[対話] 2013年以降の韓国外交

2012年 冬号(通卷158号)

 

 

白鶴淳(ペク・ハクスン) 世宗研究所首席研究委員。著書に『北朝鮮権力の歴史』『韓国、北朝鮮の政権樹立過程の比較1945~1948』(共著)など。
李根(イ・グン) ソウル大国際大学院教授。主な論文に「海外駐留米軍再配置計画と韓米同盟の未来」「国際政治における言葉・象徴のソフトパワー理論」など。
金峻亨(キム・ジュンヒョン) 韓東大国際地域学科教授。著書に『グローバリゼーションの現象と対応』『アメリカが世界最強でなかったら』など。
李南周(イ・ナムジュ) 聖公会大中国学科教授、政治学。著書に『中国市民社会の形成と特徴』『二重課題論』(編著)など。

 

 

李南周(司会) 『創作と批評』冬号の「対話」は韓国外交にテーマをしました。全世界的に、または東北アジアだけをみても、きわめて重要な変化が進んでおり、来年スタートする韓国の新政権にとっても外交問題が重要課題になるだろうと思います。ですが、意外と大統領選挙の過程では、さほど重要なイシューとして扱われれているようではありません。今日の討論がそのような議論に多少なりとも役立つのではないかと思います。まずご自身の紹介をお願いします。自ら大統領選挙キャンプの諮問役をなさっている方もいらっしゃいますが、現在の選挙戦における、外交・安保分野の議論に対する簡単な論評を付け加えて頂ければと思います。

白鶴淳 私の専攻は北朝鮮政治、南北関係、朝米関係、北朝鮮の核問題などです。なので、南北発展委員会の民間委員もやっており、統一部の自体評価委員長や外交通商部の政策諮問、ソウル・ワシントンフォーラムの事務総長もやったことがあります。外交領域の大統領選挙の公約は10月中旬現在、文在寅(ムン・ジェイン)候補側から部分的に出ており、朴槿恵(パク・クネ)候補からは公式に出ていません。安哲秀(アン・チョルス)候補もまだ公表していません。私は安哲秀候補を政策面で支援することになりましたが、その理由は、彼の民族和解に対する考えが明確だからです。「民族の和解なくして平和も共同繁栄も困難だ」とおっしゃっています。統一を「過程」として考えたり、平和体制の樹立に明確な所信があるなど、彼の考えは自分とかなり似ていると思いました。もちろん今日の対談では、大統領選挙と関係なく、普段、私が学者として考える所見を申し上げますので、そのように理解して頂ければと思います。

李根 私はソウル大の国際大学院で国際政治を教えており、「未来の智」という民間シンクタンクを運営しています。大学で国際政治を教えていますが、政治経済にも関心があります。最近では、李明博(イ・ミョンバク)政権で南北朝鮮関係の問題があまりなかったため、政治経済と関連した問題に少し重点を置いて考えてきました。また文在寅候補キャンプの南北経済連合委員会に名前が上がっています。大統領選候補のなかでもっとも尊敬する人を支援すべきだと考えました。また周辺の人々の勧誘もありました。

金峻亨 私は慶尚北道・浦項の韓東大で国際政治を教えています。なので、どうしてもソウルで目立つ人たちとはつながりが弱いと思います。主としてコラム寄稿のようなことをしています。私の専攻は国際政治、なかでもアメリカと関連した研究を主にやっております。大統領選挙の序盤には、文在寅候補キャンプで、外交政策報告書や公約質問に関与しました。人間的に文在寅候補がいいと思いますが、外交や南北関係を李明博大統領がかなり滅茶苦茶にしてしまい、どうにか回復させるべきだという気がしています。

 

 

韓米同盟強化の中で失踪した韓国外交

 

李南周 李明博政権の初期から韓米同盟強化というのが核心目標であり、いまだ韓国外交では、これがアルファでありオメガでもあると言えますが、そのような政策や実践を検討しながら、この対話を本格的に始めてみたいと思います。このような方向設定が正しいものだったのか、どのような問題があったと思われますか? 金峻亨先生からお話し下さいますか。

金峻亨 私はいわゆる進歩改革政権の10年に対して、李明博政権である種の強迫観念が作動したと考えます。2つのテーマでしょう。太陽政策(対北朝鮮融和政策)と韓米関係悪化です。これによって、対北朝鮮強硬策と韓米同盟強化が李明博政権の外交安保政策の核心的な方向になりました。対北朝鮮政策が失敗したという点については、大きな異議はありません。朴槿恵候補までこれを改めるべきだと言っています。ですが、韓米関係については二重的な面があります。李明博政権の初期から、韓米関係については、これよりよくなることはないだろうという意見が、アメリカの官僚からも出ていましたし、表面的にも堅固に見えます。あたかも韓国のアメリカに対する発言権も高まり、対北朝鮮政策も主導しているかのようです。ですが、実状は、そのように見えるだけに、費用はきわめて大きいと思います。一種の錯覚効果でしょう。北朝鮮や中国に対してアメリカと韓国の立場が一致しており、また、アメリカ内部の国内改革や経済危機のような要因が重なって、あたかも韓国が主導権を持っているかのように見えています。それよりさらに深刻なのは、韓米関係が強化されることで中国との関係が悪化し、その費用を支払うことになりました。韓米同盟絶対主義に進んだために、アメリカに完全に主導権を渡して、その国益によって動くことになり、事実上、多くの費用を負担することになりました。結局、李明博政権は、対北朝鮮政策と韓米同盟の強化の両面において失敗した政権です。

李南周 表面的に見れば、韓米関係がいいということが強調されていますが、目に見えない費用がきわめて大きかったということですね。ですが、李明博政権において、韓米同盟の強化とともに、その方向と関連して新たに提起された部分はなかったでしょうか? いわゆる「包括的戦略同盟」や「価値同盟」のようなものですが、これを引き続き堅持していくべきかについても検討するべきでしょう。

白鶴淳 包括的戦略同盟論は、韓半島を地政学的に越える戦略的な同盟という意味で、またイシュー面では、安保だけでなく大量殺傷武器やテロ、麻薬、さらに海賊行為まで含むものです。韓米間の包括的戦略同盟論には、9・11テロ以降、アメリカの軍事外交への転換がそのまま反映されています。ジョージ・ブッシュ大統領の時から、米政府は共同利益を指向する「意志の連帯」(coalition of the willing)を強調し、他の国々がそれに従わざるを得ませんでした。そして、その「価値同盟」が登場しました。自由、民主主義、人権、市場経済などは、アメリカが代表的に語る価値ですが、価値同盟といえば、その前提が異なる価値を追求する国や陣営は、排除し敵対するという意味が入っています。ですから、特に韓半島と東アジアでは、一方に韓・米・日があって、他方で中国と北朝鮮が対抗する、対決的な韓米同盟になってしまいます。私たちの立場では、南北関係で対立が深刻化し、核問題も解決しにくくなります。ですから、私たちとしては、韓米同盟を対決的な性格にしてはならず、韓半島で平和追求的な性格のものとするべきだったのですが、この点に失敗しました。この点が最も痛恨の失策であり、また改めるべき点であるとも思います。

李南周 韓米同盟強化が対決的構図を再生産したことが問題だったとお考えですが、一般的に「価値同盟」という言葉自体は悪くないと思います。ある種の利害得失だけを論じるわけではないという意味ですから。専門家の立場からはまた異なる見方ができるでしょうが、と言って、国家間の関係において価値を排除できるかという反問も出てきそうです。

