[巻頭言] 逆走する原発政策

2012年 春号(通卷155号)

 


韓基煜

李明博政府が犯した過誤と悪行は一々列挙しがたいほどであるが、その中でも4大江事業とともに原子力発電拡大政策の重罪は欠かすことができない。この間、世界諸国は福島原発事故を契機に原発政策を修正した。ドイツは既存の原発延長運行までを許可しないことによって、2022年までにすべての原発を廃棄することにしており、一時原発政策の維持を闡明した日本政府も反対世論に押されて2050年までに原発を処理する方向へ進んでおり、スイスをはじめとする多くの国々も原発政策を段階的に減らす考えを明らかにした。福島原発事故以後のこのような国際的な脱原発の雰囲気の中で、唯一李明博政府は原発拡大政策を揺れることなく推し進めながら、無反省の逆走をし続けてきたのである。

実際、李明博大統領は原発建設を未来の戦略的輸出産業として考えているほど、「原発愛」が格別であった。例えば、2009年12月、アラブ首長国連邦(UAE)の原発受注を「檀君以来の最大の国外受注」と自慢しながら、受注額を膨らますことまでしたのである。福島原発事故を見て原子力の危険さを改めて認識するどころか、他国が遠慮する原発輸出に拍車をかける好機として捉えたに違いない。有名な地震帯に属するトルコと原発受注協商を行い続けるのもそのような無反省の一例である。さらに、金正日国防委員長の他界以後の混乱を利用して、慶尚北道盈徳郡と江原道三陟市一帯の新しい原発建設候補地をこっそりと発表までした。ドイツ、スイス、日本が「原発ゼロ」に向かって進んでいく間、韓国は現在稼働中の21機と建設中の7機、建
設計画中の6機、建設候補地が決まった8機、計42機の原発強国に向けて走っているのである。

李大統領は、昨年9月、国連の原子力安全に関する首脳級会合の基調演説において原子力活用の不可避性を強調し、積極的な活用の立場を闡明した。代替エネルギーだけでは世界的なエネルギー需要の増加と気候変化問題に対する対応に限界があるため、原子力の活用は不可避だというもっともらしい論理を駆使した。原子力を代替するエネルギーを確保していない状態で、今すぐ原子力を諦めることができないという主張には首肯することができる。しかし、福島の大災害の後にも原子力の比重を減らしていく方途について工夫しなければ、いったいどのような方法でその危険から脱することができるだろうか。「グリーン成長の父」と自画自賛する李大統領は代替エネルギーの開発に励んでいると宣伝してきたが、韓国は総エネルギー中の代替エネルギーの比率が2%を超えない実情である。実際、李大統領が国連の基調演説で明らかにしたのは福島原発事故にも関わらず、原子力発電を加速化するという意志であった。福島原発事故の惨状は多くの教訓を残したが、彼は何も学んでいなかったのである。

このような逆走は、2012年核安全保障サミットの誘致をまるで外交の大きな成果のように宣伝しているところにもみられる。核兵器をテロの脅威から安全に保護する「核安保」が主な目的であるこのサミットは、朝鮮半島の非核化要求とは程遠く、アメリカをはじめとする核兵器保有国の要求に符合するものである。50カ国の首脳が参加する超大型の国際会議であると盛り上げようとするが、この会談を敢えて韓国で開催する理由はない。

原発政策が私たちの生活のいたるところを原子力で囲い込む方向へ進んでいくことによって、放射能に露出される確率はますます高まる。また原発を新たに建設し、輸出すれば、その分隣国の危険な原発建設に対して批判する立地が狭くなる。例えば、もし白頭山近隣の火山地帯や有事の際朝鮮半島にすぐ影響を及ぼす中国の東部沿岸に原発を集中的に建設するといっても、反対する名分が十分ではなくなるのである。その結果、朝鮮半島は北朝鮮の核兵器のみならず、韓国とその周辺に密集する原発によって平和と安全が深刻に脅かされる危険地帯になる公算が高い。とくに釜山と蔚山のような広域大都市からわずか50km半径に古里・月城の原発9機が密集しているのが気になる。

