「トランプ・ドクトリン」と韓半島 / 徐載晶

 

創作と批評 181号(2018年 秋)目次

 

2018年6月12日、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮民主主義人民共和国国務委員長はシンガポールで首脳会談を行い、△米朝間の「新たな関係」樹立 △韓半島(朝鮮半島)における「持続的、且つ安定的な平和体制」の構築 △韓半島の「完全な非核化」のための努力を約束する「ドナルド・トランプアメリカ合衆国大統領と金正恩朝鮮民主主義人民共和国国務委員長のシンガポール首脳会談共同声明」を発表した。これによって、両国は 少なくとも1950年の朝鮮戦争以来続いた敵対関係を終わらせるための転機を迎えたことになる。過去の二度にわたる合意を発展させたものと言えよう。両国は1993年、外交部の副部長/国務部の次官補レベルで、武力行使や威嚇の禁止を約束した共同声明を発表、2000年には、金正日(キム・ジョンイル)委員長の特使であった趙明禄(チョ・ミョンロク)国防委員会第1副委員長がマデレーン・オルブライト国務長官とウィリアム・コーエン国防長官との会談後、米朝共同コミュニケで「過去の敵対観から抜け出た新たな関係」を樹立するためにあらゆる努力を尽くすとも発表した。それにも関わらず、これらの合意は十分に履行されることなく、両国の関係は多くの紆余曲折を経て、ついには戦争を懸念するほどの状況へと悪化していった。しかし、この70年間余り続いた米朝の敵対関係の終結に留まらず、新たな相互信頼関係を樹立し、平和体制を構築すると合意した今回の会談は、過去の合意を受け継ぎながらも、さらに発展させたものなのである。その上、首脳レベルでの合意であるという点は非常に重要であり、いくら強調しても足りない程だ。

果たして、この合意は、如何にして得られたものだろうか。任期の初めには、北朝鮮に対する「最大の圧迫」を強調し、「炎と怒り」「完全な破壊」などを唱えていたトランプ大統領が、なぜ突然北朝鮮との交渉を始め、合意に至ったのだろうか。さらに韓半島の非核化だけではなく、平和体制を約束したという事実は、韓半島や日本、そして東北アジアにどのような影響を及ぼすであろうか。本稿は、このような問いへの答えを米国の国家戦略という視点から探ってみようという試みである1。マスコミで取り上げられている言説の多くは、トランプ大統領という個人に焦点が当てられており、かなり戯画化されている。そのため、シンガポールの首脳会談の理由と含意をしっかりと把握できない恐れがある。従って、本稿では、米朝首脳会談も含み、トランプ政権による一連の取り組みを米国の国家安保戦略に照らし合わせて評価し、さらには、今後起こり得る東北アジアの安保秩序の変化の可能性についても探ってみたいと思う2

 

2017年12月、トランプ政権は「国家安保戦略(National Security Strategy)2017」3)を発表した。オバマ政権の「国家安保戦略2015」では、国際制度が重視され、同盟国との協力、及び中国とのパートナーシップが強調されていた。しかし、その約2年後に発刊されたこの報告書では、かなり異なった戦略が提示されていた3。当時のマクマスター(H. R. McMaster)国家安保補佐官の指揮の下、 ナディア・シャドロー(Nadia Schadlow)とセス・センター(Seth Center)が主導して作成した「国家安保戦略2017」では、アメリカン・パワーにより米国の利益を最も重要視して守るという「米国第一主義」が前面に押し出されている。特に中国とロシアは、同伴者ではなく競争者、又は修正主義国家として、そして北朝鮮はイランと同様、米国を脅かす国家と規定している4。しかし、以前のジョージ・ブッシュ政権の国家安保戦略とは大きな違いが見られる。「単独行動主義(ユニラテラリズム)」や「先制攻撃戦略」が明示されていないからだ5。さらに、トランプ大統領は、アジア訪問中に「経済安保自体が国家安保」と述べたように、この報告書も米国の直接的な経済利害が強調されている。このような事柄を全体的に見ると、トランプ政権の国家戦略は米国の伝統的な国家戦略である「現実主義的な国際主義」を受け継ぎながらも「新重商主義」と妥協したものと評価される。このような「国家安保戦略2017」は、韓半島と東北アジアに危機と機会を同時に与えている。昨年から続いている米朝関係の緊張状態、そして今回のシンガポールでの米朝首脳会談は、このような危機と機会を具体的に我々に示している。

 

 

トランプ政権の国家安保戦略

 