사용자 삽입 이미지李根 はたして価値で同盟を結ぶ国家があるでしょうか。本来、同盟というのは、脅威がある時、その均衡を合わせるために結びます。ですが、価値が同じならば、あえて同盟を結ぶ必要がありません。結局「同盟のための同盟」のための名分のように聞こえます。ですから、私は、価値同盟はだめだと思います。冷戦が終わって西側に脅威を与える勢力は一斉に消えました。それとともに同盟が再調整に入り、同盟の未来が不確実になるので、その目標を、価値に対する脅威を防止するというものに変えたのが、価値同盟というアイデアでしょう。だから、きわめて攻撃的な性格になりました。同盟が攻撃的になってしまったら、それは同盟とは言えません。特定の外交・安保的な目標のために、他の国々を変換させ、自らの利益を追求するということですが、きわめて帝国主義的なにおいがします。だから私は、価値同盟という言葉は、次の政権で廃棄されるべきだと思います。

金峻亨 戦略同盟論がどの時期に出てきたのか、よく考えるべきです。最も冷戦的で攻勢的なブッシュ政権と李明博政権の時でした。対中・対北朝鮮強硬策による、言い換えれば、脅威を生かし、その脅威に対する同盟を再生させる冷戦復帰的な同盟だったのですが、そのことを覆い隠すために、平和構築、信頼、価値同盟のようなことを前面にかかげました。そのように名付けることで実状を隠しているんです。

白鶴淳 李明博政権になった時、大統領職引受委員会や大統領府の周辺で「韓米同盟を英米同盟水準に引き上げよう」という議論がありました。他の見方をすれば、背筋が寒くなる話でしょう。イギリスとアメリカはどのような関係でしょう。両国は血筋、言語、文化、歴史が韓米関係とは異なります。政権の初期、李明博政権の親米指向はそれほど強いものでした。振り返ってみると、ブッシュ政権の1期目の時、武力を使用してサダム・フセインを除去する戦争を起こしたものの、費用があまりにも大きかったために、2期目の時は「悪の枢軸」国家を打倒する方法として、非武力的価値、つまり、自由、民主主義、人権、市場経済などを前面に出した「変換外交」を始めました。その結果、「北朝鮮人権法」のようなものができました。李明博政権がそれにそのまま追随し、他の陣営に対してかなり攻勢的にその価値にしたがう、だから、他の見方をすれば、伝統的な方法でない「もうひとつの形態」の戦争を遂行する同盟を強化したんです。

李根 李明博政権で最も仕事のしやすい部署が、外交部と統一部だったといいます。なぜなら、盧武鉉政権や金大中政権で作りあげたものを、実行しなければよかっただけですから。南北関係もそうですが、さまざまな面でできるだけ実行せず、宣言だけはすばらしいものを出して、他はやらないというイベント外交でした。G20の首脳会議や核安保首脳会議もそうで、資源外交をやるといいながら、こんなものを獲得したと言うだけの政治ショーだけだったので、儀典担当者以外はずいぶんと楽だったようです(笑)。

 

 

米大統領選挙後の韓半島戦略、どう変わるか

 

李南周 李明博政権の韓米同盟が多くの副作用を示しましたが、今、李明博政権の外交を批判する野党側の政策を見ても、ほとんど「韓米同盟強化」が入っているようです。もちろん、韓中協力を並行して発展させるべきだという話が伴いますがね。そのような内容はどのように説明できますか?

李根 今、韓米同盟はこれ以上よくならないだろういう水準ですから、さらに強化しようという主張がさほど切迫しているわけではありません。今、大統領選挙は、両陣営で、中間層をどのように味方につけるに死活をかけています。ですが、大韓民国で韓米関係や南北関係ほど、進歩/保守を明確に分けるイシューはめずらしいと思います。したがって、中間層攻略のためには、どちら側も韓米同盟の問題にさほど触れないだろうと思います。今回の大統領選挙では、安定した面を強調して中間層を味方につけることが野党の目標であり、与党側も保守層を集めなければならないので、韓米同盟強化をはっきりと前面に出そうという戦略でしょう。しかし、おそらく宣伝的な水準で、大統領選挙戦略用であって、特に新しい内容はないと思います。文在寅候補や安哲秀候補側でも韓米同盟問題には大きく触れないだろうと思います。

李南周 ならば、韓米関係の方向はどのように捉えるべきでしょうか? 最近、国際情勢が複雑に展開し、中国が浮上している状況において、韓米関係の発展というのは何を意味するでしょうか?

李根 韓米関係はよくアメリカの国内政治に左右されると思いますが、オバマ大統領が再選に成功すれば、私たちが韓米関係を再調整し、深刻に問題とすることはないと思います。オバマの対韓政策は、韓国の対北朝鮮政策に合わせて、できるだけそちらの方に支援する形でしたが、もしロムニーに政権が変われば、参謀陣にネオコン(neo-conservative、本来「新保守主義者」という意味だが、極右的な保守主義者を主に示す)がかなり入っていて、葛藤局面に進む可能性があります。特に韓国が進歩政権になればなおさらでしょう。ロムニーにならないのであれば、韓米関係は比較的大きな問題もなく進むでしょうし、中国との関係でも、たとえば米中関係が葛藤局面ならば、韓米関係を再調整する必要があるでしょうが、米中関係もそうではないと思います。特に経済的な問題があるからです。米大統領選挙の局面では、中国が為替レート操作国であるとして、対中関係を変えようなどとも言いますが、選挙が終ればまた戻ります。ロムニーになっても米中関係は大きく悪化するとは思いません。

李南周 対北朝鮮関係では、韓国政府の身の振り方によって、米政府がこれを受け入れる面があって、李明博政権の時にもそのような様相が見られました。ですが、世界的レベルの変化に対応するには、かならずしもそうはならない側面もないでしょうか? たとえば、海外派兵や防衛費分担増のようなケースでは、摩擦もあると思います。

李根 ですから、マクロ(macro)でなくミクロ(micro)な摩擦なのですが、世界レベルの問題でも、アメリカは自国の経済や政治のせいで、大きく動きそうではありません。防衛費分担はとても重要な問題ですが、誰がさらに金を出すかという微視的な問題であって、大型の危機になるとは思いません。もちろん、防衛費分担を論じる時、私たちが強く出れば、アメリカが交渉力を高めるために、「同盟を打ち切るということか」といって脅迫してくる可能性はあります。それが交渉戦略ですからね。そのようなことが盧武鉉政権や金大中政権の時にもありましたし、韓国の保守マスコミを通じて、アメリカが脅迫性の発言を流し、交渉力を高めることもありました。そのような部分は、私たちがよく勘案するべきですが、巨視的な摩擦はさほどないだろうと思います。

金峻亨 韓米同盟というのは、南北関係と連動しながら、韓国にとってアキレス腱のようなものになっています。ですから、国民も、実際的な韓米同盟の強化の必要性よりも、かなり誇張された神話を持っていると思います。いまだに韓国の政治では、対北朝鮮従属という問題が指摘されて、これが韓米関係と直結します。ですが、いつも見ると、韓米同盟が強くなるのは南北関係がよくない時です。また米中関係もキーです。2010年以降、領土問題や北朝鮮問題、または渤海上の軍事訓練のようなケースを見ると、米中関係が破局することはないものの、いわゆる「アジアへの帰還」(pivot to Asia)の次に、問題膠着の局面に進むような気がします。

 