原発を減らすより、拡大しようとする李明博政府の逆走を防ぐ方法はないのか。セヌリ党(与党)の朴槿恵非常対策委員長が、李明博政府との違いを見せるためには、「常識のある」原発政策を打ち出す必要がある。統合民主党をはじめとする進歩改革政党らは原発を減らしていく具体的な方案と意志を当然見せなければならない。エネルギー需給体系を攪乱するほどの急進的な原発廃棄方案を出してほしいという話ではない。新しい原発づくりをしない、既存原発の寿命延長の不許可等の長・短期的な減縮及び廃棄計画を論じる時である。そうすることで、老巧な原発の頻繁な故障や原発設備の不正な納品操作、工事中の放射能核廃棄場の建設敷地の不適切さ等の深刻な問題点に対して適切で、断固たる対応をすることができる。

市民社会も原発拡大を防ぐために積極的に行動しなければならない。おりしも脱原発の希望の火種をつけるお話が聞こえてくる。最近、脱核法律家の会「ひまわり」と核のない社会のための共同行動、脱核エネルギー教授の会は、地域住民とともに新しい古里原発5、6号機の放射線環境影響評価に関する憲法訴願を請求した。去る1月、横浜で開かれた「脱原発世界会議」に韓国の市民活動家らが多く参加した。慶州近隣の住民と地域環境団体は、「月城反核非常対策委員会」を結成し、月城原発1号機の寿命延長と放射性廃棄物処分場の設立に反対するデモを行った。このように地域住民と社会団体とが協力して原発拡大政策に歯止めをかけ、総選挙及び大統領選挙を原発の段階的廃棄に必要な方案を討論する契機にしよう。市民各々の反省と民主的参加を通して社会のいたるところに根ざした開発主義と原発擁護論を制御することによって、より生態的な生活の基盤を作ることこそが福島原発事故の教訓を振り返り、新しい体制づくりに一緒に参加する有意義な方式である。

今号の特輯「2013年体制論議の進展のために」は、現体制を廃止し、新しい体制をつくるためにどのような改革が必要であるかを部分別に検討する。李日栄は世界レベルと東アジア-朝鮮半島レベルのカオス要素が強化される状況において、国家間関係のみに依存するより平和的秩序の形成に有利になるように「都市を単位とした越境的・地域的ネットワーク関係」を累積していかなければならないと主張する。さらに、そのようなネットワーク型モデルの一つとして「北東アジア地中海経済」を考慮することを提案するが、果敢な超国家的発想の転換が目を引く。鄭鉉坤は2013年体制建設の核心議題である「1953年停戦体制の解消」問題を朝鮮半島 の対内外的関係の連鎖の中で考察しながら、北朝鮮体制の力学と動向を繊細に観察し、緻密に分析する。停戦体制の解消が南北経済協力、北朝鮮の核問題、平和体制、南北連合とかみ合っていることに注目し、その中でも南北連合の形成がカギであることを強調する。

李基政は2013年体制における教育部門の課題を入試教育、私教育、学校崩壊の克服に圧縮して提示し、現在の状況において実現可能な解決を目標として設定する。各々の問題を詳細に分析・診断し、学校教育を変える果敢な政策を提案する部分では教育現場における実感と苦心がうかがえる。卞彰欽はニュータウン事業をはじめとする旧体制の都市不動産政策を批判的に検討し、2013年体制に求められる新しい都市開発及び住宅政策を模索する。政策方向を住居圏中心に転換し、都市整備事業を地域共同体づくりのための事業として進めていこうという彼の果敢な提言には傾聴する価値がある。

