창작과 비평

首都圏都市回廊と南北大運河

論壇と現場
 
 
 
金錫澈(キム・ソクチョル) archiban@archiban.co.kr

 

 
建築家、都市設計家、アーキバン(Archiban)建築都市研究院代表、明知大学校建築大学長。著書に『希望の朝鮮半島プロジェクト』『金錫澈の世界建築紀行』などがある。

 

 

1. はじめに

1967~69年の2年間、夜昼となく書き描いた「汝矣島漢江沿岸開発計画」の書物を無くしたが、最近、清渓川の古本屋で手に入れた。40年前の自分の朝鮮半島構想を読み直しながら、分断体制が朝鮮半島に及ぼした影響がどれ程大きいものであったか、改めて実感した。先年出版した拙著『希望の朝鮮半島プロジェクト』(創批 2005)では、分断体制と東アジア全体の変化を意識し、新しい空間戦略を提示しようと努めたが、却って朝鮮半島の北方に対する具体的な構想は出せなかった。それが去る9月、「首都圏都市回廊と南北大運河」というテーマで開かれた第29次細橋フォーラム(細橋研究所、2007.9.14)で発表された内容に「揺れる分断体制」を予測した白楽晴(ペク・ナクチョン)教授と、南北関係の専門家である徐東晩(ソ・ドンマン)教授を始めとする細橋研究所会員の論評と、尹汝寯(ユン・ヨジュン)前環境府長官、沈載元(シム・ジェウォン)前開城公団及び朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)団長などのパネリストの意見をつけ加えて、「揺れる分断体制と波動の朝鮮半島」という文章でまとめる作業を始めた。そうしている内に、金文洙(キム・ブンシュ)京畿道知事、金英三(キム・ヨンサム)釜山発展研究院長が「首都圏都市回廊」と「洛東江運河都市」案を具体化してくれることを要請してきた。このように頭の中の構想が実際のプロジェクトとなって、細橋フォーラムの発表内容をまとめることはさらに大変な仕事になってしまった。

南北首脳会談以来、南北共同事業が多くなり、都市事業はその殆どが首都圏と関わっている。また、朝鮮半島のインフラを根本的に揺さぶりかねない京釜運河、いわゆる朝鮮半島大運河は、私の南北大運河とはその発想から異なるものだが、その起終点である洛東江河口都市案を提案する立場なので、首都圏都市回廊と南北大運河を宣言的に表明するだけに止まることはできなくなった。本稿はこういう背景のもとで書かれたものである。『希望の朝鮮半島プロジェクト』を執筆する際もそうだったが、空間形式を言語形式で説明することがどれ程骨の折れることか実感している。構想中の都市設計を字で書くことは、作曲中の音楽を説明する位難しいことである。都市空間は言語形式ではなく視覚形式で存在するからである。

私は細橋フォーラムでの発表で、揺れる分断体制を波動の朝鮮半島と隠喩的に述べたことがある。これは朝鮮半島が、過去と未来の時間と空間が共存する波動の状況であるからである。歴史的に見ると、高句麗が平壌と満州を、新羅がソウルと東南海岸を、百済が扶餘と西南海岸を併せた時が、朝鮮半島のエネルギーが最高に達した時期であったと思われる。今日の朝鮮半島の基盤は、伽耶を併合した新羅が高句麗の東海岸の拠点であった元山と、百済の首都であったソウルを占領し海を掌握した後、中国の唐を引き込んで、不完全ではあったが三国統一を果たすことで設けられた。統一新羅以後、1300年を一つの政治・文化共同体で持続してきた朝鮮半島は、日本の植民地になってから原状に復することができず、中国とアメリカ、ソ連と日本の緩衝地帯として分断された60年間、北は海と遮断され、南は大陸と断絶されたまま、それぞれ相違した道を歩んだ。

韓国が北朝鮮との対峙の真っ只中でもこれ程の経済大国となったことは、盾の役割を担った北朝鮮と違って、開放の役割を担った御蔭である。中国とロシアの戦線となった北朝鮮は世界と遮断され孤立したのに対し、アメリカと日本を相手に韓国は冷戦時代は勿論、世界化時代にも持続的な成長を続けていける物的背景を持ち得たのである。

