창작과 비평

[巻頭言]光の叙事で書き出される新たな秩序

創作と批評 207号(2025年 春号) 目次

巻頭言


光の叙事で書き出される新たな秩序


白敏禎


言葉の威力は大したものだ。過激な言葉は感情を激動させ、現実を歪曲する。2023年(8・15)光復節の祝辞で尹錫悦は、私たちの社会に“自由民主主義”体制を脅かす反国家勢力が暗躍していると憤激し、反自由勢力や反統一勢力の一掃を宣布した。彼は支配と独占の自由を追求し、思い通りにいかないと、2024年12・3戒厳令と内乱を画策し、次いで暴動を誘導し、結局は主権者によって歴史から退場する運命に陥った。自由という言葉を歪曲して汚染させた者、彼は自らの行為に相応する審判と代価を支払うだろう。強者の力に屈服する盲目的な本能の世界に自由が席を占める場はない。隷属と生存だけがあるのだ。

 民主主義は、市民自らが統治する自己規律と秩序の体系である。市民の集団的統治は感情と意志の自発的な規律、そして他人を配慮してともに責任を果たす連帯の精神に根ざす。市民は共同の暮らしを設計し、共同の価値を守って意見を調律し、目標を模索する過程で民主主義を実践する。反面、その感情と意志を調律できないまま、自由を口実にして武力を振り回す者どもは、隣人の生命を破壊することで自らの存立基盤までも切り崩す。彼らが敵対的な力に依存するのは民主主義を恐れるからである。民主主義を信じない彼らは、自らの意に同調しなければ多数を暴政と非難し、自らが力を持つと相手を敵と規定して排斥し、処断しようとする。

 いわゆる民主主義先進国と呼ばれるヨーロッパでさえも、深刻な政治危機に直面した。極右政党の広がりと右派大衆の暴力性は今や危険な水位に到達した。絶対的権力を振り回してきた強大国、覇権国家は今まで、人権と正義の名で聖戦を展開してきた。しかし今日、彼らはもはや名分に縛られないことはウクライナ戦争でもうかがえる。名分が重要ではないため、彼らは躊躇わずに言葉を歪曲し、汚染させる。トランプはウクライナ戦争の終結を公言する一方、イスラエルとハマスの休戦合意後は、露骨に親イスラエル政策を繰り広げ、ガザ占領計画を発表するなど、平和への努力を脅かしている。私たちは、徹底した利潤追求の行為が戦争を永続化させ、グローバル化させる危険な現場を目撃している。

 国際政治の地形が後退する中でも、韓国市民の自己規律と民主的連帯の努力は日ごとに光を増す。主権者市民の政治的正当性は、民主と法治のバランスから生命と活力を保持する。民主主義は自己統治と、これに基づく集団的規律の原理なので、自ら作った規則と秩序を守ろうとする大衆的な努力が必須である。また、市民が公的な議題を掲げて公論の場を造成し、政治と国家を推進する主権政治は、巨大な国家が追求する力の論理とも異なる。20世紀初め、韓国人の念願は朝鮮の独立だけではなく東洋平和、世界平和だった。韓国の独立と民主主義が、世界平和と国際協調の基礎になることを願った。文明の精髄は論争して競いあうが、暴力を使わなくても互いに異なる存在が共存しあう妙法にある。暴力を封じて戦争を終わらせ、終戦を引き出して平和に至る民主主義、これが百年前の朝鮮半島の念願だったし、いま世界の模範になる韓国の先導的な民主主義だろう。

 約千年前、中国宋の僧侶道原は『伝燈録』30巻を書き、真宗皇帝に献上した(『景徳伝燈録』、1004年)。この書は、1372年(恭愍王21年)に高麗で初めて刊行された後、朝鮮朝でも広く読まれた。灯火を伝授する「伝燈」という言葉は仏教の真理、釈迦牟尼・仏陀の心眼で照らされた仏法の精髄を、師匠と弟子がやり取りして継承したことを物語る。『伝燈録』は、仏陀から真理の灯火を伝授された仏教の祖師と弟子の名簿1700余人を紹介する。ここに、新羅と高麗の学僧も数十人ほど登場する。師匠から袈裟と鉢(衣鉢)を信物として受けた弟子たちは仏教の正統を誇り、禅宗の系譜を受け継いでいった。儒教も仏教の“伝燈”を模倣し、正統儒学者の系譜、つまり道統をつくった。成均館大聖殿に儒教の道統を受け継いだ東国知識人18人の位牌が安置されている。彼らは真理を継承した少数の人物だった。19世紀朝鮮半島の東学に至り、初めて多数の民衆が真理の道を伝授する“道通”の主人公になる。婦女子が道通する世の中が来るだろうと語った海月・崔時亨、彼は女性だけでなく子供、事物まで共にする神通・放通した世の中を開いて見せた。彼は、真理の伝燈を数多くの人々に投げ与えた。

