〔対話〕 朴槿恵政権1年と民主派の対応

特集_朴槿恵政府の1年、今、われわれが語るべきこと

 

 

李政勳 / 東アジア言説、行く路来る路――白永瑞『核心現場から東アジアを問い直す』の内外を考察する

 

 

李哲煕(イ・チョルヒ) トゥムン政治戦略研究所長。民主政策研究員副院長歴任。著書に『第一人者を作った参謀たち』『何をどうすべきか』『勝つ政治、疎通のリーダーシップ』など。
金鍾曄(キム・ジョンヨプ) 韓神大社会学科教授。著書に『連帯と熱狂』『エミール・デュルケームのために』『87年体制論』(編著)など。
殷秀美(ウン・スミ) 第19代民主党国会議員。韓国労働研究院研究委員歴任。著書に『飛べ、労働』『IMF危機』など。
鄭鉉坤(チョン・ヒョンゴン) 市民社会団体連帯会議運営委員長、細橋研究所常任企画委員。著書に『天安艦を問う』(共著)、論文に「南北社会文化交流発展のための方案」など。金鍾曄(司会) 今回の「対話」では政治の現場、政治批評、また市民運動の領域でご活躍中の殷秀美議員、李哲煕所長、そして鄭鉉坤委員長の3人をお迎えしました。まもなく朴槿恵大統領就任1周年になりますので、まず朴槿恵政権の性格と特徴について話をかわしてみたいと思います。それにつづいて、87年体制の樹立以降、「87年運動体制」といえるほどの社会運動の流れがどのように続いてきたのか、社会運動の現況を点検したいと思います。普通、集合的な問題を解決するために集合的に行動することが社会運動であると定義できます。なので政党活動や政治運動も広い意味の社会運動に属しているといえます。韓国社会において民主派の社会運動は、李明博政権の時期からかなりの困難を経験しました。李明博政権につづいてまた朴槿恵政権の登場に伴い、社会運動の困難はより大きくなったようです。しかも最近、朴槿恵政権の労働運動に対する攻勢は、保守派が民主派の社会運動を弱体化することからさらに進んで、これを破壊しようという意図すらあるのではないかという印象を与えます。ですから、87年体制の社会運動が健全だったのかどうかを診断してみる必要があると思います。まず昨年、そのような健全さを維持していたのかについて、話を始めてみたいと思います。最も大きい変化を経験したのが李哲煕所長だと思いますが、まずお話し下さいますか。李所長は2012年から有名人になって、銭湯などに行けば挨拶してくる人もいるのではないかと思います(笑)。

 


朴槿恵政権1年の韓国社会

 

李哲煕
 おっしゃったように2012年の総選挙の頃に政治の現場を離れました。政治評論家としての人生は一度も想像したことがありませんでしたが、政治評論というものが職業として可能になったのは、妙なことに「総合編成チャンネル」〔2011年12月1日から開局した、韓国を代表する『中央日報』『朝鮮日報』『東亜日報』『毎日経済新聞』など保守系新聞各社が新規設立したケーブルテレビ局4局。報道以外にも教養、娯楽など全ての分野を扱う―訳者〕のためです。総選挙と大統領選挙の時期に、総合編成チャンネルが政治のニュースないしは政治評論で競合性のない空間を発見し、そこに私が自然と出演することになりました。2013年には選挙がなく政治評論の市場が減るだろうという展望でしたが、実際にはかなり増えました。北朝鮮関連のニュース市場も大きかったと思いますが、この部分は保守陣営に非常に有利な状況でした。進歩陣営は北朝鮮と関連して依然として効率的に対応できないからです。とにかく、それで2013年は、生活には個人的にさほど苦労しませんでしたが、政治評論家としてあまり心は晴れません。ある陣営を代弁して評論をするわけではありませんが、政治のイシューが少し変わってくれればいいのですが、依然として南北関係をめぐって冷戦的な主題でどうこうという旧時代的な様相を見ていると心苦しいです。民主党がだめだということはすでに国民的な常識になりましたが、朴槿恵政権も思ったよりかなりだめだと思います。実行面では細かいテクニックを数多く持っているようですが、時代状況に合わせて政治的な議題を立て、それに見合ったリーダーシップを展開していく側面ではかなり未熟な点があります。安保における保守が今、保守全体のヘゲモニーを握っていて、朴槿恵大統領がそれに引きずられていくのか、あるいはそれを引っ張っていくのかはわからないですが、とにかくそれに市場保守勢力が結びついているようです。表面的な議論では見えてきませんが、内容的には市場保守のイデオロギーがそのまま貫徹されています。私はこの政権は結局、小さな政府論(税金と政府規模を減らして、規制を解き、法秩序を確立する)に戻ったと考えます。今年1月にあった大統領の記者会見はそれを政治的に宣言したものと思います。ですから、全体的に見れば、多くの大衆が政治を通じて人生の変化を試みようとしているのですが、政治が肯定的な回答をできないので失望したり怒っているのだと思います。金鍾曄 総合編成チャンネルの話が出ましたが、私も李所長が出演する「舌戦」(JTBC放映)をよく見ています。視聴の理由の1つは、木曜日11時は当然、見るものがないからです(笑)。他の理由は「舌戦」独自のバランス感覚のためです。李明博政権のマスコミ掌握から始まったことではありますが、メディアの陣営化が激しくなって、人々がメディアを通じて他の人の考えはどうか知ろうというよりも、自分が持っている考えをあらためて確認して耽溺する傾向が強くなりました。どのような内容をどのように伝えたら相手に説得力があるのか、あまり悩むことのない社会になったわけです。陣営化が激しくなったマスメディアの領域で、保守と進歩を代弁する政治評論家が一対一で出てくる唯一の番組が「舌戦」ではないかと思います。
殷秀美議員は議院活動を1年半ほどなさいました。他のインタビューで、前回の総選挙で民主党の比例代表議員の提案を受けて受諾した直後、比例の順番が上位の方で国会議員になることを数時間後に知ったとおっしゃっていました(笑)。その一方で初当選の議員としては相当の活動力と名声を得られたようです。これまでの議会活動の経験に対する所感、また国会内で見ることになる朴槿恵政権についてお話し下さい。殷秀美 私の個人史はインタビューでたくさん話したので、それより民主党議員として、これまでの1年、重く感じた問題について申し上げたいと思います。まず李所長が昨年、国家情報院の選挙介入やNLL(北方限界線)問題、また従北たたきの議論〔韓国国内における対北朝鮮追随勢力に対する批判や追及―訳者〕などが全面に出たことを念頭に置いて、「問題は経済なのだが」という趣旨の話をされました。その経済問題の解決に私もそれなりに努力しましたが、むしろ「問題は政治だ」という結論に到達しました。民主党の側から見れば、昨年、3つの核心課題があったと思います。最初に、大統領選挙の直後から提起された換骨奪胎レベルの党の革新、2つ目は、国家情報院の選挙介入と関連して民主主義の危機を解決すること、3つ目が韓国社会の所得不平等の問題です。私が専門的にやれる分野だと思って努力したのは3つ目の課題でした。民主党ウルチロ委員会(〈乙〉を守る道、経済民主化推進委員会)の活動のようなものです。この委員会が10ほどの懸案を実質的に解決しましたし、最低限、〈甲〉に対する牽制の役割は果たしたと思います。私は、このような問題を解決することが党の革新と民主主義の危機解決に一助するだろうと判断しました。ですが、この3つのレベルは、1つが解決すれば他も解決するような問題ではありませんでした。前の2つの課題についても、党が正しい方向にみちびく別途の戦略を持つべきでした。自ら評価すれば、そうした点で私の判断は少し安易でしたし、方向をきちんと取ることができませんでした。
次に朴槿恵政権についてですが、私は民主党もだめだが朴槿恵政権もだめだという李哲煕所長の判断の中で、後半についてはあまり同意できません。朴大統領は新年記者会見で「747小さな政府」から「474民営化」(474は朴大統領が年初記者会見で提示した国政目標で、潜在成長率4%、雇用率70%、1人当り国民所得4万ドルを意味する。殷秀美議員はこのような目標を、朴大統領が民営化を通じて達成しようとするという意味で「474民営化」と言った―編集者)に進み、民主党が主張してきた国家情報院の大統領選挙介入に対する特別検察制の導入を放棄すべきだと宣言したようです。公約と野党をどれほど無視すれば、このような形で主張できるのでしょうか。民主党が大統領のこのような記者会見の内容に反論するべきでしたが、そのようなことはありませんでした。そのような点で民主党はだめだったと思います。ですが、大統領がこのように言っても支持率が48%からまた50%以上になりました。これがどうしてなのか考えるべきです。李所長は朴槿恵政権が思ったよりだめだとおっしゃいましたが、現政権は保守マスコミ、財閥、軍部、保守的官僚などをはじめとして、さまざまな集団のネットワーク形態で1つの政権を形成しています。朴槿恵政権は政治派閥の代表として全体を掌握しているのではないのかと思います。事実、ネットワークは恐ろしいものです。民主党や野党はこのような点を念頭に置くべきです。朴槿恵政権に対して過小評価も過大評価もせずに基本戦略を新しく作ることを、昨年に対する完全な反省を通じて勝ち取るべきだと思います。金鍾曄 殷議員が中心の主題を論争的に提起したようです。鄭鉉坤委員長が個人的に、また市民運動の面で、この1年をふりかえりながら、殷議員が提起した主題についてお話しを続けて下さい。