現在、韓国の鉄鋼、造船、半導体は世界最強であり、韓国が世界経済に及ぼす影響はフランス、イタリアに次ぐが、北朝鮮の経済事情は深刻である。「南北関係の自主的で民主的な進行に影響を及ぼしながら、分断社会を正しく越えた新世界が朝鮮半島に居座るためには」(白楽晴『朝鮮半島式統一、現在進行形』)、三国時代の朝鮮半島が持っていた力動的エネルギーを南北が共に、アメリカ、中国、日本、ロシアの間で再現して、7世紀の三国統一のような部分統合ではない、朝鮮半島の潜在力と可能性を極大化する道を探さなければならない。その核心が首都圏都市回廊と南北大運河であるが、後述するがこの二つは互いが緊密に結び付けられた一つの事業として見るべきである。

揺れる分断体制を波動の朝鮮半島と言ったのは、韓国と北朝鮮が三国時代のように共存しながらも、それぞれの内部エネルギーを養って対外的に強力な共同体を成し得る状況を意味する。韓国だけでは解決できないエネルギーと水と人口問題は、このような状況認識のもとでこそ特段の道が見出せる。その答えが他ならぬ首都圏都市回廊と南北大運河なのである。

 

 

2. 首都圏メトロポリスと都市回廊

分断体制によって惹き起こされた韓国の大きな問題の一つは、ソウル首都圏一極集中と、それによる両極化及び不均衡的な発展である。首都圏の過剰集中と非効率は韓国だけでは答えが見つからない。首都圏の解法を韓国ではなく、一千年以上朝鮮半島の首都であった開城・ソウルと、7世紀三国時代の中心都市であった平壌・ソウル・公州を含めた大首都圏から見出すべきである。

メトロポリスは大都市が中小都市と農村を従属させた巨大都市とは違って、都市と農村、大都市と群小都市が相生するアーバンクラスター(urban cluster)である。今日の世界は西欧列強ではなく、ロンドン・パリ・ニューヨーク・東京・北京・上海など、メトロポリスを中心に再編されている。

ソウル首都圏は経済では半分の成功を成し遂げたが、未だ不完全な未完のメトロポリスである。他のメトロポリスとの競争には弱く、朝鮮半島内では周辺都市と地方圏の競争力を弱めている問題的なメトロポリスなのである。北京と天津大都市圏は世界都市と競いながら、農村と都市が共に進む持続発展の可能な新都市共同体の計画を始めており、東京も一時、首都移転を議論し首都圏規制を強めたが、今は東京中心部の過剰インフラを上部構造化し創造産業を中心に海岸と内陸を高速交通網で結ぶ「複数の扇形メトロポリス」戦略を進めている。上海も世界物流を長江に引き入れて、上海が6億長江共同体メトロポリスの龍頭になるような計画を立てている。

北京、東京、上海がメトロポリスの道を歩んでいる中、韓国だけの未来を夢見る成長論者たちは首都圏集中を更に強める京釜大運河でもって大衆を惑わせており、首都圏規制の罠にかかった京畿・ソウル・仁川はそれぞれ自分たちの生きる道だけを探している。ところで北京と上海の都市圏が韓国のそれより先んじているように見えるが、これらの都市経済力は我が首都圏の半分しかなっていない。首都圏の問題は、ソウルに核心機能が集中してソウルほどの人口と経済力を持った京畿道がソウルに従属され、仁川経済特区もソウルのベッドタウンとなっているところにある。首都圏が四大門の中と、江南の中心地域に従属された状況では北京、東京、上海の三千万メトロポリスとの競争に遅れるしかない。

国民所得が2万ドル以上の国の主な産業は、サービス産業と創造産業であり、これら産業はメトロポリスと周辺地域で興る。マンハッタン(Manhattan)の金持ちの半分以上が超高層建築群の谷で働く人々であり、ボストン郊外128番高速道路の周辺でシリコン・バレーに劣らぬ創造産業が盛んになっているところを見るとわかる。

人口が一千万以上だと、都市中心部に過負荷が生じ、町外れと問題区域が生ずるしかない。朝鮮半島のインフラの根幹は、植民地下で日本の大陸進出ラインとして建設されて、分断60年間、それ程変わっていない。空港と港湾、国道と高速道路、鉄道と高速鉄道のすべてがソウル中心で作られて、国家の核心機能の殆どがソウルに集中したことが問題である。

