米国大統領選挙に左右される朝鮮半島の平和と繁栄?/徐載晶[2020.9.23]

米国はもちろん、韓国を含む全世界に重大な影響を与える米国大統領選挙が本格的に始まった。ミネソタ、バージニア、ワイオミング、サウスダコタの4州で、18日期日前投票が始まった。9月29日、10月15日、10月22日には大統領候補間の討論が開催される。次いで、郵便投票が全国的に始まり、11月3日の選挙当日には直接投票が行われる。

 

今回の選挙で、トランプ共和党候補とバイデン民主党候補のどちらが勝利し、米国の次期大統領に就任するのか。次期大統領の対朝鮮半島政策はどのように展開されるのか。朝鮮半島の平和と繁栄のためには、どちらの当選が有利なのか。韓国はどのように対処すべきなのか。

 

・米大統領選の結果の展望?

 

今までの世論調査の結果をみると、大部分はバイデン候補が優位を維持している。調査機関によってある程度の差はあるが、民主党と共和党の候補が確定後、バイデンが優位を譲ったことはなく、新型コロナとジョージ・フロイド死亡事件などで10%近く先行していた。だが最近、トランプが着実にその差を縮め、去る16日保守性向の世論調査機関ラスムセンの調査では、むしろ1%先行していた。これはもちろん誤差範囲内で、ほぼすべての他の調査では依然バイデンが優勢である。

 

米大統領選の特性上、全国的な世論調査よりは各州の世論を分析し、誰が選挙人団270人以上を確保できるか検討するのがより信頼できる指数である。この選挙人団の世論調査でもバイデンの優勢は際立っている。現在バイデンは伝統的に民主党の票田であるカルフォルニアとニューヨークだけでなく、コロラドとバージニアでも優勢にあると予想され、選挙人団212~290人を確保している。これに比べて、トランプはケンタッキーとアイオワのような伝統的な共和党の勢力圏で優位を占めているが、選挙人団数が多いテキサスとオハイオでの勝利を確信できない状態である。確保した選挙人団の数は125~204人と評価されている。トランプが当選するためには、現在「競合優勢」と評価される州はもちろん、フロリダとノースカロライナ、ジョージアのような「競合州」すべてで勝利し、民主党が「競合優勢」と評価される州もいくつか奪わねばならない。

 

もちろん、様々な変数のために世論調査だけを信じることはできない。第1に、選挙まで残り40余日の間にどんなことが起こるかわからない。特に最近、トランプ追撃の勢いが顕著な反面、バイデン支持の勢いは足踏みしている。全国に生中継される候補者間の討論が支持の勢いに影響を与える可能性も排除できない。第2に、前回の大統領選における世論調査の予測は惨敗を経験した。ほぼすべての世論調査がヒラリー・クリントンの当選を予測したが、結果はトランプの勝利だった。今回の世論調査は、前回とは異なるはずとは確信しがたい。したがって、私たちとしては両候補の立場を分析し、トランプが勝利するシナリオとバイデンが勝利するシナリオを共に準備することが最も賢明と言えよう。

 

・米大統領選の結果と朝鮮半島の未来

 

トランプ大統領は新現実主義・新重商主義の外交路線を追求してきた。中国を現行の国際秩序を変えようとする“修正主義国家”と規定し、中国の国力がこれ以上強大になる前に制止しようとする新現実主義が、多方面での中国との葛藤に表出している。また、国家の力を利用して米国の経済利益を極大化しようとする重商主義は同盟だけでなく、国際機構との関係でも露骨に表われている。再選後も、トランプはこうした基本的路線を大きく変えないだろうと示唆する。前回選挙での公約をよく履行し、「米国を偉大に」作ったので、再選されるならば、「米国を偉大に維持」しようというスローガンがこれをよく表わす。具体的には、「中国への依存の終息」を通じて中国との分離を深化させ、“米国優先主義”外交政策の継続を期している。「終わりなき戦争を終息」して海外に派遣された米軍を撤収させようと言いながらも、軍事力を拡張しようと公約する。また、同盟国に“公正な分担”を要求すべきだという立場も堅持する。

 

トランプの公約は、朝鮮半島の平和と繁栄という観点では両刃の剣といえる。まず、「北朝鮮に最大の圧迫」を加えたことを成果と提示しながらも、2回の米朝首脳会談と「朝鮮半島の非核化措置」で論議したことを具体的な業績として掲げる。今回再び当選すれば何をするかを具体的な政策として提示しなかったが、首脳外交を通じてこうした成果を拡大しようとする意志があるものと見える。また、「終わりなき戦争の終息」を推進しようというのは、米国の防衛負担を減らそうとする基本的方針とかみ合い、朝鮮戦争の終結が第2期トランプ政権のアジェンダになる可能性を示しもする。朝鮮戦争を具体的に明示しなかったが、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築に肯定的に作用できる方向である。米国の財務省と国連の制裁措置を“最大の圧迫”の一環として推進しており、こうした姿勢を変えようという意志は見えない。北との交渉で当面最初のボタンさえ解けない状況になりうるのだ。また、ボルトンの回顧録やウッドワードの新刊書に表れたように、首脳会談をしてもそれ以前に政府間の政策を調律しないだけでなく、その後も首脳合意による政策を調整しようとする努力が見えなかった姿勢が繰り返される可能性も常に存在する。第3回米朝首脳会談が開催されても、“政治ショー”に止まる限界を抱いているのだ。