鄭鉉坤 昨年はやはり国家情報院の不法大統領選挙介入の戦いに注力しましたし、鉄道民営化問題などにも関与しました。戦線に一緒に立ちながらも市民運動の独自空間を作る方向を重視しました。経実連、YMCA、環境運動連合、緑色連合、女性団体連合、参与連帯など、市民運動を特色化して別途のキャンペーンを進めましたが、これらへの反応もよかったと思います。鉄道民営化問題の場合も、当時「KTX民営化阻止と鉄道公共性強化汎国民対策委」があって私たちも参加していましたが、市民団体を中心に「鉄道公共性市民の集い」を別途構成して声を上げました。ストライキが始まってからは「市民社会仲裁団」を作って、また他の声を上げました。社会運動の側面では、少し運動の足腰を強化しようということで、運動の効果面では支持の幅を広げる試みだったといえます。この過程で市民社会団体連帯会議という運動の枠組みの存在感を確認できました。このような議題接近の他に、昨年、市民社会のインフラ醸成にも努力しました。市民運動出身が政界にかなり進出しました。このような空白を埋めながら、市民社会自体の基盤を固めて強化すべき必要が大きくなり、そのような目的で皆さんと力を合わせて「市民」という名前の別の法人を作りました。市民社会に資源を移して市民運動を一生涯つづけようという趣旨から「市民センター運動方式」といっていますが、2006年から釜山、大邱、光州、大田、忠清北道などで結成され、ついにソウルでも構成しています。
朴槿恵政権については、支持率の推移で概略的な状況を探ることはできるでしょう。朴槿恵大統領は、当選当時は経済民主化でも政治改革でも時代の流れに沿った主張をしていました。女性大統領論もそうでした。そのようにして上がったのが51.6%の支持率でしょう。もちろん不法な大統領選介入で入った票を引くべきですから、これよりも若干低くなるでしょうが(笑)。ですが、その後、一時は世論調査の数値が67%まで上がりました。この数値自体はさほど意味があるとは思いません。普通、大統領になって1年ほどは期待値のプレミアムがありますし、それを反映したものですから。全体的には山あり谷ありで、概して53%台と横ばいが維持されています。ですから、当選当時の支持度は、任期初期のプレミアムや、公約不履行や国家情報院問題のようなマイナス効果などとともに作用しながら、このような支持率に留まっていると考えられます。興味深いのは、60代以上の支持はほとんど80%に肉迫している反面、20~30代は主に30%代にとどまっています。40代の支持度も40%をかろうじて超えた程度です。このような世代別の支持の推移は、朴大統領が今、韓国社会を支えている現在の世代と未来世代の支持を受けていないという事実を示しています。そうした点で朴槿恵政権をめぐる韓国社会の流れは悲観的であると思います。

 

「従北たたき・安保・統一」パッケージ攻勢の威力

 

金鍾曄
 少しずつ異なる角度から朴槿恵政権の特性についてお話し下さいました。李所長は朴槿恵政権が国政運営の大きな方向樹立と戦略水準では脆弱だとおっしゃったのに比べて、殷議員は韓国社会の支配集団のネックワークと結束力の中で朴槿恵政権を見るべきで、その点で決して甘く見ることはできないと主張されました。また鄭鉉坤委員長は支持層の構造面で朴槿恵政権の持つ虚弱さを指摘されました。殷秀美 世代別の支持をめぐって朴槿恵政権の脆弱さを語るのは、ややもすると朴槿恵政権を過小評価することにならないでしょうか。多くの政権がそうですが、この政権もすべての事案において国政支持率を上げるような考えはないでしょう。そして、いずれにせよ本人も20~30代には支持度が脆弱で、50~60代以上で高いという事実を知っているでしょう。問題はこのような支持率の構図において、20~30代の支持まで上げられるようにする共通分母を政治的な議題の中心に置くことができるということです。私はそれが「従北たたき・安保・統一」であると思います。いかなる政治家でも核心のイシューを持って自己のアイデンティティを立てて支持率を上げるものですが、50~60代には安保上の不安を訴え、20~30代には北朝鮮に対する嫌悪感を利用します。これを結合させれば「従北たたき・安保・統一」になるでしょう。大統領支持度だけでなくセヌリ党の支持率が高い重要な理由は「従北たたき・安保・統一」論が受け入れられているためです。これを握っているので、「474民営化」が、経済が崩壊しない限り持ちこたえるのでしょう。ですから、「従北たたき・安保・統一」論が重要なのであって、そのような論を支持する、朴槿恵政権をめぐるネットワークの力を無視することはやめようということです。さきほど鄭委員長が、市民運動が傾けてきた努力についておっしゃいました。政治がなかなかうまくいかないのがさらに大きな問題ではありますが、金大中・盧武鉉政権の10年で作られたものが、保守陣営によって簡単に崩壊させられてしまう現実に対して、市民運動も自らの運動のアイデンティティややり方について根本的に問うべき時ではないかと思います。李哲煕 お二人のお話しはさほど違わないと思います。強く見えるあの安保論は、実は大韓民国の保守が大統領選挙の時に取った改革的プログラムさえ、きちんと貫徹させるほどの力量や自信がないために持ち出したものですから。結局、使えるカードはそれしかなかったのです。朴正熙時代のように高度成長という時代的目標があって、それが一定の成果を出すならば、安保は非常に安定した論でもあり得ます。ですが、社会経済的な格差の拡大によって大多数の人々の生活が荒廃しています。安保の強調で生活の問題をしばらく猶予させられるかどうかはわかりませんが、そのことと現在の社会経済的な弱者の持つ要求の間の不調和は、ある瞬間に破裂を起こすでしょう。いわゆる「統一大儲け論」〔南北統一が経済的にさまざまな点で有効であるとする朴槿恵大統領の統一論―訳者〕も結局カードがないという傍証にすぎません。
朴槿恵大統領は初めからスタンスの取り方を誤り、自ら身動きの幅を狭めたと思います。その起点を、おそらく大統領選挙当時の人民革命党など過去の問題として捉えることができるでしょう。過去の問題でブレーキがかかり、改革的保守への道から過去に戻ったのでしょう。そのように大統領が背を向けたことを契機に、あるいは大統領をうまく牽引したために、保守の中でも安保分派が勢力を伸ばしたようです。だから安保論が福祉論よりも優勢になるわけですが、これは野党を抑圧する効果よりは、与党内部のヘゲモニー争いを整理する効果の方が大きかったようです。ですが、全体社会に貫徹させるにはまったく無理な議論なので、最後までこのまま行くのは難しいと思います。ですから私は、朴槿恵政権はさほど頑丈な政権ではないと思います。
この点は民営化についても同じことです。朴槿恵政権は鉄道ストライキすら処理できない力量だったのですから、民営化はより一層難しいでしょう。もし民営化の問題でうまく行くようであれば、私は進歩改革側にも再編と革新の機会になるだろうと思います。だから朴槿恵政権が安保を強調してこちらにくるならば、それを幸運と考えて拍手で歓迎し、そこで戦線を形成するべきでしょう。今はまだこの政権が若干余裕を持つほどの大きな課題がありますが、生活の問題で多数がかかえている苦痛を考えれば、彼らも戦略的構図をきちんと捉えているとは思えません。今年も朴槿恵政権が成果を出せないならば、過去のいかなる政権よりも虚弱になり得ると思います。金鍾曄 安保や従北たたきの強調が、若い層では嫌悪感を動員し、年配の層では敵対感を動員するということ、その点で朴槿恵政権がある程度成功したというのは充分に説得力がある話です。ですが、統一の強調はその2つと葛藤を起こすことはないでしょうか。「統一大儲け論」は実際に実績を出すべき領域ですが、突然、北朝鮮の崩壊が起きない限り、先方と交渉のテーブルに座らなければならない問題です。この問題については鄭委員長がおっしゃりたいことがたくさんあると思いますが、まず朴槿恵政権の特性と関連して私もいくつか指摘したいことがあります。
朴槿恵政権が虚弱さと強固さの両面を持っていることは通常の政権と同じですが、どのような面でそうなのか、総合的にはどうなのかを判断することが鍵でしょう。私は、朴槿恵政権の根本的な弱点は、私たちがみな見てきたように、選出過程での手続的な正当性の問題にあると思います。正当性の危機自体も重要ですが、それが朴槿恵政権の今後をどのような方向に導くのかも重要でしょう。その方向はすでに指摘されたように、安保論に依存することであり、他の1つは成果と実績に執着することです。政権が政治的・手続的な正当性において強固ならば、実績の負担において多少自由な面がありますが、朴槿恵政権はそれが脆弱なので実績に対する負担がきわめて大きいだろうと思います。「統一大儲け論」もそのような負担を加重させる面があります。
ですが、ある種の強みが見える部分もあります。2つのエピソードを指摘しましょう。1つはヨンフン中学校の「社会的配慮対象者選考」の不正で教頭が自殺した事件と関連しています。そのとき朴大統領は閣僚会議でヨンフン中学校の国際中学校認可を取り消すべきだという発言をします。ですが、ムン・ヨンニン教育長が2、3日後に京郷新聞とのインタビューで「バスに問題があればバスを取り替えなければならないが、運転に問題があれば運転手だけを取り替えればいい」として大統領に「対抗」します。ですが「教育長ごときが」といって対応せずに、むしろ政権側でこっそりとやりすごそうとしました。この政権の属性から見ると少し驚くべきことです。それを見て私が感じたのは、朴槿恵政権が自らの陣営の情緒や雰囲気を理解して、それと一緒にやろうとするということでした。これがおそらく殷議員の言ったこの政権のネットワーク的属性と思われます。
もう1つは昨年8月の税法改正案の発表の時のことです。政府が税収を増やそうと所得控除を税額控除に切り替えようとしました。中間範囲の所得者も税金をさらに多く出させるものですが、それに不満が沸きおこって、年間7000万ウォン(700万円ほど)以下の所得者には税金増加分がほとんどないように再調整します。朴槿恵政権が初めて政策を修正した事例ですが、私が見るところ、事態が深刻だと考えれば速かに反応する政治的能力があります。