朝鮮半島の中枢の役割を果たす京釜線・京仁線・京義線・京元線・湖南線のすべてがソウルと釜山・仁川・新義州・元山・木浦港を連結した都市間インフラであり、分断体制下で作られた高速道路と高速鉄道のすべてもソウルに集中されている。結果的に国際空港・港湾・鉄道・高速道路・高速鉄道の量においてはソウル首都圏のアーバンインフラが世界都市であるニューヨーク、東京、ロンドンより進んでいる。しかし、行過ぎたソウル偏重によって世界物資動員量の最も大きな流れが通る釜山もソウルに隷属され、東北アジアのハブ空港である仁川もソウルの辺境都市となった。解放後60年を指して成功した歴史と言っているが、その期間は国家ハードウェアがソウルに集中されて国家の均衡が崩れた年月であったことを認識すべきである。世界最強の産業都市である浦項・蔚山・亀尾でさえ人口と資本と情報がソウルに縛られている。浦項・蔚山・亀尾の世界的企業であるポスコ・現代自動車・現代重工業・三星電子の本社がすべてソウルに在らざるを得ない奇形的な状況は、行政首都と革新都市で解決できるものではない。

都市の下部構造が上部構造化する段階で殆どの機能がソウルに集中され、高速道路と鉄道、国道の有機的集合が成され得なかった首都圏の競争力と生の質を持続可能にするためには、首都圏の第1空間である住居都市と第2空間である職業都市を調和させる都市回廊を作るべきである。

 

 

3. 首都圏都市回廊の構想

朴正熙(バク・ジョンヒ)・全斗煥(ジョン・トゥファン)・盧泰愚(ノ・テフ)政権の首都圏新都市は、最初から問題が多かった。1789年、王権の軍事都市として城壁と門楼だけが建設された新都市の華城(現在の水原)以来、180年振りに作った城南・光明・果川・始華・安山などの首都圏新都市は、問題となっていた人口と産業機能をソウルの外側に送り出すためのものであった。その後、20年ぶりに再び作った盆唐・一山・坪村・山本・中洞の五つの新都市は、ソウルの住宅問題を解決するための住居都市である。また再び20年ぶりに建てている交河・陽村・ドンタン・松波・光教の新都市もソウル特定地域の不動産のバブルを解決しようとして作った住居都市である。

首都圏新都市のすべてがソウルの住居問題を解決するための都市であるわけだ。そのようにして首都圏新都市はソウルに依存する非自立的植民都市となって、京畿道はソウルメトロポリスの辺境地帯でありながら、ソウルのような規制を受ける首都圏外郭地帯となってしまった。

ソウルの江南と板橋・盆唐から龍仁・華城までの100kmに渡って非自立的な住居都市が入ってきて、ソウルとこれらの都市間におけるアーバンインフラは終日停滞をくり返している。首都圏都市回廊は住居都市に転落した首都圏新都市群を、仕事場と住宅が共にある完全都市として作る計画である。都市空間の基本は寝る第1空間と働く第2空間の調和にあるが、現在首都圏の第2空間はソウルに、第1空間は京畿道四辺に散らばっている。京畿道の住居都市を完全都市化するためには、新都市群の間に、ソウルに行かなくても働き暮せる第2空間都市を作らなければならない。それを可能にするニューアーバンインフラが都市回廊である。

都市回廊は住居都市群の間に第2空間都市を特段の交通方式で連結したアーバンギャラリー(urban gallery)である。都市と都市を連結する高速道路と高速鉄道は都市回廊になれない。第1空間都市である住居都市の間に第2空間都市を建設し、これを運河と軽電鉄でソウル都市回廊まで繋ぐ首都圏都市回廊が、首都圏の進むべき道である。

首都圏新都市が並んでいる盆唐・儀旺・竹田・龍仁の間の水原グァンギョ新都市と、平澤国際化都市を運河と循環鉄道が結合したニューアーバンインフラの第2空間都市として作って平澤港と漢江へと連結し、これを平壌と開城と公州まで広げる首都圏都市回廊を作ると、ソウル首都圏は世界的なメトロポリスになれる。

ベッドタウンである第1空間都市と大学、公団、オフィス群で成された第2空間都市を、水路と軌道交通で母都市と対応させる、都市下部構造と上部構造が結合された都市形式が都市回廊なのである。現在の高速鉄道と高速道路は都市外郭を通るが、都市回廊の運河は都市と一つになる。知識情報化社会で第2空間都市の核心は大学(U)中心の産学研クラスター、製造業とサービス産業が融合したモダンファクトリ(F)、業務空間であるオフィス(O)で成された都市のU.F.Oである。