白鶴淳 韓米関係の発展方向についてのお話しでしたが、私は次の4つの方向についてお話ししたいと思います。第1に、韓半島と東アジアの勢力の間に、対決よりも平和増進の試みが可能な方向に変わるべきです。第2に、もう少し均衡的で互恵的な、言わば韓半島問題における韓国の「主要な当事者原則」や主権について、アメリカがもう少し尊重するような同盟になるように努力するべきです。第3に、南北和解と東アジア平和安定のための協力につながる、特に韓半島における統一過程を支援する同盟になるべきです。最後に、韓半島における戦争状態を収束させて平和体制を構築し、北朝鮮の核問題を解決する好循環構造を作り出すことに貢献するべきです。

ジョージ・ブッシュ当時、ネオコンの一方主義的な外交のために、全世界的にアメリカが追求してきた価値や同盟関係がすべて壊滅しました。だから、オバマは多者外交と同盟外交を重視するという立場でしたが、ちょうど韓国が李明博政権となり、価値同盟を強調して、韓米関係を韓半島や東アジアにおける攻撃的な性格に導くことに主導的な役割を果たしました。アメリカは強国として、韓半島や東アジアにおいて自らの利害関係がありますが、最低限、韓半島問題では、私たちが主要な当事者であることを明確にして主導していくことが、今後、韓国政府がやるべきことだと思います。

李南周 他の見方をすれば、韓半島問題と関連して、オバマ政権は李明博政権の立場を後押ししてきたといえます。ならば、韓米関係は互恵的で水平的ではないかという指摘もありそうです。そのような関係が、韓国政府の意志だけで可能だったのか、あるいは依然として、互恵的で水平的関係を阻む制度的・構造的制約があるとお考えでしょうか?

金峻亨 まず「互恵的」という意味の受け止め方が、アメリカと私たちで異なります。盧武鉉政権の時からあった問題ですが、私たちにとって互恵的というのは、韓国の利益を一方的に保護するのでなく、私たちを尊重して平等な関係を結ぶ同盟を意味しますが、アメリカ側から見れば、アメリカが韓国に与えるだけ韓国もアメリカに利益を与えなければならないということを意味します。このことがアメリカの東アジア戦略や中国戦略において「戦略的な柔軟性」として見られましたし、のちにミサイル防御計画(MD)のようなものへの参加を要求してきました。そのような面で互恵性に対する両国の見解が異なるという点を申し上げたいと思います。

白鶴淳 その通りです。韓米間で考え方が違います。盧武鉉政権の時を想起すれば、私たちは民族和解や南北関係の改善が重要ですが、ブッシュ大統領はそれを理解することもなかったし、またしようともしませんでした。ブッシュの考えは、韓国にとって北朝鮮は敵国でアメリカは同盟国なのに、なぜ同盟国にさびしい思いをさせて敵国と対話しようとするのかというものでした。表面では韓米両国が同盟を重視して協力するのでよく見えますが、両国が力を合わせて何をするかが実は重要でしょう。長期的に中国と競争しながら、21世紀の東アジアの秩序を樹立するアメリカの立場では、軍事安保的にすでに韓国は味方ですが、いまや韓米FTAを通じて、経済通商分野まで完全に味方にして中国に対抗させることによって、アメリカの利益を確実に守って行こうとするでしょう。ですから、韓米協力は平和的で友好的なものでなく、対決的でアメリカの利益を保護する方向に流れました。

李根 ジョージ・ブッシュの時を考えても、アメリカはうまく行っていた時期です。経済危機がくる前で冷戦でも勝利したからです。自信満々にグローバル政策を追求したら同盟国と摩擦が生じました。ですが、今は国内では問題山積で収拾がつかず、金もなく、外交的な力量もいまくいきません。同盟国も、アメリカと動揺しない程度の関係さえ維持すればいいので、ロムニーが大統領になってネオコンがまた戻ってくるにしても、外交面で攻撃的になることはあまりなさそうです。最も大きい問題といえば、韓国が南北関係を強く推進して、アメリカが韓国政府を信頼しない場合、葛藤が生じることはありそうです。ですが、大きく見れば、アメリカの力量がままならず、その意志もないので、同盟調整を要求するほどのグローバル戦略は出てこないだろうと思います。

 

 

G2時代、性急な同盟追求より危険分散の知恵を

 

사용자 삽입 이미지李南周 韓米関係で懸念される問題が2つほどあります。1つは南北関係の解決に韓米協力がどうあるべきかで、もう1つは韓米同盟が中国の浮上にどう対応するべきかです。実際に李明博政権は、韓米関係の好調を自ら評価しますが、韓中関係は悪化したというのが大半の意見です。まず、対中外交にどのような問題があったのか簡単に点検し、中国の浮上が韓米関係にどう関連するのか、話し合ってみたいと思います。

李根 政府間関係を見ると、韓米関係ほどに、韓中関係が近く円滑になることはありませんが、中国は交易量で韓国の最大パートナーであり、中国人観光客が来なければ、済州島や明洞の景気にも影響するほどでしょう。中国に行く韓国留学生もかなりの数にのぼっており、韓国から観光客も多数渡り、中国について勉強しようというブームもあります。韓中関係がかなり悪くなったら、このようなことがみな消えるでしょう。領土紛争も大きく浮上してはいません。最近まで政治外交的な摩擦がなかったわけではありませんが、全体的に見れば、韓中関係はそれなりにうまく維持されてきたと思います。

白鶴淳 全般的な状況や、表面に見られる成果を見ると、明らかにそうでしたが、李明博政権が示した外交リーダーシップを、中国側で果たして信頼していたかは、別の問題だろうと思います。李明博大統領は就任初期から日本とアメリカに偏って、中国に対して歩み寄る態度を取ることはありませんでした。その時から中国の持つ不信は消えていないと思います。特に北朝鮮の核問題や天安艦事件、延坪島事件を経て、韓米両国と朝中両国が、それぞれに分かれて衝突すると、すぐに韓国としては中国から遠ざかってアメリカに依存するような状況になりました〔天安艦事件は2010年3月26日に白翎島付近の海上で韓国海軍の哨戒艦・天安が沈没した事件。韓国政府はこれを北朝鮮偵察総局によるものと見ているが、この事件で韓国海軍兵40人が死亡し6人が失踪した。延坪島事件は、2010年11月23日に大延坪島近海で起きた朝鮮人民軍と韓国軍による砲撃戦―訳者注〕。現在の21世紀の東アジア秩序が新たに作り出されている中で、中国の指導部が韓国の指導部をどう認識しているかについてもきわめて重要な問題だと思います。今後、当選する韓国の指導者は、金大中大統領のようにすべての国から尊敬されることは困難ですが、周辺国の信頼や尊敬を受ける外交リーダーシップを発揮するべきです。

金峻亨 これまでオバマ政権の米中関係を見ると、初期の2年にはG2という概念が多分に相互的でした。中国を利用しようという意図もありましたが、中国の格を上げてパートナーとみなすというものだったのが、後半期になると次第に強硬策に変わります。外交関連の人士を見ても、初期は両国の協力的な関係を強調するジェイムズ・スタインバーグ国務部副長官やジェフリー・ベイダー国家安保会議選任補佐官が中国関連政策を先導しましたが、2人とも退き、それより強硬な対中政策を支持する国防部が中心になります。アメリカは経済危機克服のために、国防予算を10年間5千~6千億ドル程度、削減しなければなりませんが、アジアではこれを削減せず、「均衡回復」(rebalancing)するとして、「アジアへの帰還」の方針が出てきました。このような動きが米中関係を少しずつ葛藤に導くと、すぐに中国もやはり領土紛争と関連して正面で対抗し、関係はさらに悪化しました。ですが、これはオバマの選挙戦略だと思います。自らの外交を軟弱外交と非難するロムニーに対する牽制として、対中政策を強硬に行っていますが、オバマが再選に成功すれば、また協力と封鎖の均衡を回復するだろうと思います。ですが、政権がロムニーになれば、方向をさっと変えて膠着状況になるでしょう。現在、ロムニー陣営を縛っているのが、大きく見れば愛国主義です。このようなアメリカの愛国主義が大衆強硬策に流れる可能性は充分にあると思います。ロムニーは大統領候補最後の討論で、中国に対する強硬発言を行いました。中国が為替レート操作を日常行って、アメリカ人の雇用を奪ったと非難し、自らが就任する日に、中国を為替レート操作国として指定すると言っています。

