ファーストトラック*に指定された選挙制度、その見通しと課題 / 河昇秀

 

創作と批評 184号(2019年 夏)目次

 

河昇秀(ハ・スンス)

比例民主主義連帯の共同代表(弁護士)。著書に『優しい電気は可能だ』『生のための政治革命』『抜け殻民主主義』(共著)などがある。 haha9601@naver.com

 

 

1. はじめに1

 

選挙制度の改革は大韓民国だけの問題ではない。今もなお、世界中の多くの国家で選挙制度改革は厄介な問題(hot potato)となっている。2015年、南米チリでは、ピノチェトの独裁政権の名残である中選挙区制を廃止するための選挙法改正案が国会を通過した。チリは、過去の韓国の朴正煕(パク・チョンヒ)や全斗煥(チョン・ドゥファン)政権と同じく、一つの選挙区から2名の国会議員を選出するという選挙方式が長く用いられていたが、その制度を捨てようとしているのだ。チリが新たに選択した選挙制度は比例性を強化した「圏域別比例代表制」である。そのため、チリは120名であった下院議員の定数を155名に増やした。40%の女性クオーター制(割り当て制度)も含まれた改革である。

韓国においても1987年の民主化以降、選挙制度改革の必要性は持続的に提起されてきた。2015年2月には中央選挙管理委員会が、政党得票率に従って全体の国会議席を配分する「連動型比例代表制」を選挙制度改革案として勧告したこともある。しかし、選挙制度の改革は容易ではなかった。中央選挙管理委員会の勧告にもかかわらず、2016年の総選挙前に制度を改正することはできなかった。だが、2019年、ついに変化の兆しが見え始めたのである。去る4月29~30日の国会政治改革特別委員会と司法改革特別委員会において、選挙制度改革案と高位公職者非理(不正)捜査処法(以下、公捜処法)、そして検・警捜査権調整のための刑事訴訟法改正案が迅速処理対象案件(ファーストトラック)に指定された。

しかし、ここに至るまでの過程は非常に険しかった。大韓民国の国会史上初の、国会議員を他党の議員が議員事務室に監禁し、国会事務処の事務室も占拠されるという異例の事態が起こった。ファックスは壊れ、ファックスにより受け付けられた法案も損なわれた。国会は数日の間修羅場となり、国会先進化法は徹底的に無視された。

この過程において、選挙制度改革案と公捜処法のどちらも争点となったが、自由韓国党が特に強く反対していたのは、選挙制度改革案であった。選挙制度改革案の通過の可否により、政治構造に変化をもたらすかもしれないからだ。もし、今議論されている「連動型比例代表制」へと選挙制度が変われば、国会の構成が変わる可能性が高い。各政党が政策的に競争する国会となり、女性・青年・社会的少数者の政治的な代表性が確保できる機会がより多く得られる。政党と政治家たちの態度や行動も変わらざるを得ないだろう。これまで市民たちの暮らしに何の役にも立たないような政争ばかりを繰り返していても、公認を受けて再選できたが、これからは政策を中心に活動せざるを得ない。だから自由韓国党に代表される政治既得権勢力は拒み続けているのであろう。

勿論、国会が一気にそのように変わるわけではない。今回のファーストトラックに指定された選挙制度改革案は、完全な「連動型」ではなく、「準連動型」という限界がある。しかし、目指すところの方向性が重要なのである。改革の方向性がしっかりと定まれば、たとえ時間がかかっても前進することができるのだ。しかも、国会の本会議における表決前に、今回ファーストトラックに指定された案よりも優れた案が生まれる可能性もある。全ては今後の進め方次第である。だからこそ、ファーストトラックは終わりではなく、始まりなのである。

 

 

2. ファーストトラックの正当性

 

国民投票による選挙制度改革の決定が最も合理的であろうが、大韓民国の憲法上、選挙制度を国民投票で問うことは非常に難しい。憲法改正を除いては、「外交・国防・統一などの国家の安危に関わる重要政策」にしか国民投票を行うことができないからである(憲法第72条)。従って、選挙制度改革は、国会で公職選挙法を改正するという方法で行うしかない。ところが、2012年に国会先進化法が成立してから、院内交渉団体の間で合意がなされない限り、如何なる法律も国会本会議に案件として上程されることは不可能に近くなった。その例外とされる手続きがファーストトラックなのである。