トランプ政権の「国家安保戦略2017」は、1980年代にレーガン大統領が唱えた「力による平和」を目指しているという点で典型的な現実主義的接近を試みている。国際関係において如何なる国家も国際機構も信頼できず、自国の力だけが生存を保障してくれ、国益を守ってくれるという現実主義的な認識が、トランプ政権の国家安保戦略の基礎となっている。これは、オバマ前政権が軍事力を軽視する自由主義的な政策を繰り広げた結果、米の軍事力がロシアや中国などの競争国に対して過去のような戦略的優位性を保つことができなくなったという批判的な認識により一層強化された。勿論、トランプ政権が実質的に懸念しているのは、ロシアと中国の全体的な軍事力が米国を追い抜くのではないかという非現実的なシナリオではなく、これらの競争国がサイバー空間のような特定の分野や地域の軍事バランスといった米国の弱点に付け込む可能性を懸念しているのだ。中国とロシアによるアジア及び欧州諸国での影響力の拡大をけん制すると明言した事実に照らし合わせてみると、現実主義の中でもシカゴ大学の国際政治学者であるジョン・ミアシャイマー( J. Mearsheimer)などの主張する「攻撃的新現実主義」がトランプ政権の安保認識に深い影響を与えていると思われる6

これは、トランプ政権が、かつてブッシュ政権の推進したような単独行動主義的な政策や、大統領選挙の演説で唱えたような孤立主義的な政策は採らないことを示唆している。「国家安保戦略2017」には「米国が主導しなければ、悪意を抱く者達がその空白を埋め、米国に不利益をもたらす恐れがあるという教訓」が盛り込まれている。つまり、孤立主義を選択し、欧州やアジアの地域情勢を米国が主導しなければ、ロシアや中国のような地域覇権国が登場して米国に不利益をもたらす恐れがあり、そのような状況は米国の安保を脅かす可能性があるので、米国の国家利益のため、各地域の国際関係において、その他の国家を主導すべきだという意味である。しかし、トランプ政権の戦略は、世界のあらゆる紛争に介入したり、民主主義のような価値を追及する自由主義的な国際主義とは明らかに異なる、現実主義的な国際主義の立場を取っている。既存の国際機構や条約の内、米国に役に立つ部分は積極的に利用し、逆に効用価値が費用を超過すると判断されれば、迷わず脱退するという態度からも孤立主義や自由主義的な国際主義とは違うことが分かる。

仮に、国益のため選択的にインド太平洋のような地域に介入したとしても、米国の軍事力、及び財政の負担を最小化する方法を取るということもはっきりと示している。これは、一方では「力による平和」を目指しながらも、ブッシュ政権の予防戦争ドクトリン(以下、「ブッシュ・ドクトリン」)とは一線を引くものである。米国の安保のためならば、先制攻撃をしてでも敵国の政権交代を実行するという「ブッシュ・ドクトリン」がイラク地域で既に多くの副作用を起こしており、しかも米国に多大な負担を与えたという評価が、その根底にあると思われる。後述するが、トランプ大統領の「炎と怒り」などの強硬な発言を先制攻撃や予防戦争の前兆と見なすのは、このような戦略の基調を理解していない性急な評価であろう。又、一方で、負担を最小化する国際主義を目指すトランプ・ドクトリンは、同盟を重視し、友好的な国家との関係を拡大しようとする政策としても表れている。「国家安保戦略2017」は、「既存の同盟に対する責務(commitment)を一層強化」としながら、各論で例として「北朝鮮の核問題」の解決のためにも「同盟国、及びパートナー国と協力」すると公言している。トランプ大統領が去る7月に北大西洋条約機構(NATO)の首脳会談に参加したのもこのような政策の反映であり、その場で欧州の同盟国に国防費増額を要求したのは、「トランプ流の現実主義的な国際主義」を露にしたものと言えよう。

「力による平和」という現実主義を追求しながらも、孤立主義や 単独行動主義よりは限定的な国際主義の方が米国の利益と一致するというトランプ流の現実主義的な国際主義は、現実主義者がトランプ政権内の新重商主義者と妥協した結果とも見なすことができよう。これは、経済的な現実を繁栄した結果でもある。つまり、米国は軍事的には世界最強・最大を保っているが、経済的に、少なくとも量的には中国に1位の座を奪われてしまった。実質的な面でも、ITなどの先端分野で米国が比較的優位を保っている分野もあるが、産業生産などの多くの分野で中国に追い越されたり、もしくは追いつかれた状態である。中国経済の成長速度がかなり鈍化してはいるが、依然として米国を上回っており、このような傾向は今後も続くと思われる。世界貿易機構(WTO)など、米国の主導により確立されたブレトン・ウッズ体制の中で、中国の急速な浮上と米国の相対的な衰退が進む経済的な現実にトランプ政権が積極的に介入しようとする様子が新重商主義として表れている。つまり、関税など、国家の介入可能な行政措置を最大限講じることによって米国の輸出を伸ばし、米国の繁栄を促進させようとしているのだ。これは、中国をはじめ、米国との貿易で黒字を出している貿易相手国への関税を大幅に引き上げ、国内の企業を保護し、生産と輸出を促すという国家主導型の貿易政策という点から重商主義的な性格を帯びている。しかし、国防費などの国家の支出はできるだけ最小化すると同時に、国家の介入も「貿易規則」を再調整する程度に抑えようとしている点で過去の重商主義とは違った新重商主義と言えよう。このような新重商主義は、現実主義的な国際主義による力の過剰な行使、もしくは国際問題への無分別な介入を抑止する役割として作用するだろう。