 

一方バイデンは、米国の伝統的な外交路線というべき現実主義的な国際主義に立ち戻ろうという公約を掲げる。トランプ大統領が近視眼的な国家利益を追求したので、むしろ米国の利益を傷つけたという批判から出発する。同盟国に非現実的な防衛負担金の増額を要求し、ドイツでしたように一方的に米軍を縮小して米国への信頼を損ねたという意味である。また、イランとの核合意やパリ条約から脱退したように、外交と多者間主義の国際機構を無視したことも米国には損害だと指摘する。したがって、米国の軍事力および長期的な国益に根ざした現実主義を堅持し、国際機構および同盟国との関係を復元しようというのだ。これに、“民主主義首脳会談”を開催するなど、民主党のブレンドである人権と民主主義の旗を掲げる価値の外交を復元しようという公約も掲げる。

 

朝鮮半島の平和と繁栄という観点では、これもまた両刃の剣だが、まず具体的に言及した2つの肯定的な事項について検討してみよう。韓国との同盟を強化するなど、米国の伝統的なパートナー関係を回復し、更新しようという点は肯定的である。また、北に対しては非核化のために「米国の交渉実務者に力を与え、同盟国および中国を含めた他の国家との持続的で、調律したキャンペーンを始めよう」と交渉および多者的な接近に重きを置いている。外交の位相を高め、“永久的な戦争”を終わらせようというのは、朝鮮戦争の平和的終結へとつながる可能性も示唆する。反面、朝鮮戦争の終戦は具体的に言及せずに、“同盟強化”を公約したのは現行の停戦体制を強化する危険性を内包する。交渉の目的も「非核化された北朝鮮」で“朝鮮半島の非核化”とは距離がある。1990年代からの6者会談はもちろん、南北首脳会談と米朝首脳会談で共通に構築された朝鮮半島の非核化という目的から後退し、“北朝鮮の非核化”を追求することが果たして可能なのか、疑念が生じるポイントである。また、朝鮮戦争の終結および朝鮮半島平和体制の構築と調律されないまま、非核化のみが実現できるか疑わしい。

 

・何をなすべきか

 

結局、トランプ候補とバイデン候補はともに、朝鮮半島の平和に機会と限界を与えてくれるはずだ。韓国は当然、機会を生かし、限界を超える準備をすべきだろう。このために特に注目すべき点は、まず両候補とも“北核問題”を公約に含めるほど重視するという事実である。どちらの当選でも、これは誰も無視できない米国の重要な安保事案である。“北核”を解決できない問題ではなく、解決できる課題として認識させることが重要だろう。

 

それなら、この問題をどのように解決すべきなのか。ここでも両候補は共通して機会の窓を開けている。ともに“終わりなき戦争”または“永久的戦争”を終わらせようという意志を見せているのだ。長年の戦争に米国が引きずられているという米国民の嫌悪感を反映したものだが、これを朝鮮戦争の終結へと具体化するのは韓国の役目である。朝鮮戦争の終結により平和体制を構築し、これと調律した措置により朝鮮半島の非核化を達成できることを説得することも韓国の役目である。この過程で同盟を革新し、米国と朝鮮半島の関係を21世紀に見あったものに発展させようという斬新なビジョンも提示すべきだろう。

 1990年代から米国で民主党政権と共和党政権が“北核問題”を扱い、共通して下した結論がある。軍事的な解決策はないということだ。クリントン政権もトランプ政権も、“外科的打撃”“鼻血戦術”“核打撃”などを考慮したが、現実性のないことを確認しただけである。経済制裁も“歴代最強”を繰り返し、“最大の圧迫”まで強化されたが、北の核軍事力はむしろ強まった。それでも交渉をする間、北の核能力の凍結も可能であり、非核化に対する意志は確認することができた。過去の過ちを繰り返すのは馬鹿げている。今は交渉を具体化し、その結果を一つずつ実行するために準備すべきであり、これ以上バカな役回りを重ねてはならない。具体的かつ平和的な解決策をつくり、政府の各部署がこれを履行するロード・マップを作るべきである。大統領府のみで動いてはならない。統一省を含めて国防省と外務省など、あらゆる部署が外に表れた変化に没頭するのではなく、真の朝鮮半島の平和と繁栄の政策を推進すべきである。様々な研究機関と市民社会団体が、米国のシンクタンクおよび市民社会とより深く、幅広く対話する準備をすべきである。去る23日、文在寅大統領が国連総会の基調演説で終戦宣言を促したことが、米国の次期大統領と朝鮮半島の平和・非核化を推進する新たな戦略的な布石の一環であることを望む。

 

準備した者だけが勝利する。平和を願うなら、平和を準備せよ、今直ちに。

 

徐載晶(ICU政治・国際関係学科教授)

翻訳:青柳純一・青柳優子