 

安保論から社会経済論に重点を移すべきか

 

鄭鉉坤
 朴槿恵政権の強み、そして特に安保論の強さについて、私は少し違うことを考えています。昨年の状況を考えてみます。国家情報院が李石基内乱陰謀事件を発表したのが8月29日です。280余りの市民団体で構成された国家情報院時局会議のなかで運営委員会を開きました。統合進歩党側は共同対応を強く要求してきましたが、私たちは李石基事件と国家情報院大統領選挙介入事件を分離しました。国家情報院政局はむしろ拡張しました。その後9月末には全教組設立取消攻撃が、12月初めには鉄道ストライキが起きました。あちらの構図の通りならば、従北たたきの追及をしながら社会運動勢力全般を壊滅状態にしていなければなりませんでした。それが企画の完成です。ですが、国家情報院の選挙介入に対する戦いがはるかに大きくなって、政権の意図がうまく貫徹されませんでした。この過程で民主党も国政監査を通じて新しい事実を明らかにするなど功労が大きかったと思います。その功労を続けられずに、特別検察案をひっこめて特別委の方に糸口を見つけながら妙なことになりましたが。とにかく全体的には従北たたき論が力を出せていません。全教組に対する攻撃は本案訴訟が残っていますが、ひとまず裁判所によって行政当局が制止されることがありました。鉄道民営化という全く異なる政局が形成されましたが、民営化反対闘争が大衆の相当な支持を得て、ここでも朴槿恵政権が取ってきた企画が成功しなかったと思います。それが年初に「統一大儲け論」が出てきた理由にも思えます。殷秀美 そうですね。成功か失敗かという基準が何なのかが問題ではあります。私がさきほどこの政権をネットワークの観点から考えてみようといいましたが、私は彼らが保守大連合を新しい形態で試みているのではないのかと思います。たとえば盧武鉉前大統領の弾劾事件を思い起こしてみましょう。盧前大統領は「(ウリ党が)勝ったらいい」という一言で弾劾訴追に遭いました。そのときと比較してみれば、朴槿恵大統領はすでに下野を10回はしていなければなりません。ですが、それを阻んで従北たたきをやってきました。それほどに深刻な状態でしたが、そうしたら野党が勝たなければなりません。それがだめでも最低限、退陣要求くらいは出てもよかったのに、あちらが大統領選挙不服論で完璧に防御した形になりました。そして今年に入ってまた規制緩和のような大企業偏重と民営化を露骨化して「統一大儲け論」まで持ち出してきました。とにかくここまで阻んできた保守ネットワークがこの政権の力だと思います。李哲煕 朴槿恵政権の政治的な反応力についての司会者の指摘は意味がありますが、その問題を少し異なる角度から見てみると、朴槿恵政権の安保論にどう対応するかという問題も取り上げられるだろうと思います。司会者が指摘した事例で、大統領が原点から再検討しろというような指示をして直接介入し、基礎年金法の論議の時も直接立ち上がって鎮火に乗り出しましたが、私はこれは生活問題では戦線を作らないという意思だと思います。その部分で何かが起こったら耐えられないので、未然に防いで自らが望むイシューの構図に進むということですが、野党はこのような点に着目して税制改編と基礎年金問題にさらに集中しなければなりません。もう少し挑発的に問題提起をすればこのように言えます。殷議員が把握するように、民主主義や手続的な正当性の戦いを野党が取り組みそこなったり、与党が未然に防ぐほどの能力があって、この問題が隠蔽されたと私は思いません。当初から朴槿恵大統領の退陣は火がつく事案ではなかったと思います。野党がむしろ生活の問題で戦線を作る力量がないので、民主主義や手続的な正当性の問題に全力投球してしまったという印象です。金鍾曄 李所長の話に同感です。事実、政権退陣の議題と関連して、民主党は国民がそこまで背中を強く押してくれればやるということだったのであって、自ら政局を主導して牽引するという意志はなかったように思えます。ならば、国家機関の選挙介入の再発防止という明確な目標を持って、どうにかして国家情報院を大きく改革する法律をきちんと戦って勝ち取るべきです。そのようなこともできなかったというのは、選挙で選ばれる政党としては失格ではないかと思います。

李哲煕 そうですね。民主党側からウォーターゲートの話が出ていますが、アメリカのウォーターゲートは当時、現職大統領だったリチャード・ニクソンの問題です。こちらはまだ現職大統領が介入したという情報がないのに、なぜそのように決めつけるのかわかりません。この事件の核心は李明博氏ですが、それならば李明博氏を追及するべきです。彼には触れずに朴大統領ばかりを攻撃していても解決できるのかということです。民主党が問題を見誤ったという点もありますが、きちんと見ていたとしても、それは現在の大衆のニーズに合った事案ではありません。私は民主主義の問題を提起するには、たとえば「貧しい民主主義」「不公平な民主主義」と言うべきであって、民主主義自体だけを取り出して語るべきではないと思います。