一方、トランプ政権は、貿易と通商を国家安保戦略と直に結び付けている。しかし、ここにも重商主義的な貿易政策と国際主義的な自由貿易の間での妥協が見られる。米経済に不利な外国の貿易慣行、及び不正・腐敗に対しては戦争をも辞さないと宣言する一方で、自由市場の原則の下、「公正で互恵的な貿易」を追求するとも明らかにしているのだ。さらに、知的財産、電子商取引(EC)、農業、労働、環境などにおいて「高い基準」を満たすような貿易・投資協定を推進すると述べながらも、志を同じくするパートナー国とは「公正で互恵的な経済秩序」を守るために協力すると明言している。米国の経済利益のためには、パリ協定(2016)のような多国間機構からの離脱も辞さず、また同盟国、敵国を問わず、米国に不利な貿易構造や経済慣行は見直すと主張しながらも、国家の全面的な介入は行わず、自由市場競争と民間企業の主導権を守るというバランスを保っているのである。

そういった面で、トランプ政権の国家安保戦略は、選挙演説の中で唱えた単なる孤立主義とは一定の距離を置いている。トランプ政権は米国の利益に必要ならば、国際機構や国際条約からの離脱も可能だと公言し、実際に環太平洋パートバーシップ協定(TPP)やイラン核合意(包括的共同行動計画、JCPOA)から離脱している。けれども、「国家安保戦略2017」では、多国間主義的な国際機構に基づいた戦後の国際秩序が米国に利益を与えたという事実を認めており、これを重視するとも明言している。これは、米国の国家利益だけを全面的に追求することを望む重商主義者がトランプの国家安保戦略を批判する理由でもあるが、現実主義的な国際主義者と妥協せざる得ない現実の反映でもあるだろう7。ブッシュ政権の単独行動主義とは明らかに異なる、このような姿勢は、国際関係において多国間主義や単独行動主義よりは、二国間主義的な接近方法を好む態度として表れている8。ブレトン・ウッズ体制など、戦後の国際秩序の恩恵を受けた東北アジアの立場からすると、こういった両面性は危機であると同時に機会とも言えよう。

 

 

トランプ政権の対北朝鮮政策と東北アジア

 

「国家安保戦略2017」がトランプ流の現実主義者と新重商主義者の妥協の結果という事実は、対中国政策にはっきりと表われている。両者は「国家安保戦略2017」にて、中国を国際機構と世界経済に参加させ、それによって変化させることができるというこれまでの前提が「間違いであったことが判明した」との立場で一致している。現実主義的な国際主義者は、中国を「インド太平洋地域で米国を追い出そうとし」ている修正主義国家として安保を脅かす対象と見なし、新重商主義者は中国を「米国の知的財産を盗用し」ているだけでなく、「米国が寄与して建設した国際機構を搾取す」る経済脅威と見なしている。トランプ政権の二つの軸をなす集団が中国を「脅威」と見なすことで一致しているのだ。しかし、両者の共通意識にも関わらず、中国の浮上に如何に対応すべきかについては、これといった合意に達するような代案がないという限界も見られる。オバマ政権が試みたように、インド太平洋に米国の軍事力を増強させようという戦略が提示されたわけでもない。新重商主義者の反対のため、そのような方向への推進も容易ではないのだ。「中国脅威論」へのこのような戦略的合意と戦術的曖昧さは、東北アジアに危機と機会を同時に与えている。

今回、上院と下院を通過した2019年国防権限法案(NDAA)もこのような両面性を内包している。『ウォール・ストリート・ジャーナル』が「史上、最も強力な対中国制裁」と評しているように、この法案には中国を軍事的にけん制する措置が多く含まれている9。△米海軍の主導の下で行われるハワイ周辺での環太平洋諸国海軍合同演習リムパック(RIMPAC)への中国の参加禁止、△台湾関係法に基づく台湾との軍事協力強化と武器の販売、及び移転の拡大、△インドとの軍事協力の強化と向上、△インド太平洋の地政学的情勢報告書を作成、提出などの要求である。しかし、国防権限法案の中で最も核心的な内容である国防予算に関しての『ウォール・ストリート・ジャーナル』の評価は説得力に欠けているように思われる。議会が2019会計年度の国防予算として通過させた金額は7080億ドルで、前年度比1.7%の増額に過ぎないからだ10。つまり、中国をけん制すると言いながらも、費用はかからない措置、同盟国やパートナー国を前面に立たせる政策、武器販売などを主要手段としており、このようなことからもトランプ流の現実主義と新重商主義の妥協が読み取れる。勿論、このような妥協は、本質的には、世界での米国の現状を的確に反映したものと評価できよう。

又、「国家安保戦略2017」は、「北朝鮮」について17回も言及しており、「北朝鮮脅威」を明示している。第一に「米本土への脅威となり得る核兵器と生物・化学兵器」を開発し「核兵器により数百万人の米国民を殺傷できる能力を追及」しているため米国の脅威であること、第二に、米国の同盟国を脅かす「地域の脅威」であること、そして最後に、核兵器を拡散させる恐れのある「世界の脅威」だということを指摘している。さらに、このような脅威に対して「完全、且つ検証可能で不可逆的な韓半島の非核化(CVID)を実現させる」と強調し、ブッシュ政権が目指したCVIDを繰り返し主張した。しかし、「同盟国、及びパートナー国との協力」により、その目的を達成させるとしており、単独行動主義ではなく多国間主義をその核心的な手段としている点が注目される。