ファーストトラックは、国会議員全体の5分の3、又は特定委員会(常任委員会、特別委員会)の委員5分の3の同意が必要である。「社会的惨事の真相究明、及び安全な社会作りのための特別法」や「幼稚園3法」などが既にファーストトラックに指定された前例もある。公職選挙法も法律であるため、当然ファーストトラックに指定することができる。しかし、今回のファーストトラックの上程をめぐって「選挙制度改革は、合意処理が必要だ」との主張も見られる。公職選挙法は、合意処理がこれまでの慣行だったというのがその理由だ。しかし、それは大きな勘違いだ。1988年に小選挙区制へと変更した時、民主正義党の「強行採決」によって処理されたことは既にマスコミのファクトチェックで確認された事実である。しかも「選挙法は合意処理すべきだ」という主張は、憲法的にも政治的にも妥当ではない。まず、憲法的には「国会は憲法、又は法律に特別な規定がない限り在籍議員の過半数の出席と出席議員の過半数の賛成により議決される」と明記されている(第49条)。なのに選挙制度だからと言って、必ず合意処理しなければならないという主張は、一つの政党でも反対したら、如何なる選挙制度改革も不可能であるという意味であり、これは憲法第49条の内容を無力化しようとする試みとも見なせる。

政治的にも同様のことが言える。選挙制度改革は、合意処理が最も望ましいが、それよりも優先されるべきことは、国民の意思がしっかりと反映された選挙制度を作り出すことである。現在の選挙制度は、有権者の票がしっかりと反映されているとは言えない。にもかかわらず、それぞれの政党が党利党略にばかり気を取られ、合意に至ることできなければ、我々はこのまま改革を諦めるしかないのだろうか。政党間の合意よりも大事なのは、国民の意思である。合意のための努力は必要であろうが、それでも合意に至ることができなければ、公職選挙法も他の法律のように、憲法と国会法に従って処理されるのが、政治的に必要な選択であろう。ファーストトラックは最終的な表決ではなく、案件を上程するための手続きにほかならない。案件の上程後にも十分な交渉が可能なのだ。だからファーストトラック指定は「強行採決」とは違う。従って、今回のファーストトラックは憲法上においても、政治的な面においても正当であり、必要な選択であったと言えよう。

一方で、今回、論議を呼んでいる「正しい未来党」の呉晨煥(オ・シンファン)、権垠希(クォン・ウンヒ)議員の司法改革特別委員会の議員辞任・補任も法的には問題がない。自由韓国党は国会法48条の第6項を挙げて、臨時会の会期中には、辞任・補任は不可能だと主張しているが、これは明らかな間違いである。その条項が設けられた当時の国会の会議録を見ると、同一の臨時会の会期内に、特別委員会の委員に任命されてから、すぐに交代することはできないという意味で立法化されたのである。つまり、4月の臨時会期に呉晨煥、権垠希議員を司法改革特別委員会の委員に任命したのなら、4月の臨時会期内には交代できないという意味である。しかし、呉晨煥、権垠希議員は、2018年から司法改革特別委員会の委員として活動しているため、国会法48条第6項には当てはまらない。国会の会議録さえ確認していれば、容易に分かる事実であるにもかかわらず、理不尽な理由をもって言いがかりをつけているのだ。

 

 

3. 「準連動型比例代表制」の内容への評価

 

今回のファーストトラックに指定された公職選挙法改正案には、選挙権年齢満18歳への引き下げも含まれている。OECD国家の中で唯一選挙権年齢満19歳という恥ずべき状況から抜け出す口火を切ったと言えよう。満18歳からの選挙権は、青少年・青年の参政権を拡大するための重要な切っ掛けとなるだろう。さらに、「準連動型比例代表制」が公職選挙法改正の核心的な内容として含まれている。国会議員の定数300名を維持しながら、地域区で225名を、比例代表で75名を選出するという方式だ。勿論、これまでの地域区と比例代表で別々に選出していた方式とは異なり、十分とは言えないが、「連動型」という概念が導入されている点が注目に値する。さらに、政党別の議席配分を行う際は、全国単位の得票率を基準とするが、政党の比例代表の名簿は全国を6つの圏域に分けて作成する「圏域別名簿」方式となっている。

