창작과 비평

[論壇] キャンプ・デービッド会談後の日米韓軍事協力と東北アジアの平和

 

創作と批評 202号(2023年 冬)目次

論壇

 

キャンプ・デービッド会談後の日米韓軍事協力と東北アジアの平和

 

 

金鍾大

延世大学統一研究院客員教授。『ディフェンス21プラス』前編集長。

著書:『安保戦争』『秘密ファイル危機の将軍たち』『秘密ファイル西海戦争』などがある。



無能な覇権者と燃えあがる世界


2021年7月中旬、マーク・ミリー(Mark Milley)米軍合同参謀議長(当時)は「カブールはサイゴンではない」といい、タリバンは正規軍30万人をもつアフガニスタン政府を崩壊させることはできないと大言壮語した[1]。それから1カ月後、カブールはタリバンに掌握された。自らが負けることも知らずに、青天の霹靂のように終わる戦争ほど屈辱的なものはない。米軍はほぼすべての資産を捨て、カブール空港から辛うじて逃げ去った。米国としてはベトナム戦争よりも屈辱的な敗北である。2022年2月になると、また事が起きた。マーク・ミリーはまた、「ロシアがウクライナを侵略すれば、キーウは72時間以内に陥落するだろう」といい、ウクライナを防御する対策はないと発言した[2]。2月24日ロシアがキーウ北部に侵攻した時、バイデン米大統領はウクライナのゼレンスキー大統領をドイツに亡命させようとした。当時キーウ市内ではロシア軍特殊部隊αチームがミニ・バスでゼレンスキーを探し回っていた。ゼレンスキー大統領がウクライナを離れないことに激怒したバイデン大統領は再三、“無条件で国境外へ脱出させろ”と指示し、米軍特殊部隊のヘリ機はキーウ近郊に待機中だった。米軍が見るに、ウクライナは完全に亡びる国だった。だが、1年8カ月過ぎた今もウクライナは崩壊していない。

滅びるはず政府は滅びずに、滅びないはずの政府は滅びると語った米軍序列第一位は、その後何の弁明もしなかった。ハマスがイスラエルに侵攻した2023年10月7日の5日前、サリバン米大統領府国家安保補佐官は「20年来、今ほど中東が平和なことはなかった」と言い、近々のイスラエル―サウジ関係の正常化交渉を楽観視した[3]。この交渉さえ実現すれば、米国はインド―太平洋―中東―欧州とつながる平和と繁栄の回廊が誕生したといって祝砲を上げるはずだった。中東におけるデタント状況が安定化すれば、米国はインド―太平洋で中国牽制に集中するつもりだった。サリバン補佐官の天真爛漫な夢のような話が出た直後、中東は1973年第4次中東戦争以来50年ぶりに最も残虐な戦場に変わった。紛争はガザ地区を越えてレバノンと西岸地区、イエメンなどに広がる可能性が高い。どこが戦場になるか、誰にも分らない。

バイデン政権は国際秩序に対する代案的なビジョンや体系的な戦略もなしに、自由主義秩序を再構成しようといってわざわざ地政学を呼び戻した。こういう場合、潜在的な紛争が巨大な噴火口として噴出する危険が極めて高かったにもかかわらず、米国は紛争を予測するとか、予防する洞察力を示せなかった。紛争抑制のために活用できる資源が何なのかわからないまま、不良国家や勢力に対する各種の規制を濫用し、自分の観点通りに国際秩序を変更しようとした。この20余年間、北大西洋条約機構(NATO)を東欧へ無分別に拡張してきた米国は、トランプ大統領時からイランに対する不必要な制裁を行使した上、バイデン大統領はパレスチナ問題を放置したまま、大急ぎで中東の平和交渉を推進した。こうした一連の秩序変更の試みは各地で地政学的な逆風を呼びこみ、その結果、世界ははるかに危険になった。世界と地域に対する米国の誤判は、米国が国家や集団の憤怒、喪失、衝動を理解できないまま、見たいものだけを見る確証偏向に埋没しているのではないか、という疑念を呼びおこす。グローバル・サウス(Global South)、つまり開発途上国は、特にコロナ禍を経てから裏契約でワクチンを独占し、気候危機にも約束した資金を国際機構に寄付しない、北半球国家のリーダーである米国のルールをもはや信用しない。