殷秀美 李所長がご指摘になる問題を、私なりに「日常の民主主義」と表現したいと思います。それに関連して、私は国家情報院の事態がなぜ大衆の日常とうまく接合しないのか真剣に考えました。私がさまざまなところで非正規職の人たちと会うと、彼らは国家情報院の事態に関心がないんです。むしろ私に対して、あなたのように労働に専門性のある議員が、なぜ国家情報院の問題を取り上げて論じるのか、私たちの問題を語るべきではないかと言っています。その人々の立場ではすでに民主主義が崩壊しています。労働三権もなく大企業にあれこれとやられて瀕死の状況で、国家情報院が不法に大統領選挙に介入したとしても、それがどれほどのものだということでしょう。民主党や党内の改革勢力がこのような問題を正確に認識して、不平等の問題を全面的に提起することに無力でした。この問題の解決には2つのことが必要です。私はフェイスブックに「いったい、赤の鉢巻きとろうそくデモの市民はどのように疎通できるか」というエッセイを出したことがありますが、労働市民と一般市民の疎通と結合が最初の社会的な条件です。このような社会的な条件に希望的な兆しが見えてはいます。世論調査を分析すると鉄道民営化反対の世論が60パーセントで、鉄道ストライキ反対の世論が60パーセントです。ならばストライキ賛成が40パーセントにしかならないという指摘もあるでしょうが、事実、これは天地開闢のようなことなのです。2009年の鉄道ストライキも民営化反対でしたが、完全にめちゃくちゃになりました。今回のように正規職の人たちが行ったストライキを、それでも40パーセントが支持したということは、とても稀なケースです。非正規職がストライキをしても、たとえば給食労働者がストライキをしても、支持率が50%くらいならむしろましな方ですから。そのような点で鉄道ストライキ支持は最近1、2年の間に変わったかと思います。ですが依然として何かが足りません。民主主義と憲法の根幹が動揺する形でストライキ事態が進み、そこで損害賠償請求訴訟などで労働者側がほとんど壊滅的な苦痛にあっても、それを阻む政策や法をひとつもきちんと作ることができません。労働市民と一般市民が全面的に結合することによって、このような問題が道徳的なイシューではなく政治的イシューになるべきです。もう1つの条件は政党の革新です。私たちの中で改革派とか強硬派とか言われる人々も、不平等の解消を目標にする政治を掲げて党の革新を提起することはできませんでした。私は最初の問題、すなわち赤の鉢巻きとろうそくデモの市民を結び付け、それを政治的に解決していくことにはるかに関心が行っていましたが、考えてみると、より重要なのは2番目の党の革新の問題でした。私は所得の不平等をなくして所得主導の成長をおこなう民主党の「所得プラン」を全面的に掲げようというプレゼンテーションを党でやったことがあります。そのような問題に対する根本的な思考を持って戦線を形成するべきでしが、それができませんでした。民主党の革新なくして市場の保守化を阻むことは困難です。

李哲煕 政党革新はプランと政策の問題だけではありません。むしろ民主党革新の核心は人的な清算です。なぜそのことで戦わないのでしょうか。私はある面では民主党の若い議員や486議員が卑怯だと思います。たとえば「経済民主化実践の会」(ナム・ギョンピル議員やイ・ヘフン議員などが主導して40人余りの院内外の要人が参加―編集者)は保守政党であるセヌリ党の中で経済民主化を叫びました。朴槿恵大統領が当選後、大部分包摂しましたが、とにかく熱心に主張しました。ですが、民主党は大統領退陣のことばかり言っていました。なぜ、そのような議題だけで戦えると思うのでしょう。それでもそうするならば、486世代の制度圏の議員が出てきて議員バッチをかけてその話をするべきです。でも、そのような姿勢はなく議題ばかりにこだわっている局面なので、チャン・ハナ議員のような下の世代の人がその役割を自分が担うといって出てきています。人的な清算案を果敢に出すべきです。そして社会経済的な議題をなぜ党内で提起できないのでしょうか。ウルチロ委員会できちんと作ったではないですか。あちらからはこれを隠すために他のカードを切ってきました。ですから、これがあちらの弱みなんです。ですからそこに集中するべきです。労働政策といえば殷秀美のことを思い出すほどに、さらに強化させるべきです。なにか私が個人コンサルティングをしているみたいです(笑)。


朴槿恵政権下で対北朝鮮包容政策は有効か

 

金鍾曄
 対抗軸を安保や従北たたき論から社会経済的論に切り替えるのが望ましいという意見について鄭委員長はどう思いますか?鄭鉉坤 説得力のある主張ですが、安保論に対して私たちなりの言説とプログラムを備えるのがまず重要です。そのような準備ができていない場合、彼らが時には「統一大儲け論」で、また時には北朝鮮嫌悪論で、または軍事訓練や北朝鮮を刺激する各種イベントで、突然攻勢をかけてきたらやられてしまいます。そしてこのような戦線でやられることになれば、民主主義でも社会経済的改革でも達成の見通しが暗くなります。そのために民主派の中心政策であり言説である包容政策について深く省察する必要があります。私はこれまでの包容政策の中に、和解協力の段階から南北連合の段階へと進む過程の設計がすでに含まれていたと思います。ですが、和解協力の次の段階である南北連合の意味が内部で充分に共有されていないのが大きな問題だったようです。北に対する援助論が論争になりつづける理由は、和解協力の水準の問題を次の段階で、ですから、包括的な意味の統一論の中で収拾すべきなのですが、それについて積極的な言説形成がなされなかったためです。南北連合という統一の未来に対する像を代案として提示しながら南北関係を解決していくべきです。このような部分で私たちの立場が幅広い共感を得たとすれば、「統一大儲け論」も簡単に批判されただろうと思います。「統一大儲け論」の前提になった統一に対する未来像は、南が北を吸収する統一以外にまったくありません。これは北の存在を全く考慮しないことでしょう。ですが、南北連合が陥っている包容政策にもこのような吸収統一の要素があります。このような構図だと保守の統一論を乗り越えにくいと思います。保守の言説の方がずっと威力を発揮するのは、こちらの主張と言説がきちんと整理されていないところが大きいです。李哲煕 そのような面が明確にあります。ですが、討論のために私の立場を単純化して言えば、私は今の包容政策では持ちこたえられないと考えます。さまざまな条件自体が変わったのに、それに頑強に固執するのは政治的観点においてよくないと思います。せめて「2.0バージョン」〔白楽晴ソウル大名誉教授が2009年に提起した、南北連合と東アジアの平和態勢の同時推進が必要であるという新たな構想―訳者〕くらいにはならなければなりません。ですが、その2.0の内容がどのようなものか、核心をそのまま維持したまま2.0に行くというのは言葉遊びです。「統一大儲け論」が虚構であると攻撃するだけではなく、たとえば「福祉大儲け論」で行くべきだということです。あちらから言説を提起すれば、それを捉えてやりこめるのではなく、それはおまえたちが処理して、私たちは、たとえば「福祉大儲け論」でやっていく、というのがいいのであって、「統一大儲け論」が正しいとか正しくないとか、どのような統一が正しいとか間違っているとかいうのは、あちらに有利な主題なのですから、そのようなことはやめようということです。いっそのこと構図を、統一か、平和か、という形に持っていくべきです。他人が整えた食卓の上で、自分のものたくさん食べようと戦う姿勢は、別に実益がありませんから、その食卓はおまえたちが食べろと与えてしまうか、最初から考えない方がいいでしょう。鄭鉉坤 考えるなとまでおっしゃるのは少し困りました(笑)。お話しの中に含まれた苦悩を理解します。外交安保部門は大統領や政府与党の権限の方がはるかに大きいので、力関係上、やっても負けてしまうゲームであることは明らかです。だから私も民主政権10年の対北朝鮮政策のことを主に語っているのです。今はあちらが刀の柄を握っているわけですが、市民社会運動の立場では、現在、より鋭く整えるべき時期だと思うんです。

李哲煕 ですが、「統一大儲け論」の下に、急変事態や吸収統一のほかに、保守政権と北朝鮮間の談合シナリオもあるのではないでしょうか?