それぞれ5百万の人口が漢江を中心に向かい合っているソウルと、また一千万の人口が取り囲んでいる京畿道を運河と軌道交通が扇形都市を成す都市回廊として再組織するためには、水原と平澤港を繋ぐ都市運河が漢江と接して首都圏とソウルを併せるようにして、京義線、京元線で北に至らせる大首都圏都市回廊として拡大すべきである。

ソウルの不動産破局は核心地域の土地不足に因るものである。東京とソウルを利用可能な土地密度で比較してみると、ソウルの土地が東京より高いのが当り前である。どんな政策を施しても江南の土地代は上がるほかはない。ソウルと京畿道外郭の間に創造的新産業の自立都市群を作って、ソウル外郭の住居都市群と首都圏都市回廊を築き上げ、これを首都圏1番街路である漢江に繋げて首都圏第1空間と第2空間を組織化すると、不動産破局も正常化できる。漢江を通る首都圏鉄道ラインと首都圏外郭都市を運河と軌道交通で集合して首都圏都市回廊を作ると、首都圏四辺がソウルの外郭ではなく首都圏の核心地域になれるのである。

 
 
 

4. 世界の運河都市モデルと意味

1969年「汝矣島漢江マスタプラン」、1995年「夢見る漢江」、2000年「漢江と西海岸を繋ぐ首都圏ビジョンプラン」、2002年「セマングム(新沃土)海都市」、2006年「セマングム-金剛運河プロジェクト」を通じて、朝鮮半島の海岸と内陸を繋ぐ運河都市計画案が発表されたが、知識人でさえ殆どが無関心であった。そういう中でいきなり政治圏で「朝鮮半島大運河」が大選公約となった。

 


私達は運河について何を、どれ位知っているか。現在、政治圏の大運河提案の持つ弊害の一つは、すべての運河構想を背けるか、または廉価する風潮を生み出していることである。こういう点から運河というインフラが持つ正確な性格を理解することが大事である。

 

運河は本来、鉄道と高速道路がなかった時代の、地域間インフラである。鉄道と高速道路が建設されてから運河は物流機能より都市間疎通の役割を担うこととなった。この点は『創作と批評』2007年春号の挑戦インタビュー(金錫澈-李日栄)の中ですでに指摘したところである。すなわち、「運河は運河辺の中小都市と農村を生かせるインフラです。運河計画はこのような点を考慮して地方の中小都市と大都市が共存共栄するモデルを提示すべきです。(・・・)そのような準備なしに京釜運河云々するのは嶺南や忠清内陸圏に開発の幻想を呼び起こそうとするものに過ぎないでしょう。河を海に通じさせるのが運河を作る目的であり、河に船を通わせて都農複合体を成すことが運河の機能です。運河で連結した都農複合体に大都市に劣らぬ競争力と生の質を持たせるのが核心であります。」

 


隋の煬帝の時代に作った、北京と杭州を連結する京杭運河は、中国の南と北を連結した世界最大の運河である。北京-上海間の高速道路・高速鉄道建設と共に、今、中国が隋煬帝の時代の京杭運河を復元する理由は、運河が南と北の都市と農村を一つにする水路でありながら、水が足りない北部と水が余る南部を連結する役割をするからである。河や湖が一緒に繋がれた運河は水路と水資源という二重の役割を果たしながら、大都市と小都市、小都市と農村の人口を一つの共同体にさせる国土の血脈として働く。

 


運河は船が通える水路である。海にはどこでも船が通えるが、河はそうには行かない。船が通える河と船が通えないところに作った水路の運河を繋げて河と海を連結したのが京杭運河であり、ライン-ドナウ(Rhein-Donau)運河である。筆者が中国都市学会の会長である清華大学の呉良鏞教授と共に提案した曲阜新都市計画は、京杭運河から水を引き入れて儒学の発祥地である曲阜を中国のエルサレムやメッカのような世界的名所に作ろうとした運河都市計画である。現代のアーバンインフラである高速道路・高速鉄道を、過去のインフラである運河と結合して、歴史と地理を未来の人文と結合しようとした都市設計提案で、2004年ベネチアビエンナーレと2006年2月、北京釣魚台で開かれた中国戦略論壇で発表された。アーキバン建築都市研究院が清華大学と曲阜運河都市計画を5年間続けたのは、曲阜運河都市が北朝鮮の都市モデルになれるとの期待からである。

 