又、軍事的な対処方法においても、ブッシュ政権のような「先制攻撃」ではなく、抑止と防御を強調しているところが目につく。即ち、「核、化学、放射能、生物兵器による攻撃を防止」しなければならなく、「潜在的な脅威が米国に到達する前に抑止、攪乱、撃退しなければならない」と明示しているのだ。テロリストに対しては、その根源を攻撃し根絶すると言いながらも、核・生物・化学兵器への対処方法として、防止・抑止・攪乱・撃退を強調している。そして、具体的に「ミサイル防衛、大量破壊兵器の探知、及び攪乱、拡散対抗能力の向上」などを羅列している。マスコミを通して、トランプ大統領の戦争をも辞さないという「好戦的」なイメージが拡がっているが、トランプ政権の基本戦略は防止と抑止、及び撃退などの伝統的な安保政策と大きく変わらないものである。これは、ブッシュ政権の「先制攻撃」に便乗した予防戦争戦略が米国にとってメリットよりはデメリットの方が大きかったという国際主義者の評価と米国の行き過ぎた軍事的介入を警戒する新重商主義者の見解が一致したものと見られる。

トランプ政権の「最大の圧迫と関与」という対北朝鮮対策は、このような戦略的基調の上に成り立っている。つまり、1)北朝鮮の核ミサイルの脅威は伝統的な抑止政策により相殺する。2)国際社会が力を合わせ、最大の圧迫を加える。3)1と2を基本として、米国が直接関与し、韓半島の非核化を実現させるという内容の政策なのである。そういった意味でトランプ大統領のこれまでの発言も再評価されるべきであろう。トランプ大統領を「好戦狂」と思わせるような発言は、実は、抑止戦略の充実な(けれども洗練されていない)施行なのである。例えば、北朝鮮の「完全な破壊」を公言した彼の国連での演説には重要な条件が付いていた。「我々が米国や同盟国を防衛しなければならない状況に陥ったら、我々は北朝鮮を完全に破壊するほか選択の余地はないだろう」、つまり「北朝鮮が米国、もしくは韓国、日本に対して先制攻撃を行ったら、徹底的に報復する、だから挑発するな」という警告をしているのだ。典型的な抑止政策の明言である。実際、今年の2月、米国防省が発刊した「核態勢の見直し」(Nuclear Posture Review)でも、ほぼ同一の表現を使用している。「米国や同盟国、及びパートナー国に対する北朝鮮の核攻撃は容認できないことであり、このような事態が起こった場合、北朝鮮の政権を終わらせる」。この報告書で明からにしているように、「米国の抑止戦略ははっきり」している。

勿論、このような抑止戦略は核兵器のない世の中を目指す世界の流れに逆らったものであることは確かだ11。しかし、「核のない世界」を訴えながらも、北朝鮮への先制核攻撃の可能性を排除しなかったオバマ政権の二律背反的な政策よりは北朝鮮に対する脅威レベルを下げたものと言えよう12。オバマ政権は北朝鮮の核兵器開発を理由に、北朝鮮に対する先制核攻撃を排除することはなかった。しかし、トランプ政権は、このオプションよりは報復核攻撃を中心にした抑止戦略を選択したのだ。ブッシュ政権が始めた予防戦争による脅威を、オバマ政権は先制核攻撃の可能性をもって強化したのであり、それをトランプ政権が覆し、伝統的な抑止戦略へと回帰させたのである13。ブッシュとオバマ政権の攻撃的な戦略が北朝鮮の核戦力の保有を正当化、且つ加速化させることに一役買ったとすれば、トランプ政権は、北朝鮮が非核化の交渉に応じるような戦略的環境を作り出したと評価できよう。米国が伝統的な抑止戦略へと回帰するならば、北朝鮮も核兵器を放棄し、以前の非対称的抑止戦略へと回帰する条件が得られるからだ。さらに、このような対北朝鮮政策は、米国の世界戦略上、東北アジアの緊張を緩和させ、中東、特にイランに力を集中させることができる可能性も高めてくれる。トランプ政権がイラン核合意から離脱したのは、イスラエルやサウジアラビアのロビー、トランプ大統領の後援者の中の対イラン強硬派などの影響もあっただろうが、それが、対北朝鮮政策には寧ろ肯定的に作用したとも言えよう。しかし、このような対北朝鮮政策は、中東の緊張を激化させる潜在性を内包しているという点も無視はできないだろう。