殷秀美 すでに歴史的事例として「7・4南北共同声明」(1974)があるでしょう。現在、外交専門家たちの間でその話が非常に広範に拡散しています。「統一大儲け論」の裏面には北と談合する可能性があるということです。なぜなら、金正恩体制も現在、不安定ですから、談合する可能性はいくらでもあると思います。「統一大儲け論」は、地方選挙までは安保の議題として議論し続けて、選挙が終わったら統一の議題に切り替えるということを暗示したということでしょう。

鄭鉉坤 私も談合の可能性がないとは思いません(笑)。ですが、私はその可能性があっても問題になることはあまりないと思います。DMZ(非武装地帯)に軍隊を入れる形で安保政局の形成をめぐって談合を語るわけではないでしょうし、うまくやってみようという形でイベントを作り、後でひっくり返すということでしょうから、それ自体として蓄積の効果を上げることが今の流れだと思います。そして、李所長が平和か統一かというような構図を提起する方がいいとおっしゃいましたが、私は違うと思います。事実、この構図の罠に陥ったのがこれまでの包容政策だと思います。この構図の問題は、北朝鮮を制御しにくいという点にあります。北が感じる体制安全の問題は、私たちの考える平和論で完全には保障されません。北は、私たちが描いた平和の枠組みからいつも逸脱します。ですから平和を語っても持続性が生じません。今、北の行動半径は非常に多様に変化しているので、平和か統一かという戦線はすでに崩壊しているというのが私の判断です。ですから包容政策2.0が提起されたのです。アップグレードされた包容政策は、このような二者択一の構図を打ち破り、統一を新しい構図の中に受け入れます。南北連合を中心に置いて和解協力を設計する方式です。このように南北が共存できる枠組みを明確に北に提示する時、はじめて安全問題が解決され、和解・協力や平和も順調に進むという立場です。

殷秀美 そうですね。今年2月の国会で、朴槿恵政権は「統一大儲け論」を背景にした、北朝鮮人権法を中心に政局を引っ張っていこうとするはずですが、私はこの政局は野党にきわめて不利だと思います。ですから、あちらが「統一大儲け」といえば私たちは「福祉大儲け」、または「福祉が一番」といえばいいだろうと思います(笑)。私たちのホームグラウンドで点数を取って、そこから安保論に進むという手順がいいということです。次に、私は専門家たちに聞きました。太陽政策2.0にみな同意します。ですが、その具体的内容はこれから研究しなければならないといっています(一同笑)。だとすれば、その話を今、そう言ったらかえって難しいでしょう。私たちの方の準備が不充分な状態で、あちらが安保か平和かという言説を引っ張ってきたのです。ならば、私たちは、太陽政策2.0という言葉に、内実が貧弱でも、ひとまず対応をするべきですが、そのような時、まず有利な地形に導くことが必要です。その点で「福祉が一番」が必要です。そして南北関係でも、もう少し対応が容易なことから提起する方がいいと思います。たとえば南北朝鮮の死刑制度を廃止しようというんです。張成沢処刑のニュースを総合編成チャンネルが2週間も続けて報道していました。その効果が非常に大きかったと思います。金正恩に対する嫌悪感を最大化しました。ですから、南北共同で死刑制度を廃止しようという主張のようなものを提起してみるだけのことはあります。まだ太陽政策2.0全体の内容や枠を私たちが構築できずにいるので、ならば、今の状況で私たちの代案を示すこと、私はこのくらいならいいと思います。

金鍾曄 私は政党と市民運動の立場にそれぞれ異なる部分があると思います。政党は集中力をもってエネルギーを集め、議題を管理することが重要です。たとえば「従北たたき論」が出てきたら、その論を打ち破って他の論に代える能力が重要なのであって、従北たたき論と正面対決する二者択一の言説をどのように開発するかというのは副次的なことだろうと思います。ですが、南北交流協力の事業をしてきた市民運動は、そのような問題を抱えて引き続きそれをやらなければならないので、自身の言説やビジョン、またプログラムを用意することに常にかかりっきりになります。また、殷議員や李所長は、安保や従北たたき論が基本的に朴槿恵政権とセヌリ党に有利な構図だとお考えですが、2013年を見れば、私は必ずしもそうではないと思います。安保や従北たたき論も、きちんと作動するには、それを活性する出来事的な契機が必要で、この部分で政治的力量が介入します。NLL対話録の論議と李石基事件を見て、私はもしセヌリ党がNLLでなく李石基事件から炸裂させ、その成果に力づけられて統合進歩党、そしてNLLと攻撃してきたらどうだったろうかと考えてみたことがあります。その方がさらに効率的だったでしょう。私の判断が正しいならば、あちらも事件と議題を構成していく能力の面において、さほど体系的で有能なわけではないといえるでしょう。他方、NLLの論議が広がった時、あちらが深刻な誤りを何度もしました。それでもそれを乗り切ることができたのは、民主党側から国家記録院の会談の対話録を閲覧するというなど、失敗をかなり犯したためです。安保・従北たたき論の下でも民主党に有利な局面がありましたが、それにうまく対処することができませんでした。
また、これまで朴槿恵政権の性格について話をしながら、判断が容易でないと思うのは、私が見るところ、一方で朴槿恵政権が強みと弱点を複雑に持っているためでもありますが、他方で朴槿恵政権のさまざまな形態が粗雑にも緻密にも見える面を有しているからだったようです。何か月か前の批判社会学会でも、朴槿恵政権がファシズムか否かをめぐって論争しましたが、そのときもファシズムと考える立場の中でも、それが「暫定的」ファシズムか「構造的」ファシズムかで意見が分かれました。大衆はもちろん、学者や評論家でも規定が容易ではないという兆候です。この問題について簡単にまとめをして、引き続き朴槿恵政権の攻勢の下で、こちらの陣営はどのように対応して何を変えていくべきか議論してみたいと思います。

李哲煕 私は、朴槿恵政権は緻密ではないと思います。年頭記者会見を見ると、自分の陣営内で整理された話をするのでなく、大統領一人で吼えているような感じを受けます。朴槿恵大統領と彼女を囲む勢力の間に人的構図がきちんと照応していないようです。最近、個人情報流出の事件への取り組みを見ても粗雑に見えます。人の口に戸は立てられません。ですから、結局、戦いでは現政権の弱みをどれくらいきちんと追及できるかが重要です。4大河川事業に対する監査院の監査結果が出た時を思い出してみましょう。私が聞いたところでは、与党内部で4大河川問題に触れたら、結局、大邱=慶尚北道を刺激することになる、盧武鉉政権が困難に陥ったのも、北朝鮮への送金問題のせいですが、盧武鉉政権のように内部の支持基盤にそのように亀裂を出してはいけない、だから4大河川問題に触れてはいけないという主張があったといいます。これは逆に、この問題があちら陣営の内部亀裂を引き起こすほどの弱みだということですが、この問題に対して野党が執拗に追及できませんでした。全体の構図において朴槿恵政権がうまくやっているわけではありませんが、それを攻撃する側が稚拙なので、それなりにここまできたというのが私の評価です。


社会運動の危機と民主派の基盤弱体化

 