金秉準、鄭大永、洪鍾学、李日栄が参加する「対話」は、「2013年以後、何を食べて生きていこうか」という素朴でありながらも、切迫した問いから論議を始める。参加者は働く場の増加、官僚統制と財閥改革、韓米FTA批准以後の対策、北東アジア協力と地域革新、新しい成長動力等に関して自由に討論する。成長と分配を共に追求し、持続可能な成長モデルを発掘するが、政府の大手企業の支援が雇用と成長を増やすという古い類型の考え方から脱しなければならないということに共感する。「論壇と現場」に掲載された2編の論文も2013年体制の建設に緊要な示唆点を提供してくれる。崔栄黙は、権力の前で言論自由の信心と真実究明の使命を堅実に護りきった李泳禧先生のまっすぐな記者精神を反芻することによって、言論本来の姿勢と徳目を喚起させる。具海根は内在的性格の変化に焦点を当て、韓国の中産階層を分析して特殊性を明らかにする。中産階層がIMF金融危機を契機に上流と中下流に両分される過程を綿密に追跡し、その含意を分析する。

2013年体制に関する「特輯」と「対話」、「論壇と現場」を先に紹介したが、「文学」欄も充実した作品で構成されている。「文学評論」には今日注目できる作品を論じる3編の平文が掲載されている。黄静雅は、朴玟奎の小説をはじめとする最近災いの叙事に含まれている意味を鋭く読み取りながら、現実に目をつぶらない有意味な終末の叙事と主体の要件を緻密に検討する。権熙哲は、金愛爛の長編『ドキドキ私の人生』を悲しみと喜びの逆説的ねじれを発見する卓越した「感情教育」の小説として読み取り、その言語的非凡さを詳しくかつ丁寧に分析する。金伶熙は、都鍾煥、許秀卿、崔勝子の詩から金洙暎の「病んだ体」という詩的資産が継承されていることを発見し、「裸」「泣く体」「廃墟の体」の概念を通してそれぞれの詩の世界を探求する。

「作家スポットライト」では2回目の小説集『パ氏の入門』を出版した黄貞殷をお招きした。先輩の小説家であると同時に詩人でもある李章旭のインタビューと評論家の鄭弘樹の作品論に会うことができる。黄貞殷と李章旭の一見無心にみえるが、意味深長な対話と味のある論評、鄭弘樹の繊細な読み取りが、黄貞殷の小説の低い声とかすかな形象に適切にスポットライトを当てる。さらに大御所詩人の高銀を筆頭にして11名の詩人の個性的な詩の世界を贈る「詩」欄と、長編連載を成功裏に終える殷熙耕をはじめ、裵志瑛、鄭美景、韓昌勲が準備した小説が読者を待っている。なお、10回目を迎える大山大学文学賞の5分野の受賞作も欠かせない読み物である。「文学焦点」と「寸評」、そして「文化評」欄でもおもしろさと人文的教養とを持ち備えた多数の論文が読者の皆様をお待ちしている。

昨年に初受賞者を輩出した社会人文学評論賞の公募締切を6月に早め、賞金も上方修正したことをお知らせする。今年も相変わらず熱烈な反応を期待する。そしてやむを得ず春号から定価を値上げすることになったが、定期購読料は従来通り維持する。読者の皆様のご理解をいただきたい。今後いっそう堅実な内容でお返しできるようにしたい。本誌の編集委員メンバーにも小幅の変化がある。これまで常任委員として活動してきた柳熙錫教授がサバティカルを迎えて非常任委員に異動し、黄静雅教授が常任委員になる。なお、市民社会運動の現場で長年精力的に活動してきた鄭鉉坤氏が新たに合流するようになったので、関心を持って見守っていただきたい。4月の総選挙で貴重な一票を行使することも忘れないように。

 

翻訳: 李正連(イ・ジョンヨン)

季刊 創作と批評 2012年 春号(通卷155号)
2012年 3月1日 発行

発行 株式会社 創批
ⓒ 創批 2012
Changbi Publishers, Inc.
513-11, Pajubookcity, Munbal-ri, Gyoha-eup, Paju-si, Gyeonggi-do
413-756, Korea