 今、千年の時間を越えた伝燈叙事はキャンドル市民、“応援棒主権者”の光の叙事へと繋がっている。師匠と弟子間の秘密めいた灯火の伝授を越え、数多くの光の波が暗黒の危機から互いを助け守る、驚くべき場面が私たちの眼前で展開された。私と隣人がともに道通した世の中、光が開く新たな時代が到来している。先祖と私たち、未来の世代の数多くの生霊を生かす道、互いの生命をつないで広げるより深く、広い精神の鉱脈、道脈を貫いていく道が必要である。抗拒と抵抗を祝祭の場へ、ともに楽しみあう“與民同楽”の場を創りだした、私たち市民の知恵と才智に矜持と自負心を感じる。私たち、負けないよう互いに励ましあい、軽快な歩みで出会い、着実に前進しよう。古い言語、汚染された言葉の沼を越え、市民主権者が創りだしていく新たな言葉の権威、生命を守る言葉の力を想像してみる。民主的市民は自らの生命の主人であり、同時に政治の主人だという点を、私たちが創りだしていく秩序ある世の中で示そう。


 本号の特集は、まさしく世界政治史に新たな模範となる“K民主主義の躍進”を紹介する。内乱・暴力の深い闇を後ろに追いやり、私たちはキャンドル革命の力強い再出発に参加した。白楽晴は、「変則的事態」を経ながらも進化したのを実感とともに伝えてくれる。さらに、世代と階層を調合するキャンドルの驚くべき歩みにもかかわらず、これに対応する新たな思想が不在だと指摘する。彼は、朝鮮半島の体制変革と中道勢力の拡がりを図る“変革的中道”によりキャンドル市民の熱望に応答する。東学革命、3・1運動、独立と民主化へと続いた歴史が、“中道と開闢”の精神により掘りおこした民主と平和の過程であることをあらためて確認している。つづく金昭摞の文章を通じては、キャンドル広場で醸しだされた連帯と配慮の民主主義に出会うことになる。彼女は、広場に新たな希望を芽生えさせた20~30代女性の活躍する姿を描きだす。過去から続いた歴史的視野の広がり、オン・オフラインの言説と実践の連係、日常と政治を再編して他人とともに生きる世の中の姿を夢見る。

 韓洪九は、既得権の維持にのみ汲々とする韓国の保守勢力が今まで民主主義と接触できなかった理由を、百余年の歴史からダイナミックに描き出す。彼は、保守勢力の歴史的DNAを植民地時代の親日勢力の“手先”気質として描写する。主人として責任を果たすのではなく、強者に屈服して利得を取った行動形態を皮肉ったのだ。軍事力と力を崇拝し、反民衆的・エリート的であり、相手を撲滅しながら生存してきたので、保守勢力はいかなる対話や妥協も学びえなかったし、ついに極右ファッショに転落した姿を鮮明にさらけ出す。李南周の文章は、「K言説を模索する」連続企画の5番目の文章で、“変革的中道”の観点から金大中思想を論究する。彼は市場経済、南北関係を民主主義の進展と連動して思惟した金大中の先駆的な洞察を紹介する。キャンドル・デモを平和が維持された直接民主主義と評価した金大中の発言から、韓国市民の潜在力が民主主義の危機に直面する世界の人々に“グローバル民主主義”の希望を照らしだす場面を描いてみせる。

 対話では、韓国は第2期トランプ政権と変化する世界秩序にどう対処すべきかをめぐって金峻亨、金昌洙、崔培根が密度のある討論を展開した。トランプは名分や価値を放り出して、徹底的に自国の利益ばかり追求する「米国優先主義」戦略を掲げて緊張と不安を高めている。米・中競争の激化は、双方の間でバランスを保つべき私たちには難題と言える。対談者は、私たちの民主的な力量を強化し、これに基づいて国家の戦略的な自律性を高め、多者間ブロックの形成に主導的に参加しようと提案する。