「準連動型」という表現が使われている理由は、完全な連動型ではないからだ。そこで、この「準連動型」方式について簡略に説明してみたいと思う。便宜上、計算方法が単純化された。例えば、A党が20%の政党得票を得たとした場合、完全な「連動型比例代表制」ならば、A党は300席の20%に当たる60席の議席数を得ることになる。しかし、「準連動型」の場合は、政党の得票率に従って配分される議席から地域区の当選者数を除いた議席の50%を比例代表に配分するという方式である。上で挙げた例のように、A党が地域区で20名の当選者を出したとしたら、政党得票率による60席から地域区で得た20席を除くと40席が残ることになる。その40席の50%である20席がA党の比例代表の議席として配分されるのである。

つまり、A党が得られる議席は、地域区20席+比例代表20席(50% 保障)ということになる。そして、各政党にこのような方式で比例代表の議席を配分した後に、その残りの議席(例えば75席の比例代表の議席を各政党に準連動型方式で配分して、50席、もしくは25席余った場合)をもう一度政党得票率に従って配分する。この過程でA党は、追加で比例代表の議席を得ることができる。多少複雑ではあるが、理解できないほど難しくはない。完全な連動型ではない「準連動型」方式ではあっても、これまでよりは比例性を改善させる効果があるだろう。地域区の当選者が全くいない政党も、最低限政党得票率の50%の議席は保障されるからだ。このような方式が導入されれば、政党得票率が重要になってくるので、政党間の政策競争が促進される効果が生じるだろう。少数政党の進入可能性も高くなり、少数政党に配分される議席も増えることになるため、政治の多様性が増すと思われる。女性代表性も一定のレベルまでには改善されるだろう。比例代表の議席が増え、圏域別に作成される各党の比例代表名簿の奇数番号は、必ず女性でなければならないからだ。さらに、政党支持率が重要となるため、各党は青年有権者の票を得るために青年公認の比率を上げようとする可能性も高い。

勿論、このような「準連動型」方式に限界があるのも事実だ。完全な連動型が導入されたら、制度はより単純化され、票の等価性(比例性)もより忠実に保障されるだろう。そのような意味で、今後も国会の本会議を通過するまで「準連動型」方式を改善しようとする努力は持続的になされるべきであろう。ただ、今回のファーストトラックに指定された案の中で肯定的な点は、政党の公認改革に対する積極的な内容が含まれているという点だ。今回の改正案をみると、各政党は「民主的な審査手続きを経て、全国単位、もしくは圏域別の代議員・党員などで構成された選挙人団の民主的な投票手続き」を通じてしか比例代表の候補者を決定することはできないとなっている。さらに、政党は比例代表の候補選出手続きを、党の綱領、党規、その他の内部規約に従って決定し、具体的な事項を選挙日の一年前に中央選挙管理委員会に提出しなければならない。そして、中央選挙管理委員会は、その内容をホームページに公開しなければならない。

実際に、各政党が比例代表の候補者を選出する際には、中央選挙管理委員会に事前に提出した党の綱領、又は党規などに従って、民主的な手続きを通して行わなければならない。さらに、候補者登録を行う際には、事前に提出した候補者の推薦手続きに従って候補者を選出したことを会議録などを通じて証明しなければならない。もし、違反した場合は、候補者登録を無効化することになっている。このような手続きは、市民社会が要求した「民主的な公認の法制化」を受け入れたものであり、これまで「密室の公認」と非難されていた比例代表候補の公認手続きを大きく改善できるような内容であると言えよう。

 

 

4. 今後の見通し:二つのシナリオ

 

紆余曲折の末、選挙制度改革案はファーストトラックに指定された。ファーストトラックの実質的な効果は、一定時間が過ぎると、必ず本会議で表決を取るという点だ。本会議の表決前に、追加の交渉や討論を行うこともできる。そうなると、今後の成り行きとして、二つのシナリオが考えられる。