金鍾曄
 それでは議論の方向を若干変えて、1987年以降の社会運動と政治運動を牽引してきた民主派の人々が、この時代をどのように暮らしており、また、どのような革新を必要とするのかについて話してみたいと思います。このような話をしてみたい直接的な理由は、私たちがこれまで議論してきた朴槿恵政権の特性と関連があります。朴槿恵政権はさきほど話しましたように経済的な成果に執着しています。ですが、すでに韓国経済は政治的投入の効果で実績を向上させることは困難な複雑性を有しています。このように実績を出しにくい時、それを補充する方法は、反対勢力や抵抗勢力を弱体化することです。私は、この政権は実績を出す能力は落ちるが、社会運動のさまざまな陣営を破壊する能力は相当なものだと思います。これまで保守集団は労働運動を社会的に孤立させ、正規職と非正規職、元請けと下請、一般雇用と特別雇用または派遣労働を分割し、互いに反目させる統治をしてきました。ですが、昨年、公務員労組、全教組、KTX労組に対する政府の行動には、労働運動の中心部を破壊しようとする意図が見え隠れしていました。今、民主労組の組合員数は70万程度になりますが、違法労組の状態である公務員労組と全教組を引くと40数万くらいの水準になります。その40万の中で保健医療労組と金属労組を孤立させたら、残りの勢力はあまり存在しないといってもいいほどです。労働運動が傾けば社会運動全体に深刻な破壊が起きる可能性が大きいでしょう。彼らはハンギョレ新聞や京郷新聞を見て進歩的なインターネットメディアを利用し、選挙で野党を支持する集団ですが、この集団の弱体化は民主派自身の弱体化や沈滞につながるだろうと思います。殷秀美 労働運動状況を全般的に見るのは容易ではなく、議員個人の立場で労働問題について申し上げます。私は定期国会を2度経験しましたが、2012年の定期国会では争点がSJM暴力事態(警備サービス業者の「コンテクトス」がストライキ中のSJM労働者を暴行した事件)と双龍自動車整理解雇の問題でした。労働権が中心的な問題でした。昨年は問題が「下請社会」でした。サムスン電子サービスから始まって仁川空港など、あらゆる下請について取り組みました。これは労働権の問題であり経済民主化と直結した事案です。今、民主党ウルチロ委員会で、この問題を活動の40パーセントくらいの比重で取り組んでいます。そして実際に解決した事例もあります。サムスン電子サービスに勤務していて自殺したチェ・ジョンボムさん葬儀はウルチロ委員会で解決した問題です。今年はこれをさらに拡大して、段階的な不平等をなくし労働権を確立する元年と定め、その不平等のうち損賠(労組に対する損害賠償請求)、産業災害、下請の3つをなくしていくことを運動の目標としました。このような形で国会議員としての自分の課題を考えていましたが、党の次元で集中するところまではできませんでした。この過程で私がずっと悩んでいたのが、さきに指摘した労働と市民との間の意思疎通の問題です。両者をつなぐために、私が講演のようなことをする時は「仕事をする市民」や「市民の権利としての労働権」という言葉を使います。このようなものが政治的議題として共感を集めるには普遍的な同意がなければなりません。一言でいって市民社会運動において特に労働と一般市民を結合し、それを自らの問題として認識させ、労働権を全面化できるのか、それとともに党内の改革的議員をここに集中させられるのかが、なかなか解決できません。たとえば鉄道民営化の問題はイシューとしてすぐに浮上するので関心が集中しますが、サムスン電子サービスの問題は人が死んでいるのにうまくいきません。アルバイトと組合と労働と勤労者と下請、これらのすべてが1つの次元に結びつくべきで、それでこそ労働権や損害賠償訴訟の問題を重要な政策的イシューとして提起できるのですが、まだ解決策を出せずにいます。この解決策が2017年の大統領選の戦略と非常に密接な関係にあると思います。金鍾曄 事実、労組に対する現在の形態の損害賠償訴訟は、どうして政界で重く扱われずに、このように長い歳月が流れたのかということです。損害賠償訴訟をまったくなくしてしまうことはセヌリ党が反対して困難だったとしても、少なくとも充分に議題化され社会的に公論化されれば、会社側の損害金額の算定をはるかに厳格にするという程度の法改正も、与党ができないと手を引くことはないのではないでしょうか。仮差押えの条件がかなり苛酷で当事者の生計を困難にしてしまう局面ですが、少なくとも賠償金は法的に判決が出た後に持っていけというくらいにはできないでしょうか。労働運動と市民運動、民主党が一緒に力を合わせて動いてくれればと思います。李哲煕 そうです。そのような努力が労働の組織化を高める道であり、野党の支持基盤を拡充することでもあります。あまりにも目の前の政治議題だけにとらわれずに、このような地形と陣営を形成する努力をするべきです。
殷秀美 私が上半期、環境労働委員会をほとんど終えて、下半期最後の環境労働委が残っています。環境労働委は野党が優位にあるので、今回、少し物議をかもそうかと思います(笑)。全教組法や最低賃金法を少なくとも常任委は通過させることができるでしょう。本会議は通過できないかもしれませんが。それから法改正の去就は選挙結果に大きくかかっているでしょう。地方選挙で負ければ民主党は事実上、防御に忙しくなるでしょう。そうなると秋にも環境労働委は非常に難しくなるだろうと思います。法通過の見通しが暗くなるでしょう。環境労働委で労働法を改正できる程度になるには、地方選挙と国会議員補欠選で勝たなければならないでしょう。

金鍾曄 選挙の話に行く前に、労働運動の状況だけでなく市民運動の状況もさほどよくないので、その話を少ししてみたいと思います。市民運動もすでに李明博政権の時から苦労してきましたが、戦いが長くなるにつれ後続世代の補充や拡張が難しくなるようです。社会運動の孤立化の段階が破壊の段階にまで深刻化しうる状況ですが、いかがでしょう、現場での感触は。

鄭鉉坤 2つほどお話しします。1つは運動の経済的な基盤の問題です。2012年に私たちは市民社会活動家を対象にアンケート調査をしました。127の団体と個人運動家300人、計427の結果を集めましたが、平均賃金が133万 6000ウォンでした。最低賃金の水準です。もちろん家計所得は300万ウォンを少し超えています。配偶者と共稼ぎだからです。活動家の再補充がうまくいっているかという質問では79パーセントがうまくいっていないと答えました。最も大きい理由として多数が低賃金を挙げました。その他に劣悪な勤務環境、ビジョン不在のようなことです。市民社会運動が再生産の危機に直面していることは明らかな事実です。
他の1つは運動の公共性が充分に認められていない状況です。昨年、市民社会団体が集まって点検しながら、いくつか見えてくるものがありました。まず女性運動の側では、公益のために犠牲になってきた女性指導者像を作れなかったという自責の念が大きいです。朴槿恵が一家族の苦労した長女のイメージをすべて持っていく間、本来、女性運動が積み重ねてきた公共性のイメージは行くあてを失ったということです。女性界が性差別を減らし両性平等の水準の引き上げにかなり寄与しましたが、その中心戦略は差別される女性にインセンティブを与えようということでした。ですが、大衆はそれを、女性運動とその指導者が自らの条件で利益を上げると考える傾向が強かったようです。そのうえ非正規職の問題など労働陣営との連帯が弱いせいか、結果的に貧しい女性大衆の労働条件が悪くなりました。女性運動の側は苦悩が深かったようです。環境運動の側もそうです。緑、環境、生命の価値が普遍的であると判断し、緑に投票しようという運動をしましたが、拡張力がありませんでした。それをみて生命と緑色の価値が陣営の論理にとらわれていると考えたようです。参与連帯や経実連もそうです。そこで働いていた方が政界や国家機関に簡単に入りました。彼らがどこにいようと、公益のために仕事をすればいいのですが、大衆はこういうことを見ながら、社会運動も結局、個人の利益を追求するのだという印象を得ているようです。社会運動全般が公的な大義のために献身する伝統を上昇させることができていないのです。
今、代案運動の領域で、社会的経済や村作りのような事業が本格化していますが、始まって間もないものですし、このような領域で市民運動の公共性や公益性をどのように実現するかが確信をもって体感される水準に達することができていません。