米国の大統領府と国防省は、まだ戦争の何の兆候も発見されない台湾海峡で、2027年に衝突があるだろうと主張し続けてきた。フィリップ・デービッドソン(Philip Davidson)前インド太平洋軍司令官、ウィリアム・バーンズ(William Burns)CIA局長が相次いで言及した「2027年台湾危機」論[4]は、日・米・韓と中・露・北の陣営対決を軸にして東北アジア秩序を変換する引き金になったが、この危機論にはいかなる根拠もない。米国が台湾海峡衝突の兆しとして提示した各種の事例の大部分は習近平国家主席の一言だった。2022年に習近平が統一の偉業を強調し、「武力使用の放棄を約束しない」と語ってから[5]急速に増大した台湾海峡における衝突論は、2023年3月中国立法院開の院式に参席した習近平が、西側の圧迫に決然と闘争しようという意味で、“敢於闘争”という単語を使ってから具体化された。ここで、闘争という単語が米国のマスコミで「交戦(fight)」と翻訳されるや、米世論は「習近平が戦争準備を指示した」と沸きたった。だが、台湾海峡における危機に備えよ、という習近平の指針は、10余年前から毎年繰り返されてきたメッセージである。立法院の閉幕演説で習近平は、「米国と西側の包囲に決然と対峙しよう」という文章を朗読はしたが、過去とは異なり、米国を名指しで具体的に指摘したと見た米国の保守タカ派は、破局が迫ったように軽挙妄動した。その反面、2月にバイデン大統領が年頭教書を発表する席で習近平に二度言及し、攻撃したという事実には言及しなかった。戦争の準備というのなら中国軍の教理や戦闘配置で、意味のある変化が把握されねばならず、何よりも戦争という賭けを敢行するだけの極度の敵愾心や集団的な衝突のようなものがあるべきだ。果たしてそうした兆候はどこにあるのか。以前、三度の戦争で洞察力を示せなかった米国は、唯一中国については危機の可能性に胸をときめかせ、各種のウォ―・ゲーム(war game)や戦争シナリオを通じ、中国に対する米国の軍事的な優位は消えたという悲観的展望を流布し続けてきた。



膨れゆく危機論と極東における米軍事体制の変革


2023年8月18日キャンプ・デービッドでの日・米・韓首脳会議で採択された3つの文書、すなわち「キャンプ・デービッド精神」「キャンプ・デービッド原則」「日・米・韓協議に対する公約」は、日・米・韓三国による集団防衛体制が誕生する分岐点である。「日・米・韓協議に対する公約」では、三国に「権利や義務を付加しない」としてNATOのような多者同盟が締結されたわけではないと表明している。首脳会議後、日本と韓国はこの文書がAUKAS(米・英・豪の三角同盟)のような協定ではないため、拘束力のない紳士協定だと自ら格下げした。だがその後、日・米・韓の安保当局者は首脳から大臣クラス、実務クラス、第一線の戦闘部隊に至るまで多層的に制度化・常態化される各種の安保協力計画を夕立のように発表した。水中で潜水艦を探知する対潜水艦訓練とミサイル警報訓練、サイバー安保と宇宙協力、経済安保協議体の創設など、経済と安保のほぼすべての部門を網羅しているといっても過言ではない。最大の核心は東北アジア地域で危機が発生すれば、三国は危機に対する認識を共有して行動を統一する準同盟(quasi-alliance)体制を構築するというのだ。たとえ多者同盟ではないが、最高の軍事機密を共有する高いレベルの訓練を共同で遂行するという点は、今後三国協力の中核として新たな安保機構の出現までも予告する。