李南周 均衡回復、アジアへの帰還のような主張は、中国が浮上して初めて出てきたものですが、これは米中関係において競争的な側面が強まる可能性が高いということを意味します。このような状況に対して、私たちがどう対応するべきかについてもお話し下さいますか。

李根 今後、アメリカが軍事戦略を新たに立てるには、中国がその背景にならざるを得ません。ヨーロッパでもなく、ラテンアメリカでもありません。しかも中国が浮上しているのですから、中国を中心にして軍事戦略を立てるしかありません。中国も経済成長によって軍事費支出が増え、相互作用が起きることもあり得ます。ですが、中国の浮上に対して私たちが性急に対応する必要はありません。韓米同盟をリスクにさらしてまで中国と急接近する理由もありません。ひとまず様子を見ようということです。今日の外交は政府だけがやるわけではありません。昔は国同士で戦争をするので、外交官が行って条約を結んだりしましたが、今はほとんど民間でうまくやっています。むしろ政府が民間に依存しているほどです。企業もそうでしょう。国家が性急に何かをやるよりは、民間でうまくやるよう支援する方向に進むべきだと思います。

白鶴淳 もちろんそのような面もありますが、私たちとしては、米中関係の変化、アメリカの「アジアへの帰還」に対して、基本的な立場と戦略を持つべきだと思います。私たちが経済的な面で中国にますます依存的になり、軍事的な面では依然としてアメリカに頼っている状況ですが、ここで私たちがこれまでやってきたように、アメリカだけに便乗することもできず、だからといって「均衡者の役割」を引き受ける力があるわけでもありません。ならば、多様な要素を総合して最大限の便益を守り、危険を回避する戦略、私たちの場合は、アメリカと同盟を維持しながらも、中国との関係を増進させることによって、もう少し均衡的な外交をおこなう、一種のヘッジング(hedging、危険分散)の戦略を取るしかないだろうと思います。

 

 

変化する東北アジア情勢と韓国の役割

 

李南周 均衡回復やアジアへの帰還が、単に修辞的なレベルなのか、あるいは実際の内容なのか気になります。私の感覚では、アメリカが軍事費を削減せざるを得ない状況で、東北アジアから東南アジア、インド、南アジアにかけたネットワークを維持するだけの資源を持っているようには思えません。ですが、アメリカがアジアに帰還するという立場をめぐって、韓米関係を重視する側では、これを韓米関係強化の論拠として掲げています。その問題はどうお考えですか?

金峻亨 私は一種の予防封鎖だと思います。実際にアメリカは周辺国家と軍事的協力を構築してきたし、中国もこれをソフトな封鎖として理解していると思います。アメリカはこれを費用削減の方法と考えています。過去の同盟のように多額の金をかける必要がなく、周辺国家と広く緩慢な連帯を結ぶんです。周辺諸国と中国の間には自ずから葛藤要素があるので、アメリカの立場ではあとで問題が生じた時、これらを利用することができます。また昨年、ライアン・ペネッタ国防長官やヒラリー・クリントン国務長官が東アジア諸国を訪問または招請した時に何度も言っていたのが、アメリカとの同盟、または中国からの保護の役割について、あまり期待することのないようにというものでした。単なる修辞でなく、費用を減らす代案であり、未来の対策として考えているようですが、実際にこのようなネットワークはアメリカの意図通りにはならず、いくら緩慢にやるといっても、その維持には多額の費用がかかるという主張もあります。

李根 アジアへの帰還といった時、韓国でやや誤解しています。私たちはアジアを東北アジアのことだと考えます。だからアメリカが日本や韓国の方に戻ってくると解釈しますが、東北アジアではアメリカとの同盟が健在なので、実状は東南アジアに戻ること、またオーストラリアとの協力を強化することを意味します。中国の浮上を見守り、東南アジア諸国が不安に思えば、アメリカが「心配するな、私たちはアジアに戻ってくる」と言いますが、それはこれまでのアメリカの同盟政策と大きく変わってはいません。

白鶴淳 アメリカのアジアへの帰還という脈絡から見ると、最近、李明博政権が日本と協力して導入しようとした韓日軍事情報協定は、中国を狙った一種の「アジア版NATO」だという主張がありますが、それは一理あります。NATOの話が出ましたが、アメリカが韓国、日本、オーストラリアなどをNATOのグローバルパートナーシップに参加させようと提案することで、ヨーロッパのNATOをアジアにまで持ち込み、中国を封じ込めようとしたのも、すでに6年前のことです。このようにアメリカが、東北アジアで韓国と日本を特定の方向で利用しようという試みは続くと思います。

李南周 さきほど出たヘッジング戦略を展開せざるを得ない状況になったのでしょう。外交的に危険を分散させ、資源を多様に利用する形でです。一方では機会と言えますが、資産配分を誤った場合、損失の危険がともなうでしょう。そのような面で私たちはどのようなことに注意するべきでしょうか?

李根 中国に関しては2つのことが重要です。中国が脅威になるかを考えるよりは、実は日本やアメリカとの関係でも同じですが、信頼構築をどのようにやるか、また政府がいかに多くの努力や投資を行うかが重要だと思います。韓国の次の政権の外交方向は、さきほどおっしゃった通り、東北アジアの均衡者としての力量は足りないので、信頼構築者になるべきだと思います。盧武鉉政権の時にも出てきた話です。信頼構築のための戦略を数多く作り出すことが重要です。2つ目の方向は、中国を東アジア地域主義で拘束するべきだというものです。東アジア地域のレベルで行けば、韓・中・日の協力がきわめてうまくいくと思います。だから、東アジア地域主義というポートフォリオで危険を分散をさせ、中国に対するべきだと思います。

金峻亨 戦略同盟が韓米関係の成熟に進むならば、同盟と地域主義の共存が可能ですが、李明博政権では事実上、それを不可能にしてしまいました。これからは韓米関係とともに多面的な外交を同時に追求するべきです。そして米中関係がどうなるかによって、私たちはかなり左右されるはずですが、それが危険になる場合には、おっしゃったように、ヘッジングをするべきで、関係がよくなる時ならば、私たちが促進者になって信頼を構築するべきです。この時、私たちが先行し過ぎてもいけません。李明博政権はかなり早く線を引いて味方を決めてしまいました。一歩後で待って、その時になったら敏速に対応する、また敏感なケースについては、戦略的な曖昧性も持ち合わせる外交が必要だと思います。

 

 

急速に冷却した韓日関係、領土紛争を解決するには

 

李南周 新政権がスタートすれば、韓米関係、韓中関係をどうするかが問題ですが、ただちに解決すべき課題は韓日関係です。このような点で李明博政権が大きな荷物を新政権に遺産として残したと思います。地域主義をうまく形成するために韓日協力は大変重要で、国家の規模やさまざまな役割を考慮する時もそうだと思います。韓日関係の悪化が韓国にも相当な負担になっていると思いますが、どうお考えですか?