金鍾曄 社会運動家の暮らしの問題や人材補充の問題は、こちらの陣営がきちんと検討できなかったことの1つです。たとえば政権に入って仕事をした人が政権が変わって職場を失えば、どのように暮らしているのだろうか、国会議員をやっていた人が選挙で落ちたら何をするのだろうか、市民団体の事務局長をしていて、その次は何をするのだろうかという問題でしょう。そのような問題が個人的な解決となり、少数だけが政界に行くような状況でした。全体の社会運動が暮らしの問題について検討し、社会問題の解決方案であり社会運動の新しい方向として、社会的企業や協同組合について検討するようになってまだ日が浅いです。このような領域で土台が用意されてはじめて財団も作り研究所も作り、社会運動の生態系と循環のリズムを備えていくものですが、なかなかそうはなりません。保守集団の出方に対応して、こちらもそれなりの進歩的な出方の構造を作る必要があっただろうと思います。今、民主派の中で安定感をもって暮らしているのは、大学教授、国会議員、弁護士くらいしかいない実情のようです。

殷秀美 私は鄭委員長がおっしゃった女性運動の苦悩が非常に印象的です。驚きでもありますし、うれしいことでもあります。私は女性の中でも中産層女性のセクシュアリティの問題よりも、スーパーや派遣サービスで仕事をしている50~60代、あるいは飲食店でサービス業に従事する40~50代の女性のセクシュアリティの問題の方に、はるかに多くの関心を持っています。彼女たちはつねにセクハラに苦しめられ性暴力にさらされていますが、それに関心を持つ人はあまりいません。女性学者や女性界の要人がこんなにいるにもかかわらずです。公共性について一層深く苦悩するならば、そのような弱者の問題にもっと関心を持ってほしいと思います。他の一方では、社会運動において公共性の定義を明確にするべきだと思います。私は、公共性とは弱者との連帯だと思います。生態運動家にこのように聞くとどう答えるでしょうか。貧しい人々に対して生態や環境とは何か。貧者はむしろ開発の方がいいこともあります。地下の一部屋より賃貸アパートの方がいいのです。このような人々にとって環境や生態とはなにかという問いを、私はいつも提起します。私は環境労働委の所属でもあり、環境問題をどう扱うべきか今でも頭を悩ませます。そのような点で、私は、社会運動が現実における公共性の問題にもう少し深刻に悩むべきであり、特に弱者との連帯が公共性の最優先の核心で、環境でも生態でも女性でも労働でも、自分たちの周辺の弱者にとって公共性とは何なのかを説得できれば、私はそのことがすなわち韓国社会の公共性であり社会運動の動力だと思います。私も政治が回復すべき公共性がどのようなものか真剣に悩んでいますが、私たちがそれに成功すれば2017年に政権を取ることができると思います。

 

連帯と革新なくして突破口はない

 


金鍾曄
 殷議員はやはり現役議員なので、話の結論は政治的課題に帰結するようです。少し前に労働権と労働関連法の改正のためにも地方選挙での勝利が重要だという話題もありましたので、その問題についてお話しします。さまざまな争点があるでしょうが、2010年の地方選挙と比べて最も明確なのが、あのときはみな口をそろえて野党連帯と連合政治を叫びましたが、今は誰もそのようなことを言わないという点です。統合進歩党はさておき、正義党や労働党も独自路線を強調します。民主党と近い将来、新党を作るだろうと思われる安哲秀(アン・チョルス)新党の方も語りません。みな我が道を行くと大声を上げている状態です。結局、賢明な市民が各自、全体の選挙戦で野党の力を育てられる候補に対して、慎重かつ戦略的な選挙行為をしてくれることを願っているようです。単純多数代表制でどのような形でも連合政治に対する新しい突破口なくしては野党の勝利が非常に危険になるということをみな知っていながら話をしないのです。この問題について常日頃お考えのことがおありかと思います。李哲煕 現在の状況は、連合政治、連帯、候補単一化が野党の唯一の戦略であるということ自体が食傷気味に感じられるうえに、野党が他の戦略に対する検討なく、そのことだけにこだわってきたことに対する逆風だと思います。もちろん、おっしゃられたように、単純多数制選挙制の下で連帯戦略は避けられない選択です。ですが、なぜ各政党や政治勢力が連帯はないと叫ぶのか、私はそのことが、革新しようとしないことに起因すると思います。前回の総選挙における統合は革新を隠すための統合でした。あのときは連帯すればいいのであって、革新などどうでもいいということでした。今は連帯のためには名分を蓄積するための革新を行うべきなのですが、逆に連帯をしないと宣言しながら実際には革新を回避しているのであって、革新のために連帯をしないと言っているわけではないのです。きわめて卑怯な態度です。今すぐ連帯論を取り出すのは留保するとしても、連帯論が受け入れられるには、どこまで革新するべきかという言説で問題を解決するのが正常ですが、そうできずにいます。だからきわめて危険な方向に進んでいるというのが私の診断です。
今は過去のような全面的な連帯方式ではだめだろうし、もしかしたらこの状態で地方選挙をやることになるかもしれません。そうして最悪の結果が出れば、それなりの教訓を得るだろうと思います。そのような点で短期的な解決法はないと思いますが、それでも連帯のためには今から各党が解決すべき革新課題をいくつか出して、それを推し進めなければなりません。民主党の指導部が主導的な役割を果たせないのであれば、内部で革新グループを形成し、それを推進してその成果で連帯することが、実際に可能かわかりませんが、結局、そのようなこともなく連帯しようというのは効果がないと思います。他の政党も同じです。
そしてこのような状況に置かれているので、前回の大統領選挙以後、安哲秀氏の立候補という変数を、野党や進歩勢力がどのように管理したかを問わざるを得ません。妬みや嫉妬、侮蔑と期待で錯綜していましたが、そのような形でみると、安哲秀議員が野党の革新と発展に寄与するというよりは、部分的には攪乱要因として作用したようでもあります。今後もこのような状況が続く可能性は大きいでしょう。ですから今回、連帯できようとできまいと、安哲秀氏の動静をどう見るべきであり、野党全体の陣容をどのような形で組むか、ということに対するイメージが形成されるべきです。そのようなイメージを持って連帯を検討するべきでしょう。今回の地方選挙では全体的な連帯は可能でないと思いますが、それでも象徴的に、京畿道でもどこでも1、2か所で野党連帯を成功させ、ソウルはとにかく守ることが重要です。ソウル市長に安哲秀議員が出馬するべきだという話があちらから出ましたが、これは連帯を破壊するきわめて危険な発言です。ソウルをどのように守るのか、また、1、2か所でどのように連帯のモデルを作り出すのかについて検討するべきです。金鍾曄 どのような方法でそれが可能でしょうか。中央党は距離を少しおいて、候補同士で処理しろという方向に話を開く方がいいということでしょうか。李哲煕 候補のレベルでやるのではなく、党内部、主に民主党で動きがなければなりません。安哲秀新党側は、今、ユン・ヨジュン氏や保守側の人々が入ったので簡単に動かないでしょう。安議員が彼らを制御しない以上は容易ではなく、正義党は話をしても力自体が落ちているので、結局、民主党内部の底から議論が上がってこなければなりません。ですが、それが受け入れられるには民主党の革新や既得権の放棄が必要です。あまり大袈裟にではなく一言でいえば、人的な清算、人を追い出すことです。すぐに追い出す方法がなくても、強く推進して1つの基調で作り出し、それを連帯の流れにつないでいくのが正しいと思います。このようなことが可能でも、連帯が実現する地域はいくつにもならないでしょうが。
 


2014年、私たちの課題

 