まず、シナリオ1は、自由韓国党が態度を変え、選挙制度改革の交渉に乗り出し、新たな改革案をもって合意に至るというシナリオだ。その場合、合意した選挙制度改革案を先に本会議で表決すれば問題はないだろう。シナリオ2は、最後まで自由韓国党が交渉を拒否するか、又は交渉に応じたとしても合意には至らなかった場合である。この場合は、ファーストトラックの手続きに従って、本会議で表決することになる。

実際、本会議の表決までにどれ程の時間がかかるかは状況によって違ってくる。国会法上では、該当する委員会にて最大80日間、法制司法委員会(以下、法司委)にて最大90日間案件を審査することができ、その後、60日以内に本会議に上程されることになる。つまり、最長で330日かかることもあり得る。本会議への上程前の60日間は国会議長の意志によって短縮することも可能である。その場合、270日ほどかかる。そうした場合、来年の1月に本会議での表決が可能となる。さらに、委員会の審査段階にて案件調整手続きを踏んだ場合は、期間をより短縮することもできる。

シナリオ2の場合も、原案のまま本会議で表決を取ることもできるが、万が一、追加の交渉を通して修正同意案などが作られれば、修正同意案を優先的に表決することも可能だ。参考までに、初のファーストトラックによる通過法案である「社会的惨事の真相究明、及び安全な社会作りなどのための特別法」の場合も2017年11月24日の本会議での表決前に、パク・ジュミン議員など43人から修正同意案が提出され、修正同意案を先に表決して成立したのである。1987年以降、初めて迎えた選挙制度改革の機会を逃さないようにするためには、改革を望んでいる側もそれぞれのシナリオに対応できるよう、慎重に取り組んでゆく必要がある。

 

1) シナリオ 1の場合

何よりも自由韓国党が交渉に応じることが最も望ましい。けれども、前提は必要である。それは、今、自由韓国党が主張している「比例代表の廃止-全員地域区からの選出-議席数270席に縮小」を放棄することだ。そうでなければ、交渉も討論もできない。現在、ファーストトラックに指定された「準連動型」よりも後退した法案をもって交渉が行われることは許されない。「準連動型」さえも市民社会や学会からは非難されている。なのに、それよりも比例性が後退する法案では困る。

もし自由韓国党も含めて交渉を行うならば、基準は2018年12月15日に発表した5党合意文でなければならない。それが5党間の唯一の合意文だからである。その内容をみると、連動型比例代表制を中心に検討し、国会議員の定数は10%の範囲内で拡大することを検討するという内容である。この合意文を基準とするなら、まず議論されるべきことは、国会議員の定数の問題だ。現在の300席のまま、連動型、もしくは準連動型で選挙を実施すれば、地域区のかなりの議席数の削減は不可避である。選挙区の確定過程においてかなりの問題が生じるだろう。統合される地域区の国会議員の反発だけでなく、該当する地域社会や地域の有権者などの反発も予想されるからだ。これは、自由韓国党の国会議員の立場からも気になるところであろう。自分の地域区が周囲の地域区と統合、調整される可能性のある議員は自由韓国党にもかなりいるからである。しかし、議員数の増員に関する議論もやはり容易な問題ではない。何よりも世論が否定的だ。その上、自由韓国党や共に民主党などは、今も議席数の増員には否定的であり、態度を変えるにはそれなりの名分が必要である。その名分は、国会議員の特権の廃止と強力な国会改革でなければならないだろう。議員数の増員を議論するならば、強力な国会議員の特権廃止法案(給与削減、個人秘書の規模縮小、透明な情報公開や予算の無駄遣い根絶など)を選挙法改正案と共に通過させるということを国民と約束しなければならない。もし10%ほどの議席数を増やし、330席とするなら、地域区を247~48席、比例代表を82~83席にすることができる。そうなれば、地域区の選挙区調整の幅も最小限に抑えることがきでるだろう。

もう一つの争点となっている連動型の導入と方式に関しては「完全な連動型」と現在の「準連動型」をもって交渉することは可能であろうが、現在の「準連動型」よりも後退するようなことがあってはならない。今も、比例性が十分に保障されている法案とは言えないからだ。地域区と比例の比率を現在の3 : 1(地域区225 :比例75)から、比例代表の比率をさらに減らす方向へと後退してはならない。

 