白鶴淳 韓日間には大きく2つの問題があります。1つは領土紛争、歴史論議、日本軍慰安婦のような懸案であり、もう1つは北朝鮮問題を解決して韓半島と東アジアの平和を増進させるための共助です。まず領土紛争や教科書論議は、基本的に日本が過去の植民主義に対してより一層徹底的に反省し、私たちも韓日関係をその方向に導き、いますぐではないとしても、長期的に問題を解決していくべきです。韓日の政府は、両国民が民族主義的な感情に過度に陥らないように外交力を発揮するべきでしょう。日本軍慰安婦の問題は、これまで、責任の認定や反省、賠償レベルで主に議論されましたが、人権侵害という側面も浮上しており、国際社会を説得することによって、日本が解決に積極的に取り組むように圧力を加えるべきです。北朝鮮問題に関しては、韓日両国が韓半島で戦争を終息させて平和体制を樹立し、核問題を解決するように協力するべきです。日本の外交を見ると、解決に失敗したケースの1つがまさに北朝鮮の問題です。もちろん日本も北朝鮮と過去の植民関係を清算するべきことをよく承知しており、だから日朝平壌宣言(2002)も出てきたのです。その合意事項は正しい問題解決の方向を示しているので、日本政府はこれを1つの模範答案と考え、それを履行するために努力するべきでしょう。

李南周 領土紛争の場合、原則的にはおっしゃった方向で解決されるべきですが、イシューが随分大きくなったのでないのかと思います。韓日間でもそうで、これが釣魚島/尖閣問題などとも絡まってさらに複雑になっています。なので、静かで長期的な方法よりは、何か新たな接近法が必要だろうとも思います。

白鶴淳 独島問題では、私たちが領土として実効支配しているので、他の新たな接近をする必要はないと思います。日本は現在の千島列島まで含めて、3か所にかけて領土紛争を抱えているわけですが、日本政府でも独島問題を解決する特別な妙案を見出すことは困難でしょう。領土紛争はそのように簡単に解決できる問題ではありません。ただ最近、李明博大統領の独島訪問を契機に、日本が独島領有権に対して国際社会で攻勢的な宣伝活動をしているので、私たちも政府と民間が力を合わせて、これに対し効果的に対応する政策を繰り広げるべきです。そのような点で歓迎すべきは、去る9月末、日本の知識人と市民団体が集まって発表した要請文です。独島と尖閣における領土紛争が、日本の侵略と国有化の挑発から始まったことを指摘し、自省を促しています。3か国の市民社会レベルの連帯と協力も、この問題を解決していくもう1つの経路でしょう。

李根 対日外交では歴代政権の中で李明博政権が最悪だと思います。この政府になって外交分野で特に業績もありませんが、日本に対しては、それなりに何とかやっていた方でした。ですが、それもイベント外交で、またイベントの中でも間違ったケースでしょう。就任後、日本と親密な外交を行い、韓日軍事情報協定という、国民が受け入れにくい水準まで押し進めましたが、突然180度変わって、独島に大統領が直接訪問して天皇に対して発言し、日本の人々の気分を害したということです。これを韓中関係と比較してみると、韓中関係はよくなかったといっても、観光客も依然としてかなり行き来していますが、韓日関係は独島問題が起きると、私も当時、日本に行ってみましたが、韓国の人々がかなり不安に感じています。ですから、誤った外交で国民に大きな被害をもたらしたのです。

韓日関係で、領土や教科書、慰安婦問題は、基本的にアイディアとアイディアの対決です。あちらのアイディアに対して、私たちもアイディアで対応をするべきです。歴史認識の問題に対して軍事的に対応するわけにはいきません。ならば、日本の植民地責任や人類の普遍的価値の毀損のような問題について、学者も動員し、外国で本も出して、日本の蛮行を広く知らしめる展示企画などもやるべきですが、そのような部分でかなり遅れていると思います。

金峻亨 そのような点は、北朝鮮に対して強硬策を展開し、その後、金を出して首脳会談を提案したことと似ています。5年間、対北朝鮮関係の原則を守るといいながら、後で密室の取引をしました。このような外交は一言で哲学がありません。国家的な中・長期ビジョンを見るのでなく、おっしゃったようにイベント的なんです。韓米関係も南北関係もそうであり、李明博政権の外交の大部分が国内用であったという気がします。もちろん、それは韓国だけの問題ではありません。日本や中国でも政権交代期にこのようなことを国内的に利用するからです。ですが、独島問題のように、このような形で国民を敏感にさせておけば、しばらくは効果があるかもしれませんが、後でそのような期待をどう満足させるかが問題でしょう。まだ幸いなのは、今年の大統領選挙で選挙がみな終わります。少なくとも政権交代になれば、この問題は再び水面下に沈む可能性があります。

白鶴淳 一般的に、選挙を通じて政権が交代すれば政策が変わります。新しい指導者は新しい政策を意味するからです。ですが、政策に一貫性がないので政府としては多難です。先方でも対応困難だと思います。韓国では、金大中政権、盧武鉉政権が北朝鮮に対して包容政策を推進しましたが、李明博政権になって対北朝鮮政策が正反対に変わり、アメリカもクリントン政権からブッシュ政権になって、対北朝鮮政策が180度変わりました。ですが、今回の李明博大統領が、日本に対しておこなった行動は少し違うレベルで問題になったと思います。同じ指導者が少し前とは180度異なる行為をすることで、最近の流行語でいえば、相手を「メンタル崩壊」させました。国際社会で完全に新たなレベルの不信が生じたのです。政権というよりは指導者、人に対する不信です。

李南周 最近、領土紛争を見ると、アジアで第2次大戦をどう清算するかという問題が登場したという気がします。すると、サンフランシスコ条約(1951)の問題が提起されます。この条約に戦争被害国の韓国と中国が参加できなかった限界を、積極的に周知させる必要があり、これを日本の知識人らとともに議論するべきだと思います。それがきちんとなされなければ、単に領土紛争になってしまうような様相です。

李根 日本において、サンフランシスコ条約に対する批判は、主として進歩側から出ています。ですが、日本の進歩は冷戦以降、徐々に傾いて、拉致問題で完全に崩壊しました。それとともに保守層が浮上して、民主党でも自民党でもともに保守的な強硬発言を行うようになったわけですが、そのような状況で進歩知識人がサンフランシスコ条約について語れば、現在としては注目されにくいという問題もあります。

李南周 ですが、現在、中国がその問題を積極的に提起しているような形です。釣魚島/尖閣、また沖縄問題とも関連すれば、今後その議論が進むのではないかと思います。

金峻亨 条約締結において、明らかにアメリカの誤りや失敗があったので、その責任を公開的にただすことはできなくても、アメリカを相手に水面下の作業を通じて説得する必要はあると思います。

白鶴淳 サンフランシスコ条約体制が持続して、韓半島や東アジアにおける主な問題の解決が遅滞しているわけですが、これを具体的に解決していく出発点が、まさに韓半島における戦争と平和の問題を本格的に議論することだと思います。まず、朝鮮戦争を終息させ、停戦体制を平和体制に転換する過程を始めるべきでしょう。

また、現在、18代大統領選挙を目前に控えている時点で、文在寅候補と安哲秀候補は平和体制の樹立を語っていますが、朴槿恵候補はさほど関心がないように見えます。停戦体制は敵対と不信の構造なので、その表現としてたびたび渤海上で軍事衝突が発生し、核とミサイルの問題が再燃するのです。このような状況にもかかわらず、朴槿恵候補は、韓半島の問題の根源を解決しようという意志を示さずにいます。これが統一・外交・安保政策において、朴槿恵候補と文在寅・安哲秀候補の間で最大の違いです。白楽晴(ペク・ナクチョン)先生も、平和体制樹立を基本とする「2013年体制」論を出されていますが、大多数の私たちの国民も、特に天安艦事件と延坪島砲撃を体験してからは、武力衝突と戦争の脅威に嫌気がさし、うんざりしていて、いまこそ平和定着を達成させる時だという点では同意していると思います。