日・米・韓または日韓軍事協力は、ヨーロッパのNATO同盟における相互運用性(interoperability)モデルを基準にして実現される。これは「同盟国は戦術的、作戦的、戦略的な目標を達成するために一貫して、効果的で、効率的にともに行動する能力」と定義され、これは政策的レベル、技術的レベル、文化と人的交流レベルに分類される。政策的レベルでは、日・米・韓三国に共通する脅威が何なのかを合意しようとする。日本は尖閣諸島(釣魚島)で衝突が起きた2012年以降、防衛白書で中国を主たる脅威と設定し、中国と地域覇権を競争している。韓国は文在寅政権では米国のインド―太平洋戦略を支持するが、全世界のインフラ・プロジェクトに資金を支援しようとする中国の一帯一路イニシャティブに反対もしなかった。しかし、日・米・韓三国の安保協力が実現すれば、韓国は必然的に中国とロシアを牽制する日米の戦略構想に吸収されざるを得ないが、中国を脅威と設定する尹錫悦政権は、まさに日本との地域安保戦略が収斂される地点として作用する。中国との対峙戦線で、韓国という友軍を確保した米国と日本が歓呼の声を上げる理由がここにある。

2023年9月ワシントンで開かれた米韓戦略フォーラムでヴィンセント・ブルックス(Vincent Brooks)前在韓米軍司令官は、8月キャンプ・デービッドでの三国首脳会議が日・米・韓の安保協力の役割を朝鮮半島での安保を越えてインド・太平洋地域にまで拡張する契機だったと述べた。彼は日韓協力もまた拡大される状況で、今のように国連軍司令部が在韓米軍を、ハワイのインド太平洋軍司令部が在日米軍をそれぞれ別個に指揮する閉鎖型(silo)指揮構造を批判し、在韓米軍と在日米軍を統合的に指揮する極東軍司令部の創設を提案した。彼は、この司令部を米軍のインド太平洋軍司令部の傘下に残すのか、別に独立させるのかも考えるべきであり、万一独立させるならば、インド太平洋軍司令部は日韓以外の地域で中国に対応するのに集中できるだろうと述べた。当面極東軍司令部の創設が難しいならば、国連軍司令部を活用して日韓の軍事政策を調整して統合できるというのがブルックス前司令官の腹案である[6]。2021年上院の承認を受けたポール・ラキャメラ(Paul LaCamera)在韓米軍司令官は、「私は在韓米軍を米国の利益と目的を支援する作戦計画に含ませることを支持しよう」と言及したが、これは事実上、在韓米軍が在日米軍と連動する統合構想が出現することを意味する。ラキャメラは台湾危機が発生する場合、米韓連合司令部(CFC)に台湾危機を支援するため後方司令部の任務を付与する構想を粘り強く提示してきた[7]

特に留意すべき点は、台湾問題において米国が有事時に日本の自衛隊よりも韓国軍を活用する方がより適合した軍隊だと認識している点である。台湾危機が発生すれば、米軍は日本の自衛隊の支援を受けて中国の台湾侵攻に対応する最初の主体になる。非常事態に備えた日米共同作戦計画を樹立し、戦略的な位置に軍需品を共同で備蓄するなど、最近展開された両国のこうした紛争シナリオを基盤とする。だが、オーストラリアのローウィー研究所のアジア戦力指数によれば、韓国軍は日本の自衛隊よりも効用価値が高い。2023年の評価で、韓国の軍事力の評価指数は第5位で、第6位の日本よりも1ランク高い。米国は台湾海峡の非常計画で韓国を除外してはならず、米軍と連合作戦を遂行できる軍隊として準備を強化すべきだという立場である。

以上を要約すれば、日・米・韓は政策的レベルで南中国海や台湾海峡における脅威に共同で対応することにし、この政策を具現化する主体として極東軍司令部のような新たな安保機構を必要とする。三国の政府が台湾海峡の非常計画に関連する文書を作成したという知らせはまだ聞かれないが、当初米国が日・米・韓三国の安保協力を構想する時から、台湾事態に対する日・米・韓の共同対応計画がすべての論議の出発点だった。特にブルックス前司令官は、2027年台湾危機論が頂点に達した昨年末、太平洋財団のセミナーで中国を刺激する憂慮があるため、日・米・韓三国の台湾海峡の共同非常計画は非公開で樹立すべきだと主張した。これに尹錫悦政権は某種の応答をしたであろう。