それにもかかわらず、東北アジアにおけるトランプ政権の対北朝鮮政策が持つ肯定的な含意は注目に値する。シンガポール合意に従って米国と北朝鮮が「新たな関係」を結び、韓半島における平和体制を構築することができれば、それは韓半島の戦争状態が形式的にも内容的にも完全に終結することを意味する。勿論、その過程には紆余曲折もあり、短期間で完成させることは容易ではないだろう。しかし、朝鮮戦争の当事者同士が首脳レベルで合意し、全世界に約束したという事実は朝鮮戦争勃発以降、最も衝撃的な大きな変化であることは確かである。今後、具体的には、平和協定が締結されること、そして同時に国連軍司令部の解体が戦争状態終結の具体的な内容として現実化されることであろう。国連軍司令部が解体されれば、日本に存在する国連軍後方司令部の解体も不可欠であり、これは米国、日本、韓国が国連軍司令部を媒介として一体化し、北朝鮮との戦争を持続させるという構造を根本的に変革することを意味する。さらに、日朝関係における朝鮮戦争の構造を崩して根本的な転換を可能にするものでもある。即ち、日本の韓半島の植民地支配の歴史、そして1894年から始まった日本の対アジア戦争の歴史をようやく清算できる空間が設けられることを意味する。勿論、この空間をどう活用するかは、日本と韓国、そして北朝鮮の選択によるだろう。

 

 

トランプ政権の国家安保戦略と「革命的な」機会

 

全体的に見ると、「国家安保戦略2017」は米国の力によって米国の利益を最優先するという「米国第一主義」を唱えている。しかし、単独行動主義、及び「先制攻撃」を掲げたブッシュ政権のネオコン(新保守主義)の立場、そして大統領選挙中に見せた一国的重商主義から多少距離を置き、多国間的な国際主義との妥協を試みている。このような妥協が国家安保戦略での戦略的な確実性と戦術的な曖昧性を生み出したと思われる。このような曖昧性はトランプ大統領自身の予測不可能な性格のせいでマスコミによってかなり誇張され、戯画化された姿として描写されてきた。

しかし、曖昧性の本質はトランプ政権の国家戦略が示す現実主義的な国際主義・新重商主義の妥協に起因しているということに再度注目する必要がある。前述したように、このような妥協は「既存の同盟に対する責務を一層強化」するという同盟重視の立場に表れている。2019年の国防権限法も「特にインド太平洋において同盟を深化、且つ拡大し、如何なる同盟国も当然視しない」と、そのような立場を後押ししている。米国の独自的な軍事力行使による財政支出をできるだけ制限しようとしているが、これは、海外の軍事活用に必要な費用に抵抗感の強い新重商主義の発現と言えよう。つまり、米国の費用は最小限に抑え、その費用を同盟国に負担させようとしているのである。既に北大西洋条約機構に加盟している欧州の同盟国への国防費増額要求からも分かるように、韓国や日本、オーストラリアなどの全ての同盟国がこのような圧迫を受けるであろう。それよりも重大な構造的問題は、米国を中心に構築された世界軍事秩序を一層強化、且つ拡大しようとしている点だ。トランプ政権の現実主義的な国際主義は、米国が比較的優位を占めている世界軍事秩序を「費用対効果の最大化」という原則の下、最大限に活用しようとしている。しかし、一方でトランプ政権が強調している同盟の必要性は、同盟国の交渉力を高める効果をもたらすことにもなる。米国が独自的な軍事力行使を負担に感じれば感じるほどるほど、同盟に対する依存度は高くなり、同盟の価値が高まるからだ。米国の軍事秩序の中で、独立的な主張ができる可能性が高くなるという矛盾もやはり、同盟国に危機と機会を同時に与えるものと言えよう。

危機と機会の内、どちらが際立つかは、米国だけでなく、同盟国/相手国にもよって違ってくる。トランプ政権の戦略に内在する機会に気付かないまま、危機ばかりを拡大解釈すれば、米国の言いなりになる可能性が高くなるが、逆に、危機の裏に潜んでいる機会を捉えて、それを最大限引き出す能力があれば、米国中心の秩序の中で新たな秩序を作り出す糸口を見つけることができるかもしれない。米国の国家戦略に内在する妥協性は特にアジア諸国に多くの可能性を開いてくれる。アジア各国の政府と民衆が新たなアイディアを創案し、その空間を活用するならば、アジェンダを主導することも可能である。アジェンダの主導者となって米国を牽引し、韓半島と東北アジアにおける新たな平和と協力の可能性を開くこともできるのである。

韓国は、このような可能性を積極的に推進したことがある。2016~17年の「ろうそく集会」によって朴槿恵(パク・クネ)前大統領を罷免に追い込み、文在寅(ムン・ジェイン)大統領を当選させた市民社会の力は、南北関係と米朝関係の転換を促進させた。朴槿恵前大統領を罷免に追い込んだ直接的な原因は「国政介入」であるが、北朝鮮に対する強硬政策により韓半島に危険な状況をもたらしたという危機感も構造的な原因だったと言えよう。朴槿恵前大統領の罷免により、それまでの対北朝鮮政策は転換し、さらには韓半島の危機局面を転換させる韓国の国内的な構造を作り出した。そして、文在寅大統領は当選直後に「ろうそう政権」と自任し、このような市民社会の要求に応えようと努力している。文在寅大統領は、2017年8·15 (光復節)の祝辞で「如何なる者も大韓民国の同意なく、軍事行動を決定することはできません。政府は全てをかけて、戦争だけは防ぎます」と述べ、先制攻撃、及び予防戦争論に一線を引いた。引き続き11月には、国連総会で平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックの「停戦決議案」の採択を主導し、平昌オリンピック期間中の全世界での紛争、及び敵対行為の中断を求めた。12月には平昌オリンピック・パラリンピック期間中の米韓合同軍事演習の延期可能性に言及し、これを米国に提案するなど具体的な働きかけを行った。文在寅政権のこのような平和志向的な行動は、今年の1月初に金正恩委員長が新年の祝辞を通して、平昌オリンピックへの北朝鮮選手団の派遣を約束するなど、北朝鮮の前向きな態度を引き出す重要な根拠となった。そして、その直後の1月4日、文在寅大統領はトランプ大統領との電話会談で米韓合同軍事演習を平昌オリンピック以降に行うことに合意し、具体的な成果を導き出すことができた。

