378名が屋外の作業場で働く途中に倒れた人たちであった[13. 「2020年温熱疾患救急室の監視体系運営結果」疾病管理庁、2021.5.13。]。屋外作業を主に行う建設労働者、宅配及び配達業務に携わる労働者、学校給食室の労働者、マスクを長時間着用しなければならない労働者らは、酷暑期に危険を冒して働かなければならない。

建設現場は特に気候の影響を大きく受ける。2018年には40度に上る酷暑によって昼間には働けず、午前3時から作業を始める現場が現れたりもした。昨年は、54日間続いた梅雨のせいで現場での作業が中断され、日当をもらう建設労働者らが生活困難を経験した。

国際労働機構(ILO)は、1995年に発生した熱波現象によって総労働時間の1.4%、約3,500万の正規職に当たる損失が発生したと推算した。より深刻なのは、今世紀末まで気温が1.5度上昇する場合、2030年までに熱ストレスによって損失する総労働時間が2.2%(8千万正規職)まで増えると予測した[14. 「熱くなった地球で働く:熱ストレスが労働生産性と良質の雇用に及ぼす影響」国際労働機構、2019。]。

労働者が正義の転換の方向と内容に注目し、積極的に対応しようとする理由は、気候正義が生活と労働の問題だからである。気候危機は、人間に対して怒った神の懲罰ではない。自然の逆襲でもない。資本中心の経済体制の貪欲と破壊がもたらした結果なのである。気候正義運動を体制転換運動と称する理由も、労働運動と気候運動とが出会う地点も、まさにここなのである。資本に立ち向かう生活の連帯が、まさに気候正義運動であり、かつ労働運動なのである。

 

 

訳:李正連(イ・ジョンヨン)

 

 

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