これに関連する意味のある流れが、実際に国連軍司令部の改編に表れている。日本は国連軍後方司令部のような多国的なメカニズムを通じて韓国に非常事態が起きる場合に備え、自らの役割と発言権を確保している。米国は国連軍司令部の強化を通じて、多国間の協力体系を整備しながら韓国政府に英国、オーストラリア、トルコなど国連軍戦力提供国と行政協定を締結せよとの圧迫を加えている状況だ。さらに米国は、米軍のインド太平洋軍司令部、在日米軍、在韓米軍、自衛隊、韓国軍など、個別同盟国の司令部も含める多国籍連合軍司令部および多国籍国連軍司令部により連合作戦のすべての側面が円滑かつ効率的に進行されるように協力しての指揮体系と通信チャンネルを構築しようとするだろう。



技術同盟の目標は“一つになった軍隊”


日・米・韓三国は長期的な観点から日・米・韓の安保体制を変革し、軍事技術レベルでの相互運用性を至急達成しようとする。技術的レベルの協力は日・米・韓三国の共同軍事訓練および武器体系の相互運用性を図ることでミサイル防御と対潜水艦作戦、海上統制などで三国の協力を増進する領域である。三国の主要指揮官は共同の作戦遂行手続と言語を開発して共通作戦状況図を共有し、同じ時間に同じデータを同一の基準で解釈して判断する意思疎通レベルの協力から、共通の交戦心得、共通作戦のための統合指揮体系の構成までを目標にしている。事実上、東北アジアのNATO化といえる高い段階では、軍隊の国籍が消えて連合軍として協力する理想的な軍事モデルが想定される。尹錫悦大統領が明らかにした日韓間の軍事情報の共有は、今後の高い段階への軍事的な協調を指向する重要な出発点である。

2007年当時、在韓米軍司令官ブリュウェル・ベル(Burwell Bell)は米国の『合同参謀誌』(Joint Force Quarterly)のインタビューで、北のミサイルが「南に向かわず朝鮮半島外へ飛んでいく場合、指揮統制イシューは当然より複雑になる」が、「核心事項はミサイルの目的を知ることだ」と強調した。彼は「北の弾道ミサイルが韓国の作戦地区を過ぎて日本または太平洋へ飛んでいく場合、隙間なく作動する一致した体系が対応すべきだ」と強調し、「誰が引き金を引くかを定めるべきだ」とし、日・米・韓のミサイル防御の統合指揮体系を強調したことがある[8]。この論議はここ10年間タブー視されてきたが、尹錫悦政権になって再び速度が上がった。文在寅政権の“サード三不”(追加サードの搬入禁止、日・米・韓同盟の拒否、日・米・韓ミサイル防御への不参加)が解除されたため、日・米・韓ミサイル防御共同作戦のための共同交戦心得と指揮体系に対する論議に着手すると予想される。

最近北はもちろんロシアと中国の極超音速ミサイルの実戦配備が迫ることにより、単に地上発射の迎撃ミサイルを使用する作戦を越えて宇宙での状況認識、多層型ミサイル防御のための三国の技術的協力に対する要求が大幅に増大した。軍事戦略概念も変わっている。過去の探知―識別―迎撃―確認と続く直列的なキル・チェーン(kill-chain)は旧時代的な概念と見なされ、日・米・韓のミサイル迎撃部隊が同時に敵を識別し、多様な迎撃資産で一度に攻撃するキル・ウェブ(kill-web)へと転換している。技術概念もまた宇宙と地上、海上、空中で同時に、多層的に防御する多領域作戦(all-domain operation)へと進化している。このように米国が単独では遂行できない新たな作戦概念を実行するために、日・米・韓の軍事統合は必須的な基盤である。新たな軍事的な要求を充足させるために、日・米・韓は武器体系の相互運用性を増進させ、5G環境で大容量のデータ送受信が可能になるようにするなど軍の通信と情報交流を革新するだろう。