2) シナリオ2の場合

結局ファーストトラックによって選挙制度改革案を処理するシナリオ2の場合も状況によってしっかりと対応しなければならない。まず、原案のまま表決するならば、必ず解決しなければならない課題がある。本会議の表決には過半数以上の出席と過半数以上の賛成が必要だ。現在の国会議席の分布をみてみると、今回のファーストトラックに参加した政党の所属議員が全員賛成すれば、過半数は超える。

その一方で、ファーストトラックの過程において、より優れた改革案を作るための努力も惜しんではならない。上述したように、もし追加交渉を通じて修正案が出来上がれば、修正案から先に表決することになる。従って「準連動型」ではない、完全な形の「連動型比例代表制」導入のための努力は引き続き必要である。特に地域区の縮小という厳しい状況の下、当然、政界からは議席数を増やすべきだという意見が出てくるだろう。その場合は、比例性が一層強化された内容の修正案を強く要求しなければならない。さらに、国民的な説得力を高めるために、上述したような国会議員の特権廃止も同時に推進されなければならないだろう。

 

 

5. 政界、市民社会、マスコミの役割

 

今回のファーストトラックの上程過程において、政治改革への意志と情熱を持った政治家の役割はかなり大きかった。そして、選挙制度の改革を訴え続けた市民社会や専門家らも最善を尽くしたと言えよう。しかし、ファーストトラックは終わりではなく、始まりに過ぎない。上述したシナリオの中で、どちらの方向に進んでも、最後まで気を緩めてはいけない。

政治改革に意志のある政治家は、今後起こり得る状況変化に緊密に対応しながら、比例性と代表制が保障できるような選挙制度改革を成し遂げるために努力を惜しんではならない。1987年の民主化以来、初めて掴んだ政治システムの改革の機会を逃してはならないのだ。市民社会も本会議の表決前までに、最大限に力を合わせ、力量を集結させなければならない。多くの市民に選挙制度改革の必要性や内容を十分に知らせ、多様な領域の市民社会の組織を「選挙制度改革」という目標に向けて集結させるべきであろう。今、最も重要なのは世論である。特に自由韓国党が主張している比例代表制の廃止-議席数の削減に立ち向かって、「連動型比例代表制」の正当性を広く知らしめるために、政界と市民社会は共に努力しなければならない。マスコミの役割も非常に重要だ。依然として、選挙制度は市民にとっては難しい主題である。しかし、マスコミが自らの役割をしっかりと果たしてくれるならば、選挙制度に関する市民の理解力を高めることができるだろう。マスコミが政争中心の報道に偏らず、どのような選挙制度がより成熟した民主主義のために必要なものなのか、そういった議論を活性化させるような役割を果たしてくれることを願ってやまない。

もし、選挙制度の改革が成功すれば、改憲に関する議論も再開できるだろう。2020年の総選挙前の改憲は、既に不可能に近い。ならば、選挙制度改革を完了させ、改革された選挙制度で2020年の総選挙を行い、その過程で改憲に関する本格的な議論を行えばいいのだ。そして、2020年の総選挙後に、改憲に関する議論を本格化すべきであろう。改憲は2020年の下半期、もしくは2021年の上半期までに完了させることができれば、改憲案は2022年の大統領選挙で新たに当選した大統領から適用させることも可能だ。改憲に対して、「時期尚早」という意見も見られるが、1987年以降、30年以上経った現在も憲法に手を付けることができない状況をこのまま見過ごすわけにはいかない。市民の基本権を強化し、地方分権をしっかりと推進し、直接民主主義を憲法に盛り込むためにも改憲は不可避である。権力構造の改編に関する議論も、これ以上はもう避けられない。大幅な改編であろうが、多少の権限の調整であろうが、議論を通して、できるところから手を付けるべきであろう。

 

翻訳:申銀児(シン・ウナ)

 

 

* ファーストトラック(fast track)とは迅速処理案件のことで、国会の法案処理が無制限に漂流することを防ぎ、法案の迅速処理を図るための制度。(訳注)

  1. 本稿は、去る5月2日、国会にて行われたオープン討論会「選挙制度の改革、ファーストトラックの今後の見通しと課題」の発題文を修正・補完したものである。