 

 

南北関係回復のための国内政治的な基盤

 

李南周 来年、締結60年をむかえる停戦協定に関しては、明らかに話が出ると思いますが、これまでの5年間、いろいろことがありました。天安艦事件、延坪島砲撃もありましたし、金剛山問題もまだ解決されていません〔金剛山問題…北朝鮮・江原道にある名勝地「金剛山」への韓国側からの観光事業は1998年から始まったが、その後、南北融和の象徴的な事業として、2002年に北朝鮮が正式にこの地区を開放することで、南北政府と韓国の財閥・現代グループの系列社「現代牙山」(ヒョンデアサン)との間で本格的に進められてきた。しかし2008年7月に発生した南側観光客に対する北側兵士による銃撃死亡事件で中断し、南側は真相究明を要求しているものの、北側は金剛山地区にある韓国側所有の不動産を没収・凍結措置にするなど、膠着状態に陥ったまま現在に至っている。-訳者注〕。南北が実質的な協力関係に切り替わるには、どのようなプロセスを踏むべきでしょうか? もちろん、そのプロセスも容易ではないでしょうし、政権が変わってそれを推進するといっても、制約が多いだろうと思います。

白鶴淳 まずそのプロセスを進める指導者が備えるべき明確な価値や方向性を強調する必要があると思います。本人が何をしているのか、何を望むのか、明確にわからない指導者に、そのような平和プロセスを任せたら、どれほどの試行錯誤や混乱をもたらすでしょう。2つ目に、ひとまず民族和解がすべてのプロセスの基盤であり、第一歩になるべきだと思います。そして南北関係の改善、平和体制の樹立、北朝鮮の核問題の解決を、互いに関連させずに同時並行的に進めていくことが必要です。万一、私たちがこの3つの問題を相互に関連づけたり前後関係として設定すれば、過去の経験がよく示すように、結局、停戦体制の維持を望み、北朝鮮の核問題の解決方法として圧力と制裁の方を好む側では、私たちの独自の南北関係改善を許容しないだろうことは明らかです。結局、民族和解が達成されてこそ、平和体制樹立のための交渉も可能であり、韓半島や東アジアの共同繁栄も可能だということです。

李根 李明博政権の対北朝鮮政策が、韓国人の心理的安定に寄与した部分もあると思います(笑)。生活も大変なのに、南北関係まで騒がしくなればさらに頭が痛いでしょう。李明博政権の後半になって、韓国人の頭中から北朝鮮の存在がなくなったのではないでしょうか。政府が何もやっていないからです。次の政権は、誰が政権を取ろうと、このイシューを引き出すだろうということです。そうすれば、かなり騒がしくなるでしょう。南北関係ほど保守と進歩が争う問題はありませんからね。すでに北方境界線(NLL)の問題が出ています〔北方境界線…韓国と北朝鮮の間に設定された事実上の南北海上境界線。 このうち特に「西海北方限界線」は大韓民国の西海上の5島と北朝鮮・黄海道の海岸の間に設定された海上境界線で、1999年の銃撃戦以降、南北間の最も激しい軍事紛争対象となっている。―訳者注〕。もちろん特定の大統領候補を攻撃するためでしたが、いずれにせよ、私は、南北関係においては進歩陣営の方が不利だと思います。むしろ保守の方で対北朝鮮政策を転換する方がはるかに有利だと考えます。南北関係に対して超党派的に臨まなければ、信頼問題も韓米関係も解決できない部分が多いと思いますが、この点では朴槿恵候補の方が有利です。保守陣営が対北朝鮮政策で前向きになれば支持層がさらにつくでしょうが、進歩陣営でそのようにすれば支持基盤が分裂するからです。これまで私たちは、太陽政策もやりましたし、すべてやりましたが、最大の問題は超党派的な支持がないということです。だから、次の政権は、対北朝鮮政策に際して国内的にうまく合意を取り付けながら、やっていくことが必要であり、また性急に乗り出すのはあまりよくないと思います。

金峻亨 私は少し違った形で考えています。もちろん韓国社会で保守側が対北朝鮮政策を前向きに取り組めば、超党派的な支持を受けやすい面はありますが、限界を露呈せざるを得ないとも思います。基本的に、出自的に、勢力的に、また政治工学的にも、保守は真の意味での対北朝鮮政策の変化をもたらすことが不可能だからです。結局、保守層は保守層なりに、自らの支持基盤の分裂を避けるためにも、不可能だろうと思います。進歩が政権を取れば、特に文在寅候補が当選して、南北関係を画期的に改善していくならば、また北朝鮮を利するだけなのか、国民を分裂させるのかという批判が噴出するでしょう。だから私は、統合や超党派的合意にこだわりすぎて、時宜をのがすような愚を冒さずに、むしろ政権初期の、統治力がもっとも高い1~2年の間に果敢に取り組むべきだと思います。

白鶴淳 私の考えでは、韓国民の大多数が、特に天安艦事件と延坪島事件を通じて、緊張が高まるレベルを越えて、戦争の脅威が急増していることを直接体験しています。そうであればこそ、南北間で対話をするべきなのですが、李明博政権になってから、これまであれほど何度もやっていた長官級会談もできていないんです。国民はこのような状況を見守りながら、これ以上だめだと考えているでしょう。また現在は、韓国経済が大きな困難に直面していますが、その活路として、南北経済協力を基盤に中国やロシアにまでつなげて、北方経済のブルーオーシャン(競合相手のいない領域)を開くべきだと主張する安哲秀候補のような人もいます。過去に金大中大統領が構想した「鉄のシルクロード」、ロシアのガス管連結事業などを想起すれば、北方経済のブルーオーシャンを切り開こうという主張が急に出てきたわけではなく、かなり長いルーツを持っていることがわかります。

李根先生が、進歩陣営が政権をとれば、対北朝鮮政策と関連して、韓国社会で支持基盤の分裂現象、すなわち韓国内の葛藤が深くなる危険を憂慮されていましたが、私はどのような政権になっても、現在のように壊滅的な南北関係をそのまま放置することはできず、速い速度で信頼と関係回復をしていくべきだと思います。むしろ積極的な和解で南北関係が改善されれば、そのような対北朝鮮政策に対する支持度は高まるでしょうし、このことは結局、韓国社会で韓国内の葛藤現象を緩和し克服することに役立つだろうと思います。

李根 私は、南北関係はもちろん重要なイシューですが、そこから少し抜け出すべきだと思います。韓国の外交は、他の無限の大陸とともに海を通じてできることがたくさんありますが、南北関係が足かせになるということです。また南北関係は慎重にやりながら、信頼がある程度蓄積されたことがわかった時、一度大きく跳躍し、また慎重にやって信頼が重なればもう一度跳躍するというように、段階的にやっていくべきだと思います。

白鶴淳 ですが、問題は、南北関係が悪化すれば、外交・通商部門が足をすくわれるということです。「コリア・ディスカウント」(Korea discount、対内外的要因にともなう韓国の国家信用度の低評価)も生じます。南北関係が外交・通商の邪魔になってはならず、むしろそれを支援するべきですが、過去の経験を見ると、その正反対の場合の方がはるかに多いと思います。何よりも、南北関係が悪化して韓半島で戦争の脅威が大きくなり、北朝鮮の核問題が再び大きくなれば、私たちは外交・通商分野で、その力量を思う存分発揮できず、挫折せざるを得ないでしょう。