板門店(パンムンジョン)宣言とシンガポール共同声明を牽引した一連の措置は、その出発点がろうそく集会であった事実を忘れてはならないだろう。今も進行している対話と交流、今後も前進するであろう非核化と米朝関係の改善、さらには韓半島における軍縮プロセスなど、これらを可能にする重要な構造的動力は韓国の市民社会なのである。つまり、今、韓半島を出発点として進められている平和プロセスは、トランプ政権の国家戦略が内包している危機と機会の中で、韓国の市民社会が危機を最小化し、機会を最大化する過程とも言えよう。ろうそく集会によって表出した市民社会の動力は今年の6月の地方選挙では、分断危機を絶えず訴えて続けた保守右翼政党を惨敗へと導き、改革と平和を訴える政党に大きな力添えをした。それは、韓半島と東北アジアの平和プロセスの促進を求める声であると同時に、その平和プロセスを可能にする政府構造を作り出すことでもあった。「ろうそく革命」は現在進行形である。トランプ政権の国家戦略が内包している危機と機会はこのように「戦争体制」を「平和体制」へと転換させる「革命的な」機会へと転化した。

その成果は、さっそく韓半島の日常に現れている。韓国大統領府が板門店宣言100日を迎えて「国民の生活の中に平和が日常化」したと自ら評価するのは、単なる自画自賛とは言えないだろう14。北朝鮮の核実験やミサイル発射がなくなり、北朝鮮の核実験場が廃棄されるなど、目に見える措置が韓半島の戦争危機感を大きく低下させたことは間違いない。拡声機による対韓国・対北朝鮮宣伝放送の中断と施設の撤去が行われ、軍の通信線も復旧させるなどの成果もあった。南北の軍事当局間の協議も再開し、偶発的な衝突の危険性もかなり緩和された。さらに板門店の共同警備区域( JSA) の非武装化、及び非武装地帯内の監視所の試験的な撤収に共通意識を持つなど、軍事的信頼措置と軍事統制を拡大しつつある。現在、緊張緩和、及び信頼構築、黄海上での偶発的な衝突防止のための措置などに関する協議が行われているという事実は、戦争への危機感に脅えていた昨年のことを思い浮かべると想像もつかない変化と言えよう。

今後、文在寅政権は、このように設けられた機会を如何にして生かしていくべきか。大統領の支持率が7月辺りまでは70%を上回っていた。これは、南北首脳会談の成功的な開催と平和プロセスへの出発に対する市民社会の高い支持が反映したものであった。ところが、シンガポールの首脳会談までは順調に進んでいるように思われた平和プロセスは、最近になって膠着状態であり、文在寅政権もこれを積極的に推し進めていく「運転手」としての役割を果たせずにいる。その失望感が最近の支持率の急落に繋がっていると思われる。市民は「ろうそく革命」の進展を望んでいるのだ。終戦宣言、及び平和協定に関する論議と同時に平和体制を建設するための具体的な措置が一つ一つ着実に実行されるべきだ。板門店宣言に含まれた軍縮措置などが直ちに全面的に実行されるのは容易なことではないだろうが、少なくとも軍備拡張の中断は必要であろう。南北間の軍事的緊張を高めるような言動も控えるべきだ。そういった意味で、7月27日の韓国国防部の発表した「国防改革2.0」は、平和プロセスに逆行するものと言える15。この「改革案」によると、国防部は「キルチェーン」(Kill Chain)、「韓国型ミサイル防衛システム」(KAMD)、「大量反撃報復システム」(KMPR)で構成された3軸体制を「正常的」に推進する構えだ。一層深刻な問題は、これらの措置が部分的なものではなく、全般的な軍備拡張の一環であるという点である。国防部は、2019年の国防予算を今年度より8.6%増の46兆9000億ウォンを要求、今後5年間の国防改革に必要な予算を270兆7000億ウォンと見積もるなど、軍縮ではなく、軍備拡張を進めているような様子である。国防部の関係者は「北朝鮮による脅威減少はない状況」と述べており、南北首脳会談、及び米朝首脳会談を含む一連の韓半島の安保状況の変化を否定しているかのようで、いかにも危なげない16。「国民の生活において平和が日常化」したという大統領府の公式発表を全面否定するような形でもある。