金鍾曄
 そうですね。もう少し話したい主題がありますが、予定された時間がまもなく終わりますので、話の整理した方がいいでしょう。まとめの発言として、民主派ないし野党、また社会運動全般の革新のために一言お話し下さればと思います。李哲煕 話が出たついでに、私が先に話をします。全体の社会運動の発展もそうですが、韓国社会ではあまりにも政治権力の去就が核心事案です。ですが、分不相応なことを言うならば、今、進歩陣営や野党には2017年の大統領選挙のプランがないように見えます。これがなければ、野党全般と社会運動の革新の焦点と方向が不充分になるでしょう。ですが、ないのは単に未来のことだけではありません。前回の2012年の大統領選挙も厳密に評価すれば2002年の複製版です。しかも100パーセントの複製すらできませんでした。韓国のように変化の速い社会で10年が過ぎているのに、以前の戦略をそのまま複製したということ自体が現在の力量を示しただろうと思います。もう少し遡及してみれば、民主化以降に進歩陣営や野党の時代を可能にした時代の課題を新たに規定するだけのものが確実には存在しない状況です。もちろん保守も同じことでしょう。保守は現実を守ろうという側ですから、あえて大きな話題を出さないでもかまわないでしょうが、どうであれ「先進化」という言説を出している反面、こちらはそれすらもきちんとうまくできませんでした。大衆に対して進歩が語るべきことや、この時代の課題を簡明に示すべきですが、それがないために、それにもとづいてどのように政権を担うのかという話題も脱落するのです。それで右往左往するのです。「民主」対「反民主」の構図にしがみつき、朴槿恵政権の失政だけをきちんと暴けば政権が取れる、政権さえ取れば世の中を変えることができると考えているようですが、私はすでにそのようなことは受け入れられないと思います。たとえ幸いに政権が取れたとしても、5年過ぎたらまた政権を取られることになるでしょう。政権与党や野党に注文したいのは、選挙主義に陥らないということです。4~5年周期の選挙で勝つことにすべてを賭けて、そのことだけを考える政治はやめてほしいということです。ですから、日常の民主主義、日常の政治が重要だと思います。126議席で4年間何ができて、それをどのようにやるべきかについて悩み、ビジョンを作るべきなのですが、そのようなことは適当にやって地方選挙ならば地方選挙、総選挙なら総選挙、大統領選挙なら大統領選挙と、場当たり的にどのような候補を出してどう勝つかに没頭している状態ですから実力がつきません。このような選挙政治よりは日常政治に力を注ぐべきです。その日常政治を主導する議題がどのようなものかについて悩むべきです。私はそこで勝負がつくと思います。そのようなこともなく、野党は今、不幸にも2017年までの道で非常に困難な状況を迎えています。一部には楽観的に見る人々もいます。どうせ勝つだろう、与党にどのような候補がいるのか、野党は候補が多い、朴元淳から安哲秀、文在寅など、ナショナルフィギュア(national figure)が多い、などというようにです。ですが、このように人物中心に編成されて分派が生じることが深刻な弊害です。安哲秀議員を見てみましょう。人物は浮上しましたが、彼の「新しい政治」がどのようなものか、まだ誰も理解していません。安哲秀アジェンダなるものがいまだない状態です。文在寅も議題がないのは同じことです。人物だけ見えてアジェンダがないという状況で、どれくらい持ち堪えられるでしょうか。だから私は心配に思っています。全体的に野党が根本から検討して、どうすれば政権が取れるかということを大きな方向で議論し合意しなければ、どのような専門家を付けても勝利のイメージ形成は容易でないと思います。ここで勝利のイメージというのは、政権を取った時、多数連合をそのまま維持しながら自らの論を貫徹するゲームプランのことを意味します。殷秀美 討論の冒頭に「問題は政治だ」といいましたが、私は民主党が、2017年の政権奪取が不可能なほどの深刻な危機に直面していると思います。二重の危機ですが、まず客観的状況として「傾いた運動の場」の問題があります。世代(50~60代)、地域(忠清道)、所得(低所得層)、集団(非正規職、零細自営業者)と、それぞれに明確な保守化現象が目立ちます。主体的状況では民主党の革新の失敗があります。アイデンティティの混乱と支持者に対する背信、古い分派論の再生産と議題主導権の喪失などで民主党は崩壊しており、地方選挙も危険な状況です。ですが依然として希望はあります。環境権、労働権、情報人権など市民人権の総体的災難で苦痛を受ける人々とともにする一方、この問題を解決するための激しい革新を、言葉ではなく実践で進めるならば、犠牲と献身を行う政治集団が民主党内に存在し、彼らが国民の共感を受けるならば、依然として可能性はあります。私はだから2014年に、弱者のための強い政治、国民のための人権政治、市民のための開かれた政治を標榜するべきだと思います。そして深刻な不平等、よく1対99と言われる状況を乗り越えるための、99%のための政治行動の時期、政治革新の時期になるべきです。民主党が本当に変わったと言われるようにするべきです。「あなたを愛しています」ということが信じられるようになるのは、実際に「本当にこの人は私のことを愛しているんだ」と感じる時であるように、民主党が弱者と庶民のための政党であるといくら標榜しても、市民がそう感じなければ無駄なことです。深刻な危機を克服する決断が必要だと思います。鄭鉉坤 まず連合政治の部分は、2010年の地方選挙の時から、私たちの側から先に提案も仲介もしました。政党間は議席が関係するためか、いつも競争です。それに対して価値と政策の領域で大義を付与して集める架橋の役割を市民社会が果たしました。ご記憶でしょうが、当時、政治を重視しながらも、既存政党に対する不信がある人々、それが市民政治勢力ですが、市民社会がその力と結合しました。2011年のソウル市長補欠選挙の過程で見られた様相です。「希望と代案」「希望2013・勝利2012円卓会議」「革新と統合」がそのとき動きました。私はそのような役割が今年も必要だと思います。
2つ目には、市民社会運動をどのような形で強化するかという点ですが、私は議題と地域を軸にする実質的ネットワーキングでやろうという立場です。今の社会運動連帯には形式的な面が多いと思います。ネックワークができれば、それに関係した団体が各自、自らの力量を示すべきですが、単に何か所かだけが内容と形式を握っています。このような形の連帯形式が多いのですが、たいてい重複する団体がそれを担っています。ネットワークに参加している団体を綿密に調べると、現場性と専門性を同時に発展させることができないようです。自らのミッションを忘れて生存のための仕事だけをしている場合も多いと思います。実力以上の虚勢なのでしょう。社会運動の生態系全般が再調整されるべきです。ミッションを自覚して連帯を新しく行うべきです。私は現在の全国地図でも数千の任務遂行型ネットワークが形成されるだろうと思います。
最後に「がんばれ、市民社会活動家」というようなキャンペーンをするつもりです。活動家共済会は基本です。市民運動家として一生を生きていくことができる、ある種の基盤、哲学と実力と物質的基盤を作るように支援する制度的基盤を作るべきです。そうした点で市民社会運動は、協同組合がそうであるように、自ら出資して責任をとり一緒に暮らしていく原理から多くを学ぶべきだと思います。最後に申し上げたいのは、少し単刀直入に言えば、全教組や大企業労組のような単位で市民社会の公益活動を支援する基金を作れればと思います。みなあまりに安易に生きようとするようです。

金鍾曄 私は昨年初に民主党の大統領選挙評価委員をやりながら感じたのは、政治家や市民運動家や学者や互いに会って対話するよりは、互いの観察にとどまることが多いということでした。観察の手段はおおよそ報道機関による報道でした。差があるとすれば、そのようなことをどれほど多様に検討して比較するかという程度です。そして、政治家が最も著しいですが、みな記者との接触を通じて情報を調整し統制して、希望の方向に世論を導くことだけに気を遣います。その過程で報道機関独自の固有の偏向が作動することになります。だから政治家と活動家と学者の間に何らかの協力やシナジーが生じるよりは、誤解と不信が増幅される危険が大きくなります。創作と批評社もよく考えてみると報道機関の1つなので、このような点を自覚して努力するけれど、その危険から完全に自由なわけではもちろんありませんが、私が申し上げたいのは、2014年に民主派の危機を乗り切っていくためには、そのように一度はバラバラになって、互いを観察ばかりせずに、額を突き合わせて対話することがさらに多くなればいいということです。今日の対話もそのような場の1つだと思います。参加して下さった方々に深く感謝申し上げます。(2014年1月23日/於・細橋研究所)

 

翻訳=渡辺直紀

李政勳 / 東アジア言説、行く路来る路――白永瑞『核心現場から東アジアを問い直す』の内外を考察する

2014年 3月1日 発行


発行 株式会社 創批

ⓒ 創批 2014

Changbi Publishers, Inc.

184, Hoedong-gil, Paju-si, Gyeonggi-do

413-120, Korea