金峻亨 金大中政権や盧武鉉政権の時もかなり性急でした。私が言っているのは、自分の任期のうちに何か完成させようと急いではいけないということです。大きな流れを変えるべきで、現在、誤っていることをただして、国民によく説明するべきです。世論調査を見ても、李明博政権の対北朝鮮政策が逆行しているという事実に共感が集まっています。だから、誰が大統領になろうと、初期のガバナンスがいい時のために、多くのことを準備するべきだと思います。

李根 文在寅候補や進歩改革陣営に対して憂慮するのは、対北朝鮮政策は盧武鉉政権の時期の政策に戻りさえすればいいと考える傾向です。それが最も心配です。なぜなら、あの時の方向はよかったものの、それが座礁したじゃないですか。その原因はまさに国内政治でした。ですから、私は、対北朝鮮政策がうまくいくためには、国内政治をよく理解するべきだと思います。

 

 

金正恩体制における朝米関係の展望

 

李南周 南北関係の回復ないし改善に関しては、国内的にはある程度、合意と動力が作られているようです。ですが、決定的な変数は北朝鮮の動きと朝米関係のようです。北朝鮮側でどうするかによって、韓国でやってきた合意が水の泡になることもあります。金正恩体制以降、朝米関係が転換するのか、また北朝鮮の核問題を対話で管理するプロセスが形成されるのでしょうか?

白鶴淳 金正恩は、現在の韓国とアメリカの大統領選挙に悪影響を与える挑発を自制しながら、対話と交渉のパートナーとなる新しいリーダーシップの出現を待っている状況でしょう。北朝鮮も通常の国のように、よりよい戦略を立てようと努力してきたことは事実ですが、ソ連の滅亡で、独自の21世紀の生存・発展の戦略を作り出さざるを得ませんでした。国内的には3代にわたる権力世襲を通じて、政治の安定性を得ましたが、経済は依然として解決されていません。南北関係ではこれまで、平和的な共存と繁栄の枠組をある程度準備しましたが、李明博政権になって、これがひっくり返ったせいで、戦略的な限界を感じたでしょう。対外関係では、アメリカと早く敵対関係を終息させ平和体制を樹立し、関係正常化を達成することによって、対外生存と発展の枠組を準備しようとしています。このなかで経済回復が最も至急ですが、これを解決するためには国際社会から協力を得なければなりません。中国との経済協力はいい方ですが、かなり一方的に中国に対する経済依存度が高まりました。したがって、1日も早く、韓国、アメリカ、日本などと関係を改善し、経済協力を始めたいと考えています。北朝鮮は核を保有しようとしていますが、国際社会が一致して反対しています。自らは経済を生かすために国際社会の支援を受けようとしながら、核とミサイル問題において我関せずを決め込む立場ではありません。

北朝鮮がこのような状況ならば、私たちが北朝鮮と対話を始めて国際社会と関係を改善し、核もミサイルも放棄するように積極的に誘導するべきです。圧力と制裁をさらに強くして北朝鮮が核を放棄するでしょうか? 結局、根本的な接近法を選び、北朝鮮が望むことだけでなく、私たちにも役立つ道を探して、相互勝利(win-win)の交渉を達成するべきです。さきほどサンフランシスコ体制の話が出ましたが、それを韓半島から解消することによって東アジアが安定する解決法を本格的に議論するべきでしょう。

最後に、韓国社会では、平和体制の樹立を語れば親北朝鮮的であると責められますが、これは歴史的な事実を完全に無視することです。韓半島で戦争を終息させて平和体制を樹立することなくして、北朝鮮の核問題の解決に限界があると判断したクリントン政権が、金泳三(キム・ヨンサム)政権を説得し、韓国・アメリカ・中国・北朝鮮が参加して韓半島の平和体制を議論する四者会談が1996年に済州道で韓米共同で提案されました。この四者会談は1999年まで続きました。以降、日本とロシアが合流した六者協議で、北朝鮮の核問題の解決策で合意した2005年9・19共同声明を見ると、韓半島の平和体制を樹立するために「直接の当事国」が「別途のフォーラム」を持つとなっています。ですが、その合意は履行されていません。また、9・19共同声明の履行のための初期段階措置に合意した2・13合意(2007)の推進には、当時のアメリカ国務省顧問であるフィリップ・ゼリコウ(Philip Zelikow)が書いた有名な2編の報告書が影響を及ぼしましたが、停戦体制を平和体制に転換する根本的な接近法でなければ、韓半島において核問題の解決は困難であるという内容でした。結論的に、北朝鮮の核問題を解決するには、平和体制の樹立をともに議論していくべきだということを国際社会が認め、それを実践するための会談まですでにやっているのですが、韓国社会では、北朝鮮だけが平和体制を主張しているかのように、誤って理解されています。

李根 北朝鮮の核問題は、私たちが解決しようとするほど、脅威として接近してきて、それに触れることがなければ、さほど意識することもできないイシューです。現在、韓国民に、北朝鮮の核が恐ろしいかと聞いても、おそらく何も考えていないでしょう。アメリカも北朝鮮の核の脅威を語ることはあっても、ほとんど動くことはありません。また、2、3年のうちに解決される問題でもありません。かなり長いプロセスなので、どのような政権でも、任期中に解決しようと事を急いでは、むしろ悪化させる公算があります。だから、南北関係では、平和体制であろうと交流協力であろうと、そのようなことを進めはするものの、北朝鮮の核に関しては、きわめて長期的なフレームで慎重に接近し、国民にこの問題が緊急であるかのような信号を与えない状態で、併行していくべきです。

金峻亨 北朝鮮の核問題は、アメリカがどうするかにかかっていると思います。これは私たちが主体性もなくアメリカに押し付けるということではありません。北朝鮮の核問題の本質は朝米間の問題なのだということです。北朝鮮が核を開発することで生存を確保しようという要求の対象が、アメリカであるためです。だからオバマの再選が重要です。そうすれば次の六者協議の動力にもつながるでしょう。過去の経験を見ると、対話が実現した時も、朝米の両国間で水面下の交渉を通じてのことで、反対に対話が膠着状態に陥った時も、アメリカが背を向けたために物別れに終わったんです。そのように、アメリカが出てきて何がいいかと言えば、韓国が対北朝鮮の和解を先に提案することで、天安艦や延坪島の問題においてはるかに負担を減らすことができます。アメリカが出てきた時、私たちがそれに便乗したり促進したりするのです。そのような方式がもっともいいと思います。

李南周 天安艦や延坪島の問題に対する負担削減の方式は、もちろん違いがあるでしょう。延坪島砲撃のような事件は、再発を防ぐための確固たる意志が必要です。ですが、天安艦事件の場合は少し違うと思います。市民社会で政府発表に対する問題提起を続け、再調査を要求しており、文在寅候補もそのような国民の不信を解消するために、追加調査などの努力が必要だと言及したことがあります。この作業が進んでこそ、南北のさまざまな懸案をどのように解決していくかが、さらに明らかになると思います。北朝鮮の核問題についてさらに言えば、アメリカと北朝鮮の間には核問題への接近方式について相当な見解の違いがありますが、この違いがどのように小さくなるかがキーだろうと思います。