 論壇は、韓国経済を診断して課題を提示した李東珍の文章を載せた。彼は、2023年から内需の委縮による経済沈滞が深刻だったが、12・3戒厳令後の政治の不確実性により経済の不確実性が一層悪化したと憂慮する。家計と自営業者・小商工人の負債、金融・為替市場の衝撃まで、実物経済に打撃が続いており、国家信用度の下落リスクも相変わらずだ。長期停滞に陥った内需、自営業者の負債問題に政府が踏み出すべきだと力説する。「現場」の洪誠秀論文は、戒厳令後に国民の憤怒と抗議が殺到した人権委の実態を紹介する。一部の人権委員は内乱被疑者の人権を保護し、防御権を保障すべきだと主張し、物議をかもした。筆者は、人権委に適合する人権委員の選定、人権委の憲法機構化、市民の関心を通じて崩壊した人権委を正しく確立しようと提案する。

 この間、好評を博した散文企画「私が暮らすところ」に次いで、本号からは「私の生命をケアすること」の連載が進行する。その第1回で趙孝済は、パレスチナの人々が長年の迫害と弾圧でも人間の尊厳を守って生きてきた生活の姿勢である“スムード(堅忍不抜)”をひるまずに、愉快な毅然さとして紹介する。「悲観と楽観を越え、ともに行動しながら毅然と希望を創りだす道」、それが私たちの生命をケアし、気候危機にも知恵深く対処する道であろう。

 文学評論欄には、二編の文章を載せた。廉武雄批評60年の内功が溶け出した評論集『歴史の前に立つ韓国文学』を、柳煕錫は「私たちのものらしい文学に向けた愛と献身」と解き明かした。彼は、廉武雄の深い自己省察と厳密な読み、批評で発揮される覚醒の力に注目した。厳正さと柔軟さと温もりが凝縮して具現化された廉武雄評論の力を綿密に解明する。金美晶は、小説的コモンズの可能性を考察する。李柱恵の小説『季節は短く、記憶は永く』で主人公の日記を通じて所有や権利の概念では識別できない事件と存在の絡まりとしての“私”の一人称叙事が、他人の多面性を表現する開かれた叙事であると説得力をもって伝えてくれる。

 春号の詩は、高在鍾から崔賢禹まで12人の詩人の深い苦心の末に醸し出された多彩な新作が際立っている。透明で明るい、時には重々しくも大胆な詩語があらためて私たちの思惟と感覚を目覚めさせる。小説は金裕娜、林率児、林賢、黄貞殷の短編を紹介する。平凡な日常の中で危うい問題を読みとく作家の繊細さが引き立つ。作家照明では、詩人の金重一が『未来の白さ』を刊行した安賢美と同行した。過去と現在を踏まえ「告白する」詩人である安賢美が、いまや“未来”を呼びだすところまで進んだ点を、彼は多情に包みこむ。“白さ”は愛の意志で共に書き、描きだした未来の姿、共感しあって哀悼し、連帯する愛のメタフォーだと語る。

 新刊書を厳選して論評する文学焦点では、趙大韓が南弦志の最初の詩集とチェ・ジェウォンの詩集を、金周源が田志映の最初の小説集と金柳眞の長編小説を繊細に考察する。成炫児は抒情詩の変革性と詩の可能性を模索した梁景彦の批評、そして印雅瑛の批評を熱読して紹介する。本号の寸評欄でも、読者の関心に応ずるだけの意味ある新刊を厳選して届ける。

 第23回大山大学文学賞の受賞作が読者に出会う。李佳仁(詩)、鄭璃岸(小説)、金採恩(戯曲)、崔善在(評論)の新鮮な作品は、春号を読む楽しみを増すだろう。受賞者の皆さんに、心からお祝いの言葉を送る。


 韓国市民は、“グローバル民主主義”を真剣に思い悩むべき時点に到達した。戦争と暴力、ウソと扇動が私たちを脅かすが、それは私たちが夢見る文明的な世の中の姿であるはずがない。暴政と武力ではなく、価値と理想を追求してきたのが私たちの伝統であり、資産であると信じる。いまキャンドル市民の消えていない灯火が、民主と平和の芯として燃えあがる世の中を照らしだす。『創作と批評』も読者の熱望と期待に応じて、止まることなく精進するともう一度心を新たにする。皆さんの厳正な批評と暖かな関心をお願いする。


訳: 青柳純一