その理由は、南北首脳と米朝首脳が「平和体制の構築」に合意したにも関わらず、政府の一部、及び社会がその意味をしっかりと認識していないからである。例えば、「戦闘で勝利する軍隊」を目標として国防改革を推進している大韓民国の国防部は、その目標が「平和体制の構築」の合意と逆行しているという事実を認識できていないか、もしくは受け入れたくないということだ。平和体制の構築を目指すならば、今後は「戦闘のない戦略環境」を作り出すべきであり、「平和を作り出す軍」を目指すということを戦略命令として上意下達し、国防部はそれを実行すべきなのだ。そして、韓半島の全ての住民がこの問題に関する、より根本的な問いと真摯に向かい合わなければならない。即ち、韓半島の平和体制において大韓民国の国軍はどのような役割を果たすべきか。韓半島の平和体制を構築する上で、米韓軍事同盟は必要なのか。もし必要ならば、どのような役割をすべきか。韓半島の平和体制を構築するためには、大韓民国は米国をはじめとする周辺国家とどのような関係を築かなければならないのか。韓国政府と市民社会は、70年間余り続いた戦争体制から抜け出して完全に新たな平和体制を構築するということが何を意味するのか、その根本的な問いと真正面から向かい合わなければならない時期を迎えた。そして、南北関係の改善のために、過去の状況よりも一歩進んだ措置を講じ、非可逆的な「和解と平和繁栄のための新たな時代」(板門店宣言)を拓いていかなければならない。トランプ政権は「北朝鮮の核問題」の解決のためにも韓国という同盟国が必要であるという現実を見据え、韓半島の平和体制を構築する機会の窓を全開するような大胆さが求められる。

また、前述したように、韓半島の平和体制の構築は、必然的に日本にも根本的な問いを投げかけることになるだろう。日本は過去70年間余り共にした戦争体制から離脱するのか。120年間余り完全に終わらせることのできなかった対アジア戦争を終結させるのか。「国際制裁の堅固な維持」を強調してきた安部政権もこのような根本的な問いから逃れることはできない状況にあることを認識しているようだ。なぜなら、対北朝鮮ミサイル警戒レベルを緩和するなど、微妙な変化の兆しが見られるからだ。特に、注目すべき措置は、日本外務省内のアジア大洋州局の北東アジア課を二課に分け、第一課は韓国、第二課は北朝鮮を担当させることにしたことだ。北朝鮮との対話の可能性を多方面で模索していると同時に長期的に北朝鮮との交渉だけでなく、外交関係の樹立にまで備えた取り組みと見える。しかし、「北朝鮮脅威論」を利用して、改憲と「普通の国」化を推進しようとした戦略に対する根本的な自省は依然として足りない。日本政府は、これまでトランプの戦略の危機と機会の内、危機を積極的に活用してきた。日本政府と市民社会は、現局面が問いかけている根本的な問いに真正面から対応する準備が整っているのだろうか。今後、日本の選択は韓半島にまた違った機会と危機を与えると思われる。

 

翻訳:申銀児(シン・ウナ)

 

 