白鶴淳 国際的な現実を見ると、アメリカが強大国として自ら外交的リーダーシップを発揮してこそ、問題が解決する場合が多いと思いますが、北朝鮮の核については、アメリカの大統領の「政治的リーダーシップ」がきちんと確立されているとは思えません。ブッシュ政権の時から、北朝鮮の核問題を解決するどころか、むしろ北朝鮮の核能力を育てる形で、反北朝鮮強硬政策を進めたらリーダーシップが崩れ、その否定的影響がそのままアメリカ人の世論に根を下ろしました。オバマ政権になっても、北朝鮮の核の問題に関しては依然として政治的リーダーシップが作動しておらず、だから結局、テクノクラートや官僚たちが北朝鮮の核問題を掌握して、全てのことに技術的なレベルで接近し、検証や攻防を行うだけでした。北朝鮮の核問題は、朝鮮戦争がまだ終わっていない現実において、1つの「病の症候」として生じたもので、根本的に「政治的性格」の問題です。ですから「政治的解決」として解決するべきです。戦争ほど「政治的」な出来事はありません。今後、アメリカで誰が大統領になろうと、大統領が直接掌握し、根本的な問題解決の視角から、果敢かつ包括的なやりとりの交渉をするべきでしょう。

李根 北朝鮮の核問題は、結局、抑止のレベルに持っていって解決策を模索するべきで、性急に答を見出そうとすると、韓米関係も複雑に絡み合い、南北関係も難しくなります。国民を安心させながらやっていくことが必要です。アメリカも同じです。

李南周 国内政治では、そのような態度が葛藤を起こすことはないでしょうか? 核問題の解決なくして何をするのかという風にです。
李根 ですから、超党派的にどのような点に合意すべきかといえば、私たちが北朝鮮の核に対しては確実に抑制させ、またこれは1、2年のうちに解決できない問題だ、という点でしょう。
白鶴淳 きちんとした交渉さえ再開できれば、核問題の解決がそのように長くかかることはないと思います。もちろん条件があります。韓半島において戦争と平和の問題に本格的に取り組み、アメリカでこの懸案に取り組む政治的リーダーシップが樹立されることです。万一、そのような条件が揃えば、交渉は可能であろうと信じます。

 

 

議題設定能力と方向性の確立が至急

 

李南周 南北関係がうまく解決すれば、韓国外交の空間がさらに広くなるでしょうし、不幸にもそこで足をすくわれれば、できることも少なくなるでしょう。ですが、南北関係の他にも韓国外交がやるべき役割はかなりあります。最近は国際的に相当な関心や期待も受けています。国連安保理の非常任理事国に選出されたことを考えても、私たちが国際社会で担うべき役割があるでしょう。そこで、韓国外交の方向をどのようにつけるべきか話し合ってみたいと思います。

金峻亨 李明博政権の任期中、韓国が国際社会に出る頻度が高まったことは事実です。ですが、それはオバマの多者主義の影響が大きかったと思います。韓米同盟が強化され、韓国の比重が大きくなったことからくる、反射利益のうちの1つでしょう。ですが、ここで本当に重要なのは、会議を何回か開催して国連事務総長を輩出することよりも、国際協力において議題設定能力とリーダーシップを発揮することだと思います。私たちには、担当可能な役割を探して積極的にリーダーシップを発揮したり、他国の協力を引き出したりする能力がまだ足りないと思います。今後、新たな議題を探し出し、既存の役割においても寄与度を高める、実質的な外交が必要だろうと思います。

白鶴淳 李明博政権の外交政策を見ると、外見上、グローバルガバナンスに貢献し、重要な構成員として参加して、成果を挙げたように見えます。ですが、それはまるで、私たちの経済を見る時、マクロ指標はよくなったけれど、実際には格差の拡大によって庶民の生活は破綻しているように、私たちの外交も、外形的には発展したものの、中身はまだきちんと満足させられずにいます。これからは外交や通商分野において、もう少し有能な政策行為者が出てきて、精巧に中身を充実させる作業をすることで、一層有能な実力国家になっていくべきでしょう。

李根 過去には資本主義体制と社会主義体制が対立しましたが、今はみな資本主義です。にもかかわらず外交が重要なのは、信頼関係が構築されずに互いに争うからでしょう。単純に軍事的なレベルだけでなく、経済的な面でも、社会文化的なレベルでも、やはり信頼が問題なために、韓国が外交の地平を広げるならば、信頼構築をまず目標にするべきだと思います。さらに東北アジアでは信頼問題が最も大きいので、韓・中・日の間に、また南北関係において、信頼を重ねる経験を作って成果を示し、そのノウハウを国際的に広めていくべきです。現在、東北アジアにおいて民族主義の問題が再燃していますが、グローバリゼーション後にも民族主義が登場するのは、各国が生活の質を高めたあと、今度はプライドを持とうということであって、他の民族を支配するというわけではありません。そのような脈絡をよく把握して、いわゆる共生的な民族主義を追求し、中間で信頼も構築していく役割を、韓国は果たしていけるだろうと思います。

李南周 その共生的な民族主義が、東アジアでは大きな意味があると思います。いくら民族主義を捨てようといっても、それが現実的な動力として存在するので、簡単に受け入れられないでしょうし、また、過去の攻撃的な民族主義の様相に戻るのはきわめて危険ですからね。それをどうやって昇華させ、新たな信頼構築の歴史を作り出すかが、きわめて重要な問題だと思います。

金峻亨 お二人のお話しに全面的に同意しますが、やはり問題は、国内政治において屈折してしまうということです。民族主義はどの国家でも利用できる政治的資本です。また共生というものは実際に達成するには長くかかり、効果もあまり出ないので、過去のように領土を奪おうということではなくても、悪い国家を1つ決めて、私達同士で団結しようという誘惑が大きい作用するんです。今、中日関係や韓日関係を見ても、そのような傾向が見えます。

李南周 よく分かりました。今日の「対話」の仕上げを兼ねて、今回の大統領選挙で政権を誰が取ることになっても、任期のうちに解決すべき外交の核心課題は何か、また、おっしゃられていないことがあれば付け加えて下さい。

李根 次の政権が任期内に解決すべき課題はあってはならないと思います。みな任期のうちに最後まで見届けようとすれば、無理をして座礁しますが、大きな方向を設定して、水路を深く掘り、そちらの方に流れるくらいにすればいいのであって、任期のうちに解決しようとするアジェンダを提示してはいけません。外交と関連して核心的なイシューは、他でもない国内政治だと思います。超党派的な合意を引き出す土壌を作り出すことが最も重要です。

白鶴淳 次の政権は、韓半島における戦争と平和問題を根本的に解決することに、主導的な役割を大胆に果たしていくべきです。任期のうちに全てを解決することはできませんが、最低限、方向は正確かつ明確に確立してくれたらと思います。韓半島の平和定着を中心とした有能な外交を展開し、わざわざ誇示する必要はありませんが、G10の実力国家になれるように目標を立てられればと思います。要約すれば、平和外交と実力通商外交ですね。

金峻亨 私も任期のうちに何かを達成するという態度は、野心に充ちてはいますが、非現実的だと思います。先におっしゃったように方向性を設定すればいいと思いますが、一言で言えば、これまで台無しにしたことを回復する外交が必要です。最近流行している言葉で「ヒーリング」(healing、癒し)外交といいましょうか。その核心は何よりも南北関係ですが、どれか1つに没頭するよりは、もう少し多様化するべきだと思います。韓国が橋梁的な位置にあるということをよく言います。後進国から先進国に、支援してもらう国家から支援する国家に成長したことは事実でしょう。暮らし向きのいい国ですが、帝国主義の原罪がないので、国際社会で大きくアピールできる部分が多いということでしょう。

李南周 重要かつ興味深いお話しが多く、読者に有益な読み物になったかと思います。今日は本当にお疲れさまでした。

 
(2012年10月19日/細橋研究所にて)

翻訳: 渡辺直紀

 


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