日・米・韓の安保協力、実態なのか、虚像なのか


安保と経済で、米国の主観主義はトランプ大統領時の米国優先主義(America first)からバイデン大統領のバイドノミクス(Bidenomics)へと繋がっている。バイデン大統領は2023年8月のキャンプ・デービッド宣言を、中国の習近平体制とロシアのプーチン体制を牽制して孤立させる土台をつくった最大の外交的成果だと述べた。だがこれは、イスラエルとアラブ・エミリート(UAE)が関係を正常化した2020年アブラハム協定や現在推進しているイスラエル―サウジアラビア関係の正常化交渉が中東平和を達成できないのと同様に、日・米・韓の安保協力に対する過大評価である。日・米・韓の安保協力の脆弱性は、大別して3つの面で表れる。

第一に、日・米・韓の安保協力は安保分野で高い協力を追求するが、それに相応する経済的なインセンティブがない。冷戦時代には米国が同盟国に市場を開放し、同盟国の経済成長を図った強力なインセンティブがあったのに反し、今日の同盟政策はむしろ同盟国の働く場と資本を体系的に略奪する。半導体と電気自動車の工場を米国に誘致して米国の中産層を育成し、高い金利の引き上げで同盟国の資本市場を不安定にさせて自国にドルを流入させる。その上、宣言に明記された新興技術政策は、同盟国に中国との経済的な相互依存から得られる利益を放棄することを強要する。次世代の通信である5Gの場合、日・米・韓は開放型無線LAN方式を標準にして採択したが、これは中国の通信企業ファーウェイ(華為)を牽制するには効果的だが、基地局を中心に通信社別のサービスを先導的に開拓している韓国には不必要な費用である。バッテリー分野で圧倒的な技術優位を保有する中国との協力を排除し、日・米・韓が供給網を構築するという発想自体も非現実的である。対中経済戦略の概念である危険管理(de-risking)は、「狭い場所に高い壁を立てる戦略」だと説明されるが、これは複雑に絡んでいる国際供給網に対する細部的なモニタリングと外科手術のような精密さが要求される領域である。しかし、米国の半導体支援法(CHIPS and Science Act)、インフレーション縮減法(IRA)は、冷戦時代の対共産圏輸出統制制度(COCOM)をアップ・グレイドしたレベルである。半導体、バッテリー、バイオなどですでに技術経済力を確保した韓国には、犠牲と譲歩を強要する同盟周辺化政策である。

第二に、日・米・韓の安保協力が長期的で、安定的な単一隊列として維持される保障はない。日・米・韓がNATOのような軍事技術と安保政策で相互運用性を達成しようとすれば、政策的なレベルで共同の脅威と敵を設定せねばならず、技術的レベルで日・米・韓の軍事システムが統合されねばならない。だが日本の場合、並列的な陸・海・空自衛隊を指揮する合同司令部が存在せず、米国の合同交戦規則を適応する戦闘遂行に難点がある。日本は国家レベルの情報収集と分析が実現しておらず、個人情報の保護のために情報収集自体も制限される。このため西欧の情報同盟ファイブ・アイズ(Five-eyes、米・英・カナダ・オーストラリア、ニュージーランドの緊密情報共同体)に加入できない日本は、韓国がタイム・ラグなく北のミサイル情報を提供しても、これを接受するシステムがなく、米国を経由しなければならない。その上、日本は中国を主たる脅威と明記する日・米・韓の共同宣言にも時期尚早という立場である。前述したように、万一台湾海峡で危機が発生すれば、米国は韓国軍を優先的に活用しようとするだろう。日本はインド・太平洋戦略など派手な戦略概念を提示して周辺情勢を主導しようとするが、嫌な仕事は韓国が引き受ける可能性が高い。その上、日本が過去の歴史を否定して独島、尖閣諸島、クリル諸島(北方領土)で領土的な野心を示し、自分だけの影響力を拡大する国粋主義的な態度を依然堅持しているため、集団防衛体制を具現化して互恵的な協力を引きだす共感の土台が欠落している。