ナポレオンが感動したフランスのミディ(Midi)運河は、地中海と大西洋を連結した運河である。ボルドー(Bordeaux)からトゥールーズ(Toulouse)まではガロン(Garon)河が流れるが、トゥールーズから大西洋の間には河がない。トゥールーズと大西洋の間に人工水路のミディ運河を作って、ガロン河とミディ運河でもって大西洋と地中海間の農村と都市を一つの生活権、経済圏にした都市事業であった。
 

 


ミディ運河のような内陸運河は水量を維持するためダムを作り、ダムを遡るため閘門を作る。ミディ運河にも70余個の閘門があり、閘門ごと小都市がある。運河は運河で河は河だ。河を走る船が運河に行くためには、閘門を通らなければならない。河川の殆どが西海と南海岸へ流れる朝鮮半島にまともな運河都市を作るためには、海を深く内陸へ引き入れたロッテルダム河口の海都市と農村型都市群を運河に連結して大都市に劣らぬ都市競争力を果たしたミディ運河がよい参考になるはずである。ドイツの経済奇跡を成し遂げたライン-ドナウ運河やニューヨークと5大湖を連結したエリ(Erie)運河、そしてスエズ(Suez)運河、パナマ(Panama)運河などは、朝鮮半島とは異なる環境で異なる目的で作ったものなので、われわれとはあまり関係のない例である。
 
 
 

5. 南北大運河の構想

首都圏過密化と外郭都市の辺境化を解決する道が首都圏都市回廊だとすると、東海と西海を繋ぐ南北大運河は首都圏を朝鮮半島全体に疎通させる道である。

 


筆者が提案する南北大運河は先述の曲阜新都市計画と同一の都市哲学を基にしたものであるが、東海岸の元山・安辺一帯を臨津江と漢江河口まで連結する事業である。すなわち、北朝鮮ですでに完成しておいた金剛山ダムの水資源とインフラを活用して、天恵の条件を備えた楸哥嶺構造谷にエネルギーと水と人の流れを集合した運河都市を作り、これを臨津江に連結して漢江に、そして安辺を経て元山に接するようにして西海と東海を連結しようとする構想なのである。

 


競争力のある都市の条件は、エネルギーとよい水と創造的人口にある。首都圏エネルギーの殆どが遠い中東から来ており、水は食水としては飲めず水空間(canal)は足りないし、創造的人口は組織化されていない。南北大運河にロシアの天然ガスを引き寄せると、平壌と開城のエネルギー問題を解決することができ、首都圏一帯はもっと競争力のあるエネルギーを得ることができる。首都圏にもっと安いエネルギーを取り入れ、白頭大幹のきれいな水を供給して創造的人間が働く空間を設けられる方途が、臨津江と楸哥嶺構造谷と元山を繋ぐ南北大運河である。
 

 

 
楸哥嶺構造谷は白頭大幹の断層火山地帯である。楸哥嶺構造谷に金剛山ダムで貯めた白頭大幹の水を集めて朝鮮半島を東西に横切る運河を作って元山港と連結し、臨津江を経て漢江に入らせると、東海と西海を首都圏都市回廊に接続することができる。ロシアの天然ガスを元山までLNG船で運送し、楸哥嶺構造谷の運河ガス管を通じて首都圏に引き入れる。白頭大幹の水を臨津江と漢灘江、楸哥嶺構造谷が会う地点で取水して導水管で首都圏都市回廊に引き寄せると、楸哥嶺構造谷の運河周辺に北朝鮮と韓国の創造的人口が集まる山上の水上都市が作れる。北朝鮮人口を知識産業社会に似合う高い知能と創造的文化遺伝子を持った人的資産として考えるべきで、それが南と北が真に豊になる道である。白頭大幹と楸哥嶺構造谷は朝鮮半島の清浄地域である。南北大運河は、韓国の都市化が歩んできた自然毀損の二の舞を演じない、21世紀都市のモデルになれるよう自然は最大限保存し、最小のエネルギーで最高の競争力を持つ都市にすることが大前提である。幸い楸哥嶺構造谷の存在という天恵の自然条件で水路と運河建設による自然破壊を最小化することができるし、相当の生態秩序の撹乱を齎したはずの金剛山ダム及びトンネル水路建設作業はすでに既定事実化された状態である。

 