  1.  本稿は日本『現代思想』2018年8月号に掲載された拙稿「トランプ政権の国家安保戦略と米朝交渉」を修正・補完したものである。
  2.  英『ファイナンシャルタイムズ』のギデオン・ラックマンもトランプ大統領の外交政策にはそれなりの一貫性が見られると指摘しており、これを「トランプ・ドクトリン」と呼んでいる。しかし、彼は「トランプ・ドクトリン」を構成する核心的な世界観の一つである新現実主義の重要性を認識しておらず、トランプ・ドクトリンが同盟に与える有用性に対する評価が低いなど、その限界が見られる。Gideon Rachman, “The Trump Doctrine—coherent, radical and wrong,” The Financial Times 2018.7.16.
  3.  https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2017/12/NSS-Final-12-18-2017-0905.pdf.
  4.  権力移行理論のように、権力を中心に構成された国際秩序を論議する国際政治理論家は、一般的に国家を二種類に分ける。既存の国際秩序を保とうとする「現状維持国家」と既存の秩序に立ち向かい、これを修正しようとする「修正主義国家」である。この理論を現在の国際秩序に適用させ、ロシアや中国を修正主義国家と見なすか否か、活発な論議が行われている。「国家安保戦略2017」は、米国の権力を中心に構成された国際秩序を修正しようと脅かす国家がロシアと中国であるという立場である。現状維持国家と修正主義国家という概念を国際政治理論に本格的に導入した論文は以下を参照。Randall L. Schweller, “Bandwagoning for profit: Bringing the revisionist state back in,” International Security vol. 19, no. 1 (Summer 1994), 86~88頁。
  5.  ブッシュ政権は、「国家安保戦略」報告書で「先制攻撃」を明示しているが、その表現とは異なり、内容は予防戦争を意味していた。先制攻撃は、敵国の攻撃が差し迫っているという明らかな証拠がある場合に行うことのできる防衛的措置を意味しており、国際法的にも容認されるという意見が多数だ。逆に、予防戦争は、敵国が核兵器などを含め、脅威的な軍事力を持つ前に、それを防止するために先制的に行う軍事的な行動を意味するもので、国際法上、不法的な侵攻と見なされている。
  6.  John J. Mearsheimer, The Tragedy of Great Power Politics 1st ed., Norton 2001.
  7.  米国は、世界最強の軍事国であると同時に世界最大の貿易赤字国でもある。トランプ政権の中で新現実主義と新重商主義が妥協したのは、このような構造的な現実の反映とも言えよう。後述するように、対北朝鮮軍事戦略が伝統的な抑止戦略へと回帰したのも北朝鮮の核ミサイルを軍事的に排除できる現実的な方法がないという戦略的な状況を率直に反映したものでもある。トランプ大統領自身が、過去70年間余り米国の外交安保政策を支配してきた「ワシントンのルール(Washington Rules)」に縛られることなく自由なため、このような「率直な」戦略が採択されたと言えよう。つまり、構造的な側面から見ると、トランプ政権の国家戦略は現実に適した持続可能なものであると評価される。そのような意味で「トランプ・ドクトリン」と呼ぶことができるだろう。一方、このような率直さは、過去の「ワシントンのルール」に逆行するものであり、政策集団、マスコミなどからは激しい批判を受けている。その上、2016年の大統領選における「ロシア・コネクション」疑惑が国内政治的にトランプ大統領の足を引っ張っており、弾劾の可能性も否定できない。今年の11月の中間選挙は、その結果によっては「トランプ・ドクトリン」がまともに施行される前に崩壊してしまう重要なターニングポイントとなるかもしれない。しかし、冷静に考えると、中間選挙以降も、少なくとも対北朝鮮政策においては、たとえ外交交渉が決裂したとしても抑止戦略以外には現実的な軍事対応策がないのである。「ワシントンのルール」に関しては、Andrew Bacevich, Washington Rules: America’s Path to Permanent War, Metropolitan Books 2010、参照。ブルース・カミングス(Bruce Cumings)もトランプ大統領が「ワシントンの既得権層(Washington establishment)」から自由であるため、北朝鮮との交渉が可能であると評している。Jon Wiener, “In Trump’s Madness, There’s Opportunity in Korea: Bruce Cumings on the reasons for optimism about peace in Korea,” The Nation, 2018.6.14.
  8.  米ハーバード大学政治学者のダニエル・アレンもトランプ大統領の外交政策が「純粋な二国間主義」という一貫性を持つと評している。しかし、彼女は、トランプの外交政策の手段に見られる一貫性だけを強調しており、その内容に見られる一貫性と妥協性を認識していないという限界が見られる。Danielle Allen, “Trump’s foreign policy is perfectly coherent,” The Washington Post, 2018.7.23.
  9.  Kate O’Keeffe and Siobhan Hughes, “Congress Passes Defense Bill That’s Tough on China,” The Wall Street Journal, 2018.8.1.
  10.  H.R.5515 – John S. McCain National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2019 (https://www.congress.gov/bill/115th-congress/house-bill/5515/text).
  11.  2017年の国連総会で122カ国の賛成により核兵器禁止条約が採択された。アントニオ・グテーレス国連事務総長も、2018年8月に広島で開催された平和祈念式典にて核保有国が冷戦終了後も核兵器につぎ込んでいる資金が人道的援助に必要な金額のおよそ80倍を超えると批判しながら、「核保有国は、核軍縮をリードする特別の責任がある 」と強調した。田井中雅人 「NYでは言いづらくても…長崎で本音発信国連事務総長」 『朝日新聞』 2018.8.9.
  12.  オバマ政権の対北朝鮮戦略については、拙稿「サードミサイルと韓半島軍備競争の質的転換: 「脅威の均衡」を壊して先制攻撃に? 」『創作と批評』 、2015年夏号を参照。
  13.  ブッシュ政権の安保戦略と対北朝鮮政策については「米国の軍事戦略の変化と米韓同盟」『創作と批評』、2004年秋号を参照。
  14.  青瓦台(チョンワデ)「カードニュースで見る板門店宣言100日、主要成果」、2018.8.3(https://www1.president.go.kr/articles/3975).
  15.  チョン・ウッシク「‘文在寅流’国防改革が不十分な理由」『プレシアン』 、2018.7.31.
  16.  チョン・ヒワン「将軍ポストの削減に消極的な陸軍・非戦闘部隊からリストラ始動」、京郷新聞、2018.7.27. このような認識はトランプ政権の状況認識に比べても温度差が感じられる。トランプ大統領が、北朝鮮の核、及びミサイル実験の中断と米兵の遺骨返還などに言及しながら、状況変化を強調する姿は自画自賛に過ぎないとしても、米軍の高官レベルまでも、その変化を認めているのだ。例えば、ポール・セルバ統合参謀本部副議長は、8月10日、北朝鮮は核とミサイル実験の中断によって大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に支障をきたしているとしながら「(中断が)影響を与えているというのが、私の結論だ」と述べている。ハン・ドクミン「米統合参謀本部副議長「北朝鮮のミサイル実験の中断でICBM開発に支障」」、自由アジア放送、2018.8.10.