第三に、日・米・韓の安保協力体、クアッド(QUAD、米・日・インド・オーストラリアの安保対話)、オーカスのような最近の小グループ主義の安保協力体は、その効用性がまだ検証されていない。欧州のNATOとは異なり、米国のインド・太平洋における同盟政策は小グループの安保協力体をいくつかつくり、これを連結させようという発想である。小グループ主義は二国の同盟でもなく、集団安保体制でもない中間を志向する概念で、加入と脱退が自由で開放的な連合体と思われる。おそらくアジア的な特性を勘案した新しい同盟概念と思われる小グループ主義は、規範の強制力が緩やかな一種の政略的で、機会主義的な談合と認識される可能性が高い。特に日・米・韓の安保協力は、オーカスと異なって拘束力がある協定ではない紳士協定に近く、これは三国の政権交代の状況により極めて脆弱になりうる。バイデン政権の「新ワシントン・コンセンサス」が米国民の超党派的な支持を得られなかった中で出てきた米国の窮余の生存戦略であるように、日・米・韓の安保協力体もまた今後数多くの欠陥を現わし、国内外の深刻な抵抗にぶつかる憂慮がある。


憲法の上に停戦協定、大統領の上に国連司令官


こうした脆弱性にもかかわらず、日・米・韓の安保協力体は今日の東北アジア情勢に極めて敏感な変数として作用している。特に韓国は停戦協定の署名国ではなく、戦時作戦統制権が依然米国にあるため、日・米・韓の安保協力に主体的かつ自律的な判断を介入させるのにかなりの障害がある。

日本は戦争をできない国家として、憲法と軍事システムに欠陥があるにもかかわらず、中国の海洋進出を戦略化する第1列島線(マラッカ海峡からクリル列島に至る長い海洋防御線)で中国の戦力を遮断し、阻止しており、有事時には中国の主要地点に対する攻撃を準備している。2020年からは、防衛省直属の宇宙作戦隊を創設して米国との宇宙協力を強化し、高高度迎撃ミサイルの開発、5Gおよび6G環境で米国との技術協力、軍の指揮統制および武器体系の相互運用性を図る技術同盟を進化させる状況である。より重要な点は、防御的だった日本の軍事政策を攻勢的に転換させた思考の変化といえる。2022年に改定された日本の安保戦略白書で標榜した通り、中国の沿岸都市を攻撃できるトマホーク・ミサイルを導入し、沖縄一帯の南西諸島地域に配置するようになれば、中国はこれを深刻な挑戦と認識し、日本に対する海洋における拒否戦略を一層強化するだろう。これは台湾海峡はもちろん、黄海での軍事的緊張へとつながる。日・米・韓は安保協力をするというが、尹錫悦政権は日本の国粋主義的な態度を傍観し、黙認しており、果たして真の協力が可能か疑わしい。

日本の攻勢的な戦略概念は、大韓民国の主権と自立的な外交を脅かすかなりの圧力である。日本は韓国、中国、ロシアと領土紛争を自制できないまま、自国内右翼の国粋主義的な歴史観に包摂された。三国間の協力を結実させようとするなら、まず日本が自国中心の歴史観を警戒し、普遍的な価値を遵守する品格と美徳を示すべきだが、依然この点で失敗している。日本は中国が台湾海峡と南中国海で力による現状変更を図っていると非難するが、彼らがクリル列島と独島で行なっている態度は中国と大して変わらない。日本が中国と地域覇権の競争をするのに、韓国を動員しようという本心を露見させれば、これは韓国にも大きな挑戦となるだろう。