20世紀が武器と石油を巡った戦争の時代だとすると、21世紀は人間と水を巡る戦争の時代になるだろう。朝鮮半島は降水量の不足ではなく、河川インフラの不備によってすでに10年前、水不足の国として指定されたし、このままでは水飢饉の国家にならざるを得ない。ソウルは一年に130億屯の水を使っている。北朝鮮が高さ120メートルの金剛山ダムを完工すると、韓国は有事時に対応するとして平和のダムを建設したが、それ以来、10億屯程の水が流れてこないし、北朝鮮に安辺青年発電所が竣工されると、水不足量は20億屯に増加する。ありもない金剛山ダムの水攻撃より、首都圏水飢饉の対策がもっと至急のことである。南北大運河は西海と東海を繋ぐエネルギーと物流の道であり、首都圏の水問題を解決する水路である。八堂ダムの水は飲めない状態であるが、白頭大幹の水は無公害清浄地域のものなので生水に劣らない。この水を値頃で貰う場合、北朝鮮には莫大な収入源が出来る一方、韓国における水価格の節約にも寄与するだろう。

 


臨津江は60年間竣工できずに上流の漢灘江流域が洪水になると、氾濫する。99年、一日200mmの雨で4000億ウォン程の被害が発生した。政府が1兆6千億ウォンを入れて洪水対策を立てているが、この地域は韓国側流域面積が16%しかないので、南側からいくら金を掛けるとしても意味がない。臨津江と漢江が出会う河口区域に60年間溜まった30億トン程の砂で年間1億トンに達する首都圏の骨材需要を30年間充当することができ、金剛山ダムには26億トンの巨大な水資源がある。南北大運河は首都圏水問題と洪水と骨材波動を同時に解決できる方案でもある。
 
 
 

6. むすび

行政首都、革新都市、京釜大運河は地方の有権者を惑わすことはできるかも知れないが、彼らの生活を豊かにする道ではない。朝鮮半島が共に豊かになるためにはソウル中心部と京畿道の新都市群を首都圏都市回廊で直通させ、首都圏の外側に創造的人間と情報と資本の集まる第3空間都市を作って、首都圏の影響圏外にある釜山は九州と、木浦は連雲港と、済州はシンガポールと連係した多国籍都市を作らなければならない。

 


韓国と北朝鮮が共に行なえるプロジェクトが数多くあるが、首都圏新都市が第1都市空間と第2都市空間の都市連合を果たすことができるようにする首都圏都市回廊と、楸哥嶺構造谷に白頭大幹の水を引き寄せ、西海と東海を大きな水路で繋げロシアと日本のエネルギーと物流、白頭大幹の水と南北の創造的人口を集める南北大運河こそ非常に大事な事業である。

 


仁川港とソウル、釜山港と大邱も連結できずにいる状況で京釜大運河を言うのは他の問題点を差し置いても、前後していると言わざるを得ないし、南北の創造的人口を集めるような画期的発想に欠けた開城公団、海州公団などは長期的に南と北の真の利益にも背くものになるだろう。首都圏都市回廊と朝鮮半島の東西回廊である南北大運河は、21世紀朝鮮半島の南北都市軸に西海と東海を繋ぐ東西軸を成して、ソウル・平壌統一首都圏を21世紀メトロポリスに作ると同時に、京釜・京義線軸に偏った不均衡を改める、朝鮮半島の持続可能な発展の礎石となり得る。

 


南北共同事業の要諦は可能性と現実性の問題である。双方の合意がなされるためには、韓国と北朝鮮の多くの人々が首都圏都市回廊と南北大運河の構想を理解し共感することが先行されるべきであり、両側の共同研究が必須的である。

 


朝鮮半島式統一が現在進行形である状況下で、揺れる分断体制を超えて希望の朝鮮半島になるためには、千年以上、朝鮮半島の中心であった朝鮮半島首都圏を再組織して、ある日、ひょいとやってくるはずの統一の場を設ける首都圏都市回廊と、首都圏都市回廊にエネルギーと水と人口を供給する南北大運河を世界に知らせて世界の知識人と資本が参与するよう韓国と北朝鮮が共に乗り出さなければならない。首都圏都市回廊と南北大運河はまさにその念願を込めた希望の朝鮮半島プロジェクトであるが、意欲に研究が追いつかなくて恥ずかしいところである。(*)

 

 

 

訳=辛承模

 

 

 

季刊 創作と批評 2007年 冬号(通卷138号)

 

2007年12月1日 発行

 

発行 株式会社 創批

 

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