日・米・韓の安保協力を推進するにしても、韓国が強固な主権の土台の上でこれを管理する能力をまず備えねばならない。停戦協定に明示された朝鮮半島の危機管理の法的主体は大韓民国政府ではなく国連軍司令部である。米国はドイツやイタリアのように、国連軍の会員国でもない国家の将校を国連軍司令部に招請し、多国籍の安保機構に変貌させているが、これについてわが政府に同意を求めたことはない。尹錫悦政府の黙認の下で国連軍司令部を拡大・改編し、インド・太平洋の中枢機構につくりあげ、台湾事態に対する対応を構想しているのだ。これはわが憲法に対する重大な侵害と解釈できる敏感な問題である。

今日のような日・米・韓協力の指向通りに、在韓米軍の性格が周辺の脅威への対処として広域化され、日本の介入が許される場合、果たして東北アジアは安定化するのか、あるいはより不安定になるのか、これへの私たちの主体的な判断が切実に求められる。尹錫悦政権が歴代政権のバランス外交戦略を全面的に否認し、外交安保政策を同盟に傾倒する方向へと急旋回すれば、私たちの外交安保の選択肢は急速に狭められる。

韓国がひたすら同盟国の拡張抑制力に依存して生存を図る単線的な国家戦略を選択する場合、招きよせる高費用と不安に対する綿密な検討が必要である。日・米・韓と北・中・露の構図は、勝者と敗者が短時間で決まるゲームではない。こうした陣営対決は、経済的な相互依存で得られる利益を放棄し、ひとえに安保を追求する安保至上主義の国家へ転換させる負担を甘受することになる。経済的な損失を甘受する安保国家は、国内では監視と統制を拡げることになり、これは必然的に市民の自由を制限する。さらに、国際関係において保健や気候危機への対処、働く場の共存をめざすグローバルな問題から遠ざかることを意味する。

新冷戦で、過去30年間の黄金時代を享受した東アジアの平和秩序は没落する。東アジア国家の経済的な相互依存と平和共存の秩序が「力による平和」の論理に代われば、絶えざる不安定の時代が到来するだろう。低レベルの葛藤を経ていた春秋時代が、高レベルの紛争が常態化した戦国時代へと転換したことに比べられる。日・米・韓の三国軍事同盟は平和の秩序ではない戦争の秩序であり、生命の秩序ではない死の秩序である。今日、米国が自由主義国家の連帯を叫んで東欧とアジア、中東で秩序変動を試みた結果は三度の戦争だった。

私たちは同盟国の拡張抑制力よりも、協力と共存を指向する平和に基盤を置いた抑制力で生存の新しい道、代案的な世界に対する真摯な模索を始めねばならない。これは放置された葛藤の要素を非暴力的な手段により平和的に解消できる中堅国家、経済的な相互依存を重視して協力を促進する橋渡し国家、国際供給網が生産的な投資と革新へとつながる回復力のある国家を指向する時に生まれる。理念と価値で分離され、断絶を自ら招く同盟万能の国家は、地政学の闇の中へと自らを追いやるだろう。


翻訳:青柳純一




[1] Afghanistan likened to fall of Saigon as officials conform Taliban take Kandahar, The Guardian ,2021.8.13.

[2] 「ウクライナで苦戦するプーチン…ロシアはもうスーパー・パワーではない」、『韓国経済新聞』2022年8月25日。

[3]「“中東は平和だ”の5日後に戦争…“天才”という米国外交NO.2 の失敗」『中央日報』2023年11月7日。

[4] 「米太平洋軍司令官『中国は6年以内に台湾に侵攻することも』」『アジア経済』2021年3月10日。「CIA『習近平、2027年までに台湾侵攻の準備を指示』」『東亜日報』2022年10月6日。

[5] 「習近平『台湾での武力使用の放棄は約束しない…統一は必ず実現するはず』」「聯合ニュース」2022年10月16日。

[6] 「前在韓米軍司令官『在韓・在日米軍統合、“極東司令部”を検討すべき』」『ハンギョレ』2023年9月26日。

[7] 「台湾有事時、在韓米軍の介入を示唆した米軍司令官」『京郷新聞』2022年9月21日。

[8] 「北ミサイル迎撃、誰が引き金を引く権限を持っているのか」『フリー・ニュース』、2007年10月30日。